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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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87. オーウェンの疑問

お読みくださりありがとうございます。

感想欄の一言で、誤字脱字をお教え下さった方、ありがとうございました。

訂正しました、よろしくです。

 ディルクとの通信を切ろうとした時、不意にオーウェンがそれを止めた。

「……?お祖父様、先生、待ってください。……何か変です。

 クロエの事ですが、先程から説得とか丸め込むとか……。あの子は未だ1才ですよ?一体あの子の何をそんなに警戒しておられるのですか?

 母上からお聞きしましたが、クロエは非常に賢い子で既に乳飲み子の時から言葉を解していたとか。

 聞いて耳を疑いましたが、母上が仰るのだからそういう事もあるのだと何とか皆納得しました。

 それに魔力暴走を起こした後、魔力保持の為に体が急成長し、今は1才にして既に見た目は2才半の幼児位だとも聞いております。

 ですが、未だそれでも体が2才半なだけ。中身は1才児です。ですが幾らか宥めたら、クロエはお祖母様と片言の言葉なら話してくれる位には賢いのでしょ?

 あっ!まさかあの子は酷い人見知りなのですか?それなら守護者の妻君にお願いして……」

 とオーウェンがそこまで語ると口を閉じた。

 ジェラルドとディルクの顔が強張ったからだ。

 ディルクが天を仰ぎ、そして急に俯くと頭を軽く振った。

 ジェラルドも瞑目し、腕組みをしたまま黙り込む。

 オーウェンは2人を交互に見ながら

「先生?お祖父様?」

 と戸惑いの声を上げる。

 ディルクはジェラルドをチラ見して

「……おい貴様。何にも説明しとらんのか」

 と低い声で聞く。

 ジェラルドは瞑目したまま

「……余りにも難しいのですよ。グレースに関しても私の懸念はそこなのですから。

 因みにお尋ねしますが、先生なら何と話されますか?」

 とディルクに反問する。

 ディルクはジェラルドを睨み

「……儂に丸投げか。卑怯な」

 と言い、近くの椅子を引き寄せてドスンッと乱暴に座った。

 そして腕組みをし、暫く考え込む。

 ジェラルドはと云うと、相変わらず瞑目したままだ。

 居たたまれなくなったオーウェンが

「……一体クロエの事で何の秘密が有るのですか?僕が知っては不味い事なのですか?」

 と2人に説明を求める。

 ディルクはそのオーウェンの途方にくれた声を聞いて、フンッと鼻を鳴らし

「ジェラルド。視察にこのまま連れてくるつもりか?このままアレに会わせたら……儂はその先を考えたくないぞ」

 とジェラルドを再び睨む。

 ジェラルドは薄く目を開き

「……私は先生から話を聞いただけで、実際アレには前回の視察以来会っておりません。お忘れですか」

 とディルクに指摘する。

 ディルクはチッと舌打ちし

「巧く逃げおって。……クソッ!儂が話をせねばならぬのか。

 馬鹿な貴様が混乱しようが慌てようが知ったことでは無いが、オーウェンとなるとのう……。聡き其方だから大丈夫だとは思うが、しかしどうなるかが全く読めぬ。

 オーウェンよ。正直説明が難しい。其方が母から聞いた通り、クロエはとても優秀な赤子だ。優秀なのだが、何と云うか……優秀だ、うん。

 ……ああっ!クソッ、こんなに説明し辛いとはっ!あの面白娘めっ、何度儂を翻弄すれば気が済むんじゃ!」

 と頭を掻きむしる。

 ジェラルドは漸く普通に目を開くと

「……アレをあんな風にからかうから、罰が下ったのですよ、先生。しょうがありませんな」

 とニヤリと笑う。

 ディルクがジェラルドをキッと睨み

「誰の孫だと思うとるんじゃ!馬鹿がっ。

 ……まさかクロエは貴様似だと云うのか?何だか段々そんな気がしてきた。何て事だ……悪縁の因果は孫にまで祟ったか。

 クッ、だがアレの指導役を降りる気には到底なれぬし、かといって……」

 と歯軋りをする。

 オーウェンは次第に眉を潜め

「あの……先生は今クロエの話をしておられるのですよね?

 ……面白娘とはまさかクロエの事なんですか?幼児が先生をそれほど困らせるなんて、もしかしてクロエはとんでもないお転婆なんですか?」

 と少ない情報から必死にクロエの様子を想像し、何とか理解しようと努める。

 ディルクはちょっとホッとした顔になり

「そ、それだっ!確かにアレはお転婆な……いや、待てよ、アレはお転婆というのかの?……どうも何か違うな、うむ、違う。

 何と云うか、性格は明るくて人懐こいが、お転婆というのは違う気がする。

 クロエは優しい子だが、後は……。

 ああ、なんて面倒臭いっ!クソッ!もういっそ全てをぶち撒けてやろうか!」

 と又頭を掻きむしる。

 ジェラルドが

「又心にもないことを。アレが可愛くて仕方無いクセに」

 と面白そうにディルクを見る。

 ディルクは悔しそうにグヌヌと唸ると、噛み付くように叫んだ。

「何をっ!馬鹿が偉そうに~っ!

 馬鹿は頼りにならぬし、誰か……、ん?

 おお、そうだ!良い手を思い付いたぞ。流石は儂じゃ!

 オーウェンよ、済まぬが明日午後に又通信術で連絡をする。それまで時間をくれ。

 そこの糞ジジイよ、明日午後に結界を張って2人で待っておれ!良いな?」

 と急にニヤリと笑ってジェラルドに命じた。

 ジェラルドは目を見開くと、クッと笑い

「仰せの通りに。しかしやはり先生ですな。難事をお任せ出来そうで何よりです。明日午後オーウェンに解りやすく、巧くご説明よろしく頼みますぞ?」

 とからかうように言った。

 ディルクはそんなジェラルドをフフンとせせら笑い

「ああ、貴様と違い儂には知恵が有るのでな。オーウェンがすんなり理解できる様、巧く説明して貰うとも!

 ……では、又明日。切るぞ」

 と言いたい事を言うと、ブツッと通信術を切った。

 ジェラルドは眉を潜め

「……して貰う?先生め、どうやら又変な手を使われるつもりだな。懲りない方だ」

 と小さく溜め息を吐く。

 



オーウェンがジェラルドを見上げて

「お祖父様。僕は視察に行ってはいけないのでしょうか……。行っても皆を困らせるだけなのでしょうか。

 だって、あれ程に狼狽える先生の姿は見たことがありません。と言うより先生が狼狽えるなんて、有り得ない事ですよ。

 知恵者として今だ王都で名を馳せるあのディルク先生が……。

 本当にクロエは一体どんな子なのですか?!

 ……だって僕には解らない、生まれて直ぐに会えなくなったんだから!

 ……妹なのにっ」

 と感情を次第に昂らせて、ジェラルドから視線を逸らす。

 ジェラルドは痛々しそうにオーウェンを見つめ抱き寄せると

「……悪かった。其方がどれ程クロエに会いたがっているのか、儂も先生も解ってはいるのだ。なのに説明も満足にしてやれぬ儂を許しておくれ、オーウェン。

 ……正直な話、クロエについての報告は信じられない話ばかりでな。儂も今度の視察でその真偽を確かめなければならぬのだ。

 勿論先生やガルシア達が嘘を吐く筈は無い。だがそれでも尚疑ってしまう程に、アレについての報告は信じ難いのだ。

 明日午後の先生の連絡を待とう。

 先生のあの様子なら、きっと良い説明を望める筈だ。

 オーウェン、それまで我慢してくれるな?」

 と優しく諭す。

 オーウェンは小さく頷き

「ごめんなさい、お祖父様。

 ……じつは僕の中で、最後に目に焼き付けた筈の生まれたばかりのクロエの姿が、だんだんおぼろげになり始めているのです。忘れまいと心に強く誓ったなのに……。

 あの子と一緒に過ごせた時間が、余りにも短すぎたんです。

 だからあの子の声も解らない……。

 そんな僕が妹のクロエを見分ける手立ては、自分と同じ黒髪とビリジアンの瞳だと言うことだけだ。

 ……他には何もないんです……情けない」

 と小さな声でジェラルドに訴えた。

 ジェラルドは更に強くオーウェンを抱き締める。

「……オーウェン。実はな、先生が以前仰っておられたのだ。

 もしクロエが黒髪で無かったとしても、あの子は何れ森に隠さねばならなかっただろうとね。

 ……ああ、そのように悪い方へ勘違いしてはならん。あの子が悪さをする訳では無いし、体に異常が有る訳でも無いのだ。

 ……とにかく不思議な子なんだよ、お前の妹は」

 と言い訳する。

 オーウェンは又眉を潜めたが、やがて頭を小さくフルフルと振ると

「明日まで待ちます。

 明日午後、先生が何らかの説明をしてくださるのですから、待つしかありませんよ。

 ……すみません、弱音ばかりで」

 とジェラルドに詫びる。

 ジェラルドは無言で首を横に振り、オーウェンの頭を撫で続けたのだった。








次話は明日か明後日投稿します。

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