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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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84. オーウェンの到着

お読みくださりありがとうございます。


すみません、草刈りで手痛めました。鎌怖い、いたい!包帯グールグル。

ホントに屁糞カズラ、アイツだけは許さんっ!


何とか更新やっていきます~!

 フェリーク州、州都アラベラのジェラルドの邸宅。



 王都を経由して、遠路はるばる孫のオーウェンが到着した。

 まだ9才の彼は、護衛騎士と側仕え各1名の3名でフェリークにやって来た。

 本来であれば、フェリーク州の唯一上を行く大領地インフィオラーレ州の次期領主となる身、お付きの者が後この2倍は付くべきなのだが、この旅に関しては極力控え目に目立たぬようにと気を遣っている。

 元々オーウェン自身、余り身の回りのことを細々手を出されるのを好まない性格なので、今回の旅はとても気楽であったようだ。

 お付きの護衛騎士アーロンと側仕えのスレイは相当神経をすり減らしたようだが。



「おお!久しいなオーウェンよ!元気そうで何よりだ。会えて嬉しいぞ!」

 と両手を広げて孫を迎えるジェラルド。

「お祖父様、お久し振りです!お祖父様こそお元気そうで安心しました。暫くお世話になります。お祖母様のお加減は如何ですか?」

 とオーウェンはジェラルドの腕の中に飛び込んで抱擁を交わした。

 ジェラルドはオーウェンを抱き締めながら、ニッコリ笑い

「ああ、グレースも変わり無い。まぁ大事をとって其方を部屋で待っておる。早く顔を見せてやってくれ。何せ首を長くして其方の到着を待っておったのでな。其方の姿を見たら、走り出しかねんからのう。基本元気過ぎる性格だからな。元々丈夫でないのに、無茶ばかりする。おちおち外に出せんのよ。全く」

 と肩を竦める。

 ジェラルドから少し体を離したオーウェンはクスクス笑い

「確かにそうですね。お祖母様程、見た目と性格が違う方も他にいらっしゃいません。あんなに儚げで美しい方なのに、性格はお祖父様より過激ですからね。エレオノーラはお祖母様似に違いありません。アレもそんな感じですから」

 と楽しそうに語る。

 ジェラルドは溜め息を吐き

「其方等の母のアナスタシアが、とても女性らしい淑やかな質に生まれたのが、ほぼ奇跡だな。エレオノーラはグレースの血が濃く出たようだ。ま、それも良い。

 ああ、随従の者達を労わなくては。其方等、遠路誠に大儀であったな。さぁ早く屋敷に入りなさい。家の者達に案内させる故、先ずは各々体を休めるが良い。オーウェンは私と暫しグレースの元に居る。オーウェンの世話は家の者が引き受けるので安心せよ」

 と後ろに控えるオーウェンの護衛騎士と側仕えに労いの声を掛ける。

 しかし2人は慌てたように

「いえ、有り難い御言葉ではありますが、オーウェン様のお世話は我が主から我等への至上命令。何卒我等にオーウェン様のお世話を……」

 と側仕えのスレイがジェラルドに訴える。

 しかしオーウェンがニコリと笑い

「いや、お祖父様の仰る通りに。ここまで僕の護衛や世話を、2人は交替も無く見事に務めてくれた。ありがとう。心休まる時が無かっただろう。

 僕ならお祖父様の家だ。云わば第2の家であるここで、普通に過ごさせてもらうよ。寧ろインフィオラーレより、気を張らなくて良い分、楽だしね。

 それに忘れたのかい?視察にはお祖父様直属のフェリークの騎士達しか付いては行けない。側仕えもだ。今から顔を会わせて僕も彼等に馴染んでおかないとね。

 だからこのフェリークに滞在する間は、2人もこの地でゆっくりして貰いたい。又帰りは2人にキツい仕事をお願いせねばならないのだから。

 それに、これは其方等の主である我が父、インフィオラーレ公の意向でもある。

 済まないが、了解してくれ」

 と随従の2人に話す。

 護衛騎士と側仕えは複雑そうな表情を浮かべたが、やがて一礼し

「……では、仰せの通りに致します。ですが、我々は常にオーウェン様の為に控えております故、いつでもお呼びくださいませ」

 と静かに応えた。

 オーウェンは頷き

「ありがとう、2人共。僕の事は良いから、この地でどうか疲れを癒してくれ。……ではな」

 とインフィオラーレから随行してきた2人に背を向け、ジェラルドの側仕えに案内されて屋敷内に向かう。

 ジェラルドはオーウェンの後ろ姿を目で追いつつ、インフィオラーレの随従に声を掛ける。

「……アレは常に気を張っている。置かれた立場を考えれば無理もないが。又賢しい故、甘えを自身に許さない。仕える其方達もさぞかし大変だろう。……ああ、解っている。其方達に不満など無いことはな。

 だが儂は、アレがここに居る間だけでも、普通の9才らしく過ごさせてやりたい。だが、いつも支えてくれている其方達の前では無理だろう。

 心苦しいが、アレを思ってくれるならば暫しアレから離れてくれ。……済まぬな」

 とジェラルドは2人の目を見て頼む。

 アーロンとスレイは目を見合わせて考えていたが、やがて2人はジェラルドを見て

「……オーウェン様を何卒よろしくお願いいたします。あの方はインフィオラーレに無くてはならぬ方です。

 どうか……。オーウェン様を支えきれぬ不甲斐ない我等をお許しください」

 と深々とジェラルドに頭を下げ、ひざまづいた。

 ジェラルドは頷き

「……儂にとって可愛い孫だ。どんなに賢しくとも、子供は子供。羽を伸ばさせる秘策はある。任せておけ。

 帰りには又アレの違った顔を其方達に見せたいものよ。

 さぁ、其方達も早く旅の疲れを取らなければな。お前達、この者達を屋敷に案内してやってくれ」

 と自身の使用人達に命じる。

 2人が使用人達と共に屋敷へ向かうと、ジェラルド自身も執事頭のトレバーや側仕えのアレクと共に屋敷へ戻っていった。



 オーウェンにはジェラルドの邸宅を訪れた際、必ず使う部屋がある。

 インフィオラーレとフェリークは離れている為、早々祖父母の元を頻繁には訪れる事は出来ない。

 だが数少ないその機会には、少しでも孫が寛いで羽を伸ばせるようにと同じ部屋を毎回同じ設えで準備する。

 勿論幼い頃には玩具等を用意していたが今はそういったものは無く、現在の彼が好む物を事前に聞き、同じ設えの中にそれをさりげなく配置してあった。

 ブライアン・アナスタシア夫妻、エレオノーラも勿論同じだ。

 そして幼い頃から必ずフェリーク滞在中はオーウェンの側仕えを任される者が2人居る。

 その内の1人、オスサナがオーウェンの荷物を解きながらニコニコと

「本当に又一段と凛々しく成られましたね、オーウェン坊っちゃま。お姿を拝見する度に見惚れてしまいますわ~。ホホホ」

 と茶目っ気たっぷりに彼に声を掛ける。

 オーウェンはソファに深く腰を下ろして、オスサナを軽く睨みながら

「オスサナはいつもそうやって僕をからかうね。インフィオラーレの側仕え達は僕にそんな事言わないよ?

 何だかオスサナには遊ばれている気がするなぁ。なのに怒る気になれないんだよ。不思議だよね、ホント」

 とやがて苦笑を浮かべた。

 オスサナはオーウェンの言葉を聞き

「ま!坊っちゃまで遊ぶだなんて有り得ませんよ。私の言葉をそんな風に感じておられたなんて、オスサナは悲しゅうございます~……よよ」

 と完全に遊んでいた。

 オーウェンは軽く溜め息を吐き

「まぁからかってこないオスサナなんて、オスサナじゃないよね。

 僕がどんなに成長してもお祖父様の使用人達は、皆僕を小さな子供の頃と全く変わらない扱いをするんだから。

 ……でも何だかそれが心地好いんだけどさ」

 とニッコリ笑う。

 オスサナはウフフと又笑い

「そりゃここの者は皆、オーウェン様をインフィオラーレ次期領主としてではなく、ジェラルド様、グレース様の可愛い可愛いお孫様として見ておりますもの!

 今でも思い出しますわ……おねしょをなさって、オスサナの元に泣きながらしがみついて来られた……」

 とオスサナが目を閉じて胸に手を当てしみじみとオーウェンの昔の粗相を思い出す姿に

「オ、オスサナッ!それは3才の時の話だろっ!いい加減持ち出さないでくれっ!」

 と顔を赤くしたオーウェンがソファから立ち上がって叫ぶ。

 オスサナが口元を押さえ、ププと吹き出すと

「オーウェン様、申し訳ありませんな。こら、オスサナ。オーウェン様に久し振りにお会い出来て嬉しいのは解るが、余り自分の主をからかうものではない。

 オーウェン様が滞在される間は、我等の主はオーウェン様だ。失礼が過ぎるぞ、全く」

 ともう1人の側仕え、フェルスが嗜める。

 オスサナは口元に笑いを残したまま

「失礼いたしました。ですが、お許しくださいませ。オーウェン様にお会いするのを本当に楽しみにしておりましたの。滞在中は私、全力でオーウェン様のお世話をさせて頂きますからね!お覚悟なさいませ?」

 と悪戯っぽく宣言する。

 オーウェンはそんなオスサナをチラリと見て

「オスサナの全力で……か。怖いな、お手柔らかに願うよ」

 とこれ見よがしに溜め息を吐く。

 オスサナは胸を叩いて

「はい!ですが、大事なオーウェン様のお世話の手は抜きませんからね~。

 ……又おねしょをなさいましたら、オスサナにお任せあれ?見事に隠して差し上げますから」

 と又からかう。

 オーウェンはハァと諦めたように溜め息を又吐いた。



 暫くしてから、オーウェンの部屋をジェラルドが訪れ、祖母のグレースの元へ共に向かう。

 グレースは元々体が丈夫ではない。

 しかし性格がとても明るく好奇心の塊だ。加えて大事な物を守るためには、果敢に突進していく豪放さを併せ持つ心の強い女性である。

「オーウェン!まぁ、何て大きく立派になったの!さぁ早く私の元にいらっしゃい!会いたかったわ……」

 とグレースは自身のベッドに体を横たえたまま、オーウェンに向かって手を伸ばす。

 オーウェンは目を丸くし

「お祖母様?!どうなされたのですか!こんな、床に臥せっておられたなんて……っ!お祖父様、何故早く教えて下さらなかったのですか!

 ああ、大丈夫なのですか?お祖母様……」

 とオーウェンは走って祖母の元に駆け寄る。

 ジェラルドは目に手を当て、首を振り溜め息を吐く。

 オーウェンはそんなジェラルドに気付かず、ベッド横にひざまづき、祖母に縋り付こうとすると

「……なーんちゃって!掴まえましたよ、オーウェン!ああ、可愛い可愛いオーウェン!よく来てくれたわね!暫くは離しませんからね?貴方を充分補給しなきゃ!

 ホントに待ちわびていたのよ?貴方が来るのをどんなに待っていたか、解って貰えた?

 貴方が足りなすぎて元気が出ないわ、もっと抱き締めさせてちょーだい!」

 と力いっぱいオーウェンを抱き締める。

「お、お祖母様?!え、一体これは?

 ……お、お祖父様っ!助けて下さいっ!苦しい、苦しいですお祖母様!少し離して下さい~」

 とオーウェンがグレースの腕の中でジタバタする。

「いーやっ!離しませんっ!お祖母さん孝行です、暫く我慢なさい?

 ああどうしてインフィオラーレはあんなに遠いのっ!もっと近くにあれば良いのに~!」

 とグレースは全く聞く耳を持たず、オーウェンを抱き締め続ける。

 ジェラルドはその様子を見ながら苦笑し

「……全く。何で芝居までするか、グレースは。驚かせたかっただけだろうが。

 すまんなオーウェン。暫く好きにさせてやってくれ。なあに、死にはしない。

 少し苦しいだけじゃ」

 とオーウェンに諦めろと諭す。

 オーウェンはグレースの胸に顔を押し付けられながら

「……お、お祖父様~、結構本気で苦しいです~!お祖母様、す、少し加減を~!」

 と半ば涙声に聞こえるほど、か細い悲鳴(?)を上げるのだった。





次話は明日か明後日投稿します。

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