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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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75. 老人会合

お読み下さりありがとうございます。


本編に戻りました。少しだけ時を進ませます。

具体的には3ヶ月程度かな……。はぁ。


後、暦の季節名。捻り無さすぎですみません~。自分で書いてて笑える安直さ。ま、他のネーミングも大概安直ですけど。

笑って受け入れてくださいませ~。

 クロエが魔力暴走を起こしたのは1才になる直前の緑の季、この世界で云う春の季節の始めの月イルーハだった。


 この世界は前にも書いたが1年が360日あり、暦上12ヶ月に別れている。

 1ヶ月は30日で、6日で1週となり、1ヶ月は5週になっている。

 季節は四季に別れていて春は緑の季、夏は蒼の季、秋は紅の季、冬は白の季と云われている。

 又各季節はきっちり3ヶ月で移り変わり、緑の季はイルーハ・ニルーハ・サルーハの3ヶ月、蒼の季はイーツナ・ニーツナ・サーツナの3ヶ月、紅の季はイキーア・ニキーア・サキーアの3ヶ月、そして白の季がイユッフ・ニユッフ・サユッフの3ヶ月だ。

 緑の季はこの世界の言葉でルーハ、蒼の季はツナ、紅の季はキーア、白の季はユッフだ。

 因みに1週間の曜日はと云うと

 第1の日が芽の日と云われこの世界の言葉でブロト。

 第2の日が葉の日で、オハ。

 第3の日が蕾の日で、バド。

 第4の日が花の日で、フロル。

 第5の日が実の日で、ココ。

 第6の日が種の日で、グレヌと云われる。

 第5の実の日ココは通常半日働いて半日休み、第6の種の日グレヌは1日休みになる。

 まぁ前の世界と同じく、業種に因って働く形態は変わるから一概には決まっていないが、大体そんな感じで1週間は動いている。

 前の世界と同じで10進法が有ることと云い、とてもシステムが良く似ている世界なのである。




「しかし似てるわよね、ホントに。知れば知るほどそう思うわ……。何か前の世界とこの世界って双子みたいに感じちゃうよ。まさか他の世界もそう変わらなかったりするのかしら……」

 クロエは紙にディルクに教えて貰った暦の読み方などを書きながら、しみじみと呟く。

 今クロエはディルクとマンツーマンで勉強中だ。

 ディルクは先日州都から帰還し、彼女は漸く講義が受けれるようになったのだ。




 ディルクはクロエが急成長の痛みから解放され、彼女から前世の打ち明け話を聞かされた後直ぐに州都のアラベラに一人旅立った。

 今回の州都行きに関しては急を要する上、ジェラルドに内密の話をせねばならない事からライリーを連れていかなかった。

 ライリー自身、それは薄々判っていたようで

「又次の機会は連れていってくださいね」とディルクにそう言って見送った。

 州都のアラベラに着くと、時間が惜しいディルクは直ぐにジェラルドに会い、クロエに起こった一部始終を伝え、又彼女が語った秘密を伝えた。

 ディルクから話を聞かされたジェラルドは、流石に最初は信じきれずに

「先生……とうとうお年のせいで、頭が混乱……」

 と気の毒そうな表情でディルクを見ながら言おうとした途端

「……言うと思うたわ、このバカモンがっ!」

 といつもディルクが肌身離さず持っている仕込み杖でジェラルドの頭をぶっ叩いた。

「グオッ!……ったぁーー!」

 と頭を押さえ呻くジェラルドに対し

「全く貴様は。頭が固いのは外側だけでエエんじゃ。あの子に秘密があるだろうとは、貴様とて予想しておったじゃろうが!

 ……確かに俄に信じられんのも解らんではない。しかし、1才に満たないあの子の喋りやその内容、落ち着きはどう説明する!

 どんな優秀な赤子でもアレは有り得ん。あの子の話は荒唐無稽な様でいて、今のあの子を一番合理的に説明が出来る話でも有ったんじゃ。

 でなきゃ、わざわざ何度も貴様のむさ苦しい顔を見にアラベラまで来るか!」

 とディルクは、ジェラルドを叩いた仕込み杖を握ったまま腕組みをしてフンッと鼻を鳴らした。

「はあ。しかしそんなことが……。

 異界で成人していた娘の精神がクロエに……。異界など本当に存在するのか?想像力逞しい子供なだけ……って、確かに未だ喋る事自体で精一杯の時期だしなぁ。作り話が出来る年では無い……。

 てか、あの子の体は大丈夫なんですか?!そんな事態になって命の危険はもう無いと言い切れるのですか?」

 とジェラルドは一頻(ひとしき)り悩んだり、自分の疑問に突っ込みを入れたり、かと思えば急に焦り出したりと非常に忙しく態度をコロコロと変えていく。

 ディルクはそんなジェラルドを眺めつつ苦笑を浮かべた。

「今はない。ただやはり急成長した体に中々慣れぬ様でな。四苦八苦しておったよ。

 あの子じゃから耐えられたのであろう。あの苦しみは酷いもんであったからの。儂等でも泣き叫んでいたかもしれん。

 しかしあの子は泣き叫びもせず、時折呻く程度で必死に耐えておった。看病する儂等に気遣いさえ見せてな。

 微笑みすら浮かべておった時もあってな、その時傍に居たコリンが泣いておったよ。クロエを看病する事が出来て良かったとな。

 余程あの子が大事なのじゃろう。

 あの兄弟は競うようにクロエの傍に付いて、必死に看病してくれていたよ。良い兄弟となっておる。

 ……それだけに不憫じゃの、オーウェンとエレオノーラが……。さぞかし傍で居りたかろうにな」

 とインフィオラーレに居るクロエの実の兄姉に思いを馳せるディルク。

 ジェラルドもディルクのその言葉を聞いて、真面目な表情になり頷いた。

「はい。オーウェンは無事二次成長を越えたようで、今既にフェリークに向かっておるようです。

 体調を心配したのですが気力で戻したようで、あれの父親のブライアンが却って心配しておりました。ですが頑固な子ですから、父親を一喝してフェリークに向かうと言い放ったようです。

 ……オーウェンだけズルいと言っていたエレオノーラが、馬車に隠れてくっついて来ようと画策したようですが、済んでの所で見つかり引きずり降ろされたと聞きました。

 あの子達も報告だけではもう我慢の限界なのでしょうな。……あれほど待ち望んでいた妹でしたから」

 と言うと目を伏せた。

 ディルクも頷いて

「そうじゃったな。……仕方の無い事と片付けられる話では無い。あの子達には理解しがたく、納得できる話でも無いんじゃからな。

 賢しい故、自らの疑義を飲み込んだだけなのじゃから、時を経ればその感情が爆発するやも知れぬ。

 オーウェンは今回の視察で、エレオノーラも何とか会わせてやらねばなるまい。……会えば会ったで又辛くなるだけかもしれぬがな。

 ……王都の動きはどうなんじゃ。変わらないか。縮小等有り得んとは思うが、その兆候すら無いか?」

 とディルクは若干腹立たし気な面持ちでジェラルドに尋ねる。

 ジェラルドも苦虫を噛み潰したような表情になり

「……変わりません。救いを求める貧しい者を取り込んでいく手法は、止める術が見つかりません。

 あの愚王の負の遺産がまさかここまでこの国を蝕み続けるとは……。たかが8年程。あの愚王が玉座に居たのはその位だ。

 あの愚王を何とか王都の貴族と他領地の領主、各騎士団、王都騎士団の力で引きずり降ろし、処刑にまで持ち込んだが、これ程民が痛め付けられていては、反感が簡単に拭える筈は無い。

 王族や貴族に対する怨みは深い……。

 国庫もあれ程に食い潰されていては、持ち直すのも容易いことではありません。現王も必死に臣下の貴族達と体制を維持すべく奮闘されておりますが、あれから20年も経つのに未だ安寧には程遠いのが現状です。

 それに乗じた奴等の摘発は遅々として進みません。あの組織に迎合する貴族が庇い、匿うのです。

 あの教えに毒されてしまっては、中々説得に応じる筈も無いでしょう。その愚かな者達を骨の髄まで吸い尽くすあの組織は、表立って犯罪行為を犯している訳では無いのですから、監視するしか今のところ手はないのです。

 腹立たしいが、(おおやけ)が法を犯していない者共を無闇に拘束や処分をする訳にいかない。それこそ法の秩序が崩壊してしまいます。

 それに何とかして今の組織を潰したとしても、あの教義が消えるわけでは無いのです。第2第3の奴等が組織されるだけ……。組織の中枢部は衣を変えるだけなのですよ。

 ……このままではあの子の未来は益々悪夢に近付いて行ってしまう!」

 と歯軋りし拳を握り締める。

 ディルクは暫く瞑目し、やがて静かにジェラルドに語り出す。

「……あの組織の中枢は一体何故今、あのような教義を抱え上げたのであろうな。

 それもアナスタシアが生まれて、クロエが生まれて、それに合わせたかの様に。あの2人以外黒髪の女性は今、確認されていない。その前は儂の知る限り、伝説の域まで遡らんと見つからん。

 アナスタシアは幸い完全な黒髪ではなかった。だから胸を撫で下ろしたのだが、クロエは違う。

 ……それにあの子と向き合って確信したことがある。あの教義はあながち間違いではないということだ」

 ディルクの言葉にジェラルドは眉を潜める。

「どういう意味ですか、先生?」

 ディルクは真っ直ぐジェラルドを見つめながら

「お前、儂の事をどう思う。儂をどんな人間だと考えている?遠慮せず言うてみ?」

 と軽い調子で問いかけた。

 ジェラルドは急な質問に戸惑いながら

「はあ。そうですね……。厳格で頭脳明晰、冷静沈着、時に冷酷、皮肉屋で素直じゃない、しみったれで乱暴、口が悪く手が早い、部下に厳しく女に甘い、どうしようもない(ひね)くれ者、冷血漢、変人、もう少し私にも優しくしろ、さっきの杖も……イテッ!痛い痛いっ!止めて先生っ!遠慮なく言って良いと仰ったではありませんかっ!杖ダメッ!痛いっ!」

 とジェラルドは言葉を切って頭を庇う。

 杖を引っ込めたディルクは鼻を鳴らしながら

「バカモンが。調子に乗りおって。

 だが概ね間違うておらん。儂を知る大概の人間はお前と同じ様に思うておるじゃろう」

 と頷く。

 ジェラルドは頭を擦りながら

「間違えてないなら何で叩くんですか!もぉっ!

 私も良い年なんですから、もう少しマシな扱いをして下さっても……」

 と背中を丸めて愚痴る。

 とても孫まで居る、アーソルティ第2の大領地の前領主とは思えない情けない姿である。

「良い年ならもう少し賢くなれ。全くお前だけは成長がないわっ!

 何でこんな男と腐れ縁が切れんのかのう。儂も運がないわ」

 と首を横に振るディルク。

 そして一つ軽く咳をすると座り直し、ディルクは

「話を戻すぞ。正直儂は扱いづらい人間じゃと自分でも思う。まぁ本心などは先ず人には明かさん。捻くれてる自覚はある。

 しかしじゃ。そんな捻くれ者の儂がクロエの前では素直になってしまう。あのお前に頼んだ道具の話をしている時など、儂は童心に還ってしもうてな。クロエを振り回して、あの子は気を失う羽目になった位だった。

 ……儂を知るお前ならそんなこと想像出来るか?」

 と頬杖をついて皮肉な目付きでジェラルドに問う。

 ジェラルドは今のディルクの話を聞いて口をあんぐりと開けて、首を大きく横に振る。

「ないない!あるわけ無い!

 そんな、この世界が三角になってもあるわけ無い!イタッ!又叩くー!」

 と頭を又抱えるジェラルド。

 「学習能力がないのか、お前はっ!

 何でこんな馬鹿に周りの者は付いてくるのかのう。これこそ世界の不思議じゃわい、腹立たしい。

 くそっ、又話が逸れた。戻すぞ。……何かクロエの時と似とるな。まぁ良い。

 とにかくクロエには相手の殻を破って本性を引きずり出す能力があるようなんじゃ。

 周りを気にして自分を守るために格好をつけたり、捻くれたりしている奴や、どんなに難しい性格の奴の守りも打ち破る。

 因みにあのシェルビー家のライリー、ミラベル、コリン、後ガルシアもコレットもか、皆変わり始めておるわ。儂は言うまでもない。

 ……まるであの教義の中の黒の女神の様ではないか。人を素直にさせ、苦しみや縛りを解き、相手の心を解放させ、幸せに導く。……クロエには確かにその能力があると儂は思う。

 だからこそ儂は恐ろしい。クロエはこのままだとお前の言う通り、あの悪夢の末路を辿ってしまう。あの子の類い稀な能力を次々見せられて、儂には否応なくその予知夢が現実に迫ってきたんじゃ。

 ジェラルドよ。猶予は無い。あの子を守るためなら、儂も動く。あの子をこの世界の犠牲にしてはならぬ!

 何とかしてあの組織の中枢を潰すのじゃ!」

 とディルクはジェラルドに噛み付くように命じた。

 「ディルク先生……。先生がそこまで危機感を持たれるとは……。

 ……早急に私もクロエと話をせねばなりませんな。オーウェンが着き次第、森に向かうとしましょう」

 とジェラルドが頷く。

 ディルクも頷き返し、ソファに深く沈む。

 「……クロエには、平凡だが穏やかな人生を歩ませてやりたい。今度こそ……な」

 と呟き、目を閉じた。



次話は明日か明後日投稿します。

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