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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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生活その1

いつもお読み下さりありがとうございます。


ここからはこの世界の生活を少し書きたいです。


イメージは高原です。プラス黒い森。


想像なので、ある程度笑って許してやってくださいね。

「アブ、アブ、ブブ~。」


クロエはベッドの上でゴロッと寝返りを打つ。

上手くひっくり返り、ググッと首を持ち上げてニタァ。


(ウフフ、アタシは中々に運動神経良いわよ。結構早いんじゃない?発達。大体4カ月位だと思うの、今。

夜の数を数えて、前の世界の考え方の30日で1ヶ月と計算してるんだけど、途中で数えんの忘れちゃったからなぁ。でも、多分アタシが生まれてその位は経った筈。

あぁ、相変わらずアタシったらいい加減な性格!)


クロエはそのままペタッと顔を伏せ、又力を込めてえいやっとばかりに寝返りを打つ。

しかし彼女が寝ている赤ちゃん用の小さいベッドで2回も寝返りしたら、ベッドの囲いにぶつかるのは必定。

案の定背中とお尻がぶつかった。


ガタンッ!


(アウチッ!たぁ~やってしまった。大した勢いじゃ無かったから痛くはないけど。でも、まぁ…やって来るよね。多分)


クロエがベッドの囲いに背中をくっ付けて止まっていると、トタトタと足音がして、寝室のドアがバタンッと開いた。


「クロエ?□□□ダメよ!怪我する□□□□。危ないでしょ?」


ピンクの頭がフワフワ揺れながらクロエのベッドに近付いて来た。

クロエがベッドにぶつかった音を聞き付けて、姉が心配して跳んできたのだ。


(アハ、ごめんなさい。又心配かけちゃった。寝返りできるのが嬉しくて、やらかしました!大丈夫よ?心配しないで)


そのベッドの片方に背中を押し付けた格好のまま、クロエは姉に向かってニパァ~と笑って見せる。


目の覚めるショッキングピンクのウェーブヘアをツインテールに可愛く纏めた姉は妹の嬉しそうな顔を見て、心配していた顔が一気にデレッと崩れた。


「もう!クロエかわいい!□□□□□クロエ、□□□□~!」


そう言いながらクロエに手を伸ばして彼女のほっぺや手を触りまくる。


(いや、お姉ちゃんこそ可愛すぎるでしょ~!あ~ホントに何でこんなに可愛いのかしら、アタシのお姉ちゃん!)


姉とクロエがキャッキャッとじゃれ合っていると、後ろのドアが又バタンッと開いた。


濃いグリーンの髪に真紅の瞳、長兄だ。


「ミラベル?クロエ起きていた□□□□?また□□□□□。代われ、クロエ抱っこする□□□□□」


「お兄ちゃん。アタシがクロエ抱っこする!□□□□□!」


兄が姉、ミラベルに首を横に振ってその申し出を却下する。


「ダメだよ。ミラベルには□□□クロエ□抱っこ□□□無理だ」


兄はそう言うとミラベルを優しく退かせ、ベッドから器用にクロエを抱き上げた。


(そうだよね。お姉ちゃん抱っこって言ってあげたいけど、未だ危ないよね。ごめんね、ミラベルお姉ちゃん。

しかし、ホントにライリーお兄ちゃんはしっかり者だよ。これで7歳くらいでしょ?

アタシが知ってる7歳児はカッちゃんと言いお兄ちゃんと言い、何でこんなに賢いんだ?元25歳のアタシが残念すぎるよ)


兄のライリーに抱かれて、ベッドを後にする。


後ろから不満そうに頬っぺたをプックリ膨らませたミラベルが続く。


すぐとなりの部屋はリビングになっていて、そこに三人は入っていく。


リビングには両親と次兄のコリンが居た。


「母さん、クロエ起きた□□□□□。□□□抱っこ□□□□□」


ライリーが母に近寄り、抱き締めていたクロエを見せる。


母はライリーに屈み込むとニッコリ笑って彼の頭を撫でた。


「ありがとうライリー。ミラベルも。□□□□クロエ□□□?」


笑いながら二人に何かを聞こうとする母。

聞きながらライリーからクロエを受け取る。


「クロエまた□□□□□□□。□□、アタシが□□□□□、笑ったよ!クロエ可愛い!」


ミラベルが母に一生懸命妹の様子を報告し、ついでに姉バカを披露した。

自分が行くといつも嬉しそうに満面笑顔になる妹が可愛くてしょうがないようだ。


それを聞きながら母はクロエを長椅子に寝かせ、テキパキとオムツを替える。


母の横に控えていた兄のライリーは、驚いたことに汚れたオムツを木の桶に入れるとリビングを後にした。


クロエは自身の粗相の後のオムツを汚がらず、淡々と別の洗い場に持っていく兄のライリーをいつも感嘆の思いで見ていた。


(凄いよね、ホントに。この家の子供達って見目だけじゃなく、中身も出来た子達だわ。

アタシは雅の時、それ程このくらいの歳の子供とは接触無かったけど、だけどそれでも解る。アタシの兄姉は出来すぎたよ。

アタシ大丈夫かな?一番出来が悪いかもしれないよ)


スッキリしたところで母がいつも通りおっぱいを飲ませてくれるのだが、この2・3日前から少し違う事をするようになった。


首が座りしっかりしてきた娘に、離乳食らしき物を与えてくれるようになったのだ。


勿論未だ固形物などは無理なので、スプーンらしき器具を使いこの世界の果物の果汁を薄めた水を飲ませてくれるのだ。


最初クロエはこわごわ口許に持ってこられた水を舐めた。


(これ、リンゴと桃を混ぜたみたい!美味しい~!)


おっぱい以外の初めての食事に大感動のクロエは、かぶり付く様にその水を飲んだ。


あまりにも美味しそうに飲む彼女を見て、母はすっかり気を良くしたのか、1日に3度果実水を飲ませてくれるようになった。


相変わらずおっぱいが中心だが、食事の幅が広がり楽しみが増えたのであった。


果実水を飲んだ後再びおっぱいを飲んでいると、いつも通りの騒ぎがおこる。


「イヤ!クロエ飲んだらダメ!メッ!」


長椅子に座ってクロエにおっぱいを飲ませている母の足元にくっつき、彼女のおくるみを引っ張って邪魔する小悪魔がやって来た。


次兄のコリンである。


しかし母とクロエは動じない。


母はコリンの頭を撫でると、クロエに集中する。


クロエは相変わらずしっかり飲み続ける。


自分の妨害工作をモノともしない二人にカチンとくるコリンだが、地団駄を踏んでも泣き叫んでも効果がないのは既に承知していた。


だからこのところ彼は目先を変えた妨害工作をしてくるようになった。


長椅子に登って母に持たれ掛かり、体を揺らすのだ。


すると流石に母も飲ませ続けられなくなって、ため息をつきコリンを叱る。


兄のライリーや姉のミラベルがすっ飛んできた。


コリンをライリーが抱き上げて部屋の離れた位置に彼を連れて行った。


で、またいつものおっぱいタイムに戻るのだ。


クロエは最初こそ兄のコリンに、出来るだけ母を渡そうと頑張ったのだか、あまりにしつこいので今では流すことにしている。


だがやはり泣き声をあげる小さな兄が可哀想なので、早めに飲み終わるようにはしている。


長兄のライリーや姉のミラベルに比べて未だ小さいから無理もないのだが、その二人があまりにも聞き分け良くお手伝いを率先してやってくれる良い子達なので、コリンがとても我が儘に見えてしまうのは仕方無い。


しかし実はクロエにとって、次兄のコリンはちょっとした安心材料でもある。


何と言うか、コリンは真の意味で子供らしくて微笑ましいのだ。


世の母達のある意味理想形に育っているライリーやミラベルに比べて少々残念な彼を見ていると、クロエ自身も無理しなくて大丈夫だよと言われている様な気がするのだ。


コリンにそんな気は全く無いのは分かっているし、寧ろクロエが邪魔だとはっきり態度で見せている。


だがクロエはコリンがとても可愛く思える。


最初はこのワガママ息子と思ったりもしたのだが、我慢している彼を見ていると、ああ偉いよね、お兄ちゃんってツラいね、ごめんねと感じ始めた。


それからコリンを見る目が兄ではなく完全におばさんかお姉ちゃん目線で固定してしまった様なのだ。


ライリーやミラベル達も多分そうだろう。


コリンが泣いたらすっ飛んできて、あれこれ世話を焼く二人。


母を求める弟を軽く叱りはすれど声を荒げることは無く、あの手この手で気を引き宥める。


すると甘えんぼのコリンはもっととねだり始め、暫し母とクロエの存在を忘れてくれるのだ。


素敵な兄弟愛を見てると本当に心がなごむ。


自分もこの兄弟の一人だと思うと有り難いなぁと仙人様に大感謝してしまうのだ。


やがておっぱいを飲み終わったクロエを抱き上げて、母は彼女をおんぶ紐の様な物で優しく自身に結び付ける。


クロエが苦しくないようにそっと優しく。


首が座りしっかりしてきたクロエは母にくっ付けられる事が増えた。


それが終わると子供達に声を掛け、先ずは洗い場に向かう。


クロエは母の背にぶら下がりながら、家の様子をいつも通り観察する。


およそ4カ月以上の月齢に達した彼女は、今では目も良く見えるようになり、色んな物が解るようになった。


家は正にログハウスのような(こしら)えで、家のリビングには大きな薪ストーブがある。


今は気候が良いので朝夜だけ火を入れたら、とても快適だ。


床はフローリング。


何とこの世界も靴を内と外で履き替える文化だったようだ。


母達は今厚手の何かの革で作った木靴の様な室内履きを履いている。


外は未だあまり出た事がないので良く解らないが、木漏れ日のような光が窓から見える。


因みにガラス様の半透明な物質で窓は作られている。


厚みはあるが、日本のような質の良い物では無い。


押し開く観音開きの窓だ。


窓からは大きな木の幹が見えた。


どうやら家は大きな木に囲まれているようだ。


お陰で空気がとても美味しい。


毎日森林浴をしているようなものだ。


母は洗い場に着くとライリーが運んでくれていた汚れたオムツや、後の家族の汚れ物をテキパキ洗っていく。


水道はなく、井戸の様なところから水を汲み上げて洗う。


汲み上げは釣瓶(つるべ)があり、それでやっている。


井戸は折り畳み式の蓋があり、半分だけ折り畳めて後の半分は固定されている。


落ち防止の為とゴミなどが入らないように気を配っているようだ。


洗うのは水と洗剤なのだが、洗剤は固形石鹸みたいな物で、香りは全く無い。


泡立ちも悪いが、汚れはある程度は落ちるので問題はなさそうである。


しかしクロエにはちょっぴり不満のようだ。


(この世界ってこんなに良い空気で、心なしか木の芳香までするのよ。自然がきっと日本より豊か。

だから香りを出す植物もきっと一杯ある筈。何かを石鹸に混ぜたらきっと凄く良い香りが布にも移って、アロマテラピー効果でると思うんだよね。自分で歩けるようになったら探したいなぁ)


あと井戸の水を見たときにも喜んだ。


想像はつくと思うが、水が凄く綺麗なのだ。


実際の話さっきの果汁水でも、最初クロエが気になったのは水だった。


赤ちゃんの自分が飲んで、果たして大丈夫な水だろうかと。


しかし、うっすらと果汁の味がする水には何の臭みも匂いもエグみも無かった。


果汁をより美味しくしているとまで思ったほどだ。


だからついつい飲みすぎてしまうのだ。


生まれたばかりの頃は、前の世界が余りにも清潔すぎたので、この新しい世界を疑うばかりだった。


身の回りが粗末な物で囲まれていたのも、その考えになる一因で有ったかもしれない。


しかし時間が経つに連れて、この世界を見直す事が増えてきた。


まず、埃っぽくないのだ。


これは母が綺麗好きということもあるだろう。


クロエを背に負って、家中を掃いたり(はた)いたり布で水拭き、から拭きは本当にマメにしている。


窓は木枠で網戸の様な物を作っていて、観音開きにした窓にそれを嵌め込む。


すると虫が入ってこない。


ある程度虫が網戸にくっつくと、何かの植物を乾燥させたものを持ってきて網戸の近くて火をつけて炊く。


その煙を網戸に扇いで流すと虫が途端に逃げるか落ちるのだ。


虫が消えたのを見計らい、網戸を外して観音開きの窓を閉める。


家の周りに木がいっぱい生えているのを考えても、本来なら虫が多くて当たり前の筈。


なのに家の中に虫が極端に少ないのは、そういう創意工夫があったからだ。


だからクロエはこの世界がとても住みやすいと思うようになった。


今はこんなに小さいので皆に甘えているばかりだが、早く大きくなって自分も役に立ちたいと強く思う。


働き者の家族をみていると触発されて当然だ。


況してや家の外は見たこともない自然が広がっている。


早く見てみたいものだ。


母はやがて洗濯を終えると、その洗濯物を抱えて家のリビングのすぐ横にある部屋に入る。


さっきの薪ストーブに接続してある、何かの金属で出来たストーブの排気ダクト部分が部屋の中を通っている。


排気ダクトから発する熱のお蔭で、六畳ほどの部屋は暑いと感じるくらいだ。


そこに縄を渡してあり、簡易な乾燥室にしてあった。


この環境だとこの方が清潔に虫も付かずに洗濯物が乾いてくれる。


便利なものがなくても快適に過ごせるよう、凄く考えられてるなぁと毎日感心しきりのクロエ。


母の背に負われ、キョロキョロ見ているだけでとても楽しいし、勉強になる。


だからこそ早く大きくなりたいなと思う。


毎日楽しみが増えるばかりのクロエなのであった。

次話は明日か明後日投稿します。

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