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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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69. 事務連絡

お読み下さりありがとうございます。

 クロエを寝かしつけに女の子部屋に行った女性陣を除いた皆が、話し合いをした翌日。


 朝からガルシアとコリンは畑に農作業に出掛け、ライリーとミラベルはディルクに勉強を見てもらうと言う日常が戻ってきた。

 クロエは未だ体調が戻っていないことに加えて、体がどの程度成長したのかコレットが見極める為、今日も女の子部屋に籠ることになった。


「……でも良かったわ、未だこの程度の成長で止まって。もっと成長していたら、体への反動は命にかかわっていたかも。何だかんだ言っても、そこは体が解っているのね。……一番驚いたのは歯だったけど」

 とコレットがしみじみと溢す。


「ホントにごめんね、母さん。ビックリしたよね。口からあんなに血を吐いて。正直アタシも何の病気になったんだろうって、凄く怖かった。まさか歯が生えるだけであんなスプラッタになるなんて……」

 とクロエも溜め息混じりに応えた。


「すうぷった?何なの、それ。……血を吐くのとスープと何の関係があるの?」

 とコレットが首をかしげる。


(あ、またやった!懲りないなアタシも)

 と内心焦りながら、クロエは

「アタシ、スープ吐いたみたいに血を吐いたって言おうとしたの。スープ慌てて飲んでむせた時、あんな風に吐いたじゃない。覚えてない?」

 と何気ない風を装いつつ、しれっと誤魔化す。


 コレットが笑いながら

「ああ、なるほど。でもクロエの場合はスープは何がなんでも吐かなかったわよ?口押さえてむせながら、必死にスープを口から漏らさないようにしてたもの。結局戻さずだったから、器用な子だわって感心したもの、母さん」

 とクロエの食い意地を指摘する。


 クロエは恥ずかしがるどころか

「あ、そうだった!スープを口から戻すなんて、そんな馬鹿なことアタシがする筈無いもんね!流石アタシ、偉い」

 と深く頷く。


 そんなクロエの様子にコレットが苦笑しながら、彼女の体の計測をしていく。


「貴女は元々成長は早目だけど、今は世で言う平均値で2才半位の体つきかしらね。急成長する前が1才前で1才2・3ヶ月ってとこだったから……ハァ、この程度の成長って言ったのは間違いね。とんでもないわ。あちこち弊害でなきゃ良いけど。……クロエ、ホントに大丈夫?これが2・3日でなんて……。只でさえこの時期は成長が早いのに。貴女の魔力が多いのは解ってるけど、こんな無茶まで可能にするんだから危険ね、ホントに」

 とこの世界の長さfiで作られた測り紐を纏めていくコレット。


「何か未だ自分の体じゃ無い感覚があるもの。痛いとかじゃなく、借り物と言うか……距離感が掴めないって感じ。変な言い方だけどね」

 と自分の手足を見ながら苦笑して言うクロエ。


 コレットも頷いて

「そうかもしれないわね。貴女は賢しいから感覚を言葉で言ってくれるので私達も解るけど、貴女じゃ無かったら私達も対処は大変だったでしょうね。体の違和感や精神面の不安から泣き叫んだり暴れたり……、うん、おませな貴女で助かったかも」

 と話す。


 クロエはその言葉を聞き、又笑う。


 コレットも笑いながら手はクロエの足を触り

「曲げ伸ばしは出来るわよね。足は持ち上げれる?お腹に力が入るかしら?……うん、問題ないわね。じゃあベッド横に足を投げ出して座ってみて。ブラブラ出来る?……そうそう。足先を曲げ伸ばししながらブラブラ……。痺れはない?大丈夫ね。今度は体重をベッドに乗せたままで、足を床に着けてみましょ。足裏から痛みは走らないかしら……」

 とゆっくり運動をさせていった。





 昼食後、女の子部屋にディルクがやって来た。

「ああ、楽な姿勢で構わんからな。

 色々あったせいで、州都のジェラルドと話をした際の事を其方にきちんと伝えていなかったから、その話をしに来た。

 道具とか其方の前の世界の知識の取り扱いについてじゃよ」

 とベッドサイドの椅子に腰掛ける。


 聞いてクロエが驚く。

「えっ!ジェラルド様、アタシが異世界の記憶を持ってることを既にご存じなんですか?!そんな……」


 ディルクが慌てて

「は?!そんなわけ無かろうが。儂ですら未だ聞いて間もないと言うに、あ奴が知るすべがあるか。……其方は早合点しがちじゃな。少しは落ち着きなさい。25才にしては落ち着きが無さすぎるのう、全く」

 とクロエに説明した後、呆れた表情をする。


 クロエも考える素振りをしながら

「あ、確かに。……落ち着きが無い点を突かれると耳が痛いです、先生。前から変わらない点の1つです~。……どうしたら落ち着きが出ますかね?」

 と逆に質問をぶつける。


「……幸いな事に其方は未だ1才にもならぬ身じゃ。常に頭に落ち着きを持つと考えるようにしなさい。さすれば今生の25才迄には身に付くと思うぞ?」

 と軽く息を吐いて答えるディルク。


「……先は長いなぁ。アタシ忘れっぽいし」

 と頭を抱えるクロエ。


「まぁ其方の落ち着きの無さと忘れっぽさは追々治るじゃろ……其方が気を付けさえすればな。それはおいといて本題に入るぞクロエ。何かと話が横にそれるの……」

 とディルクが話を最初に戻す。


「あ、はい。ジェラルド様とどんな話をされたんですか?」

 とクロエが聞く。


「先ず其方が非常に利発で、突拍子もない発想を常に頭に思い描いておると言う話を奴にしたんじゃよ。

 未だあのときは其方の喋りは舌ったらずじゃったが、話を聞くには全く困らんし、聞けば聞くほど驚くべき発想力の持ち主であるとな。

 そして、そんな其方の想像の話の中に、正に革命とも言うべき知恵や発明が随所に見られ、これを実現せぬ手は無いと奴に熱弁を振るってきたわけじゃ。

 流石に最初は奴も信じなくてな。お陰で儂は、奴に一矢報いることが出来たわ!」

 とディルクはクッと笑う。


「へ?一矢報いることが出来た?……どういう意味です?先生」

 と首をかしげるクロエ。


 ディルクは腕を組み、鼻息荒くこう答えた。

「ほれ。儂がシェルビー家の子供達に勉強を教えるよう、奴に依頼された時の話をしたことがあったじゃろ?

 確かライリーと其方に話をした記憶があるんじゃが、覚えとらんか?

 年端もいかぬあの子達の勉強を、成人間近の者を指導していた儂に見させるなんぞ気が早すぎると、奴に断ろうとした話じゃ。

 ……儂が奴にそう言ったら、見た目や年齢で判断するなど愚かだと鼻で笑われた件じゃ!」


「ああ、そう言えばお聞きしましたね、確かに。で、それが何か……」

 とクロエが又首をかしげる。


「あの子が幼いからと、儂の話を信じないとは頭が固いのうと奴に言ってやった!人を見た目や年齢で判断するなど愚かだと儂に言ったのはジェラルド、お前さんじゃなかったかと指摘してやったら、悔しそうに顔を歪めておったわ!

 ああ、アレで気分がスッとしたわい!

 其方のお陰じゃクロエ、礼を言う!」

 とディルクは満足気にニカッと笑った。


 クロエは目を丸くし、その後クスクス笑いながら

「先生はジェラルド様とホントに仲が良いんですね!気が合われて、素敵な関係ですよね、良いなぁ~」

 とディルクを微笑ましげに見る。


 ディルクが頬を引き攣らせながら

「気持ち悪いことを言うでないわ……。アレと気が合う等、考えたこともない」

 とクロエに否定する。


 しかしクロエはにっこり笑い

「アタシの前の世界で、有名な言葉が有るんですよ。“喧嘩するほど仲が良い”ってね。先生とジェラルド様は正にそれですよ!」

 とディルクに教える。


 ディルクは額に手を当て、首を振り振り

「それは同意しかねるのう。まぁ奴と気が合う合わんはどうでも良い。

 話を続けるぞ、良いな?……何でこんなに話が横にそれるのか、全く……」

 とクロエに話を先に進めると話す。


「はぁい!」


「中々信じようとしないジェラルドに先ず其方の鉛筆の話を伝え、次にソロバンの話をした。

 奴の顔を見せたかったぞ!あの怖い顔が、馬鹿のように口をあ~んぐり開けて自失しておったんじゃからな。

 しっかし奴は未だ信じきれない様でな。で、儂は秘策をそこで出したんじゃ!」

 とディルクは自分の膝をパンッと手で打った。


「秘策?」


「フフフ……、そんな事もあろうかと、儂は其方が書いた黒板を消さずに持っていっておったんじゃ!

 あの頭が固~いジェラルドがどれ程驚くか見たくてな!

 見せたらどうなったと思う?!」

 と目をキラキラさせながら、ディルクは自分の顔をグイッとクロエに近付けた。


 クロエは少し後退りながら

「へ?あ、アタシの書いた黒板を持ってったんですか?!あの汚い絵を?!うわぁ何て事をなさるんですかぁ……トホホ」

 と肩を落として俯く。


「何を言うか、アレは素晴らしい図解であったではないか!其方は卑屈すぎる、もっと自信を持て!

 で、あの黒板を見せたらあ奴……ププッ!あ奴な……クックック!ブハハハハッ!」

 と膝を叩きながら笑い出すディルク。


「先生?」

 とディルクを不審気に見る。


「あ奴、黒板持ったまま椅子から転げ落ちよったんじゃ!余程度肝を抜かれたらしい。いやぁ、傑作じゃった!!」

 とこれ以上無い笑顔を見せるディルク。


 クロエはジェラルドの姿を思い浮かべながら

「あのジェラルド様が転けた……うわぁ申し訳無いなぁ。……ジェラルド様の不幸を笑うなんて、先生ったらお人が悪いですよ、もう!」

 と口を尖らせる。


 ディルクはフンッと鼻を鳴らし

「構うもんかい、頭の固~いあ奴が悪い!」

 と言い切る。


 クロエは小さな溜め息を吐くと

「仲良すぎんのも、良し悪しですね……」

 とディルクを呆れ顔でみる。


 ディルクは素知らぬ振りをし

「あの黒板の字や線の引き方は、儂が書いたのではないとあ奴も直ぐに判ってな。ガルシア、コレット、ライリーも違うと奴ははブツブツ呟いて、ミラベルじゃないのかと一瞬儂に言うてきたが、本気で言っておるのかと問い返したら、黙りおった。

 それで漸く奴は、儂の話を信じたんじゃよ」

 と感慨深げに頷く。


「ハハ、何か色々とジェラルド様に謝らなきゃ駄目だな、アタシ。

 だってそれが極当たり前の反応ですもん、誰も信じないですよ、普通」

 と頬を掻きつつ、苦笑するクロエ。


「仮にも領主で在った者が、そのような考えの浅さでどうするんじゃ。何事も常に真実を見極めねば、領主など務まる訳がないではないか。あ奴も息子に家督を譲って正解であったわい。ボケたな、奴も」

 と憤然と話す。


「酷~い!ディルク先生、ジェラルド様に対してだけは、ホントにお茶目さんになっちゃうんだなぁ、もう!」

 とクロエは笑いを噛み殺してディルクを見た。


「お茶目?何じゃい、それは……。

 まぁエエわ。で後、九九を教えたんじゃ。もう奴も疑わんかった。

 それを踏まえた上で、奴とこの扱いをどうするか決めたんじゃ。

 基本的に、道具はジェラルドが発案した事にする。あと九九等勉学上の知識に付いては、儂が発案した事とする。遊びについては、自由に其方は子供達に伝えて良し。家族間だけで遊ぶのじゃしな。

 道具や知識の流布後、特に道具類は金を産む。それはジェラルドが管理することに決めた。

 其方の将来の為に蓄財しておくから、安心しておきなさい。

 以上じゃ、質問はあるか?」

 と話を終えた。





次話は明日か明後日投稿します。

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