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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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63. 回復したクロエ

お読みくださりありがとうございます。


今度こそ本当に回復します。

兄姉達がクロエを囲みます。


ほのぼの回です。

 クロエが久々に気持ち良く目覚めたのは、看病を始めてから4日目の朝だった。


「ん~!くぅ~!……良っく寝たーーー!痛みがないってサイコーー!……あっディルク先生、おはようございます!……あれ?アタシ滑舌めっちゃ良くなってる~!」


 大きく伸びをしたクロエは、ベッドの傍で彼女を見つめているディルクに気付いて元気良く挨拶した後、自身の口調が舌ったらずながらも綺麗に発音が出来る様になっているのに驚いて叫んだ。


「……ああ、おはようクロエ。……どうじゃ体は?痛さや違和感は無いかの?何か辛いところが有れば言うてくれぬか?」

 と目の下に大きな隈を作ったディルクが、クロエに尋ねる。


「……痛みは全く感じないですが、何だか未だ手足がギシギシ軋む感じがします。動きが悪いと言うか、油を差していなくて立て付けの悪い扉みたいな?」

 と腕や足をソロソロと動かしながら、クロエは感想をディルクに漏らす。


「……ふむ。体の急成長期はほぼ終わったようじゃのう。成長がどのくらいのものじゃったか、後程コレットに体の測定をして貰いなさい。

 それから暫くは今までの感覚で動くと転んだりする危険が有るゆえ、重々気を付けて動くように。

 ……すまんが儂は今から少々休ませて貰う。儂が起きてから直ぐに其方と話をしたい。良いかの?」

 とクロエに話しながら、ベッドサイドの小さなテーブルに散らばっていた紙を集め、ディルクが立ち上がる。


「はい、わかりました。……先生、凄い隈……、アタシの看病で全く休めていないんですね?すみません……ずっとご迷惑を掛けっぱなしで……そんなにお疲れになるまで……何てお詫びを……」

 と了解の返事をしながら、クロエはディルクの疲れた表情を見て詫びる。


 するとディルクは苦笑を浮かべ

「……いや、これは看病と言うより興味が先走った結果じゃよ。ちょっと想定外の事が起きたもんでな。ついつい儂の悪い癖が出てしもうたわ。

 ……さて、其方の家族に少し話をしてから休むとしよう。其方はここで待っているように。家族もとても心配しておる筈じゃ。

 ……じゃから彼等が少々腫れ物を触るような振る舞いを其方にしても、心配する余りの事で決して悪気はないので気にせず流すことじゃ。直ぐに元の態度に戻る。……良いの?」

 とディルクは妙な気遣いを見せる。


「……?はい、わかりました。あの!本当にありがとうございました。先生」

 と首をかしげながらも、素直に聞くクロエ。


 ディルクは微かに笑うと、クロエの頭を撫で

「其方が元気になって良かった。後は時間を掛ければ完全に復調する筈じゃ。……良く頑張った。あの苦痛は大人でも耐えられるものでは無かったろう。其方は本当に強い子じゃな……大したものだ。……ではな」

 と言うと、ゆっくりと部屋を出ていった。


 クロエはその後ろ姿を見送ると、寝ながら心持ち頭を下げる。


(本当に……本当にありがとうございます。アタシは周りの人に恵まれ過ぎてる……。迷惑しか掛けていないのに、皆優し過ぎるよ。感謝しなきゃ)


 そう思いながら、自分の体を少しずつ動かしてどれだけ動けるか確認し始める。


「歯が生えたせいかな。こんなに劇的に滑舌良くなるなんて……急成長って凄いね。手も何となくポチャポチャッとした赤ちゃんの愛らしさが減って、幼児の手になった感じがする。コリンお兄ちゃんより少し小さいかな?指が長いね……。さて、起き上がれるかな……少しずつ持ち上げて……クッ、力が無いのはあんまり変わらないか……あ、でも何かギシギシ軋むけど、あの寝たきり直後よりは力が入るぞ……ん~頑張れアタシ……!」

 とぶつぶつ独り言を呟きながら、恐る恐る上半身を起こしてみる。


 何とか半身を起こすことが出来、自分の体を見てみる。

 それほど変化したようには思えないが、何となく全てのパーツが細く長くなっている気がする。


「まぁそんなに2・3日の成長では変わるわけないわよね。赤ちゃんから幼児に変わったくらいかな?……アタシ子供と接する機会ってあんまり無かったから、今何歳くらいの体なのか解る訳無いしね……母さんに聞いてみよっと!……さて、座れるかしら……ふんっ!よい~~しょ~~っとぉっ!……おお!結構……」

 と完全に上半身が起き上がりかけたその時。


「あーーっ!……先生の言ってた通りだ、クロエッ、無茶しちゃダメじゃないか!」

 と扉が開いたと思ったら、ライリーが叫んでベッドの横まで走り寄ってくる。


「あ、ライリーお兄ちゃんおはよう!大丈夫だよ~、座るくらい……」

 とクロエが明るく兄に挨拶しながら、座る姿勢までもう一踏ん張りと体に力を入れる。


「このバカッ!今無理して又体をおかしくしたらどうするんだ!言うことを聞け!」

 とライリーが背中に手を回し、クロエの体を支える。


「ひゃいっ!ご、ごめんなさい、お兄ちゃん……。あ、結構動けるって感じたから、つい……」

 と肩を竦めて、ライリーに詫びを入れるクロエ。


 ライリーが小さく息を吐くと

「それはお前の希望的見解だ。あの状態から未だ1日すら経っていなくて、そんなに体力が戻っている筈が無いだろう?今無理したら、只でさえ少ない体力がガタ減りして、又寝たきりに戻るぞ。それでも良いのか?」

 と冷たい目線でクロエを睨む。


「う……はい。仰る通りです~。気を付けます……。あの、アタシ未だ寝てないと駄目ですか……?せめて座りたいんですけど……寝るの飽きちゃって」

 とおずおずと遠慮がちに伺いを立てるクロエ。


 兄の言葉は怖いが、自分を心配するがゆえの口調だと解るので、有り難いとは思う。

 だが、心配から発生する雷がいつ落ちるかクロエは気が気でない。


 ライリーはそんなクロエをジィーッと見つめて、軽く首をすくめると彼女の周りにクッションを置き始め、ベッドの縁まで体を持ち上げて移動させる。

 ベッドの縁にもたれられるように、クッションを上手く配置してクロエの体が倒れないか、微妙に配置のバランスを調整する。


 やがて軽く頷くと

「……これなら良いか?今日1日歩くのは禁止だ。ベルをここに置いておくから、何か頼みたいことが有れば、ベルを鳴らして家族を呼ぶように。絶対に一人で動かないこと!良いね?」

 と又怖い顔でライリーが指示をする。


「はい……。あの、凄く凄く申し訳無いんですけど、早速お願いが……あの……」

 と又クロエはライリーにおずおずと話す。


「何?ハッキリ言いなさい、クロエ」

 とライリーは怖い顔を和らげることなく、クロエに聞く。


「う……お兄ちゃんが怖い……も、もう良いです……大人しくしてます……」

 とクロエが小さく縮こまる。


 するとライリーが暫く黙ってクロエを見つめたあと

「……ごめん、怒りすぎたね。昨日から会えなくて心配でしょうがなかったから、クロエが無理をしているのを見て、ついカッとなっちゃって……悪かった。で、何だい、お願いしたいことって?」

 と口調を和らげて、苦笑しながらクロエに聞く。


 クロエは漸く笑ってくれた兄に、ホッとした顔を見せると

「うん……心配してくれてありがとう、お兄ちゃん……。あのね、あの……お腹空いたの……痛みが襲ってくる前に食べてから、何も食べてない……から」

 と小さな声で空腹を訴える。


 兄はそれを聞いて目を丸くして

「そうだった!ああ、ごめんクロエ!それは僕が悪かった!待ってて、直ぐに母さんに言って食事を準備してもらうから!」

 と謝るが早いか、部屋を飛び出して行った。


 クロエは兄の姿を目で追いながら、小さく溜め息を吐き

「あんなに怒るほど、心配させてしまってたんだよね……。あ、そう言えば昨日から会えなくて……てお兄ちゃん言ってたな。……アタシ、昨日ずっと寝てたと思うんだけど、又体が何か変な容態になってたのかな……。口の中は血の味はもうしないから、他の部分……?」

 と考えながら手足を見るが、特段痛みも病変があった形跡も見当たらない。


 首を捻りながら体を見回していると

「ク、クロエ……入っても良いかな?」

 と扉から、ミラベルとコリンが顔を覗かせる。


「あ、ミラベルお姉ちゃん、コリンお兄ちゃん!おはよう!何でそんなこと聞くの~?入って良いに決まってるじゃない!」

 と満面の笑みで姉達を歓迎するクロエ。


 2人はゆっくりと中に入るとクロエの座るベッドに近付く。


「あのさ、あの……アタシ達の話す言葉は解るんだよね?」

 とミラベルが恐る恐る聞いてくる。


「……?うん……解るけど、何で?」

 とクロエは首をかしげながら頷く。


「……そう!良かったぁ~。あ、痛いところは無いの?体は辛くない?」

 と少しずつ声をいつものトーンに戻しながら、矢継ぎ早にミラベルが聞く。


「大丈夫だよ、皆で看病してくれたから痛みはもう消えたみたい!ただ力が未だ余り入らないから、今日は立っちゃいけないって。それよりお腹が空いてお腹が空いて……。どしたの?コリンお兄ちゃん変な顔して?」

 とミラベルの傍らに立って、戸惑った表情で居る兄のコリンに声を掛ける。


「何かクロエ、声はそのままなのに凄くお姉さんみたいな感じがしたから……何でだろう?クロエ……だよね?」

 とコリンが戸惑った表情のまま、クロエに聞く。


(案外コリンお兄ちゃんって勘が鋭いからなぁ。喋り方と滑舌良くなったことが原因だろうけど……ま、ありのままに言うしかないよね)


「多分歯が生えて、発音が綺麗に出来るからだよ。女の子の方がお喋り得意だし?コリンお兄ちゃん、ミラベルお姉ちゃんに口喧嘩勝てないでしょ!だから、急にアタシも言葉だけはしっかりしたように聞こえるんだって!」

 と茶化しながら、コリンに理由らしきものを述べるクロエ。


 コリンが首をかしげながら

「?確かに姉ちゃんに口喧嘩勝てないけど、それは関係ないような……。クロエが綺麗に発音が出来るせいか。うん、何だそれでか~。でも僕只でさえお前に負けてるのに、さらに負ける気がする……」

 と落ち込む。


 クロエは慌てて

「何言ってんの、お兄ちゃん!……言いたかないけどアタシオムツだよ?おまけに満足に歩けないし。畑仕事だって出来ないし、な~んにも出来ない赤ちゃんだよ?……あれ?……言ってて何かアタシが落ち込んできた……凄い役立たずじゃないアタシ……な、何か泣けてきた……」

 とコリンに負けずに落ち込む。


 クロエの様子にコリンが

「へ?な、何でお前が落ち込むんだよっ!ダメだダメだ、又体が悪くなったらどうするんだ!……兄ちゃんが悪かった、変なこと言った、ごめん!だから元気出せって!」

 とあたふたしながら、クロエに謝る


 するとコリンの頭を軽く一発パーン!と叩いたミラベルが

「アンタが悪い!それにクロエも赤ちゃんなんだから、オムツとかは当たり前でしょ!2人共、変な理由で落ち込まない!全く!」

 と2人の弟妹に叱る。


「「 はーーい……」」

 と2人も素直に従う。


 3人はお互いに顔を見合わせると、誰からともなく笑いだした。


「何やってんだ?ああ、ミラベルとコリン、そこを退いてくれ。クロエの食事だ。今から食べさせるから、お前達は……」

 とライリーが朝食のトレーを片手に部屋に入ってきた。


 ミラベルとコリンはライリーの元に走り

「「 私(僕)たちが食べさせるから、貸して!お兄ちゃん!」」

 とライリーからトレーを貰おうとする。


「うおっ?!わ、わかった、わかったから!せめてテーブルに置かせてくれ。後は任せるから!」

 とまとわりつく弟妹を捌きながら、ライリーはベッドサイドのテーブルにトレーを置く。


「じゃあゆっくり食べさせてやってくれ。食べ終わったらトレーを洗い場にな。僕は父さんと木工小屋で作業があるから。……コリン、お前も来るか?」

 とライリーがコリンに尋ねる。


 コリンが驚いた表情で

「え?!だって……僕は入っちゃダメなんでしょ?確か兄ちゃん……」

 というと、ライリーが笑って

「ああ、言った。でもコリンは半月前と今とじゃ全然違うだろ?……オムツもとれたし、お手伝いも一生懸命だし、クロエにも優しいし。だからあの決め事も無しだ。父さんには僕から言っとく。クロエの食事が終わったらお出で」

 とコリンを撫でる。


 ミラベルが笑って

「じゃあクロエはアタシに任せて!コリン、木工小屋初めてでしょ?ライリーお兄ちゃんと一緒に行きたいんじゃない?行ってらっしゃいよ」

 とコリンに提案する。


「え、でも僕クロエのご飯のお手伝いするって約束したのに破ったら……」

 と困惑するコリンにクロエも

「コリンお兄ちゃん凄い!大丈夫だよ、アタシもミラベルお姉ちゃんが言う通り、行った方が良いと思うよ!後からお話し聞かせて?コリンお兄ちゃん、何でも出来るようになっていくね!」

 と応援する。


 コリンがクロエに嬉しそうに笑い

「クロエがそう言ってくれるなら……、うん、わかったよ!ライリー兄ちゃん、僕も行って良い?クロエにお話ししてあげなきゃ!」

 とライリーに頼む。


 ライリーは頷くとコリンの手を引いて、部屋を出ていった。


 ミラベルが扉を見つめながら

「クロエのお陰だよ、全部……。コリンが良い子になったのも、お兄ちゃんが無理しなくなったのも……。ありがとね、ホントに。……アタシじゃ無理だったから」

 とクロエに呟く。


「何言ってんの?お姉ちゃんが居なきゃウチは回りません!アタシもお姉ちゃんが居なきゃ、ご飯すら食べられません!……変なこと言っちゃ駄目だよ、お姉ちゃん!」

 とクロエがミラベルをたしなめる。


 ミラベルはクロエを見るとクッと笑い

「……そうだね。さぁ!ご飯食べよっか!はいクロエ、あ~ん!」

 とスープを口元に持っていく。


「やったぁ!はーい、いただきまーす!」

 とクロエは喜んで口を大きく開けたのだった。

次話は明日か明後日投稿します。

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