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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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決意

お読みくださりありがとうございます。


生まれたての時期のお話はこの回までです。


次は少しだけですが、時間が進みます。


兄と泣き声を競ったクロエ。


あの後泣き疲れて眠ってしまったらしい。


気が付いたらベッドの上で大の字になっていた。


(ふわぁ~良く寝た。…さっきのはちょっと大人気なかったよ。両親も困ってたし。未だあんなに小さいんだもん、可哀想な事しちゃったな。

うん、もう少しおおらかな心で兄を見なきゃ。反省反省)


 一人そう思い返しながら反省をする。


 周りをきょときょと見回してみたが、どうやら誰も居ない様だ。


 彼女は一つ息をつくと、ウーンと大きく伸びをした。


 手足、頭を順番に動かして運動らしき事をする。


 (無理は禁物だけど、体は適時動かしていかなきゃね。

この体じゃ今の所やれる事はそれ以外無いし、成長を促す意味でも重要よ。

健康な生活、健康な体作りってね!頑張れ、アタシ)


 そして体を動かしながら、彼女は考える。


 (さてお腹も減ってないし、眠気もないからちょうどいい。今までのことを軽く整理してみますか。

まず、アタシは女の子で、名前はクロエで間違いはなさそう。

家族で確認出来たのは、両親と兄・姉・兄の5人。名前はわからず。

父は金髪碧眼で見目麗しいお顔立ち、筋骨逞しい男性。どうやら子供好きで家族を大事にしている。

母は赤茶のウェーブが掛かった髪で明るいグリーンの瞳で美人と云うより可愛い顔立ち。笑うとえくぼ。少しぽっちゃりさんでテキパキ動くところから見てかなりのしっかり者。

夫婦仲はかなり良いね。ま、子供がこんなに居るんだから、仲悪いとは思えないけど)


 小さな手をパタンパタン羽ばたくように動かす。


 (兄弟は一番上が兄だな。えーと確か濃いグリーンの髪で切れ長の真紅の瞳。すごく将来が楽しみなハンサム君。

賢そうだった。見目は違うけど少しカッちゃん思い出しちゃった。てことは、年齢が近いかも。6・7歳ってとこかな。

で、次が姉。忘れられないショッキングピンクのウェーブヘア。瞳は猫を思わせる金色。ビスクドールを思わせる美人さん。

でもアタシを見ようとピョンピョン跳ねてたから、案外見た目に反してお転婆さんかな。瞳キラキラさせてたし、綾姉ちゃんタイプで世話好きかもね。4・5歳ってとこか。)


 手のひらをグッパグッパして動かす。


 (で次兄となるのが、あのファニーフェイス君。2歳には未だなってないかな。金髪は父から、明るいグリーンの瞳は母から受け継いだある意味一番両親の子供らしい子。

あれはかなりの頑固者だよ。中々泣き止まなかったもんね。そばかすチラホラな可愛いやんちゃさんって感じ。聡っぽい)


 考えてハタと気づいた。


 (アタシの基準って前世の雅だから、ついつい前の家族でタイプ分けしちゃうな。でも気をつけなくちゃ、違う世界なんだから常識も違って当たり前。余計な揉め事の種になり兼ねない。

アタシって間が悪いし、調子に乗りやすいからね。今度は油断しない。せっかく生まれ変われたんだもの。仙人様の思いを無駄にしちゃいけない。やりたい事を全部やるんだ)


 グッパグッパしていた手のひらを思わずグッと握りしめる彼女。


 (で、まず言葉を覚えることは必須なんだけど、それ以外に一番重要な事がある。…この世界っていったいどこまで文化が進んでいるんだろう?

多分現代日本の様な便利な世界で無いことは確か。オムツと服でそれは分かる。素材はこの感触からオーガニックで持て囃されていた自然素材って感じ。

で縫製は…うん、手製だ。触ると縫い目でとてもわかる。布も結構きめが粗いしこれは手織りかな。

となると、日本を基準に考えると相当に遅れているよね。寧ろしっくりくるのが中世ヨーロッパかな。

衣装も物語の挿絵で見るようなデザインに近かったわ。ボタンは使われているけど、今まで見た限りジッパーを使った服を着ている人はいなかった。ホックも然り。合わせ目は結んでいたりして。実用本位って感じ。

アタシは今肌着とオムツ、それからロンパースに近いデザインの服を着てるけど、大分くたびれている。お古よね、きっと。

でもお蔭で肌触りが良くなって助かる。この素材だと新しければ、きっと生まれたての赤ちゃんのアタシの肌は負けてしまって赤く荒れてたと思う。

意図してそういう古い服をリメイクしたかもしれないな。それ位自然素材だよ)


自分の着ている服や、寝ているベッドのシーツの布を撫でたり摘まんだりして確認をする。


 (清潔は清潔ね。洗いざらしって手触りだけど。匂いはちょっとすえたような匂い。使ってる生活臭がする。

アタシが知ってる布で近いものは麻と綿かな。化学素材のテラテラ感は全く感じられない。一言でいうと硬いのよ、ゴワゴワする。

うん、でも何か寝ている布団には間に緩衝を受け持つ何か…綿のような物が使われているわ。寝返りがまだ打てないからそれがどれ程の物かは判り辛いんだけど。使い古した布を入れていることも考えられる。

そうすると動物素材の毛とかをこんな緩衝材で使えるような余裕は無いって事になるのよね。藁みたいなものよりは余裕あるけど。

ふむ。布でアタシが判るのはこのくらいかな)


次に自身が休んでいるベッドの周りをゆっくりと観察する。


(ベッドは木製。うん、布や素材を見る限りアタシの元居た世界の環境に近いみたい。

さすが仙人様、悪いようにしてない。環境的には違和感無くやっていけそう。文化や常識の違いは追々学べるはず。そう云う意味では赤ちゃんからやっていけるのは良いよね。普通に学べる。

ただ、アタシは記憶があるから戸惑うことも多いとは思うけどさ。でも、でも!)


クロエはニパァ~と笑う。


(全く新しい世界をこれから生きていくんだよ!色んな“初めて”を体験するんだ。こんなワクワクすることなんて、そうそう無い!

前の世界では色んな情報網が発達していてイヤでも耳にする事が多くて、動かなくても何か世の中の事をある程度知ったつもりになってた。

でも今はそれがない。全く手探り。凄い冒険だよ。怖いけど楽しみの方が勝ってる!)


足をばたつかせて喜ぶクロエ。


(アタシには特別な知識も特殊な技能も全く無い。仕事だって事務職。それも総務だったから、まとめたり連絡したり保管したりが常で、何かを作り出すような創造力もない。

料理は少し出来るけど趣味程度でプロって訳じゃ無いし、楽器だって何とかピアノが少々弾ける程度。

腕っぷしは弱いし、頭が賢いわけでない。…うん、本当に平凡な25歳の女でしかなかった。

なのに、こんな冒険をすることになるなんて。ゲームじゃない、リアルでよ?ドキドキする!)


目をつぶり手を胸に当てようとするが手が短くて結構辛いので止めた。


(どんなことが待ち受けているんだろう。どんなことがアタシに出来るかな?

別に特別な事でなくても、何か自分がこの世界でやりたいことを見つけるんだ。

だからしっかり観察しよう。体験できるものはすべて体験しよう。

この世界で許されるなら、隅から隅まで旅をしてみたいくらいだよ。前だって日本から出た事なんか無かったけど、今度は好奇心を押さえること無くやってみよう。

そうだよ、アタシの人生はこれからなんだもん!)


目を開け再び笑う。


(早く歩いてみたい。早く皆とお話してみたい。早く食べ物を食べてみたい、これは切実に!そして早く外を見てみたい。目が早くもっとはっきり見えるようになれば、世界は広がる。そして早く自分を見てみたいなぁ。

ああ、やりたい事がいっぱい、知りたい事味わいたい事もいっぱいだよ。アタシ、ポジティブ!)


両手をあげて声をあげる。


(よーし、頑張るぞ!何でもやれそうな気がする。油断はしないけど、遠慮もしない。

この25歳のふてぶてしさ?を武器にこの世界を堪能するぞー!エイエイオー!)


「アウアウアー!ア、アウゥ~。」


自分の決意表明に勢いをつける為、力を込めて掛け声をあげたら、またもやお漏らししてしまったクロエ。


少々情けない思いを持ちつつも、オムツ替えをしてもらうため泣き声を上げて母を呼ぶのであった。


(はぁ、先ずは早く自分で用を足せるようになりたいなぁ)


やるせない表情でため息を吐き、又泣き声をあげた。

次話は明日か明後日投稿します。

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