54. クロエの混乱
お読みくださりありがとうございます。
ひょんな事から魔力の話が始まりました。
ファンタジーが出ます。
主人公、大混乱です。
夕食を食べながら一頻り州都のお土産話を皆で楽しく聞き出した後、夜も更けてきたので子供達は寝室に引き上げることになった。
既に風呂を済ませていた下3人は寝室へと行く予定だったが、コリンがまだ尻が少々痛むと言うのでもう一晩両親と寝て、夜の用足しに備えることにした。
ライリーも流石に疲れがきたのか、風呂に入るともう半分寝ているような状態だったので、父に苦笑されながら寝室に付き添われて就寝した。
大人3人は又リビングに集い、子供達が同席していた時には話せなかった州都のジェラルド達との話し合いについての報告等を夜遅くまで行っていた。
中でもある1つの報告に関しては、コレットが気合いを入れなければと息巻き、男性2人が苦笑する一幕もあった。
又ガルシアとコレットはディルクの話すクロエについて知らない事が多く、自分達の目が如何に行き届いていなかったかと言うことを思い知らされた気がして正直気落ちしたが、ディルクに他にも子供達が居れば当たり前の事だから気にするなと励まされたりもした。
そんなこんなで結局日付が変わる位まで話し込んでしまい、翌朝は皆普段より遅く起床したのだった。
翌朝、ガルシアは森を歩きたいと言うライリーと修行(?)中のコリンを連れて畑に行った。
ディルクは州都から持ち帰った本などを朝から整理するとのことで、朝食は小屋でとった様だ。
コレットはミラベルとクロエを自身の裁縫道具や布類を保管している家事室に連れて行き、女の子部屋で使う布を選ばせていた。
「う~ん悩むなぁ……。模様入りにしたいけど、コレッ!て決め手がないのよね~。色も悩むし。色はどうしようか、ねぇクロエ?クロエはどんな色が良い?」
とミラベルがクロエの希望を聞く。
クロエは目の前に広げられた布をしばらく見ていたが、やがてミラベルを見てこう言った。
「可愛いお部屋にしゅりゅんらきゃりゃ、暖色系らにぇ。アチャシは衣装行李や本棚ぎゃ白らから~お姉ちゃんきょにょ薄紅色の格子柄にょ布れカーテンちょきゃろう?」
とクロエが指差した布はローズカラーのチェックの布だった。
「うん、可愛い。でもなんか後ひとつ物足りないのよね~」
と腕組みをするミラベルに
「じゃあにぇ、きょにょ模様にょ無い黄色ちょ紫色を少し使うちょ、ろう?例えばアチャシぎゃ薄紅色ちょ黄色、お姉ちゃんぎゃ薄紅色ちょ紫色、お互い枕ちょきゃ小しゃい物に黄色や紫色を使うちょ色ぎゃ喧嘩しにゃいし、お揃いっぴょきゅっちぇ素敵れしょ?」
とローズチェックに無地の黄色と紫の単色の布を重ねる。
ミラベルが目を輝かせて
「あ~!素敵!うん、クロエコレが良いよ!ねえ母さん、コレでカーテンとかベッドカバー作って、枕とかはコレでお願い出来る?!……クロエ凄いなぁ、よくこんな色の組み合わせ気付いたね、アタシ分かんなかった!」
とクロエを褒める。
クロエはニパァ~と笑うと
「お姉ちゃんに似合う色を考えちゃりゃにゃんちょにゃきゅ分きゃっちゃ!お姉ちゃんにょお陰らよ!」
とミラベルの髪に触る。
「アタシの髪?これがどうしたの?」
とミラベルは、クロエがニコニコしながら自分のショッキングピンクの髪を触っているのを止めないで聞く。
「綺麗にゃ髪色……お姉ちゃんぎゃ、あにょ部屋れ立っちぇ居りゅにょを思い浮きゃべちゃんらよ。お姉ちゃんに似合う部屋にしちゃきゃっちゃにょ」
とピンクの髪を撫でて、クロエはミラベルの顔を笑って見上げる。
ミラベルはクロエの顔を驚いたように見て、急に俯くとフルフル震え出した。
そして又急に顔をあげるとガバッとクロエにしがみつき、彼女の黒髪の頭に自身の頬をスリスリ擦り付けながら
「いやっ!もうっ!何でこんなに可愛いのーー!ウチの妹出来すぎ!どうしよう、アタシクロエを食べちゃうかもしれない~!ああ、もうっ!思いっきり抱き締めてやるぅ~!」
と妙な宣言(?)を入れながら、クロエをギュウギュウと益々抱き締める。
クロエは抱き締められながら
「えへへ~!お姉ちゃん大好き~!」
とミラベルの腕をポンポン優しく叩く。
コレットがクスクス笑いながら
「はいはい、わかりました!貴女達がと~っても仲良しなのは解ったから。ミラベルはクロエを潰しちゃうつもりなのかしら?少し加減してあげなさい、貴女は鍛練で力が強くなってるからね」
と姉を優しく諭す。
ミラベルは母の言葉にハッとし
「マズい!そうだわ、アタシったら力が強くなってたんだわ。クロエごめん!大丈夫?どこか痛くない?!」
と慌ててクロエを離し、彼女の体をあちこち触って確認をする。
「大丈夫らよ~!えへへ」
とクロエがニパァ~と安心させる様に笑う。
ミラベルはホッとした顔になり、コレットに意見を求める。
「母さん、アタシはクロエの考えた布の組み合わせが気に入ったんだけど、母さんから見てどうかしら?母さんの感想も聞いてみたいわ」
とミラベルがクロエを膝に抱き上げながら聞く。
姉妹がお人形のようにちょこんと座りながら母の答えを待つ。
母はその可愛い姿に目を細めながら
「私も実はこの薄紅色の格子柄を貴女達のお部屋に使ってあげたかったの。だから賛成よ。でも驚いたわ。こういう色の組み合わせも出来るのね。確かに少しだけ入れる位なら寧ろ映えるし。良いと思うわ。凄いわね、クロエは」
と母は末娘の小さな頭を撫でる。
クロエはくすぐったそうに笑う。
「さあ、布が決まったらお部屋に行って寸法を測らないとね。クロエ歩けるかしら?ミラベルはこの黄色と紫の布を持ってくれる?アタシはこの薄紅色の布とコレとコレを持たないと」
とコレットが2人に指示を出し、クロエを先に歩かせて次にミラベル、自分は一番最後に家事室を出る。
ヨチヨチとおしりを振りながらクロエが先頭を歩くと、後ろの2人がその姿を見て優しい笑みを浮かべる。
ガルシアがクロエの為に着けてくれたドアノブのコードをクロエが引っ張り、女の子部屋の扉を開けて中に入る。
薄暗い部屋の中に3人が入ると、壁際のランプに母が近寄り、ランプに手を差し伸べる。
母が両手を添えると次第にランプが明るく光り出した。
(……いつも思うんだけど、アレってどういう造りになってるのかしら?電気なのかな~?でも、電化製品無いしねぇ。発電設備も無さそうだし。火じゃ無いわよね。だって揺らめいたりしないもの。油だって差してるとこ見たこと無いしな。……う~ん、解んないなぁ……)
とクロエは母の手をジーと見つめている。
「どしたの、クロエ?母さんが何か気になるの?」
とミラベルがベッドの上に布を置きながら、突っ立ったまんま動かないで母を見つめる妹に声を掛けた。
「うん……あにょにぇ、あにょランピュっちぇ何にょ力れ光りゅんらろっちぇ思っちぇ……」
とランプを指差し、クロエが疑問を口にする。
ミラベルが首をかしげて
「え、あの光?何言ってるのクロエ。アレは光の魔晶石じゃない。母さんが魔力を流して発動させてるだけよ。何が気になるの?いつもしてることじゃないの」
とアッケラカンと爆弾発言。
クロエがその言葉でピキーーン!と固まる。
(な、何て?!今お姉ちゃん何つった?!)
クロエがものの見事に硬直したので、ミラベルが慌ててクロエに近寄る。
「クロエ?どうしたのっ?!気分でも悪いの?!」
とクロエの前に屈み込んで、ミラベルが彼女を抱き上げ、顔を覗きこむ。
「お姉ちゃん……マショウシェキっちぇ何?アチャシ知らにゃい……」
とクロエが思考を止めた状態で姉に聞く。
「え、魔晶石?だから魔力を染み込ませたと言うか、魔力を充力させる石よ。アレは光の属性がある石だから、光の魔力を充力させてあそこに置いてあるの。え、え?クロエは知らないの?!……そっか、そうだよっ!クロエは未だ1才にもなってなかったんだ!わ、ごめん!知らなくて当たり前だよね!しっかりしてるし賢いから、てっきり知ってると思ってたーー!」
ミラベルは今更な事実に思い当たり、クロエの年齢に改めて驚く。
「お姉ちゃん、魔力っちぇ何?光にょ属性っちぇ……お姉ちゃん魔法使えりゅにょ?母しゃんは魔女にゃにょ?お姉ちゃんは魔女っ子ミヤベユにゃにょ?」
とクロエがフルフル震えながらミラベルにしがみついて、小さな声で質問をぶつける。
ミラベルはクロエが混乱しているのを見てとり、すぐさま
「母さん!クロエが混乱して大変だよっ!クロエ、魔力の事なんにも知らなかったんだよっ!教えてなかったもん、どうしたら良い?」
と母のもとへクロエを連れていく。
コレットは最初訳がわからないと言う表情をしていたが、やがてハッと口を押さえ
「ああっ!そう言えばそうだわっ!この子には未だ1才にもなってないから教えてる筈無いわよっ!クロエは普通に会話出来るから、てっきりもう知ってると勝手に考えちゃってたわよっ!どうしましょう?!
……クロエ、クロエ?きゃあ!この子驚きすぎて意識とんじゃってる?!
あらっいけない、熱っぽいわ!ミラベル、ディルク先生呼んできてちょうだい!
クロエを寝かせるから、アタシは様子を見なきゃっ!
まさか未だ早過ぎるわよ……驚きすぎて力の暴走なんてしないわよね……?クロエの体が持たないわよっ!」
コレットは慌ててミラベルからクロエを抱き取ると、ベッドから布を払いおとしてクロエを寝かせる。
クロエの頬やおでこを触るとしっかり熱をもっていて、完全に熱を出したようだ。
ミラベルは既に小屋のディルクの元にすっ飛んでいっており、部屋の中に姿はない。
コレットは水桶と布を取りに洗い場に走る。
ベッドの上に寝かされたクロエは
(魔力ーー?!この世界は魔法の使える世界なのっ?!漫画しか知らないわよ、そんなの!
まさかまさか、異世界なのは解ってたけど、魔法の存在する世界なんて有ったのーー?!
じゃ、アタシにも魔力あんの?箒で空飛べたりすんの?
え、まさか……魔王とか居るんじゃ無いでしょうねっ!ゲームの世界かっ!
ああ、衝撃が強すぎて頭が爆発しそうだよーーー!)
と色んな事を想像して、自ら突っ込みを入れたりしていると又熱が上がったのか、息遣いが荒くなった。
コレットが慌てて部屋に水桶と布をもって入ってくると、クロエの頬がさっきより赤く染まっているのを見て
「まずいわ!冗談じゃなくまずいわ……、アタシとディルク先生で早く何とか抑えないと!ああ、未だかしら先生!ごめんねクロエ、こんな事になるなんて……油断し過ぎだわ、アタシ達……。大丈夫、未だ1才なんだから力は抑えられる筈よっ。落ち着け、アタシ!」
と自らを鼓舞させながらクロエのおでこに濡れた布を置き、深呼吸を一つしてから顔を引き締める。
コレットが瞑目して自身の両手を握り締め精神統一を図りだす。
程無く扉が開き、ディルクとミラベルが駆け込んできた。
一目見て緊急事態を悟ったディルクが、ミラベルを部屋の外に逃がす。
不測の事態に備えたのだ。
ミラベルも不安そうに頷いたあと、扉の外に出てそこから見守る。
「ミラベル、大丈夫じゃとは思うが万が一最悪の状況になったら、儂が叫ぶからすぐ扉を閉めて逃げるんじゃぞ!良いな?」
とディルクがミラベルに指示をする。
「は、はいっ!……でも、クロエを、クロエを助けてください!」
とミラベルが震えながらディルクに願う。
「万が一の話じゃ。大丈夫、必ず助ける」
ディルクはミラベルに微かに微笑むと、すぐにコレットに近付き
「どうじゃ?いけそうか?」
と聞く。
コレットが瞑目したまま
「……今から通してみます……、先生アタシの属性でいけるでしょうか……?」
とディルクに聞く。
ディルクは
「わからん。だが未だ1才だ。それほどの導力は無い筈。其方は無理だと感じたら離れよ。後は儂が引き受ける」
と話す。
コレットが頷き、刮目する。
「いきます……!」
コレットがクロエの手を取り、ベッドの端に座る。
……するとコレットの手とクロエの手がほんのり光り出す。
「お願い、落ち着いて……クロエ……!」
コレットが祈りを込めて呟く。
するとクロエの手から光が消え、コレットの手の光がクロエに引き寄せられ始めた。
「クッ……やっぱり……!無理なの?……クロエ、落ち着くのよ……目を開けて……!」
するとコレットの声が聞こえたのか、クロエが目をうっすらを開けて
「母……しゃん?ろうしちゃにょ……?」
と小さな声で話す。
コレットが顔を安堵で歪めながら
「ああ、気付いたわ……先生、何とかいけそうです……アタシの流出が止まりました……」
と手を見る。
すると引き寄せられていたコレットの手の光がホヨン……とコレット側に戻り、クロエの手にもうっすら光が見え始めた。
やがて2人の手の光は徐々に小さくなり、直ぐに完全に見えなくなった。
コレットは手を離すとハーーッ!と大きな息を吐き、クロエを見た。
クロエは赤くなっていた頬が普段の色に戻り、いつの間にか熱も下がっていた。
ディルクが
「……フム、流れが正常に戻ったの。暫く寝かせるが良かろう。コレットよ、其方も横になってこい。儂がクロエを見ておるから安心せよ。ミラベル、母さんに付いていってやりなさい。手を貸してあげるんじゃ」
と扉の外にいたミラベルを呼ぶ。
「は、はいっ!母さん大丈夫?!先生、クロエは無事ですかっ?!」
と駆け込みながらミラベルがディルクに聞く。
「ああ、もう大丈夫。コレットがクロエを上手く抑えられたからな。よくやった、コレット。流石じゃの」
とディルクがコレットを労う。
よろめきながら立ち上がったコレットはミラベルに肩を借りながら
「ありがとうミラベル……先生……アタシではコレが限界ですね……。昨日の話、早すぎると思いましたが、違いました……。クロエに魔力の話をしておくべきでしたわ。まさか昨日の今日でこんな……。油断し過ぎでした、申し訳ありません」
とディルクに詫びた。
ディルクは首を横に振りながら
「無理もない。其方等が油断し過ぎたのではない。クロエが規格外なだけじゃよ。幸い今回は無事に済んだが、やはり早急にこの子には教えねばなるまいの。さあ、早く休んできなさい。体が辛かろう?」
とコレットを気遣う。
「はい……お言葉に甘えます。ミラベルごめんなさいね。クロエ……貴女もゆっくり休むのよ?無理しないでね」
とクロエを気にしながら、コレットは自分の寝室にミラベルに付き添われながら下がっていった。
(母さん?どうしたんだろう……アタシも熱が下がったのに何だか体が動かない……だるい感じ)
クロエがディルクを見ると
「暫く寝なさい。起きたら魔力の話をしよう。今は動けん筈じゃ。わかったの?」
と彼が静かに話す。
「はい……お休みにゃしゃい」
とクロエは目を閉じ、直ぐに眠ってしまったのだった。
次話は明日か明後日投稿します。




