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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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53. 州都からの帰還

お読みくださりありがとうございます。


長兄と老教師が州都より帰ってきました。

さてどんなお土産話をしてくれるのでしょうか。

 予定より1日遅くライリーとディルクが州都から帰還した。

 少々疲れている様子だが、旅は概ね順調だったらしい。

 着いたのが夜になって直ぐだったので、コレットが慌てて3人分の夕食を準備する。

 ガルシアも荷馬車を納しに行き馬の世話をした後、リビングに入ってきた。

 シェイロ村までは辻馬車があるが、森に辻馬車は入れない。

 ……結界があるからだ。

 だから州都アラベラから出発する前に、大体のシェイロ村到着予測を先触れでガルシアに伝えてきていたが、辻馬車が途中で故障した為に半日遅くなってしまったのだ。

 それ以外はほぼ予定通りに事は進み、ディルクにも、又初めての旅となったライリーにもとても満足のいくものだった様だ。


 そんな2人に暫し話を聞くため、ガルシアはクロエを膝に抱き、先にソファで寛いで子供達と話をしていたディルクの前のソファに腰掛け、ライリーに声を掛ける。


「どうだった、州都は。初めて見るものばかりだったろう?」


 父のガルシアは初めて州都を見た感想を息子に聞く。


「うん。あんなに人がいるなんて……正直な話、人の多さが少し息苦しく感じたよ。直ぐに慣れたんだけどね。後、建物が石造りの物ばかりでとても大きかった。道も石畳が敷かれて広く整備されていて歩きやすかったし、とても綺麗だったよ。ただ……」

 と、ライリーは自分の言葉を一瞬飲み込んだ。


「ただ……どうしたんだ?」


 ガルシアが先を促すとライリーは苦笑しながら

「……何だか僕は怖い感じがして。何でだろう、花壇が建物毎にあって花が綺麗に咲いていたから、全く自然がない訳じゃなかったし、人々も活気があったのに。……この森の中のように自分の気持ちが開放出来ないんだ。身構えてしまって。慣れてないからかな……都会に」

 とこぼす。


 ガルシアは微笑みながら

「……慣れていないせいだろうな。寧ろ俺は最初黒き森に来たときがそうだった。静か過ぎて、自分の息づかいがはっきり聞こえる様な環境に身を置いたのは初めてだったからな。落ち着かなくて……。お前はその反対の状況だが、気持ちは同じようなもんだったろう。……だが慣れるもんさ。下見を兼ねた旅だったんだし、早く分かればそれだけ気構えも出来る。旅に出た甲斐があったな、ライリー」

 と息子を励ます。


 ライリーは頷いて

「そうだね。知らない事がいっぱい有るんだなって思ったよ。本で読んでて知識としては有るんだけど、実際に自分で見ると全然違うんだ。大きな街ってこういう所を言うんだなって、当たり前の事が初めて分かった。

 後、色んなお店があったのが楽しかったよ。先生と一緒に工房を訪ねたり、ご飯をお店で食べたり……。都会の店は雑貨屋の様に色んな品物が少しずつ置いてるんじゃなくて、服なら服、食べ物なら食べ物、本なら本って種類別になっているんだね。それも服は女性の店と男性の店に別れていたり。

 後、大きな道沿いはとても高い金額の品ばかり置いてあるようなお洒落な店が並んでいて、入るのが怖いような気持ちになったよ。扉も両開きの豪華で大きな物だったし。

 でも裏の小さい通りは食べ物屋とか武器の工房や、後お鍋とかをぶら下げてるお店があったりして、僕は裏通りの方が楽しかったな。

 予定があるから少ししか見られなかったけど、又お店巡りはしてみたいと思ったよ。」

 と自分の感想を丁寧に父に説明する。


 その説明に耳を傾けながら、ガルシアも短い旅の間に出来る限り見聞を広げてきたらしい息子を目を細めて見ている。


 ミラベルはライリーの感想を聞いて

「凄い凄い!服のお店がそんなにあるんだ?!じゃあ靴も帽子もそんなお店があったりするの、お兄ちゃん?」

 とライリーの真横へ座って、目を輝かせながら勢い込んで聞く。


「ああ、お前が喜びそうなお店が幾つも在ったよ。そういうお店は大体同じ通りに揃ってたな。後ミラベルが入りたがりそうな宝石のお店も在ったんだけど、入口の扉前に屈強な番人が2人立っていたんだ。ああいうお店は誰でも入れる訳じゃないみたいだったよ。

 ああそうだ、玩具のお店も在った!あれはコリンの夢のお店かもな。でも玩具のお店は、泣きながら引きずられて帰る子もいて何だか子供には却って目の毒だなって思った。2人共、いつか自分の目で見てみると良いよ」

 とライリーが2人に笑って話す。


 コリンが

「玩具のお店があるの?!すげーー!何か買ってきてくれた?!」

 とライリーに聞くと

「無理だよ。今回は先生のお手伝いで行かせて貰えたんだからね。お土産はお菓子を買ってきたよ。お試しで食べさせてくれてとても美味しかったから、皆にも食べさせたくて。さっき母さんに渡したから、きっと後から出してくれると思うよ。ホントに甘くて美味しいからね」

 と兄は優しく弟に話す。


 コリンはそれを聞いて

「えーー!玩具無いの?チェッ!……でも甘くて美味しいお菓子があるんだ!じゃあ良いや!楽しみだ~!」

 と残念がったり、喜んだり。


 ライリーも笑いながらコリンを見ている。


 出掛ける前にぶつかっていたが、2・3日の間会わなかった事で2人共に気持ちが整理出来たようだ。

 兄弟の間に流れる空気が柔らかい。


 ガルシアがディルクに体を向けると

「先生、この度はライリーを州都に連れて行って下さいまして本当にありがとうございました。得難い経験を積めたようで、親としても嬉しい限りです。感謝いたします」

 と頭を深々と下げた。


 ライリーもガルシアに合わせて

「本当にありがとうございました!僕、州都に行くことが出来て本当に良かった……もっと色んな事を勉強しなきゃと思えたし、森が今まで以上に大切に思える様になったんです。……多分森から出てみなければこんな風には感じなかったと思います。だから先生にはとても感謝しています、ありがとうございました!」

 と父に負けないくらいディルクに頭を深々と下げた。


 ディルクは微笑みながら

「儂が此度の旅でライリーに手伝うて欲しい事が有って連れて行きたかっただけなんじゃから、その様に礼を言われると却って申し訳無いのう。そう畏まらんでくれんか。照れ臭うて敵わんわ」

 と2人に頭を上げるように言う。


 2人が頭をあげるとディルクがガルシアに

「まあライリーの為になったようで良かった。儂も色々と手伝うて貰うて助かったしのう。本当にライリーは機転が利くし、行儀も良いので旅の連れにもってこいなんじゃ。又近々同行を頼むやもしれぬが、その時はよろしく願うぞ、ライリー」

 と手放しでライリーを褒める。


 ライリーは顔をほころばせて

「僕の方こそ是非!先生との旅は楽しくて、色んな事を教えていただけますから」

 と快諾した。


 ガルシアも嬉しそうに頷いている。


 その話を聞いてミラベルが

「……お兄ちゃんばっかりずるーい。アタシもお供したいです、先生!」

 と口を尖らせた。


 ディルクが苦笑して

「ミラベルは又もう少し大きゅうなったらの。流石に5才では両親も心配するからな」

 と彼女を諭す。


 その言葉を聞いてミラベルは

「はぁ~……それ言われちゃうと何にも言えないです~。早く大きくなりたいなぁ~、はぁ」

 と芝居がかった溜め息を吐いた。


 ミラベルの話を聞いて、コリンが

「じゃあ僕なんか未だ未だ全然行けないってこと?!えー!そんなの酷いよ~!」

 と嘆くと、ガルシアが

「……お前の場合は、先ずオムツの卒業からだな、コリン」

 とチラリとコリンを見ながら揶揄した。


 コリンがその言葉を聞き

「うっ……そ、それは分かってるって!頑張るよ、ちゃんと頑張るから今言わないでよ~」

 とガルシアに弱々しく反論する。


 その会話を聞いてリビングに居る皆が笑った。


 丁度その時コレットが3人の夕食の準備が出来たと呼びに来たので、リビングに居た全員が食堂に移動する。


 その際にディルクがガルシアに何か話し、ガルシアが自分が抱いていたクロエをディルクに渡した。


 ガルシアが子供達を促し、先に食堂に向かう。


 ディルクはゆっくりと歩きながら、抱き上げたクロエに小声で話をする。


「今日は遅いから明日にでも詳しい話をしようと思っとるが、其方の考えた道具類は発注しておいた。……後、今は時間がないから言えぬが幾つか其方に伝えることがある。明日の午後から其方との話の時間をつくるんで、そのつもりでな」


 クロエはディルクに小さく頷く。


 そして小さな声で

「先生ちょお兄ちゃんぎゃ無事に帰っちぇ来ちぇきゅれちぇ、良きゃっちゃれしゅ……安心しましちゃ。しょれちょ、ちょっちょアチャシやらきゃしちゃきゃみょれしゅ~…」

 と言いにくそうにディルクに白状する。


 ディルクは眉をあげて

「……知恵を授けたか?」

 と又小声で聞くと

「知恵ちょ言うきゃ……手遊びを2ちゅ3ちゅ……きょれみょよきゅ考えちゃりゃ知恵ににゃりましゅきゃ……?」

 とおずおずと尋ねる。


 ディルクは目を瞑り

「……手遊びか。多分其方の考えたものなら斬新で面白いものじゃろうのう……。明日詳しく話してくれるか?さて、どうしたものか……身内じゃからまぁ構わんのじゃが、内容にもよるかのう。

 ……しかし遊びとは儂も失念しとったな。子供が居るんじゃから、それは考えておくべきじゃった。これは儂の手落ちじゃ。まぁなんとかなるわい」

 と軽く息を吐くとフッと笑ってクロエを見る。


 クロエは俯いて

「ぎょ免にゃしゃい……約束しちゃにょに…お兄ちゃんぎゃ退屈しょうにしちぇちゃんれ、ちゅい……アチャシ悪い子れしゅにぇ……」

 とシュンとする。


 ディルクはクロエの頭を撫でながら

「……何を言うかと思えば、其方が悪い子の筈が無かろう。こんな賢くて優しい子を儂は他に知らぬぞ。……儂はただ、其方が優しすぎて心配なだけじゃよ。

 其方を辛い目に合わせたくない年寄りの我が儘で、其方に枷を着けている様なもんじゃ。すまんのクロエ、却って気を遣わせるのう……」

 と詫びる。


 クロエは慌ててディルクに

「しょんにゃ!先生に心配しちぇ貰えりゅアチャシは幸せれしゅ!……アチャシぎゃお調子者にゃらけにゃんれしゅ……昔っきゃりゃ変わりゃにゃいアチャシにょ悪い癖にゃにょれしゅ……」

 と爆弾発言も若干交えて話す。


 ディルクはクロエをまじまじと見ながら

「……そうか。昔からか……ならば仕方無いのう」

 とクロエの頭を更に優しく撫でた。


 先に食堂に入っていたミラベルが

「先生!ご飯冷めちゃいますって!早く来てくださ~い」

 と底抜けに明るい声でディルクを呼ぶ。


 その声に慌てたディルクは

「おお、すまんすまん!……ではクロエ、急ぐとするかの」

 とクロエに悪戯っぽく笑いかけて、食堂に入っていったのだった。


次話は明日か明後日投稿します。

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