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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
51/292

51. じゃんけんぴょん?!その3

お読みくださりありがとうございます。


手遊びの回、今話で終了です。

単純な遊びほど飽きないと私なんかは思うのですが、皆様は如何でしょうか?


今話で締めたかった関係で少々長くなりました。

「何だかすごく賑やかだったけど、何してたの貴方達?」


昼食の最中、コレットが子供達に聞く。


コリンとミラベルは昼食をいつもより急いで食べている。

まるで何かに追い立てられているかの様だ。


とにかく2人は目の前の昼食を早く食べきることに専念している様で、コレットの問いに答えない。


2人共に別に機嫌が悪いわけでも無さそうだし、朝の件は一応一件落着しているので喧嘩と言うわけでも無さそうだ。


ただ一心不乱に昼食をとっているだけなんだろうが、そんなにお腹が空く様な事をしていたのだろうかと、コレットは首をかしげる。


そんな2人とは対照的にいつも通り昼食に大喜びしながら、嬉しそうに一口一口楽しんでゆっくり食べているクロエにコレットが小さな声で聞く。


「ねぇクロエ?貴女はあの子達がどうしてあんなに急いで食べているのか、理由を知ってる?……何だか凄く顔も気合いが入ってると云うか、鼻息が荒いと云うか……。さっきリビングもとても騒がしかったし、何かあったの?まさか喧嘩とか?」


クロエはニッコリ笑って

「ううん母しゃん、違うよ。喧嘩ちょきゃしちぇにゃいよ。お姉ちゃんもお兄ちゃんも早きゅ対戦しちゃいらけらよ。しゃっき“アッチ向いちぇヒョイ”やっちぇちぇ、夢中ににゃっちゃっちゃんらよ、2人共」

と説明にならない説明をする。


案の定コレットには意味が皆目解らず

「え?アッチッチでヒョ?何なのそれは……」

と眉を潜めている。


そんな2人には見向きもせず、ミラベルとコリンが揃って元気良く

「「ごちそうさまでした!」」

と言うと食器を洗い場にさっさと運んで行く。


「あ、はい……どういたしまして……?」

と呆気に取られたコレットが2人を目で追う。


クロエがお口をモグモグさせながら

「母しゃん、後きゃりゃリビンギュに来ちぇくれりゅ?見ちゃりゃ解りゅよ。母しゃんみょやっちぇみちゃりゃ良いよ~」

とコレットを誘う。


「リビングに、ねぇ……。そうね、後から少し覗いてみるわ。あの子達の様子が気になるし。……でもクロエは普段通りね。どうしてなの?」

とコレットが美味しそうに食べ続けているクロエに尋ねる。


クロエは又ニッコリ笑うと

「らっちぇお姉ちゃんちょお兄ちゃんの対戦見ちぇりゅ方ぎゃ楽しいにょ。らから2人程興奮ぎゃ酷きゅにゃいらけらよ」

とアッサリ説明する。


「そうなの?何だか今はよく分からないけど、後からリビングに行けば分かるのね。じゃあ先に洗い物を片付けてくるわ。ああ、クロエはゆっくり食べなさいね。貴女が食べ終わったら一緒にリビングに行きましょ?」

とコレットが腰を上げながらクロエに提案する。


クロエはモグモグしながら

「はぁ~い!分きゃっちゃ~。早きゅ食べりゅにぇ、母しゃん」

と返事をすると

「あらあら良いのよクロエ。貴女の楽しみを奪うつもりは無いわ。大好きな食事をゆっくり楽しみなさいね。それからで十分よ」

とコレットがクスクス笑いながら洗い場に向かう。


クロエはエヘヘと照れ笑いしながら、又昼食を楽しむのだった。





クロエが昼食を食べ終わり、コレットが片付けてから2人でリビングに向かう。


既にリビングの中では白熱した戦いが繰り広げられているようで

「あーー!又負けたーー!もおっ!何でそっち向くのよ、アタシのバカッ!」

というミラベルの嘆きの声や

「くっそぉ!何で下向いたんだ~!次は絶対に下向かない!下が敵だー!僕さっきから下で負けてばっかだーー!」

というコリンの歯噛みする声が聞こえてくる。


コレットが

「な、何?あの子達が自分を反省してるなんて!一体何をやってるの?!」

と狼狽え始めた。


クロエがクスクス笑いながら

「やっちぇるやっちぇる~!2人共楽ししょうらにぇ~!母しゃん、早きゅリビンギュに入りょ」

と自分を抱いてくれているコレットを促す。


「え、ええ……」

とコレットが頷きながらリビングの扉を開けて中に入る。


「「じゃ~んけ~ん、ぴょん!アッチ向いてヒョイ!じゃ~んけ~ん、ぴょん!あ~いこ~でしょ!アッチ向いてヒョイ!」」


リビングに入ったコレットの目に入ったのは……

可愛い2人が声を見事にハモらせながら、熾烈な“アッチ向いてヒョイ”の戦いを何度となく繰り広げている姿だった。


コレットは呆然としながら

「あ、あのクロエ?あの子達は一体何をやってるのかしら……?見ても私には全く分からないんだけど……。知ってるなら教えてくれないかしら?」

とクロエに頼む。


クロエはニッコリ笑うと

「じゃあ2人にょ傍に行きょう。母しゃんにも説明しゅりゅにぇ」

と母の背中を押す。


ミラベルとコリンは興奮しすぎで少々疲れてきたようで、近付いてきたコレットとクロエに

「「あ、母さん、喉が渇いたーー!果実水持ってきてーー!」」

と声を揃えてねだる。


コレットは溜め息を吐くと

「……待ってなさい。直ぐ用意するわ」

とクロエを下ろすと台所へ引き返した。


「あにょにぇ、後きゃりゃ母しゃんにみょ“じゃんけん”ちょ“アッチ向いちぇヒョイ”を教えちぇあげちゃいにょ。お姉ちゃんもお兄ちゃんも手伝っちぇきゅれりゅきゃにゃ?」

とクロエが2人に頼むと、2人共直ぐに了解した。

どうやら次の獲物はコレットだと2人共考えたようだ。


コレットが皆の果実水を用意して持ってきてくれると、2人は待ってましたとばかりにカップに並々と果実水を注ぎ、一気に飲み干す。


漸く人心地ついた2人は

「「母さんもじゃんけんぴょんやろうよ!楽しいよ!教えてあげるから!」」

とこれまた見事にハモりつつコレットを誘う。


「じゃんけんぴょん?なぁに、それ?」

と少し興味ありげにコレットが2人に聞く。

朝はコリンのやらかしで仲が険悪だった2人が、今とても仲良くしているのが母には何より嬉しいらしい。

ニコニコしながら2人に聞いている。


しかし2人が我先に説明しようと張り切るので、聞く側は全く要領が得ずコレットが困った顔をし出した。


そこでクロエが手をパンッ!と大きく叩いて水を差した。


「落ち着いちぇ、お姉ちゃんお兄ちゃん。母しゃんぎゃ困っちぇりゅよ?じゃあお姉ちゃんぎゃ説明しちぇ、お兄ちゃんちょアチャシぎゃ見本を見しぇちぇあげようよ、にぇ?」

とニッコリ笑って2人に提案をするクロエ。

完全に25才の中身が出て場を仕切ってしまっていた。

ただ周りも何故か不審がらずに、僅か1才にもならない妹の指示に素直に従ってしまうのだから、とても不思議な光景ではある。


何はともあれクロエの指示した通りにミラベルが、母に解りやすくじゃんけんやアッチ向いてヒョイの説明をし、合間合間にコリンとクロエがデモンストレーションをして見せる。


コレットは最初こそただ聞いているだけだったが、何故か次第に身を乗りだしウンウン頷きながらデモンストレーションを見て説明に耳を傾ける。


やがてミラベルが参戦してきた時と同じ様に、自身も参戦すると腕捲りし始めた。

流石親子、そっくりである。


先ずはじゃんけんから入り、子供達より幾分照れがあったせいで飲み込むのに手間取ったが、じゃんけんを覚えてしまうと、母は応用のアッチ向いてヒョイの習得は早かった。


そこからは姉兄母が代わる代わるアッチ向いてヒョイをやり出す。


最初照れながらやっていた母も繰り返す度に照れは消えていき、とうとう大きな声で負けると悔しがり始めた。


「うっ!又釣られてしまったわ~!子供に負けるなんて、アタシ馬鹿すぎるわー!……いえ、くじけちゃダメ!コリン、やりましょ!」

とコレットが食らい付くと

「へへっ!母さんにコレだけは勝てるのが分かった!面白ーい!うん、やろ!」

とコリンが胸を張り

「えーっ!次は母さんアタシとやろーよ!アタシさっき母さんに負けちゃったから、今3人の中でアタシが一番弱いじゃない!悔しいっ!」

とミラベルが歯噛みする。


クロエは微笑ましい親子の姿をニコニコしながら見つめ、果実水を美味しそうに飲む。


(さて、そろそろあの遊びを教えちゃおうかな!又白熱するだろうな~。うふふ、楽しみ楽しみ!)


クロエはニンマリ笑いながら又手をパンパンと叩く。


その音にハッとした3人が、自分達が完全にクロエの存在を忘れていたことに慌て始める。


先ず母が

「ご、ごめんなさいクロエ!アタシったら年甲斐も無く夢中になっちゃって……、寂しかったわね、ごめんなさいね!」

と謝ると

「アタシもごめん!クロエの事忘れてた!ホントにごめん!」

と頭を下げるミラベルに続き

「悪かったよ、怒るなよ、なっ?ちゃんと今からは交代するから、兄ちゃんが悪かったよ」

とコリンが宥めに掛かる。


クロエはそんなばつの悪そうにしている3人にクスクス又笑いながら

「見ちぇりゅらけれ楽しいきゃりゃ、気にしにゃいれ!しょうじゃ無きゅっちぇ、まだ新しい遊びぎゃありゅにょよ。やっちぇ見ちゃきゅないれしゅきゃ?」

と聞いてみる。


コリンが直ぐに

「あ、さっきの玩具使うんだろ?やるやる!ねぇ、母さんも姉ちゃんもやるだろ?絶対に面白いって!僕やりたい!」

と乗ってきた。


勿論後の2人に異論がある筈もなく、クロエはその選んだ玩具2つを3人の前に置く。


「クロエ貴女……これで何をするつもりなの?だってこれは……」

とコレットが戸惑った声をあげる。


前に置いた玩具の正体は、布で作った“剣”と軽い木で作った“盾”だった。


剣は、長さ50センチ程の長細い筒状に縫われた布の中にボロ布をきっちり詰め込んだ、安全第一の叩いても全く痛くない柔らかい物だが、形は裁縫上手な母の作品らしく見事に剣だった。


又盾は、手先が異常に器用で木工大得意の父が我が子の為にと、意匠を凝りに凝って作った丸い30センチ程の物で、非常に軽く出来ており、又持ち手はしっかりと木で内側に作っていて持ちやすいことこの上ない逸品であった。


「んひゅひゅ~。コレを使っちぇやりゅにょはにぇ~、叩いちぇきゃぶっちぇじゃんけんぴょん!っちぇいうんらよー! 」

とクロエは胸を張って説明する。


「「「 叩いてかぶってじゃんけんぴょん?!」」」


3人の声が綺麗にハモる。


クロエが頷き簡単な説明を始める。


「うん!簡単らよ。勝っちゃりゃ剣れ相手を叩きゅ。負けちゃりゃ盾れしょにょ攻撃を防ぎゅにょよ。叩きゅにょを防げ無きゃっちゃり、間違えちゃ道具を取っちぇも負けらよ。ろう?やっちぇみにゃい?あ、叩きゅにょは頭を軽きゅ上きゃりゃらけにぇ。横や下きゃら、しょれに体へにょ攻撃は駄目。負けににゃりましゅ。良い?」


頭を軽くとは言え叩くという行為に、始めコレットが難色を示した。

しかしクロエがそのコレットの懸念に気付き、じゃあコレは無かったことにしようと遠慮し出すと3人が慌てて彼女を宥めて、やることに決まった。


クロエが気にしつつ

「え、れも本当に良いにょ?母しゃん心配れしょ?アチャシ深きゅ考えちぇ無きゅちぇ……。母しゃんにょ言う事は正しいきゃりゃ……やっぴゃり止めちょいちゃ方が……」

とオロオロし出すと

「ああ、ごめんなさいクロエ。貴女がそんなに気にすることないのよ。私が心配しすぎただけなんだから。もし叩くのが見ていて本当に危険だと判断したら止めたら良いんだしね。やる前に止める必要はないわ。ね、そうよね貴方達?」

とコレットがクロエを慰め

「「そう!そうだよ!やってみようやってみよう」」

とお気楽2人組は声を揃えて賛同する。


クロエも漸く首を縦に振り。3つ目の手遊び“叩いてかぶってじゃんけんぴょん”が開始された。


先ずはお気楽2人組の対戦。


最初は恐る恐る相手をポンッと軽く叩いていたが、盾で上手く防がれるとヒートアップし始め、釣られて全ての行動が段違いにスピードアップした。


姉弟の余りに白熱した戦いに、最初は懸念していた母と妹も釣られてヒートアップ。止めることなど全然考えもしなくなった。

格闘技や全ての真剣勝負を観る観客が、次第にボルテージを上げていくのと全く一緒である。


次いで母対姉、母対弟、そして又姉弟。


何回か続けてやって相手が3回負けた時点で交代するのを繰り返す。


そんな対戦を繰り返すうちに時間は過ぎ、何とガルシアが帰宅する夕方までその遊びは続けられたのだった。





「……帰って声を掛けても誰も出て来ないからどうしたのかと思えば……。何をやってるんだお前達?!」


ガルシアがリビングに入って来たのは丁度コレットが勝って剣を持ち、ミラベルが盾を頭の上に掲げて攻撃を防ぐ所だった。


「とりゃあっ!……て、あ、貴方?!」

「クッ!なにくそっ!………へっ?と、父さん?!」

母と姉は父から見るととんでもないバトル中にしか思えない姿だ。

なのに争いを止めようとして撥ね飛ばされたのかと思っていた息子と末娘は何と腹を抱えて笑って転がっているだけだった。


「あ~!父さんお帰りなさ~い!姉ちゃんめちゃくちゃ弱え~!おっもしれー!」

とコリンが腹を抱えて転がりながらミラベルを笑っていると思うと

「いや、母しゃん最強れしゅ~!あっ、父しゃんお疲れしゃま~!お帰りにゃしゃ~い!」

とクロエもうつ伏せになって床を叩きながら笑っていた。


「な、なんなんだ……。しかし何だか凄く楽しそうだなお前達?一体何をしてたんだ?」

とガルシアも緊張を解き、首をかしげながら近付いてきた。


コレットがとんでもない所を見られたと顔を赤らめながら、ガルシアに今までの簡単な経過を説明する。


ミラベルとコリンも目をキラキラさせながら母の言葉に乗っかり、どんなに面白かったか父に一生懸命に話す。


クロエは説明を3人に任せ、ニコニコ笑いながらその様子を見ていた。


ガルシアは説明を聞きながら次第に興味を持ち、今から夕食を取り風呂に入って寝る準備が出来てから少しやってみようと提案した。


勿論誰も異論を唱える者はおらず、普段より両親も子供達も目的があるせいか、物凄くテキパキと要領よく全ての家事を協力してこなしていく。

何よりコリンが全く文句を言わず、自らいそいそ動いて家事の戦力になっている。

そして普段なら皆その事に感動したり戸惑ったりしている筈が、当たり前のように受け入れ、早く続きをやりたいばかりにスルーしていた。


……戦いの要素がある遊びの力は恐ろしいのである。


やがて寝る準備を整えた家族が皆リビングに集い、一大“叩いてかぶってじゃんけんぴょん”大会が始まった。


……子供達が昼からの興奮と昼寝をし忘れた関係で、対戦の最中に相次いで倒れるように眠り込むまで約1時間余りの間、白熱した戦いが又リビングで繰り広げられたのだった。


付け加えるならばライリー達が帰宅するまでの3日間、じゃんけん熱が冷める事は無く、ライリーやディルクもその熱に巻き込まれることになるのは又後の話である。



次話は明日か明後日投稿します。

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