兄姉
お読みくださりありがとうございます!
主人公の小さな兄姉が登場です。
何となく周りが明るくなった気がする。
クロエは眩しく感じながら目を覚ます。
(ふわあ~。眩しい…これは朝になったのかな。おう、オムツが見事に濡れてますわ。
お腹も空いたことだし、いっちょ泣きますか!)
「ほぎゃあ!ほぎゃあ!ほぎゃあ!」
元気良く泣き声をあげる。
程なく母が隣の部屋からやって来てくれた。
だが、来たのは母だけでは無かった。
母のそばに小さな人影が二つ。
(あら、これはアタシの兄姉かしら?まあ、初の対面だわ~。お兄ちゃんかな、お姉ちゃんかな?どっちも居たりして。
あ!オムツを替えて貰わなきゃなのに。うわ、これは恥ずかしい)
一人ブツブツ言っていると、ベッドの横に小さな人影がトコトコ近寄ってきた。
顔が何とか見えるくらいの背の高さ。
小さな人影はベッドの横からクロエを覗き込んでくる。
その横には頭の上しか見えない別の小さな人影も見える。
ピョコピョコ飛んで何とかクロエを見ようと頑張ってるらしく、ドンドンと床を鳴らしている。
母が優しく二人を諭し、まずはクロエのオムツを替えてくれた。
綺麗になったところでクロエを抱き上げた母は、ウズウズ待ち構えていた二人の子供に声を掛け、隣の部屋に連れて行く。
部屋に入りクロエを抱いたまま椅子に座った母は、覗き込む子供達とクロエを対面させた。
大きい方の子供は男の子らしく、髪色が濃いグリーン、理知的な目は切れ長で真紅だ。
父親似らしく、顔立ちは非常に整っている。
小さな方の子供は女の子で、髪色はなんと目の覚めるような濃いピンクで緩いウェーブが掛かっている。
好奇心旺盛な大きな瞳は金色で睫毛が物凄く長く、お人形の様な顔立ちが愛らしい。
二人の子供達を見てクロエは心底ビックリした。
(え?凄い!この世界ってこんな髪色が普通なの?うわ、うわぁ~!あちらじゃ漫画とかアニメとか、そんな中でしかこんな髪色無いよ?
あらぁ目も綺麗~。アタシ、目は茶色か黒しか見たこと無い。外人さんは金髪碧眼って居たけど、日本から出たこと無かったからなぁ。いやしかしビックリした!)
思わずまじまじと子供達を見るクロエに、当の子供達も驚いているようだ。
口々に自分の髪を掴んではクロエを指差し、母に何かをしきりに聞いている。
(何か二人ともアタシを見て戸惑ってる感じ?髪を凄く気にしてるよね。自分の髪を掴んで、アタシを指差して。
あ!もしかしてアタシの髪色はもっと変わってるってこと?)
鏡が見られない状態で、いやこの世界に鏡が先ず在るかどうかだが、自分の髪色を確認出来ないクロエはものすごく不安になってきた。
(え、ちょっと待って。濃いピンクの髪のお姉ちゃんに驚かれてるんだよ?後どんな変わった色があるってのよ?金髪は普通でしょ?紫?いや、ピンクには負けるよ?!
え、え?全然思い付かない!まさかレインボーカラーなんて…どっひゃあ!ウソでしょ?)
クロエの顔が赤ん坊にも関わらず難しい表情になってきたのを見て、子供達は慌ててクロエのご機嫌をとろうと声を掛けてきた。
クロエの頭をナデナデしたり、ほっぺをツンツンしたり、クロエに近付いてニッコリ笑ったり。
(あら、心配掛けちゃった?髪色考えてたら泣きそうな表情にでもなってたのかしらん?悪いことしちゃったな。
よし、“必笑!エンジェルスマイル”をお見せしますか!)
クロエは両親をメロメロにした満面笑顔を子供達にも見せた。
子供達はクロエの満面笑顔を見ると、見る間にパアアッと顔を綻ばせて喜んだ。
(よしよし、掴みはオッケー!妹ですもの、やはりお姉ちゃんお兄ちゃんには可愛がって貰えるようにならなきゃね。
良好な関係構築の為、頑張ります!)
そんな子供達とクロエを見てニコニコ笑っていた母だが、急に表情を引き締めると子供達に何かを話す。
子供達は母の話を聞くと顔を強張らせる。
クロエをまじまじと見つめ、母に何かを確認する。
母は真面目な顔で子供達に頷いた。
二人の子供達はお互い顔を見合わせていたが、暫くするとどちらからともなく頷き合い、クロエに話し掛けて代わる代わるおでこにキスをした。
母も二人の子供達を頼もしそうに見守っている。
全くの蚊帳の外なのはクロエだけ。
(なになに?一体何なの?二人ともお母さんの話を聞いて急に大人しくなったと思ったら、アタシを見つめてキスしてくれて。何だか子供ながらに何かを決心したみたいな、何だろう?
ま、まさか考えたくないけど、アタシ髪の毛無いの?いや、そんなことは無い。頭撫でられた時、髪の引っ掛かる感じしたもん!
それじゃ一体何なの?あー、気になる!)
母は二人の子供達に何かを言うと、二人は頷いて側から離れた。
二人は同じ部屋内の誰かに声を掛けている様だ。
すると低い男性の声がして、二人と何かを喋りながら再びこちらにやって来た。
(この声、確か聞いた気が。あ!お父さんだよ、間違いない!おはようございまーす、って、ええ?)
確かに近付いて来たのは“父”に間違いはなかったが、良く見ると父の腕には小さな子供がもう一人。
(えー!まさかもう一人子供が居るんですか?…見た感じ2歳にならない位か。もしかして、アタシとギリギリ年子ですか?
お母さんスゴい!頑張ったんだねぇ!)
その子は金髪碧眼で少しだけソバカスがある、俗に言うファニーフェイスだ。
服装から見て、男の子だと思われた。
指を加えた状態でクロエをジトッと見ている。
(ん?これはあまりアタシを良く思っていない表情?あぁ焼きもちだろうな、多分。
まあ無理無いよね、ずっとお母さん盗っちゃってるもん。さあて、どうするかな。取り敢えず、笑ってみるか)
クロエはその父の腕に抱かれている子に満面笑顔を向けてみた。
するとその子はクロエをじっと見つめた後、プイッと横を向いてしまった。
(ううむ、やはりこの程度ではご機嫌を取れないか。しかしなぁ、流石に取れる手立ては限られてるんだよね、
生後間もないもんで。よし、話し掛けてみるか!)
次にその子に向かって手を伸ばし、ア~ウ~と声を上げてみる。
母や父は嬉しそうにクロエを指差してその子に何かを言っているが、彼はプクッとほっぺを膨らませると父の胸に顔を埋めてイヤイヤをした。
(あら~惨敗。こりゃ長期戦だな。
ま、慌ててもしょうがない。気長にいこう)
小さな“兄”の拒絶にお手上げ状態の彼女は、早々に彼へ媚びを売るのを諦めた。
その内お腹が空いてきたクロエは、母におっぱい下さいと言わんばかりに泣いた。
母はすぐにおっぱいを飲ませてくれたのだが、その事でも一悶着があった。
実はその小さな兄も未だおっぱいを飲んでいたのだ。
クロエがおっぱいに吸い付くと、物凄い声で泣き出して暴れ始めたのだ。
父は慌てて兄を連れて、部屋を出ていった。
部屋の外から兄の泣き声が響いてきて、クロエは気が引けた。
(あ~、こりゃ完全にライバル視されたな。下手したら敵認定だよ。う~ん、中々に関係構築は厄介そうだな。でも、年子を持つお母さんってこんな感じなんだよね?
うわぁ大変!早く手が掛からない子にならなきゃね。お母さん待っててね、日々精進します。
小さな兄よ、今はしょうがないけど、出来るだけ早く貴方に母を返しますから~暫しご辛抱を!)
おっぱいに吸い付いてゴクゴク腹ごしらえをしながら、小さな兄に少しだけ謝る彼女。
やがてお腹一杯になった彼女は、いつも通り母にゲップを出させて貰って落ち着く。
母が大きな声で何かを叫ぶと、廊下から疲労困憊の父と、その父に抱かれた兄がやって来た。
未だしゃくり上げている兄を見て、母はしょうがないわねとばかりに苦笑いする。
クロエを父に渡し、兄を受け取る母。
そこでまた事件勃発。
クロエを近くにした兄は、彼女の頭をペチン!
(アウチッ!…やったな?これはイカン。
小さき兄よ、暴力はイカン!小さければ何をやっても赦されるってぇ訳じゃあ無いんだよ?況してや自分より小さなか弱き女の子に手をあげるとは。
フフフ、これにはペナルティーが必要だな。よし、両親に叱って頂くとしますかね。さぁ兄よ、覚悟しろっ!)
クロエは息を大きく吸うと、耳をつんざく様な大声で泣き出した!
「ウビャー!ビギャー!フンギャー!」
火が付いた様に泣き出した彼女を見て、父は慌てて叩かれたクロエをあやし、母は叩いた兄を叱る。
見る間に兄はフルフル震えだし、又大声で泣き出した。
しかしクロエは兄の泣き声を聞いても、泣き止まない。
彼女は兄に塩を送る気は毛頭無いからだ。
(悪いことは悪い!しっかり叱られて泣いてもらう。最初が肝心!
弱いものに、暴力ダメ!ぜったい!)
小さな兄も大変な妹を持ってしまったものである。
そんな事とは全く考えが及ばない兄はひたすら叱られたことで泣き、両親は泣く小さな子供達に手を焼くばかりだった。
次話は明日か明後日投稿します。