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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
49/292

49. じゃんけんぴょん?!

お読みくださりありがとうございます。


50話到達です。なのにまだまだ序盤の序盤、書きたいこと書いてたら時が進まない。ハハハ。


退屈している兄に手遊びを教えます。

皆様よくご存知のじゃんけんです。


ただグーチョキパーの解釈は諸説あると思います。取り合えず私自身が聞いている説を使っています。ご理解くださいませ。

一頻(ひとしき)り不満を叫んでいたコリンだったが、やらかした後だけに声にいつもより元気が無く、やがてスゴスゴとリビングの一角に置かれた自分の玩具箱を漁り始めた。


ミラベルは忙しい母のお手伝いをしている。


暇そうにしているコリンを見て、ちょっと可哀想になったクロエは何か暇潰しが出来ないか考えた。


(ん?そういやこの家の子って、手遊びとかしているところ見たこと無いや。もしかしてこの世界ってそういった遊びは無いの?じゃんけんとか?)


クロエが腕を組んでウンウン唸ってると

「ウンウンうるさいなぁ~!……ナニやってんだよ?」

と暇で暇でしょうがなかったコリンが釣れた。


「お兄ちゃん、じゃんけんっちぇ知っちぇりゅ?」


絶対解る訳無い問いを兄にしてみる。


案の定コリンはキョトンとして

「じゃんけん?何だそれ?」

と聞いてきた。


クロエはう~んと考えてから

「手にょ形れ勝っちゃり負けちゃりしゅりゅ遊び。3ちゅ形ぎゃありゅにょよ。グーちょパーちょチョキ。解りゅ?」

と手の形をしてみせながら、説明する。


(流石にこのプレゼンで興味持つ子はいないか……。ワケわかんないよね~!)

と自虐的に自分に突っ込みを入れながらそっとコリンの顔を窺う。


するとコリンはジーッとクロエの手を見つめている。


(えっ?!ウソッ、まさか今ので食いついた?!……暇過ぎたのね、お兄ちゃん……)


「グーとパーとチョキ?何なんだこの形?」

とコリンも自身の手で真似て形を作ってみながら首をかしげる。


(よ、よし!何でも良い、食いついたんなら話すだけ話してみよう!)


「んちょにぇ、グーは石にゃの。パーは紙にぇ。チョキは裁縫にょ鋏。解りゅ?」

クロエはゆっくり説明しながら、コリンが理解出来ているか見つめる。


「ああ、石と紙と鋏ね。石と鋏は何となく解る、うん。でも手を広げたら紙?何でなんだよ?」

コリンがパーの紙が納得いかず、パーの手のままクロエに突っ込む。


「しゃあ?紙にしちゃきゃっちゃんらよ。理由はにぇ、勝ち負けにょ決め方にありゅかりゃね」

と、凄く強引にコリンの疑問をスルーする。


「勝ち負け?ああ、そう言ってたよな。この手の形でどう勝ち負けを決めるんだよ?」

質問を無視されたにも関わらず、クロエに先を促すコリン。

信じられないことだが、あんなプレゼンだったのに完全に興味を持った様である。

余程遊びに飢えてるのだろうか。


「パーはチョキに負けりゅにょ。理由は紙は鋏じぇ切れりゅきゃりゃ。解りゅ?」

クロエがパーの左手にチョキの右手をチョキチョキと鋏の様に動かしながら、切る真似をして見せる。


「あ、確かに。切られたら負けか~。うん、解る。じゃあチョキが一番強いのか?」

とコリンは自分の右手をチョキにしてクロエに聞く。


クロエは首を横に振りながら

「違うにょ。チョキはグーに負けりゅんらよ。理由は鋏じぇ石は硬くちぇ切れにゃいきゃりゃ。にぇ?」

と今度は左手をグーにして、右手のチョキの鋏で鋏んで切れない真似をする。


「あ、そうか!鋏じゃ石は無理だ……。じゃ、じゃあグーが一番強いのか?やっぱり紙のパーが一番弱いんだろ?」

コリンはグーをパンチの様に突き出してクロエに勢い込んで聞く。


「違うにょ。グーはパーに負けりゅんらよ。理由は紙は石を包みゅ事ぎゃ出来りゅきゃりゃ。……解りゅ?」

又左手でグーを作ると右手のパーで包み込んで説明するクロエ。


(コレなんだよ~!このパーがグーに勝てる理由が中々納得出来ないって言う人、たまに居るんだよ~!確かにアタシも何でコレだけ包むんだよっ!って考えた事あるし。……さて、コリンお兄ちゃんはどうかな~?)


クロエの手をジーッと見つめてから、自分の右手のグーを見つめるコリン。


「変!おかしい!何で包んだら負けなんだよー!切ったり切られたりじゃ無いのか?!これ、絶対パー勝ってないよ!グーのが強いって!」


コリンがクロエの説明に食って掛かる。


(はい、来たーー!やっぱり納得出来ない派でしたか~。でも解るよ解る、うん。しかし、重要なのはそこじゃないんだよ~!だから悪いけど、この最もな質問もスルーさせて貰うね)


クロエは一つ頷くと

「何れ何らろにぇ?れもしょう決まっちぇりゅにょ。らからお兄ちゃんもそう決まってりゅっちぇ考えちぇにぇ。小しゃい事は気にしにゃい~。良い?先に進みゅよ」

と又々強引に質問を退けて、コリンにも納得しろと迫る。


コリンはいつになく強引に話を進めるクロエにいささか圧されたように

「そ、そうなのか?……でも絶対ちがうと思うんだけどなぁ……何か変な感じだけど……まぁそうしろって言うならそれで良いけどさ。それで?勝ち負けこれでどうなるんだよ?」

と自分の手を開いたり握ったりしながら聞いてきた。


クロエはコリンにも解るように、自身の両手を使って各パターンの勝敗をシュミレーションして見せた後

「れ、グーはこうらちょ負けちゃうにょ。……しゃっき言っちゃ通り“じゃんけんぴょん”にょ合図じぇ、お互いに相手に勝ちぇりゅちょ考えちゃ形れ同時に出しゅんらよ。れ、出しちゃお互いにょ手を見て勝ち負けぎゃ決まりゅ……簡単れしょ。やっちぇみりゅ?」

と手を振りながら誘ってみる。


(小憎たらしい妹の誘いに乗ってくれるかな……どうかな?)


「やる!絶対負けない!」

とすぐさま乗ってきたコリン。


(おおっと、即答ですか!やる気ですね~よしよし!)


クロエはニッコリ笑って

「うん、じゃやっちぇみよう!いっきゅよーー!しぇーにょっ!」

と向かい合って、手を軽くリズムを取るように上下に振る。


「「じゃ~んけ~ん、ぴょんっ!」」


……クロエがパーで、コリンがグー。

クロエの勝ちである。


「あっ!お前が紙で僕が石なら……えーー!僕の負けー?……絶対石のが、違うグーのが強いのに!」

と地団駄を踏みそうな勢いで悔しがるコリン。


クロエはニンマリと笑いながら

「勝負らきゃらにぇ。後じぇ文句言うにょは格好悪いよ~?じゃあ、みょう一回やりゅ?」

とコリンを“挑発”する。


コリンがキッ!とクロエをにらみ

「やる!次こそは勝つ!」

と拳を握る。


(やっぱり男の子だよね。勝ち負け入ると夢中になっちゃう。聡もそうだったよね……何だか懐かしい……)


クロエがコリンを嬉しそうに見ていると

「何見てんだよっ!早くやろっ!」

と臨戦態勢のコリンが彼女を急かす。


「うん、じゃあ、いっきゅよぉ!じゃ~んけ~ん、ぴょん!」


クロエがグーでコリンがチョキ。

……またもやコリンの負けである。


(大人げないけど、最初が肝心!さあ、コリンお兄ちゃん不貞腐れずに立ち向かってこれるかな?)


「グガァ!又負けたーー!何でだよ!さっきお前紙だったろ?!なら鋏で勝てる筈じゃないかっ!何で石にすんだよっ!」

と当たり前の事を反則とでも言いたげに責めるコリン。


クロエは又々ニンマリ笑い

「しょりゃ変えりゅよぉ。相手に簡単に解りゅ様にゃ手は駄目れしょ?勝負にゃんらよ?解らにゃい様に考えなきゃ~」

とアドバイスをする。


「ググッ……くっそぉ!もう一回!今度こそ勝つ!いくぞっ!じゃ~んけ~ん、ぴょん!」


(あ、あれ、あれれ?何かじゃんけんぽん!じゃなく、じゃんけんぴょん!になっちゃってる?!アタシの滑舌が悪くてぽんがぴょんになるせいだ~!)


合図の掛け声を妙な具合に変えてしまった事に気付いたクロエがパーを出し、気合い入りまくりのコリンもパーを出した。


「えっ………?いっ、一緒だぞ?……クロエ、これはどっちが勝ちになるんだよ?」

とコリンが戸惑った表情を浮かべて、クロエを見る。


「きょれは勝ち負け無し。“あいきょ”っちぇ言うにょ。らから勝ち負け決まりゅまれ、何度もやりゅんらよ」

とクロエが説明する。


「そっか。そりゃそうだ。じゃ“あいこ”の時はどうやるんだ?」


コリンは“あいこ”の手のまま、クロエの指示を待つ。

遊びの為なら素直になれる3才児である。


「簡単らよ。みょう一回、あいきょれしょってやるらけ」


滑舌最悪のクロエの言葉だったが、遊びの為なら耳も冴えるコリンはきっちり聞き取った。


「あいこでしょ!だな。よし、やるぞ!あいこでしょっ!」


クロエがグーでコリンがパー。

初めてコリンがクロエに勝った。


「やったーーー!勝った勝ったっ!初めて勝った!よおし、もう一度やろう!じゃ~んけ~ん、ぴょん!」


“あいこでしょ”は聞き取れたのに、じゃんけん“ぴょん”だけはどうやら彼の中に既に刷り込まれてしまったらしく、“ぴょん”が確定してしまった。


(あちゃあ~。“じゃんけんぴょん”になっちゃったよ……まあ誰も知る訳無いし、ぴょんも可愛いと云えば可愛いから構わないかぁ………しかし、アタシの滑舌早く良くしなきゃな……)


クロエが諦めの笑顔になったのをコリンがどう勘違いしたのか

「何だよぉ~。負けたからってそんな泣きそうになるなよぉ。僕のがお兄ちゃんだから仕方無いんだよ。しょうがないなぁ!じゃあもう一回やろうぜ!」

と、とてもとても嬉しそうにクロエを慰めてもう一勝負とねだってきた。


(ほほう?もう天狗になってますねぇ、コリンさん。よぉし、このクロエさんがそのヒョロ高い鼻を折ってあげましょうかねっ!)

とクロエがニヤリ、黒い笑みを浮かべる。


「良いよ~。お兄ちゃんやりょう!じゃ~んけ~ん………あ~いきょ~れ………!!」


“腹黒”クロエと“天狗“コリンの勝負は、勿論中身25才の“腹黒”が圧倒的な強さを見せ、ヘタレ“天狗”のヒョロ高い鼻はすぐポキポキと折られてしまい、“天狗”が悔し紛れの呻き声を上げながら“腹黒”に再勝負を挑むという状態が、次の挑戦者となるミラベルが来るまで続いたのだった。

次話も明日か明後日投稿します。

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