41. 家族会議その3“コリンを良い子に矯正計画”
お読みくださりありがとうございます。
家族会議が終了します。
果たしてどのような結末になったのでしょうか。
コリンの運命や如何に?!です。
「痛い~!痛いよ~!僕のお尻が壊れちゃったよぉ……こんなのヒドイ~!」
しっかり8回、コレットが思いっきりコリンの尻を叩きのめした。
コレットも流石に精神的に疲れたのか、無言でミラベルが用意してくれた水桶に赤くなった右手を浸している。
勿論叩かれたコリンの尻は見るも無惨に赤く腫れ、所々色が赤黒くまだらになっている箇所もあった。
そのコリンの尻をガルシアが、無骨かつ大きな手で水に浸した布を使って尻の天辺を覆いながら、団扇で扇ぎ熱を取ろうとしていた。
「2・3日は尻が腫れ上がったまんまだな、こりゃ。まあ俺がその間こいつの世話をするさ。責任は俺が執るって言ったしな。
……コリン、お尻ペンペンを舐めてただろう。これで分かったか?本気でペンペンされたら、される方もする方もこんなになっちまう、非常に恐ろしい罰なんだぞ。
更に言えばお前は椅子にしばらく座れんし、寝るのもうつ伏せだ。オムツの布が擦れても痛いし、ズボンも痛いかもしれん。……最悪スカート穿かせるか。
後食事は痛みが引くまで、立ったまま食べにゃならんだろうな。マナー違反だが、今回はしょうがないと見なす。
はあー……さて、コレット、ミラベル。そろそろコリンの扱いについて、細かいところを決めないとな。お前達の意見を聞きたい。良いか?」
ガルシアはコリンの尻を扇ぎながら溜め息を吐き、しかし気を取り直して今後の末息子の処遇について決めていこうと女性2人に提案した。
右手を冷やしていたコレットと、心配そうに母の手を見つめていたミラベルは、ガルシアを見て頷く。
「ええガルシア、決めないとね。
先ずは寝室を分けた方がアタシは良いと思うの。流石に寝室を分けてしまえば、コリンも寝ているクロエに悪さが出来なくなるわ。いずれは分けるつもりだったしね。
で、その分け方なんだけど、アタシ達夫婦、ライリーとコリン、ミラベルとクロエでどうかしら?
ミラベル、貴女はどう?嫌かしら。」
とコレットからまず1つ提案がなされた。
ミラベルが笑ってから
「賛成!アタシとクロエは女の子同士だからアタシは嬉しいわ。……ただ、ライリーお兄ちゃんが気の毒すぎない?コレと同じ部屋だと負担が大き過ぎて、お兄ちゃんが可哀想だよね……」
と少し気遣わしげに意見を付け加える。
コレットもそれには頷き
「そこなのよ……この案は貴女達やアタシ達夫婦は問題なくても、あの子に迷惑がかかってしまうの。でも貴女はコリンと二人部屋、無理でしょ?」
とミラベルに問い掛ける。
ミラベルが顔をしかめて
「……毎日ケンカばかりして、このバカを殴り飛ばして良いなら一緒で我慢するけど……」
と最大限の“譲歩”をする。
「……無理だな。コレットの案で行こう。ライリーには俺が話をする。それにコリンのオムツ外しにはライリーの協力が必須だからな。トイレの使い方とか、小便の仕方とか教えにゃならん。
俺が教えるつもりだが、俺が無理なときはライリーに付き添わせて目を光らせないと、トイレが見るも無惨な状態になっちまう。
コリンは最初に厳しく叩き込まんと、トイレをとんでもない使い方で汚しかねない。希望的観測はこの際全て排除する。あらゆる最悪の想定をしておこう。」
眉を寄せてガルシアが2人にそう言うと、2人も重々しく頷いて同意する。
コレットが又
「そうだ、コリンの日中の過ごし方なんだけど、ガルシア貴方畑でお手伝いを教えてくれないかしら?
大変だと思うけど、畑なら少々粗相しても大丈夫だし、貴方と触れ合いが足りないのも良くない事だわ。ライリーが行く日も一緒に行かせたら、男同士で交流も深まるでしょ?
勿論体調や貴方の仕事の都合で、柔軟に対処するつもりよ。どうかしら?」
と1つ提案した。
ガルシアも頷いて同意する。
「……ああ、そうしよう。俺も反省したよ。コリンが俺に要求を何もしなかったのは、こいつの中では俺は殆ど意味の無い存在って事なんだ。……流石に堪えた。俺なりにやれることはやってるつもりだったんだがな。
コリンが言ってたが、俺の言動も問題だな。家の仕事は女の仕事、男は外で仕事するか……。そんな台詞をお前に吐いてたとは。恥ずかしいよコレット。すまなかった!以後はそんな不遜な言葉は一切口にしない!許してくれ」
と言うと、ガルシアはコレットに深く頭を下げた。
コレットは優しく笑って
「ガルシア、貴方は十分やってくれていますよ。コリンが言ってた貴方の言動は、恐らく何かアタシ達が喧嘩したときのものでしょうし、アタシもきっと同じくらいヒドイ言動を貴方に返していたハズよ?謝らないでくださいな」
とガルシアを労る。
ガルシアは苦笑しながら
「ありがとう…。しかし反省するところはしないとな。
あとミラベルは何か無いのか?しっかり考えてくれ。」
とミラベルに聞く。
ミラベルは顎に指をあてながら
「1つあるの……。オムツの処理よ。このバカ自分のも汚くて触りたくないとか、トイレ行くの面倒臭いとか言ってたじゃない?
だからオムツ、今日からコイツにコイツの分は洗わせたらどうかしら?ああ、クロエのはアタシが洗うわ。コイツのはコイツに綺麗にさせれば良いのよ!アタシが教える。厳しくね!ビシバシいくわよ。
ね、父さん母さん、どうかしら?」
と伺いをたてる。
コレットとガルシアは顔を見合わせると、どちらからともなく頷いてミラベルを見て応えた。
「それで行きましょう。あの台詞は例え息子でも許してはおけない。自分でも触りたくない自身の汚れ物を、わざわざ触って洗って綺麗にしてくれている家族に対してあんな台詞……。性根が腐ってると言ったミラベルが正しいわ。自分の物は自分でってね!……でもミラベル、クロエのは母さんが洗うわよ。貴女がしなくても……」
とコレットがミラベルを気遣う。
ミラベルがキョトンとして
「だってクロエのは汚くないもの。可愛い妹の汚れ物よ?姉だもん、出来るわよ~!……ホントはコリンだって弟だし、今までそう考えて来たんだけど、今日からコリンのはやらないわ。あ、バカが風邪とかなら別だけどね。でもバカだから風邪引かないか!」
と答えた。
「まだ勉強部屋の出入りは禁止で良いな。こんな状態で座学など出来る訳がない。先ずは勉強に集中出来るように常識とマナー、努力すると云うことを身に付けさせてからだ!ディルク先生にそう言っておこう。とまあこんなものだな。
……コリン、分かったか?今から始めるからな!」
と3人の目の前のうつ伏せで尻丸出しのままのコリンにガルシアが宣言する。
暫く前から泣き声も上げなくなったコリンが、さぞかし不服や不満を声高に言うだろうとガルシアは厳しい顔で睨み付ける。
しかし目の前のコリンは一言も発しない。
うつ伏せたままで足すら動かさず、反応しないのだ。
「……おい、コリン?どうしたんだ?コリン、コリンッ!しっかりするんだ!」
まさか尻を叩いただけでコリンの体の他の部分まで変調を来したのかと、ガルシアは慌ててコリンを抱き起こす。
コレットは溜め息を吐きながら
「ガルシア……慌てなくても良いわよ。よく見てごらんなさいな。ほら」
とガルシアの腕の中のコリンを指差す。
「えっ……て、コリン……こ、こいつっ!」
ガルシアの腕の中のコリンは、世にも幸せそうな顔でヨダレを垂れ流しながら寝ていた。
ミラベルが首を横にフリフリ
「アタシ達の話が長かったからでしょ。大体コリンがこんなに大人しい訳無いもの。……結構前から寝てたんじゃない?床見てよ、ヨダレでベタベタじゃない、ほら」
と床を指差す。
ガルシアはミラベルの指差した床を見てから、腕の中のコリンを見つめフルフルと震え出した。
「お前と云うヤツはぁ!一体どこまでめでたいんだー!このバカ息子め!起きんかっこらっ!」
ガルシアがコリンの頬をつねる。
「ん……もぉご飯?…って、イダーー!イダイダ痛ーー!放してってば!」
目覚めたコリンがガルシアのぶっとい腕をペチペチ叩く。
ガルシアはコリンの頬をつねったまんま
「良いか、よく聞けバカ息子!今日から家族皆でお前の性根を叩き直す!お前の文句、異論は一切聞かん!俺が決めた!今からだ、覚悟しておけ!分かったら返事しろっ!」
と怒鳴った。
「な、なんれ?!何れ厳しくなってんの?!話違うーー!」
「そんな話は始めからしていないっ!意見を言えと言っただけだ!返事はっ!」
ガルシアが物凄い形相でコリンに顔を近づける。
「えーーー!やだーーー!」
まだ逆らう気力があるコリンに3人はある意味感心しながら、ガルシアが最後の一撃をぶちこむ。
「今度こそ俺に尻を叩かれたいかーー!嫌なら返事しろっ!」
「嫌ーーー!言うこと聞くーー!はいーー!」
………ということで、『コリンを良い子に矯正計画』がスタートしたのだった。
次話は明日か明後日投稿します。