39. 家族会議その1“下衆3才、発覚”
お読みくださりありがとうございます。
リビングの様子を詳細(?)に書いています。
コリン、小さいのに見事な下衆っ振り!
中々こんな下衆はいませんよ。
果たしてこんな3才児を更正させることが出来るんでしょうか。
さて、時はほんの少しだけ遡る。
とんでもない方法で鬱憤を晴らそうとしたコリンをミラベルが見咎めて、その場で首根っこを掴みリビングに引き摺って来た。
リビングにいたのは畑から帰ってくる父と息子の着替えを用意していた母のコレット。
扉が開いて、可愛らしい顔を憤怒の余り凶悪に歪ませたミラベルが、ギャーギャー悲鳴を上げて逃げようとするコリンの首を鷲掴みにして、足音も大きく入ってきた。
一目見て異常事態と察し、コレットが持っていた二人の着替えを脇に退けると、ミラベルに急いで近付く。
二人の前に立ち
「どうしたの、二人とも?!ミラベル貴女……顔付きが物凄く怖いわよ。コリン、貴方又何をやらかしたの?」
と戸惑いながら話を聞こうとする。
コリンが母にすがり付く様に
「何にもやってないよ!ミラベル姉ちゃんが急に僕を掴んで怒り出したんだもん!離してよ!痛いって!」
と泣き声を上げながら助けを求める。
ミラベルがフンッと鼻息荒くコリンを睨み付け、首根っこを掴んでいた手をブンッ!と振り払うと、見事にコリンがすっ転んだ。
「イタッ!ひどいよ!怪我しちゃうじゃないか!母さん、姉ちゃんを怒ってよ!」
コリンが泣きながらコレットの服にしがみついて、ミラベルを指差し糾弾する。
「小さい子に乱暴したり意地悪したらダメなんでしょ?姉ちゃん僕をいじめたよ!早く怒ってよ!」
コレットは倒れたコリンを抱き起こし、ミラベルに少々キツ目の口調で問う。
「……ミラベル?確かに乱暴ですよ。こんな事をするなんて貴女らしくないわ。何があったの?ちゃんと説明なさい」
すると母の言葉を聞いたコリンが大声で泣き出し、ミラベルが喋れないように邪魔をする。
「痛いよー!あちこち痛いー!早く怒ってよ!うわーん!」
痛い筈の体をバタバタ動かしながら、とにかく早く母に姉を叱って貰おうと急かす。
コレットはチラリとコリンを見て溜め息を吐くと、凶悪な顔のままコリンを睨み続けるミラベルの肩を叩く。
ミラベルはコレットを見上げると、歯軋りをしながらコリンを指差して言い放つ。
「母さん!このバカを何とかしないと駄目よ!この子ったらあれだけ言っても解ってないわ!……アタシや母さんに叱られてむしゃくしゃしてたのを、クロエを起こしていじめる事で晴らそうとしたのよ!アタシが今度クロエに手を上げたら容赦しないって脅した傍から!完全に頭に来た!もう許さない!……甘やかし過ぎたのよ……コリンは性根が腐ってる!殴り倒してでも分からせてやる!」
今にもコリンの胸ぐらを掴んで張っ倒しそうなミラベルだったが、横の母から感じる冷気に少し頭の上っていた血が下がった。
コリンはミラベルが感じた母の冷気など全く分からないのか、コレットの服を引っ張り足をバタつかせて泣き続けている。
「……それは本当なの、ミラベル?コリンが言ったの?それとも貴女の想像?」
「ボ、ボク言ってない言ってない!それより痛いよ!早く姉ちゃんを……」
「ちょっと黙りなさいコリン……ミラベル?どうなの?はっきりおっしゃい。」
ミラベルが母の顔を見上げると、見事なまでに張り付かせた笑顔がそこにあった。
「ゲッ?!」と内心退きながら、ミラベルは大きく頷いて母に答える。
「コリンが言ったのよ。アタシが首を掴んで「……させると思うの?バカがっ!」って言った後、「クロエを起こしていじめようなんて考えて無いよ!」ってね!……考えて無い奴が言うかっ!」
吐き捨てるようにミラベルがコリンに言うと、コリンがピタッと泣き止んで慌てて反論する。
「あ、あれは違う!考えて無いよ、ホントだよ!可愛い弟って言ってたじゃないか!信じてよ!……母さん違うよ!止められたのにいじめてないよ!」
「止められた……ですって?止められたのね、ミラベルに。そうなのねコリン」
コレットが静かにコリンの言葉を復唱して、彼を見つめる。
既にその顔には張り付いていた筈の笑顔すら無く、無表情で目だけがギラリと異様に光っている。
漸くコリンは母の異様な雰囲気に気付いて唾を呑み込んだが、それでも必死に自分の無実を主張する。
「な、なんの事か分からないよ!でも姉ちゃんが僕をいじめたのは確かだ!倒したのは見てたでしょ!痛いよ!だから母さん早、く……えっ、うわあっ!」
コリンの無実の主張は、素早く動いたコレットに因って途切れた。
彼女は無表情・無言のまま、片手でむんずとコリンの服を掴むと物凄い力で引っ張り上げ、腰を下ろすと同時に膝に腹這いで彼を乗せる。
暴れるコリンの体を左手と膝で押さえ付け、右手は彼に着けたかぼちゃオムツを一枚一枚剥ぎ取っていく。
コレットは剥ぎ取りに集中しているので、剥ぎ取った布オムツがリビングの宙を舞い、彼女とコリンの周りに散らばって落ちる。
「待って待って!止めてよ止めて!いじめてないから!ホントだよ!姉ちゃん助けて!母さんを止めて!叩かれるのヤダー!」
焦るコリンの声にミラベルは一切反応せず、ひたすら彼女は母が剥ぎ取って宙に放つ布オムツを無言のまま拾い集める。
やがてコリンのかぼちゃオムツは全て剥ぎ取られ、彼の下半身は丸裸になり、彼の小さなお尻が丸出しとなった。
次いでコレットは右膝を立ててコリンのお尻が突き出された状態になる様に体勢を調える。
その間終始無言・無表情のまま、コレットは自身の右手を高く上げるとコリンの小さなお尻に勢いよく降り下ろした!
「バカ息子っ!」
バチーーーン!
「このバカ息子がっ!!」
バチーーーン!!
「どこまでバカなのっ!!!」
バッチーーーーン!!!
「今日と言う今日は許さないっ!!!」
バッチーーーーーン!!!
「二度とそんな事考えられないように、叩きのめしてやるわっ!!!」
バッチーーーーーーン!!!!
「ギャーーー!イダーーーーー!止めてーーー!助けてーーー!」
母の雄叫びと息子の悲鳴が重なり合い響き合って、世にも恐ろしいハーモニーがリビングから響き渡る。
聞く者を恐怖に陥れる、その妙なる音楽ならぬ耐えられない騒音は、畑から帰ったばかりのガルシアとライリーを慌てさせるには十分過ぎた。
「な、何だ!一体何が有ったんだ!……うおっ!ま、待て、待つんだコレット!コリンの尻が壊れる!まだ3才だぞ!落ち着けっ!」
ガルシアがコレットの右手を必死で抑えながら宥める。
コレットは血走った目をガルシアに向け
「ガルシア、止めないで!このバカ息子の尻がどうなろうが知ったこっちゃ無いわ!今日と言う今日は許さない!まだ3才だから、早くこの腐りきった性根を治すの!治るまで叩きのめすのよ!親としての責任よ!離して!」
と噛み付いた。
ガルシアが普段からは考えられない狼狽ぶりを見せながら、それでも妻の暴走を何とかしようと必死で宥め続ける。
「待て待て!叩いてもバカは治らんぞっ!尻が壊れて余計にオムツが長引くだけ損だ!!とにかく分かったから、叩くのは待て!」
オムツが長引くの一言が効いたのか、コレットの右手が動きを止めた。
「ぐうぅっ!……一体この子はどうすれば小さな妹をいじめたり、嘘をつかないようになるの?!ガルシア!ねえっ!」
コレットはさっきのミラベルと同じ様に歯軋りしながら夫に叫ぶ。
「ふう…コレット先ずは落ち着くんだ、取り敢えずコリンに何か穿かせよう。ああ、ズボンだけでも構わん。ミラベル……じゃなくてライリー、穿かせてやってくれないか……頼む。ああミラベル、表情がとても凶悪だ……。折角の可愛い顔がシワだらけになるぞ。頼むから眉を寄せて歯軋りするのは止めなさい……」
ガルシアはコレットの背を擦って宥めながら、コリンをその膝から“救出”した。
同時に尻を叩かれるコリンを腕組みして睨み付けていたミラベルに対し、シワが増えると諭すと、彼女は慌てて顔をマッサージし始めた。
ガルシアはコリンの尻を見て眉をしかめる。
「うわ、こりゃイカンな……ライリー、ズボンは止めだ。水に濡らした布を急いで持ってきてくれないか?……コリン、上向くな。うつ伏せに寝ていろ。尻が痛くてどうせその体勢しか出来まい。冷やさねばな。コレット、お前もだ。手を冷やせ。隠してるが真っ赤だろう。早く冷やしてこい、ここは良いから」
ガルシアが次々に指示を出す。
先程までの荒れた空気は消え、どことなくばつの悪そうな顔をした3人と、一安心といった様子の1人はその指示に従い無言で動き出す。
漸く“治療”が一段落すると、うつ伏せに寝ているコリンの周りを囲むように、家族が座る。
コリンのうつ伏せた顔から
「いだい~いだいよぉ~。お尻が熱い~!お尻が痛くて動けない~!」
と泣き声混じりの呟きが聞こえる。
コレットとミラベルから事の詳細を聞いたガルシアとライリーは、顔を見合わせて深い溜め息を同時に吐いて頭を抱えた。
「……確かにこれは2人の怒りが理解出来るな…。コリン、お前はどうしてクロエをいじめるんだ。それが楽しいのか?」
ガルシアが幾分低い声でコリンに問う。
流石にその声を聞くとコリンも父を誤魔化す事は無理だと悟ったのか、ボソッと溢す。
「クロエが居るから僕が怒られるんだ……。皆クロエばっかり庇ってさ、僕はちょっとイタズラすると直ぐ叱られるし。だからその分だけクロエも嫌な思いをしたら良いんだ。クロエが小さいからって、僕だって小さいんだよ?!もっと優しくしてよ!オムツだってクロエもしてるし、未だ外さなくても良いじゃないか!僕だってオムツしたくてしてるんじゃないよ。……ラ、ライリー兄ちゃんがに、睨むからチビるんだもん!叱ってなくても叱られてる気持ちになるんだよ。だからつい、こう……出ちゃうと思うんだ!そ、そうだよ!だから僕は悪くないよ!」
とても正直だが、余りに身勝手極まりないコリンの言い分に、ガルシアは天を仰ぎ、コレットは拳を握りしめ、ライリーは溜め息を吐き、ミラベルは又凶悪な顔に戻った。
又不穏な空気が漂い始める中、微かにチリンチリ~ン!と言う涼やかな鈴の音が聞こえた。
「ん?どうやらクロエが目を覚ましたようだな。……ライリー、コリンの言い分を今から聞くつもりなんだが、さっきのの話を聞いてお前まで凶悪な顔付きに変わるといけない。お前なら大丈夫だとは思うが、気分が悪いだろうし念のためだ。起きたクロエを連れてディルク先生の小屋に行ってなさい。……コレットとミラベルは同席させないと不味そうだしな。良いかい?」
ガルシアは愚息と怒れる女性陣が対峙するこの場を引き受ける覚悟を決め、とばっちりで非難を受けたライリーを取り敢えず逃がすことにした。
ライリーは心配そうにガルシアを見やったが、苦笑を返す父に自身も苦笑で答え、リビングから出ていく。
扉のところでふと思い出したように振り返ると
「母さん、クロエのオムツ替えだけお願いできる?連れて来たら又声掛けるよ」
とコレットに頼む。
コレットもライリーの頼みに微かに笑顔で頷いて答えた。
ライリーはリビングを出て扉を閉めると
「そんなにコリンを睨んでいたかな……。寧ろ感情を出さないように気を付けてたんだけど、それが不味かったか……?」
と首を傾げ、又長い溜め息を吐いて寝室のクロエの元に向かった。
寝室のクロエを抱いて、ライリーはリビングの扉を開けコレットに声を掛けると
「クロエ!僕も小屋に行くよ!一緒に連れてって!兄ちゃんを助けて!」
と言うコリンの叫びが聞こえた。
流石にこれにはライリーも呆れた。
(コリン……お前それは駄目だ。さっきまで嫌な思いをさせたいとまで言ってた赤ん坊の妹に普通助けを求めたりするか?そこまで恥知らずだとは……。今回は母さんとミラベルに賛成だな。流石にこのままコリンを放っておくのは駄目だ!)
クロエとライリーが小屋に向かって家を出ると、残った4人によるコリンに容赦ない家族会議が再び始まったのだった。
次話は明日か明後日投稿します。




