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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
30/292

1-30 教室の環境と道具

お読みくださりありがとうございます。


前話から引き続き、子供達の勉強の様子です。


優秀な子供達を書くのは中々に難しいです。


自分が想像するにしてもモデルが居ないから(笑)


因みに少々参考にしたのは天才バ○ボ○のは○めちゃんです。


全く要素見えないかも。





 クロエはライリーの膝に立ったまま“教室”を見渡した。


 ライリーとミラベルでは勉強の進度が違うので、余り同じものを教えることがない。


 だから個別授業になり、大きな黒板とかそういう大人数向けの教材がなく、クロエの感覚からすると“教室”といった感じがしない。


 教材や教本にとても興味があるが、それも見当たらない。


 とてもスッキリした、悪く言えば何の面白味の無い部屋だと思ってしまうのだ。


 子供向け、特にミラベルにはもっと視覚的に楽しく勉強できるようになんとかしてあげたいなぁと考える。


(アタシの小学校や中学校時代を参考に、何か作れないかな。

 地図のポスターとか、あ、そうだ週の時間割なんかどうかな?後、カレンダーみたいに予定表を1ヶ月単位で作ったり。

 到達度を目で見えるように表にして、出来たら花丸を付けてやる気を出させるとか。

 それだけでも子供には効果的だと思うんだけど。

 そうそう!この世界の計算機を見てみたいな。ソロバンみたいな感じかしら?

 アタシは少しだけソロバンしたけど、アレは海外でも取り入れられたりしてとても優れているって評価されてた筈。

 もし見てみてソロバンのが良さそうなら作ってもらう手もアリだよね)


 クロエが部屋を見渡しながらブツブツ呟いていると、ライリーの黒板を持ったディルクが近付いてきた。


「すまんの、時間を取ってしもうた。次はこの問題を解いてみなさい。

 今度は答えだけでなく、どうしてその答えを導きだせたのか、経過を書きなさい。

 ライリー、出来るかね?」


「分かりました。計算と言葉での説明ですね。やってみます」


 クロエはライリーの膝の上でコケかけた。


(え?ちょい待って!

 何、ライリーお兄ちゃんは証明問題やってんの?!

 ちょ、ちょっと問題見たい見たい、読ませて読ませて!

 ……あちゃ、駄目だこりゃ。アタシ単語が分かんないから、問題読めないじゃん。やっぱり単語覚えなきゃだわ)


 クロエがライリーと自分の前に置かれた黒板の問題を凝視していると、今度はディルクがクロエを抱き抱えて自分の机に戻る。


 ライリーは黒板を見て、問題に取り組み始めた。


 ミラベルはさっき間違えた計算の類似問題をディルクに書いてもらい、取り組んでいる。


 又教室は静かになった。


 クロエはディルクに小さな声で話す。


「せんせい。はなし、したい、です。ふたり、べんきょう、じゃま、したくない。

 となり、いいですか?」


 ディルクは片眉を上げて小さく頷くと、静かに隣のリビングに移る。


 リビングに移り、行儀は良くないがテーブルに直接お座りさせてもらうクロエ。


 その前の椅子に腰掛けたディルクがクロエと目線を合わせて、身を乗り出すように質問する。


「さて、これで良いかね?今度は何を考えたんじゃ?」


「ちず、もっともっと、おおきい、ある、ですか?」


「地図か?有るにはあるが、中々手には持ち辛いと思うぞ。このテーブルより大きいからな。どうするんじゃ?」


「ちず、もつ、しない。

 ちず、かべ、はるです。

 すぐ、みれる、べんり。べんきょう、はかどる。

 ちず、おおきい、ちり、ふたり、わかりやすい。

 せんせいもせつめい、らくです。

 ふたり、どうじ、じゅぎょう、しやすいです」


「フム。騎士団の会議室の様じゃな。二人じゃから要らんかとも思うたが違うかの?」


「ある、ぜったい、よいです。

 おおきいちず、とても、よくわかる。

 おおきいちず、ぜいたく、ですか?」


 クロエが首をかしげて聞く。


「そんなことはないぞ。寧ろ儂が少々気配りが足らんかったようじゃな。

 其方がそう感じるならそれは必要なことであろう。

 後思い付いたことはあるかな?」


「けいさんき、ある、ですか?」


「ああ、物置にある筈じゃ。取ってこよう。待っていなさい。」


 ディルクは教室の隣の物置に計算機を取りに行く。


 クロエはテーブルの上で腕を組み、目を閉じながら何かウニャウニャ呟いている。


(えっとソロバンの形はこんな感じで、確か横から見たら菱形に見えるのよ、珠が。

 四桁毎にこの5の珠と1の珠の間の仕切り板にマーキングされてて…。うん大丈夫、覚えてた。説明できる)


 やがてディルクが計算機を持ってきてくれた。


 一目見てクロエはソロバンの方が優秀だと分かる。


 どう見ても前の世界で幼児が使っていた丸玉を右左に移動させて一桁二桁程度の計算しか出来ない玩具と同じ様な物だったからだ。


 今度はクロエが身を乗り出して、ディルクに提案する。


「せんせい!けいさんき、アタシ、つくる、したいです。

 もっと、よい、けいさんき、つくる、できます」


「まさか計算機が作れるのかっ?!クロエ、その計算機の仕様を詳しく説明してくれるかね。

 図解してくれれば助かるが、描けるかね?黒板が良いか、紙に描くか?」


 ディルクは目を輝かせてクロエに質問する。


「アタシ、こくばん、かく、です。せんせい、かみ、せいしょ、する、おねがいします。

 しょくにんのみ、つくる、できる、おもいます。

 くわしく、かく、します」


 クロエが請け負うとディルクは予定を考え始めた。


「早々に作る方が良さそうじゃな。午後から取り掛かるとしよう。

 ライリーとミラベルの午後の予定は剣の練習じゃが、早目に切り上げるか。

 クロエ、其方は昼寝しておきなさい。儂が迎えに行こう。

 良いかね?」


「はい!ひるね、します。

 でも、ふたり、けん、れんしゅう、みて、ほしい。

 けいさんき、より、ふたり、だいじです」


 クロエは兄姉の練習の邪魔したのではないかと今更ながら心配し出した。


 ディルクは笑いながら頷くとクロエに優しく説明する。


「なに、心配は要らぬよ。長くダラダラと練習するばかりが良いのではない。

 況してや未だあのように体が成長途上の子供に過剰な練習量は寧ろ毒じゃ。集中力も続かぬし、怪我をさせては元も子も無いであろう?

 型を教え筋力を徐々に付け、それから剣を合わせる。

 先ずは体を整える。

 剣は単なる戦いの道具ではない。心も体も同じように成長させねば使いこなせないのじゃよ。

 だからその時々に応じて練習内容を効果的に組んでいく。時間が短ければ短いなりの練習内容を組み立てれば良いだけ。

 其方が気にすることは無い。安心しなさい」


 クロエはホッとしたように笑みを浮かべ、小さく頷いた。


(しかしたまげたの。今日ちょっとつついたら、2つも道具を考え出した。

 これは益々楽しくなってきた。じゃが、同時に危険が更に増した。悪意ある者がこの事実を知り、この子を手に入れればありとあらゆる使い方が出来る。

 例え“黒髪の乙女”で無くともだ。

 ……又近い内にジェラルドと話をせねばなるまい。この子の平穏を守らねば。

 クロエ本人は至って呑気な性質の様だからのう。……いつかクロエが自分のことを話す日が来ると良いが。

 聡い子だから自分で話さなければならないと感じたら話してくれる筈……本人はうっかりしたみたいだか、どうやらこの世界の者ではないらしいしな。

 あの言い方じゃとやはり違う世界を知っておるようだ。

 考え出した道具は恐らく彼女の世界の物と考えるのが妥当。

 どの様な物なのかその造りを聞けば彼女の居た世界がどれくらい進んでいるのか大体分かるじゃろう)


 ディルクはクロエに降りかかるであろう未来の災難について、ジェラルドから説明を受けている。


 ディルクも半信半疑だったが、クロエに会ってみるとジェラルドの懸念は当たっているとわかった。


 その上で又新たな危惧の種が生まれたことを話したら、ジェラルドはどんな反応をするだろうか。


 ディルクはジェラルドの苦悩を聞いているが、敢えて未だ相談には乗っていない。


 同じ立場に立つことが出来ない自分が、さも解ったような無責任な答えをジェラルドにしたくないからだ。


 ディルクには家族が居ない。


 結婚していたことはあるが、不幸にも大事な伴侶を事故で喪ったのだ。


 情の深い彼はそれ以来別の女性と色恋沙汰にはならないと、亡くした伴侶に誓っている。


 そして情の深い彼が本来家族に注ぐ筈だった愛情や熱意、配慮等は全て教え子達に向けられるようになった。


 結果ジェラルドがディルクに多大な信頼を寄せる様になる程の、教え子達から慕われ愛される教師となった訳である。


 彼からしてみれば至極当たり前の感覚で教え子と向き合ってきただけなのだが、何処の世界もご多分に漏れずそういう優秀な指導者は中々居ない。


 クロエにとってディルクに会えたことは、とても幸運だったのである。




 そんな二人は予定のすり合わせを終えると、課題に取り組む教え子二人の元に戻る。


 ミラベルが気付き、挑戦的な笑みを浮かべ黒板を片手にディルクに近寄る。


「さあ!先生今度こそ満点ですよ!アタシは何度も見直ししたんだから。お願いします!」


「そうか、それは楽しみじゃのう。では気合いを入れて採点をしような」


 ディルクは楽し気に黒板を受け取ると、ミラベルにクロエを渡して採点を始めた。


 クロエはミラベルの問題をチラ見する。


 その問題の程度を見てクロエは驚く。


(普通の計算問題だけど、これは小学校2、3年のレベルだよ。5才で出来るんだ。

 やっぱりこの二人スゴいわ。

 コリンお兄ちゃん、貴方はアタシを置いていかないで!

 アタシだけおバカさんなのは、悲しすぎるじゃないですか。

 でもあの子もきっと賢いんだろーな……はぁ)


 クロエは小さく溜め息を吐く。


「え、計算間違ってる?アタシ未だ答え間違えてるの?

 クロエ、何で溜め息つくのよ~先生、どうなんですか?

 アタシ又やっちゃいました?」


 ミラベルがクロエが吐いた溜め息が、自分が又問題を間違えた事で呆れた為かと勘違いし慌て出した。


 クロエはビクッとして、ミラベルを見上げアタフタと手を振りながら否定する。


「ち、ちがう、ちがう!おねえちゃん、ちがう!」


 「やっぱり違うのね~!どこの計算を間違えたのかな……トホホ」


 「その、ちがう、じゃない!う~!」


 そんな二人を見ながらディルクは楽しそうに笑うのだった。


次話は明日か明後日には投稿します。

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