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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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道中

お読みくださりありがとうございます。


少し短めですが、順調に3話目です。


主人公視点が一部入ると流れが変わりました。


彼女が次に目覚めたとき、何かの乗り物の中だった。


余りに揺れるので起きてしまったのである。


揺れを不快に感じた彼女は思わず泣き出してしまっていた。


しかし慌てて抱き締めてくれた腕は、先程彼女が感じた“母”の感じがしなかったので、彼女は不安を募らせますます泣きじゃくる。


途方にくれたその人は暫く抱き締めながら考えていたが、何かを思いつき乗り物を止めた。


揺れが止まり、漸くきょとんとその人を見上げる彼女。


涙を湛えた瞳が優しく見守るその人の顔を捉える。


瞳は明るいグリーン、ちょっぴりふくよかで笑う笑顔に小さなえくぼ。


髪は豊かで明るい赤茶のウェーブ。軽く纏めてあるようだ。


その女性(ひと)は彼女に小さなブランケットを掛けてくれた。


彼女をそのブランケットで優しく包むと又胸に抱き上げる。


ブランケットはさっき感じた“母”の香りがした。


その香りに安心した彼女は頬にあたる何かを口に含む。


それは紛れもなくおっぱいであったが、先程羞恥心の洗礼を受けた彼女にもう怖いものは無かった。


泣いていた事もあり非常にお腹が空いていた彼女は、若干味の違いを感じつつも必死に与えられるおっぱいを飲む。


 必死におっぱいを飲む彼女を愛おし気に、だが悲しむような瞳で見つめながらその女性は彼女が欲しがるままに自身のソレを惜しげもなく与え続ける。


 漸く満足した彼女はその小さな口からおっぱいを離し、又ウトウトと眠り始める。


 ウトウトしだした彼女を優しく縦抱きにし、軽く小さな背中をリズミカルに叩く。


 ほどなく彼女が可愛らしいゲップを一つ出した。


 女性はにっこり笑うと又ブランケットに優しく彼女を包み、自分の胸にしっかと抱く。


 小さな彼女をまるで二つと無い宝物を扱うように優しく、しかし誰にも奪われないように固く。


 小さな彼女を見つめる瞳は確固たる信念と溢れんばかりの愛情に満ちている。


 やがて彼女から視線を外した女性は打って変わった厳しい瞳で、自身が座っている席を前の覗き窓から見ている連れの男性を見つめ、一つ頷いた。


 その視線と頷きを確認した男性は頷き返し、再び前を向くと自身が御している”馬車”を又走らせ始める。


 彼らは小さな彼女を守りながら、ある場所を目指していた。


 彼女を託された二人は、何を於いても彼女を守り抜く覚悟を持っていた。


 彼らが何者で、彼女が何故彼らに守られながら生家を、家族の元を離れる事になったのか。


 小さな彼女は自分を取り巻く環境の変化にまだ気づかないまま、ただ優しい女性に抱かれて眠る。


 彼女を守る彼らはその眠りを妨げないよう、彼女を労わりながらひたすら道中を急ぐ。


 外は闇。


 彼らを照らすのはほのかに輝く2つの月の光と星の光。


 人目を忍んでの移動を余儀なくされている彼らには、優しい月の光さえ警戒せねばならない材料。


 早くこの宝物を安全な場所へ連れて行かねばならないのだ。


 追っ手は無い。在るわけが無い。


 彼らは"敵"と見定める者達からこの小さな宝物を守り抜くため、宝物を守ると誓った者達全員で時間を掛けて周到に準備してきたのだから。


 だが知られずに居られたのは、彼女が生まれる直前まで。


 "敵"は彼女が生まれたと知れば、すぐさま動くに違いない。


 時間は無かった。


 小さな彼女と彼女の家族のことを思えば、許される限り傍に置いていてやりたかった。


 しかし彼女を何を於いても守りたい彼女の両親が、その辛い決断を下した。


 早くこの子を隠さねばならないと。


 せめて彼女が一人で少しでも立ち向かえるようになるまでは。


 この子が女の子で無ければ。


 この子の髪がこの色で無かったなら。


 今のこの時代でさえ無かったなら。


 しかしそれは今言っても詮無い事。


 もう、彼女は生まれてしまった。


 だから守り抜く、なんとしても。

 

 彼女を今後取り巻くであろう理不尽な欲望の数々から。


 彼女を愛する者達は、そう固く誓ったのだ。




 馬車は走る。夜の闇を。


 彼女と彼女を守る者達を乗せて。




 そんな中、彼女は不意に目を覚ます。


 (…ん、何だろ…すごく揺れてる。お母さん、だよね?この人。この香り…そうだよね?でもなんだか、少し違和感があるんだけど…。でも抱かれてるとすごく安心出来るから、やっぱりお母さんなんだよね…)


 彼女はまだあまりはっきりとは見えない視力で、自分が見える範囲を見てみる。


 (さっきとは違う場所だよね。…この振動からすると、アタシは今抱かれてどこかに行こうとしてる?お母さんが優しく抱いてくれてるから、苦しくは無いし良いんだけど。

…さっきのはもしかして病院かどこかで、大部屋に居たのかな。

…そうだよ、きっと。あんな大きい部屋、日本でならそうだと思うし。

…とすると、アタシが生まれたから早々にベッドを開けなきゃならなくなって、退院したってところかな?

…アタシからすると、外国チックな展開よね。そっかぁ。お家に帰るんだね、きっと)


 彼女は一人納得してうんうんと頷く。


 彼女がモソモソと動いたのに気付いた”お母さん”が彼女を覗き込んでニッコリ笑う。


 (え、えへへ。初めまして、娘です~!おっぱい飲んでオムツ汚すしか今のところしてませんが、出来るだけ早く言葉も覚えて、お役に立てたらと思っております。

他の赤ちゃんより聞き分けだけは良いと思うんですよ。ですのでどうか宜しくお願いしますね!)


 彼女が実際には言葉にならない声でア~ウ~と喋ると、”お母さん”が驚いたように目を見開き、次に愛好を崩して頬ずりをしてきた。


 どうやら彼女が声を出して何か喋ったことで、なんて賢いと感動したようだ。


 (うおっ!思った以上の良い反応ですね、お母さん!お喜びいただけてアタシも嬉しいですよ~。ではでは、さらに喜んでいただくために”必笑!エンジェルスマイル”をお見せしましょう!)


 ”母”の反応を見て調子に乗った彼女は、自分が考える中で最高の笑顔を見せてみた。


 口角を上げ、ニッコリと笑って見せた彼女を見た”母”は又目を見開き、今度は驚きの行動に出た。


 なんと馬車を止め、馬車を動かしていた男性に声を掛けたのだ。


 馬車を止め、訝し気な顔をして中に入ってきた男性に興奮した様子で”母”は何かを伝える。


 男性は”母”の腕の中の彼女を覗き込んで来た。


 (ふふふ、初めまして!状況から察するに貴方がアタシの”お父さん”ですね?ふつつかな娘ではありますが、これから宜しくお願いいたします!)


 さっきと同じように、言葉にはならないがア~ウ~と”父”に語り掛けるように声を出す。


 ”父”も目を見開き、びっくりしたような表情で彼女を見つめる。


 ”父”は金髪・碧眼で顔立ちは整っている。


 しかし相当に筋肉質で体が大きいらしく、なんとなく外国のヒーローを連想させる人だ。


 びっくりしている彼を見て、彼女は再度”必笑!エンジェルスマイル”を見せてみる。


 するとびっくりしていた表情が一変し、だらしなく愛好の崩れ切ったデレデレの笑顔になった。


 (まあ、なんてチョロい…。いや、違うわ。赤ちゃんの笑顔はそれだけ破壊力があるってことよ!うむ、これは武器になるわ!これから家族として暮らしていくんだもの、上手く関係を作っていかなきゃね。

…なんせ、前世の記憶があるんだから変な事を知らず知らずの内にしてしまうかもしれないからね…。用心しなきゃ。)


 まさか目の前の赤ん坊がこんな事を考えながら笑顔を見せているなんて思いもしない”両親”は、今までの緊張感溢れる雰囲気はどこへやら、その笑顔と可愛い声の”お喋り”にメロメロの状態で道を進むのであった。

 



次話は、明日か明後日には投稿します。

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