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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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1-27 教師の着任

お読み下さりありがとうございます。

大分乱文ですね。すみません。

1才間近の主人公と彼女を見守る教師が登場です。


注: 主人公の話す言葉を加筆修正しております。今話以降、不明瞭な赤ちゃん発音表記から、単語ひらがな表記に切り替えます。

又それに伴い話し言葉の一文自体も短くします。(2語文や3語文)

前後文もそれに合わせて文脈が通じるように修正致します。

以降、主人公が成長して発音を覚えたら単語も文も多く長くしていく、と云う表現に切り替えます。ご理解下さい。(H29.10.24)

「ん。あるく。できた!」


クロエは壁を伝いながら、ヨロヨロと歩いている。


表情はとてもやる気に満ちている。


ジェラルドとアナスタシアが“黒き森”を視察してから、既に半年近くが経った。


今は冬。


春先に生まれたクロエは、後1ヶ月もすれば1才になるのだ。






この世界は1年が360日ある。


1ヶ月が30日。


1週間の概念は有るのだが1週6日、5週間で1ヶ月となっている。


非常に分かりやすい。


数の概念も十進法なので、その辺りもクロエにとっては助かる。


加えてアーソルティ王国には四季があって、これが見事に3ヶ月ずつに別れている。


州によって夏が暑すぎたり、冬が寒すぎたりはするが、1季節の期間は変わらない。


因みにフェリークは夏は穏やかで、冬が(きび)し目だ。


冬が厳しい分、春は見事に辺り一面百花繚乱となり、美しいの一言に尽きる風景があちらこちらで見られる。


実り豊かなアーソルティの名前に恥じないものである。





ジェラルド達が視察に来たのは夏から秋に移り変わる頃だった。


“黒き森”のあるシェイロ村は高原に位置する為、冬は雪が深くなり中々移動が難しくなる。


だからジェラルドは、秋の内にガルシアの子供達の為の改築等を急がせた。


教師の為に冬は森の小屋を住めるようにしたり、春になればシェイロ村で住めるように住居を用意した。


既に晩秋から教師による指導が行われている。


どんな教師がやって来るのか皆ドキドキして待っていたら、とても優しい好好爺という雰囲気の老人だった。


ジェラルドよりも高齢だ。


ジェラルドも若き頃、教えを乞うたらしい。


皆が喜んで迎える中、コリンは期待が外れたとばかりに落ち込んでいた。


アナスタシアのように綺麗な女性が来ると勝手に想像していたらしい。


本当に残念な方向に頭が良く回る。


ガルシア達は溜め息をついたが、その老教師であるディルクはコリンの考えを知ると大笑いしていた。


中々に懐の深い楽しい老人のようである。


因みにこのディルク、実は剣の達人でもある。


ジェラルドとガルシアは槍の名手だが、ライリーはまだ体が成長途上なので、剣の鍛練が良いであろうとの配慮である。


ミラベルも護身のため、小刀の鍛練をすることになった。


又ライリーの場合、春になれば弓も練習予定である。


但し生き物は狙わず、クレー射撃の様に的を投げて射る練習をするそうだ。


週6日の内、ディルクの負担も考えて週4日の午前は座学。


又午後は剣の鍛練を行う。


しかしディルクの都合や、“守るべき地”の畑仕事の手伝いが有るときはこの限りではない。


週2日はお休み。


高齢のディルクには当然の配慮である。


食事はガルシア家族と取るが、簡単な自炊も出来るように小屋を改築してあるので、たまにはゆっくり一人での食事も可能だ。


又ジェラルドは内密に、クロエを導くようにディルクに頼み込んである。


ディルクは内情を熟知しているため、二つ返事で了承している。


しかしそれに関してはガルシア夫妻以外聞かされてはいない。


ディルクもクロエの利発さを聞いてとても興味を持ったので、渡りに舟の依頼だったらしい。


加えて更に利発なライリー、おしゃまでこれ又利発なミラベル、ひたすら楽しいコリンの指導はディルクにとっても遣り甲斐のある仕事のようだ。


初めてこの地に来たときのディルクの私物は、子供達の為にディルク自身が準備した教材や本・道具ばかりで、後は着替え位しか持っていなかったことからも伺える。


ジェラルドが彼に信頼を寄せるのも頷けた。


という訳でディルクは家族に非常に早く馴染んでいき、今では大変信頼されているのである。





今、兄のライリーや姉のミラベルはお勉強中。


コリンはここぞとばかり、用事をしている母のコレットにベッタリと引っ付き甘えている。


リビングで大人しくしていたクロエは、コレットとコリンが台所へ行った隙を見計らって、歩行練習をしている。


毎日歩行距離の記録が延びている。


嬉しくなって、疲れはてて歩行練習の最中に眠り込んでしまう位、クロエは必死に頑張っている。


(自分の力を伸ばしなさいってジェラルド様も仰ってたし。やれることはぜんぶやらなきゃね。

大体アタシには前世の記憶があるだけだもん。元々出し惜しみ出来るような能力なんて無いし。

雅の時だって間が悪いし、鈍臭いって言われてたし、真面目なだけが売りって……イカン、何か哀しくなってきた。

うっ……と、とにかくだ!アタシはクロエとしてやりたいことを見つけるまでに、自分の能力を伸ばしまくるんだ。勉強だって運動だって何だって一生懸命やるんだもん!

それになんたって楽しい!日に日に出来る事が増えていくのが実感出来るって素晴らしいよね。モチベーション上がるわぁ~。)


壁に手をついて一息つくと、又顔を上げて今来た“道”を戻るように伝い歩きをする。


今2往復目。


まるで病院のリハビリの風情だ。


オムツも早く卒業したいのだが、コリンが未だなのでそれが悩ましい。


家族への配慮は必要なのだ。


兄の“プライド”を刺激したくはない。


どうやらコリン以外の家族は解っているようで、オムツを変えてと恥ずかしそうにするクロエを申し訳無さそうに見る。


だからこのところクロエに関しては、母のコレットと姉のミラベルしかオムツ替えをしない。


普通なら未だ1才未満の赤ん坊にこんな配慮が必要ないのだが、コリンとは別の意味で家族に配慮をされているクロエである。


両極端の弟妹を持ち、両親も兄も姉も大変である。





「ふー!……つかれ。やすむ、する」


クロエは元居た場所に戻ると座って息をはいた。


その場所には木板に書かれたこの世界の文字の一覧表。


数字の書かれた木板もある。


ディルク作である。


クロエはそれを暇があれば読んでいる。


数字の木板は表が数字と読み方、裏はその数の丸が書かれてある。


1から100まで用意されている。


幼児教材だが、クロエには有り難い。


聞き取りはもう殆ど出来るが、書き取りするのは又別だ。


まず手が小さすぎて中々思うように物を掴むのも大変なのだ。


ディルクが小さな手にも対応してくれた“教材”を自作してくれているのを知ったとき、クロエは本当に嬉しかった。


コリンが居ないときには、書くものも渡してくれる。


小さな手で必死になぞり舌足らずだが復唱する姿に、ディルクも分かってはいたがやはり驚いた。


(流石にこの月齢でこの利発さは見たことがない。“黒髪の乙女”になり得る赤子とは言え、それとは関係がない異様さを感じる。

……このお嬢ちゃんには何か有りそうだな。)


最初クロエは恐る恐るディルクの様子を窺いながら、それでも好奇心が抑えられないという様子で教材を手にとってしげしげと見ていた。


その内ディルクが一つ一つ指差しながら発音すると、段々と目を輝かせてディルクを見つめ、やがて小さな声で復唱を始めた。


ディルクが教材を置いて席を外した振りをしてクロエを1人にすると、嬉しそうに教材を拡げ彼が教えた発音を何度も普通に復唱しながら、指はその数字なり文字なりを空中や床でなぞり書きをし始めた。


流石になぞり書き迄始めるとは思わず、隠れたことを忘れてディルクは近寄ってしまった。


クロエはディルクに見られた事で狼狽え涙目になっていたが、ディルクがジェラルドに聞いているから大丈夫だと話すと途端にホッとした表情になった。


その姿にもディルクは衝撃を受けたのだが、それは顔には出さないように気を付けた。


(これは相当だな。所謂(いわゆる)天才と云うものか?

しかしそれにしては気配りや空気の読み方が子供のそれとは違う。…判らんな。このお嬢ちゃんは何者なんだ?)


ディルクの顔色を窺うクロエと、クロエを警戒させないよう敢えて驚愕する自分を悟られぬよう振る舞うディルク。


まるで狐と狸の化かし合いである。


だが最初の内こそそうだったが、暫く経つとクロエが開き直ってしまった。


1対1になると、質問までしてくるようになったのだ。


ディルクは可笑しくなって、クロエの“正体”なぞどうでも良くなってしまった。


今じゃ立派に師弟関係にある。


ガルシア夫婦もミラベルもクロエの利発さは緩くは聞いているが、ここまでとは知らない。


気付いているのは家族ではライリーだけである。


これは彼がクロエを注意深く見ているから分かったのであって、ある意味クロエを一番良く見ている人物だからだ。


クロエも不味いかなとは思いつつ、まあ良いかと今のところ流している。


嫌われてはいないと思うからだ。


但し少しでも嫌がるような素振りをライリーが見せたら考えなければならない。


余りにも変だと思われることがないようにしようとは思っている。


しかしジェラルドが能力を伸ばせと言ってくれているし今更ライリーに遠慮しても、元々クロエよりずっと(さと)い彼には意味がないとも思うクロエであった。


色んな事で綱渡り的な動きをしながら、クロエは自分を磨くためにやれることをやるつもりだ。


冬の間は外には赤ん坊のクロエは出してもらえないので、室内で自分なりに運動をして鍛える。


その運動が先程からの彼女の伝い歩きなのだ。


歩き始めるのも鍛えて(?)いるからか、非常に早かったクロエ。


目下の目標は、自分だけで家の中を歩いて移動する、である。


恐らく1才を過ぎる辺りには到達しそうだ。


この家だから大丈夫だが、普通なら周りに異常な子供と見られて迫害を受けるかもしれない。


クロエ自身がそう思う。


この家の子であることと、それにジェラルド達がいてくれた事に心底感謝している彼女であった。



次話は明日か明後日投稿します。

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