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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
22/292

1-22 小川見学

お読みくださりありがとうございます。


遅れましたが今日もなんとか更新しました。


今回は小川見学です。


キラキラ感が半端無い小川です。

 アナスタシアに抱かれたクロエの口元は嬉しさを隠しきれない様に緩んでいる。


(この前来てからもう随分経ってるからなぁ。又あの不思議植物達を見られる~!

純生クリームの花、今度はあの花びら食べれるかな?

ウフフ、前は驚くだけだったけど今日は味わう、いや違う楽しむぞぉ~!

他にも在るだろうしね、食べれる、いや違う楽しめる花!)


 周りの事情を知る者達が、決意も固く“守るべき地”の視察をしているのに対し、“当”の本人は事情を知らぬお陰で、至って暢気(のんき)なものである。


 特に食欲が刺激される場合、彼女の意識はそこに集中される。


 転生しても全く変わらない本質である。



 皆で畑までやって来ると馬から荷物を下ろし、コレットと側仕えのアレクとモニカの3人は、皆の座と昼食の準備に取り掛かる。



 さて、ジェラルドに抱かれてここまで来たコリンは、漸く下ろして貰えると安堵した表情になっていた。


 しかし

「うむ、まだ昼食の準備に時間が係りそうじゃな。コリンよ、儂と共に暫しその辺りを散歩しよう。

よし、もっと高く見えるように肩車でもしてやろうかの!」

 とのジェラルドのご機嫌な提案により拘束時間が延び、下ろされるどころか肩に昇らされるという更なる恐怖に晒される事になってしまった。


 コリンの

「いい!いいの!ヒィー!」

 の悲鳴がジェラルドには歓声に聞こえていたのが、哀しい気持ちのすれ違いではあった。




 一方ライリーとミラベルは、アナスタシアとクロエの元にやって来た。


「ねえ、アナスタシア様。小川を見てみませんか?スッゴく綺麗なの!ビックリしますよ?」


 ミラベルが目をキラキラさせて、アナスタシアに提案する。


 実はミラベルにとって、アナスタシアは初めて会った憧れの都会の女性である。


 ミラベルは生まれてから“黒き森”と“守るべき地”、後はシェイロ村の雑貨店位しか行ったことがない。


 コレットと同じ様な服を来たおばさんや、自分より少し大きい女の子にはシェイロ村で会ったことがあるが、洗練された都会の、それも貴族の女性に会った事など生まれて初めてなのだ。


 アナスタシアに会えただけでも、クロエにキスしてあげたい位感謝しているミラベルである。


 そんなミラベルの提案にアナスタシアが興味を引かれ、彼女に屈み込んで応えた。


「まあ!それは見てみたいものだわ!是非案内してくださる?ミラベル」


 ミラベルは頬を染め破顔して、勢い良く頷いた。


(小川!そうだ、あったよね小川。アタシ見てない。わわ、そんなに綺麗なの?!見てみたい見てみたいー!)


 アナスタシアに抱かれたクロエも、思わず身を乗り出してウンウン頷いた。


 ライリーがそんなクロエを見て、吹き出した。


「ミラベル。クロエもものすごく乗り気だよ。見てごらん、アナスタシア様の腕から落っこちそうになってる」


 ミラベルもそんなクロエを見て更に嬉しくなる。


「そっか、クロエも見てなかったよね!じゃあ行こうね!スゴいんだから~!クロエ、ビックリするよぉ?ウフフ」


 ミラベルが先頭に立って歩き始める。


 ライリーとクロエを抱いたアナスタシアがすぐ後ろに続く。


 その後ろに何故か騎士のテオがくっついてきた。


 ライリーが気付いて

「テオ様?どうかなさいましたか?」

 と尋ねた。


 テオは照れ臭そうに

「いや、あの、私も綺麗な小川を是非見てみたいなぁ~と思いまして……。すみません、一緒に連れていって貰えますか?ライリー殿」

 と頭を掻いて頼んできた。


 ミラベルがテオがそう頼む声を聞き、更に喜んだ。


「テオ様まで!よおし、皆で行きましょー!小川まで直ぐですよー!」


 コレットに次いでにお水を汲んできて、と頼まれて手に持ったピッチャーを高く掲げて、ミラベルが元気良く声を上げた。


 実際、畑をぐるりと廻れば直ぐに小川なので大した距離では無い。


 ミラベルはハミングしながら、小川へ皆を案内する。




 程無く小川に着いた。


「うおお!これは…何と美しい」


 テオが感激の余り叫び声を上げてしまった。


 彼が驚いたのも無理はない。


 “守るべき地”の小川は、やはり普通ではなかった。


 水が綺麗なのは当然だとして、小川の底が驚いたことに色とりどりの小石でキラキラ光っていたのだ。


 一部ではなく、底全てである。


 まるで宝石を敷き詰めた様である。


 そして又テオが感激の雄叫びを上げる。


「おおーっ!魚!魚がいる!嘘だろ?虹色だよ!こんな魚がいるのか!違う、鱗が鏡みたいなんだ!底の石が映ってるんだ!凄い!」


 テオが膝を浸き、小川に顔を突っ込まんばかりに覗き込んではしゃぐ。


 ライリーは騎士のテオのそんな姿に、半ば呆気に取られた表情になっている。


 ミラベルはテオの(はじ)けっ振りに、どうだと言わんばかりに胸を張り満足気に鼻息を荒くしている。


 アナスタシアは優雅に膝をつくと、クロエが小川を見えるように身を乗り出してやった。


「何て美しいのでしょう。まるで夜空の星を散りばめた様ね、クロエ。お魚もこの世のものだとは思えないわ。

やはり“守るべき地”のものは外の世界のものとは全く別物なんですのね」


(ふえ~!小川、聞きしに勝る美しさ!この水ってあの高い山々の雪解け水なんだよね?地形から見ても、この清らかさから見てもそうだよね。冷たいだろうな~!

前の世界のカル○ス、この水で作りたいな。絶対美味しい!あっ、渋く水出し緑茶とかも良いなぁ。なら、珈琲も紅茶も絶対美味しくなるよね!うわああ、のど渇いて来ちゃった~!飲みたいー!)


 余りにもクロエが真剣に小川を見つめているので、アナスタシアがクロエに話し掛ける。


「どうしたの、クロエ?何か気になるものでも見つけたのかしら?」


 アナスタシアのその声を聞き、ライリーがすぐ横にやって来て屈み込んでクロエの様子を見る。


「クロエ?何が気になるの?なんかブツブツ喋ってるな。

カル○ス?カル○スって何だろう?

クロエって時々不思議なお喋りをするんですよ、アナスタシア様。僕も気になって一生懸命聞き取ろうとしてるんですけど、何かよく解らなくて。

クロエはどんな楽しいことを考えてるんでしょうね?知りたいなぁ。ねえ?クロエ」


 目に入れても痛くない程可愛がってくれているのが容易に解る笑顔で、ライリーがクロエを見守る。


 アナスタシアがライリーのその表情を見て本当に嬉しくなり、思わず

「ライリー…貴方は本当にクロエを可愛がってくれているのですね。どうかこの子をお願いしますね」

と語り掛けた。


 ライリーは一瞬真顔になり、アナスタシアを真っ直ぐに見つめると

「はい。僕が守ります。この地も森もクロエも」

としっかりとした声で返事をした。


 “母”と“兄”がそんな会話をしているのに、のどが渇いたクロエはひたすら前の世界の飲み物を考えてしまい、心ここに在らずとなっていて、二人の会話が全く耳に入っていなかった。


 誠に食べ物飲み物が関わると、クロエの集中力が半端なく発揮されるのであった。


 ミラベルがライリーとは反対側に屈み込んできた。


「ク~ロエ?どう?小川綺麗でしょー!アナスタシア様、如何ですか?テオ様なんてまだ叫んでいらっしゃるし!」


 ミラベルがワクワクしながらアナスタシアとクロエの反応を見る。


 アナスタシアはニッコリ微笑み

「驚きましたわ、本当に。夢のような美しさですわね。

ミラベルが教えてくださったお陰ですわね。ありがとう、素敵な宝物を見せてもらった気分ですよ」

とミラベルにお礼を言う。


 クロエも漸く我に返り

「アウ!アイアオー!」

とニパァ~と満面笑顔でお礼(?)を言った。


 ミラベルが照れながら

「良かった~喜んで貰えた~!ウフフ」

と微笑み返した。


 テオはまだ小川を必死に覗き込んで

「おお!」

とか

「うわ!凄い!」

を連発しまくっている。


 どうやら一番はしゃいでいるのはテオで間違いなさそうである。


 コレットが昼食の準備ができたことを伝えに来るまで、“小川見学ツアー”の5人は小川を楽しみ続けたのであった。

次話は明日か明後日投稿します。

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