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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
20/292

1-20 同行騎士

お読みくださりありがとうございます。


小さな暴君が敢えなく敗北の回です。


後、同行している騎士の話が少し入ります。

(ですよね!アタシも初めてこの野原を見たときは感動しました!ホントにキレイだよね、此処は)


 アナスタシアの感激ぶりを見て、クロエも自分が初めて此処を見た時のことを思い出した。


 クロエは自身が別の世界の者であったからあんなに感動したのであって、この世界の人達には当たり前の原風景なのかと思っていた。


 だがどうやらアナスタシア達から見ても、この世界でも此処は別格に美しいらしい。


(そうか。此処はやはり他とは違うんだな。森もさっきの話だと“神域”だとか言ってたし。

神社の鎮守の森みたいなものかな。でもあの森は凄く清廉な空気を感じるけど、此処は又違うのよね。

とってもカラフルなんだよ、イメージが。優しい暖かな空気を感じる。…ま、アタシの個人的主観だけど)


 クロエが野原を見ながらフンフン頷いていると、なんだか視線を感じた。


 見るとコレットに抱かれた自分を、アナスタシアが優しく見つめていた。


(えへへ。アタシも此処好きなんです。とても気持ち良いでしょ。森とは又違った美しさですよね)


 クロエがニパァ~と満面笑顔になり、アナスタシアに大きく頷く。


 アナスタシアはそんなクロエを見てクスクス笑いながら話す。


「ねえコレット。クロエは(わたくし)が抱いても良くて?とてもご機嫌だから、(わたくし)が抱いても愚図らないわよね。どうかしら?」


「アナスタシア様がお疲れでなければ、是非。大丈夫ですか?」


 コレットが気遣わし気に聞く。


「大丈夫ですわ。とても気持ちの良い道中でしたもの。疲れなど致しません」


 コレットにそう話すとアナスタシアが優しく手を伸ばして来た。


(はあい。じゃあ今日もよろしくです~。アナスタシア様)


 アナスタシアから伸ばされた手にクロエもニコニコ笑いながら同じ様に手を伸ばす。


 アナスタシアがクロエを抱き取った時、何か甲高い声がした。


「クロエ駄目!僕が抱っこして欲しいの!」


 今の今まで大人しくしていたコリンが、とうとう愚図りだした。


 コレットがため息をついて

「母さんが抱っこします!」

 と、コリンに手を伸ばすが

「いや!アナシュタシア様が良いの!」

 と、全力で拒否した。


 クロエと違い、コリンは2歳半を過ぎているし体もしっかり大きいので、家で膝に座らせたり少しの間抱っこするならともかく、彼をアナスタシアに抱っこしてもらいながら移動を強いるなどコレットには考えられない。


 コレット母さんがコリンの駄々捏ねに堪忍袋の緒が切れかけたその時。


「ほお?良い子のコリンも流石にこれ以上歩くのは辛いかな?

では儂が其方を抱っこしてやろうな」


 ピタリとコリンの駄々捏ねの声が止まった。


 コレットも戸惑いながら振り向くと、ジェラルドが顎髭を撫でながら二人に近付いてきた。


 コリンの口から小さく

「うえぇっ!」

 と、何とも情けない声が漏れた。


「うん?良い子のコリンは我が儘など言わないのであろう?

儂を嫌がるなどせぬよな?言うことを良く聞く子じゃと、自分で言っておったではないか」


 コリンが再び愚図ろうと身構えたのに対し、間髪入れずに言葉を重ねるジェラルド。


 笑いを堪えながらライリーやミラベル、アナスタシア達もコリンとジェラルドのやり取りを見つめる。


「う、アナシュタシア様はクロエを抱っこしたら駄目なの。クロエは泣くから母しゃんが良いの」


 何とか自分を正当化し、望みを叶えようと奮闘するコリン。


 しかし2歳半の彼は語彙の少なさ故、とても人を説得出来る訳がなかった。


「ん?クロエは泣いとらんではないか?お主、儂を嫌がっておるのかな?コリンよ」


 コリンがジェラルドに又楽しそうに突っ込まれる。


 普段ならここで泣き喚いて意志を通すのが彼のパターンだが、今日のコリンは何故かそれが出来ない。


 実はコリンはジェラルドが心底怖かったのだ。


 もし、いつも通り泣き喚いて駄々を捏ねたら、ジェラルドが自分を怒鳴るかもしれないと恐れていたのだ。


 コリンはこう見えて、案外頭が良く回る。


 クロエが見込んだ(?)通りである。


 但し他の兄姉二人と比べて(いささ)か残念な方向に、ではある。


 進退窮まったコリンは

「うぐぐ」

 という妙な声を出した後、がっくり肩を落として俯きこう言った。


「僕、歩けるから抱っこいい」


 コリンが白旗を挙げた。


 しかしジェラルドが大人げなかった。


「いや、小さい其方に我慢を強いるのは気の毒じゃ。遠慮するなコリン。さあ儂が抱いてやろう!」


 コリンが

「へっ?」

 と顔を上げるが、時既に遅し。


 彼はジェラルドの太い腕に抱かれて引き上げられていた。


「うあああっ!」


 コリンが思わず叫ぶ。


 と、同時に口を閉じた。


 コリンが恐れるジェラルドの顔が間近に迫っていたのだ。


 コリンがガッチガチに体を強張らせる。


 ジェラルドが面白そうにコリンの顔を覗き込み

「どうじゃ。高いであろうコリンよ。さあ、儂と後少し共に参ろうぞ。ハッハッハ!」

 と機嫌良く笑うとガルシアの元にコリンを抱いたまま向かう。


 コリンは

「ヒィィ~」

 という小さな声を洩らしたが、泣きもせず諦めてジェラルドに抱かれることにした。


 これ以上事態を悪化させたら自分がどうなるか分からないと考えたのだ。


 悪知恵を働かせた結果

(この爺に逆らうのはマズい!)

 と言う今更の結論に達したらしい。


 コレットは呆気に取られていたが、やがてアナスタシアと目を合わせるとクスッと笑って

「ジェラルド様、ありがとうございます。コリンをお願い致します」

 と深くお辞儀をした。


 因みにジェラルドに拙いながらも僅か2歳半で自分の意見を言って対抗しようとし、無理矢理抱かれても泣きもしなかったコリンを見て、同行騎士のシュナイダーとテオが感嘆し

「コリン殿もライリー殿と同じく騎士に向いておられる。あの豪胆さは驚嘆に値する。是非将来は騎士に勧誘すべきです」

 と、ジェラルドに進言したのは後の話である。



(スゴい!ジェラルド様、大王モードのコリンお兄ちゃんを黙らせた!コリンお兄ちゃん、怖すぎて泣きも出来なかったよ。

お兄ちゃん、この世で一番怖いものがとうとう出来ちゃったな。気の毒に。

まぁ、これも人生の試練だよ。コリンお兄ちゃん頑張れ!)


 クロエは全く思いもしない展開に目をぱちくりして見ていたが、アナスタシアがクロエを覗き込んで

「心配しなくて大丈夫ですよクロエ。実はお父様は子供が大好きなのです。

あのように少々近寄りがたい容姿ですから、親族の子供達に近寄ったらよく泣かれたりしましたの。

でも(わたくし)にガルシアの子供達は儂を嫌がらないから嬉しいと言っておりました。

今日もコリンと仲良くなりたい一心なのでしょう。案外可愛いでしょう?お父様は。」

 と楽しそうに打ち明け話をしてくれた。


 クロエはアナスタシアの顔を見て

「アウ?」

 と、驚いた声を出した。


(そうなの?ジェラルド様はコリンお兄ちゃんとホントに仲良くなりたかっただけなんだ?

にしては些か強引な気もするんだけど。まあコリンお兄ちゃんにはそれ位強く出ないと駄目だよね。

フフッ、ジェラルド様、確かに可愛い~)


 クロエが楽しそうにクスクス笑い出したのを見て、アナスタシアも又笑い出した。


「さあ、この綺麗な野原を貴女と歩けるなんて本当に幸せだわ。クロエ、いっぱい遊びましょうね?」


 アナスタシアは本当に嬉しそうに笑ってクロエのおでこにキスをすると歩き出した。




 “黒き森”を抜け、野原に出る。


 風がなかった森とは違い、香り高い風が髪や頬を(くすぐ)る。


 この野原こそ“守るべき地”である。


 アナスタシアと同行するモニカ、騎士のテオは初めて足を踏み入れる。


 少し甘い様な香り高い風の匂いに

「本当に夢のような景色です」

 と掠れた声で呟いたのは騎士のテオだ。


 州都アラベラ出身の彼は、小さな頃からおとぎ話の中に出てくる“黒き森”と“守るべき地”にとても憧れを抱いていた。


 しかし話には聞くが実際に見たことがある者が、彼の周りには一人も居なかった。


 成長するにつれ、テオは“黒き森”も“守るべき地”も全ては昔話の中の空想の産物だと考えるようになっていった。


 しかし騎士になりジェラルドに見出だされてから、信じられない話を耳にする。


 ジェラルドが長を務めるシェイロ村の何処かに“黒き森”と“守るべき地”があると言う話だ。


 テオはその話を教えてくれた同僚の騎士に噛みつかんばかりの勢いで詳しく話せと迫った。


 同僚は戸惑いながら、“黒き森”と“守るべき地”について知っていることを話してくれた。


 “黒き森”と“守るべき地”は実在すること。


 ジェラルド様が長を務めるシェイロ村の何処かに存在すること。


 但し誰もが行けるわけでは無く、シェイロ村自体ジェラルド様直轄で立ち入り制限が掛かっていること。


 もし行きたければ、ジェラルド様の側近になるしか方法はなく、もし側近になれたとしても、“黒き森”と“守るべき地”に行けるかどうかは分からないということ。


 その理由は“黒き森”と“守るべき地”が入る者を選ぶからだということ。


 選ばれる基準は全く分からないということ、等だ。


 テオはその話を聞いて居てもたっても居られず、なんと上司に直接ジェラルドに目通りをさせて欲しいと願った。


 上司がテオから訳を聞き、難しい顔をしながらもジェラルドに会えるように手配をしてくれた。


 何とかジェラルドに会うことが叶い、テオはジェラルドに自分の望みを伝えた。


 するとジェラルドから条件が出された。


 一年間は今の仕事をすること。


 その姿を見て、もし随従に加える可能性があるならその様に配置を換えること。


 一年テオは必死に頑張った。


 するときっかり一年後、配置換えがあった。


 “王都”のジェラルドの令息の元に。


 テオはガックリ肩を落としたが、上司から話を聞き目を輝かせる。


「王都に配置が決まったのは、側近候補に上がった為だ。このフェリークの主は今どのような立場にあるのか、他の領主や王族はフェリークをどう見ているのか、お前自身が調べて知る必要がある。その上でジェラルド様から又お達しがあるだろう。励めよ、テオ。お前の夢に近付いたんだからな!」


 テオは大感激し、王都に赴任してからも寝る間も惜しんで騎士の仕事に没頭した。


 又上司からの忠告を頭に、フェリーク州の現状や評判、他の領主の動き、王族の目や動きを注意しながら調べた。


 そしてその中でテオはある“情報”を入手することに偶然成功する。


 ジェラルドはその“情報”をことのほか喜び、テオを側近として任じることを決めたのだ。


 実にテオがジェラルドに直訴してから3年半の月日が流れていた。


 そして更にジェラルドの元で熱心に仕事をこなし、側近になってから2年。


 今、彼はジェラルド達と共に“黒き森”を抜け“守るべき地”を踏みしめたのだ。


 想像していたよりずっとずっと美しい風景に立ち尽くすテオ。


 ジェラルドがそのテオの姿を同行のもう一人の騎士、シュナイダーと共に優しく見守っていたことは、感動にうち震えるテオは気付いていなかった。

次話は明日か明後日投稿します。

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