211. 第二章プロローグ 闇(くろ)の女神のおはなし
お読みくださりありがとうございます。
第二章スタート致します。
先ずはこの話全体の根幹を担う短い伝承から。
因みに伝承は一つでは無く、これが一番古いお話となります。これを元に黒の乙女……黒の女神の話が口伝にて伝えられていくのです。
他の伝承は又追々に。
これは世界が生まれてすぐのお話。
世界は天と地を作り、命を作った。
世界は形を持たぬ天と地に交わりを許さず、形を持つ命のみに交わりを許した。
命は交わることで増えていき、増えた命は天と地を自由に飛び回るようになった。
だが増えゆく命達は次第に地を荒らし、天を汚し始める。
それを憂えた世界は天と地を守るため、命を律する存在を作った。
命は交わるため、二つの形を持つ。
二つの形……猛猛しい凸ではなく、産み育める穏やかな凹と同じ形をしながら、しかし他の命とは違い、天と地をも守る力を持つ存在。
命が動けるのは天と地が見えるからだと考えたそれは、天と地を命から隠すために自らの力を使い、黒き闇をもたらす。
黒き闇に覆い尽くされた天と地で、周りが見えぬことに戸惑い、止まる命達。
それまで動きに動いて、交わり続けていた命は、初めて自らを休めた。
それは命が休む間に天の汚れを浄め、地の荒れを癒す。
天と地が元の姿に戻ると、それは自らがもたらした闇を払った。
再び明るくなった天と地により休んでいた命は目覚め、再び飛び回り始める。
だがそれは、再び天と地が汚れたり荒れたりしないようにと、時を見計らって天と地を繰り返し闇で覆い、命を休ませる。
……何度も何度も。
その内に命は光あるときは動き、闇あるときは眠ることを覚えた。
やがて命を律するそれは、闇を天に渡して自らは命達の中に溶け込んでいった。
“もう大丈夫”と。
そうやってそれは天と地を守り、命に秩序を教えて役目を終えたのだった。
守られた天と地、育まれた命は自分達を導いてくれたそのものに感謝を捧げた。
何故なら、そのものが黒き闇を生み出したからこそ、この世界は滅びずにすんだのだから。
のちにそのものは、天と地、命達から敬意をもってこう呼ばれることになった。
我らを守り導くもの、“闇の女神”と。
なるべく早く更新します。