199. 脅迫
お読みくださりありがとうございます。前回同様、残酷な表現があります。そして女性に対する非道な表現も。
お気をつけください。
クロエはコリンの言葉に体を固くした。
そして彼を見つめ呟く。
「……それは駄目。それだけは駄目だよ、お兄ちゃん」
ディルクがクロエの様子がおかしいのに気付く。
「グッ……ど、どうしたんじゃ、クロエ?何をそんなに狼狽えておるんじゃ」
ディルクの言葉が耳に入らないのか、クロエはコリンをひたすら見つめながら話し始める。
「死んでも守るなんて言っちゃ駄目だよ。人は死んだら終わりなんだよ?
例え大事な人を守れても、その守られた人はずっとその死を背負って生きていかなきゃいけなくなるんだよ?!
それがどれだけ苦しく辛いことか……大事な人にそんな思いをさせては駄目。
お願い、アタシの事を守るって言ってくれるなら、まず自分を大事にしてちょうだい!
お願いだから死んでもなんて言わないで……お願いだから!」
クロエの目からポロポロと涙が落ちる。
ディルクはハッとする。
「クロエよ……大丈夫だ、コリンはそれだけ真剣にお主を守りたいと言いたかっただけじゃよ。
何も好き好んで命を捨てるとは言っておらぬ。
大丈夫じゃ……だから泣くでない」
クロエはディルクを見て彼の手を握り、しゃくりあげながら頷く。
コリンはクロエの泣く姿に、オロオロとする。
「ごめん、ごめんよクロエッ!もう言わないから!お前は絶対守るし、僕も死なない!
泣かないで、ごめんよクロエッ!」
クロエは泣きながら何とか笑顔を作り、コリンに頷く。
「ありがと、お兄ちゃん……ごめんね、急に泣いたりして」
そこにハーシュの低い笑い声が割って入る。
「ククッ……やはり貴女を落とすにはこの低俗な輩共の命を引き合いに出すのが、一番効果があるようですね。
……では、こうしましょうか。
貴女がこの森に居る限り、我等の仲間は貴女の大事な者達を狙い続けます。
どれ程の強者でも、ずっと付け狙われれば果たしてどこまで持つものやら……。況してや女性や子供ならば尚の事です。
命を取れなくとも、一生残る怪我を負わせたり、女性には屈辱を与えることも出来ますからね。
兄に自分の為に命を捨てるなと仰る貴女ですし、まさか大事な者達が貴女の為に命を狙われ続ける状況を作りたくは無いでしょう?
さぁ、どうなさいますか?
貴女さえ我等の元に来てくだされば、そのような事は起こらないのですよ。
貴女の決断一つで、自分の大事な者達を守ることが出来るのです。
勿論貴女は我等が大切に守り、慈しみます。
貴女が我等を信じて良かったと思っていただけるよう、誠心誠意尽くしお仕えする所存。
悩むことなど一つもありません。
……たった一言私に「共に参る」と仰って下さいませ、クロエ様」
暗い笑みを浮かべクロエに非情な決断を迫るハーシュに、ディルクとガルシアが燃えるような怒りの目を向ける。
「貴様、なんと卑劣な……外道めがっ!」
「クロエ……俺達を信じろ。決してこんな奴等に屈したりはしない!」
クロエはハーシュをじっと見つめていた。
ハーシュは木の根に絡まれつつも、自分を見つめる幼女をひたすら熱に浮かされたように見つめ返す。
やがてクロエが口を開く。
「あなたの言葉は軽く聞こえるけれど、脅しではなく本気よね。
恐らくアタシがあなた達と共に行かなければ、あなたの仲間は本当にアタシの家族達を襲う。……そう、きっとアタシが根を上げるまで。
……本当に恐ろしい人ね、あなた」
クロエが静かに語る言葉に、ハーシュは苦笑しつつ答える。
「申し訳ありません。ですがこれも全ては貴女様の為……。
こう見えて私も断腸の思いで申し上げているのです。どうかご理解を……」
クロエはそんなハーシュに小さく首を振って否定する。
「いいえ、あなたはアタシが苦しみ、そしていつ自分に屈するかと楽しんでいる。
あなたは優しげに見えるけど、可哀想なジーナを利用し尽くす傲慢で残酷極まりない人よ。
例え今アタシがあなたに屈して付いていっても、あなたはアタシを大事にするどころか、事有る事に家族の命を引き合いに出してアタシを思い通りにしようとするわ。
あなたに付いていけば、アタシの前には悲惨な日々が待っている筈よ。
アタシはあなたに付いていったりなどしない!」
クロエがそう言いきると、ハーシュは顔を歪めて更に彼女を攻め立てる。
「……酷い誤解ですよ、それは。
大体貴女は何故、実の親でもないそんな奴等を信じるのです?
私の言ったことが外道なのは認めましょう。しかし私は大事な貴女に嘘をついたりはしていません。
私が言ったことは全て真実。その男は貴女の父では無く、あのガキも貴女の兄では無いのですよ!
それでも貴女はそ奴等を信じるほど愚かなのですか?」
クロエはフッと笑ってハーシュを見る。
「……あなたの言葉が嘘だなんて言っていないわ。
父さんと母さんが本当の両親じゃないのは事実でしょうね。
ライリーお兄ちゃん、ミラベルお姉ちゃん、コリンお兄ちゃんがアタシと血が繋がっていないのも。
……ね、父さん、そうなんでしょう?」
クロエが真剣な瞳でガルシアを見る。
ガルシアは唇を噛み締めながら、項垂れて頷いた。
「……すまない、その通りだ」
クロエは父にニッコリと笑う。
「やだ父さん、そんなに落ち込まないで?何となくは感じていたの。
だって4人の兄弟の中でアタシだけ髪色が特殊で、皆何故かアタシを必死で守ろうとしてくれていたから……。何かあるとは思ってたんだよ。
だからさっきのこの人の言葉を聞いて狼狽えたけど、ああって心のどこかで納得してしまったの。
……勿論ショックではあったけど。
でもね、父さん達はやっぱりアタシの家族なんだよ。
血の繋がりが無くったって、いっぱい愛情を注いでアタシを育ててくれたわ。お兄ちゃんもお姉ちゃんもアタシを必死に世話してくれて……。
きっとインフィオラーレの本当の両親、ブライアン様とアナスタシア様も血の涙を流しながら父さん達にアタシを預けたのね?
解るわよ、そのくらいの事。だってずっと家族に愛されて大事にされて育ってきたのよ。……皆を信じてるもの。
こんな卑劣な奴にちょっと内緒の話を暴露されたところで、皆の愛情を疑ってワンワン泣き叫ぶなんてするわけないわよ。
……だってアタシの事知ってるでしょ?
もう少しアタシを信じてほしいな~、ねっ?」
クロエが笑いながら首を傾けておどける。
ガルシアはそんなクロエを食い入るように見つめ、涙を堪えながら微かに笑みを浮かべて頷く。
「……そうだよな。お前はとても賢いんだから、ちゃんと話せば理解してくれるよな。
すまない、こんな最悪の形で知らせてしまった。もっと早くに話すべきだったよ。……俺達も怖かったんだ、お前が悲しむんじゃないかって。俺達を嫌ったらどうしようって。
……全く駄目な親だよな、俺達は」
ガルシアの自嘲にクロエは首を勢いよく振って否定する。
「駄目な筈ないじゃない!ライリーお兄ちゃん、ミラベルお姉ちゃん、コリンお兄ちゃん、アタシの4人を見事に育てて、おまけにアタシを除いて後の3人は天才よ?!
こんな凄い両親、他に居ないわ!
……あ、インフィオラーレの両親もね。
え、えと、だから!父さん達と向こうの両親もどっちも凄くて、どっちも大好きだよっ!
というわけで、アタシはこれからも父さん達の娘だから!
……そう、思って良いでしょ?」
クロエはそう言ってから、父の目を訴える様に見つめる。
ガルシアは大きく頷き
「当たり前だ!お前は俺とコレットの娘でライリー達の妹。
今までも、これからもずっと……それは変わらない、それだけが真実だ」
としっかりと娘の目を見て宣言した。
クロエもその言葉を聞いて嬉しそうに笑いながら
「うんっ!」
と頷いて同意した。
そんな親娘をハーシュは半目になって睨み付け、低い声で呟く。
「……些か頑固でいらっしゃる様ですね、クロエ様は。
師を傷つけられ、兄弟達を狙うと言われても、未だ私と共に来る事を決断できないとは……。
未だ幼い貴女ですから理解が遅いのは仕方がないとは言え、これでは先が思いやられます。
……お気付きで無いようですが、我等が貴女を手に入れるために既に2人の命を犠牲にしているのですよ?
……いや、3人かな?ほら、後ろに倒れている愚かな女がもうすぐ事切れますしね。
その事実で我等の思いがどれだけのものかお分かりになれませんか?
あぁ貴女が我等の元に来ると決断されるまで、一体どれだけの血が流れることになるんでしょうかねぇ?
それとも貴女にとっては知らぬ者達の命など、取るに足りないものなんでしょうか?
貴女が我等を信じてくれさえすれば、それだけで救われる命がどれだけあることか……。
いやはや、頑固なのも罪ですねぇ……」
ハーシュの嫌みな語りに、クロエはクスッと笑う。
ハーシュがそれを見とがめ
「……何が可笑しいのです?
大人を馬鹿にすると幾ら尊き貴女でも、少しばかり躾をしなくてはならなくなりますよ?
愛情とは甘やかすばかりではありませんからね」
とクロエをキツい調子で脅す。
「いいえ、馬鹿になどしていないわ。アタシが頑固なのも本当だし、あなたの言葉の本気度も十分解っているつもりよ?
だけどアタシも覚悟を決めた。
勿論、あなたがアタシの大事な人達を狙うのを止められないかも知れない。
……でも、それが効を奏さなくなったらあなたはどうするのかしらね?」
クロエが口元には笑みを浮かべながらも目は笑わず、ひたすらハーシュを射抜くように見つめ、そう言い放つ。
クロエの様子に違和感を感じたディルクは、クロエを凝視しながら彼女の手を強く握る。
クロエは師の手の力が強まったことに気付いて、彼に目を向ける。
ディルクが自分の決意に気付いたと感じたクロエは森に、手から以心伝心でディルクの意識に語り掛けられる様にしてほしいと願う。
(……先生、アタシの声が聞こえますか?)
ディルクは突然脳裏にクロエの声が響いたので目を丸くする。
(あぁ、どうか驚かないで下さい。森さんに願って、直接先生の意識に語りかけられるようにしてもらったんです)
ディルクは目を見開いたまま、自身もその声に心で語り掛ける。
(……儂もこうすれば良いのかの?)
クロエの声が嬉し気に褒める。
(流石!呑み込みが早いなぁ。あ、表情は変えないで下さいね。
あの、先生、アタシの考えがもしかして分かっちゃいましたか?)
ディルクは正直に伝える。
(いや、未だ掴めておらんかった。だがお主、又突拍子もないことを考えておるな?
……奴等に屈する事はしないと、この嫌みな若造にぶちかました以上、お主が奴に付いていくわけは無い。
となれば……まさかお主、又一人で姿を消すつもりではなかろうな?)
ディルクの責めるような口調に、クロエは申し訳なさそうに認める。
(……その、まさかです。ごめんなさい。先生が気付いたかもって思ったから、出来れば今は黙ってて欲しくてこんな手段で確認させてもらったの。
もう、森に隠れる事は出来ない。かといって、実家に戻れば更に周りを巻き込んでしまいます。
……ならばこの男の存在を逆手にとって此方から手を打ってやる。
この男の前で今からアタシは森の力を借りて、突然何処か遠くへ飛びます。
……勿論父さん達にはここを離れることも伝えずに。誰もアタシの居所を知ってはならないから。
父さん達が突然消えたアタシの事を嘆き悲しむ姿を見れば、この男もアタシが一人で勝手に隠れたのだと少しは信じるでしょう。
その後アタシを捜そうと皆が騒ぐ事で更に突然の失踪の信憑性は増す筈です。
アタシの居場所を誰一人知らなければ、この男も背後の奴等も父さん達を襲ったところで、誰からも何も聞けはしないのですから。
最初は絶対家族が匿ってる筈だと襲撃してくるかもしれませんが、嫌でも奴等はいずれ状況を認識して戦術を変えるしかなくなる。……それまで家族には耐えてもらわなければなりませんけど。
だけどアタシが居なければ、皆自分を守る事に集中できる筈。そしてアタシを捜す名目で、防衛一点張りから攻撃に転じることも出来る筈です。
辛いけどもう、これしか……酷く悲しませる事になると解っていても、皆をアタシの呪縛から解放する方法はこれしか思い付かないんです。
熟考する時間もありませんし、この方法が効を奏するチャンスは恐らく今しかありません。
……どうか解ってください)
クロエはディルクから目線を外しながら、傷を気にする風を装って彼と“会話”する
(何を……それこそ浅知恵じゃ!以前あれほど家族を悲しませたのをお主は忘れたのか!
お主を失えば、どちらの家族も悲しみに打ちのめされ、その心の傷は計り知れんぞ!
皆を信じろクロエ、早まるでない!)
幾分言葉を荒げ、ディルクがクロエを止めようとする。
だが現実のディルクは顔をしかめて具合悪そうに体を丸めていた。
傷は塞がったので痛みは無いが、痛む振りをしていた方が都合が良いからだ。
(……以前聞いたことがあるんです。攻撃と防衛、単的にどちらが有利かって。
……答えは攻撃です、攻める側。
勿論色んな条件下で考えなければならない事ですから、一概には言えないのは解っています。
でも防衛は相手の出方に応じて戦えるよう、いつでも気を張っていなければならないため、精神の消耗が攻撃より早い。
だから防衛側が勝つには攻撃してくる敵より余裕ある戦力を持ち、且つ有利な状況を作らなければならない。
だけど、今の状況はどうですか。明らかに不利なのは防衛……此方でしょう?
こちらは攻撃してくる敵の詳細が殆ど解らないのに、敵には防衛するこちらの情報を全て握られているんですから。
元々アタシを敵に奪われる危険性が高いと考えていたからこそ、ブライアン様はアタシを死んだと偽ってまでこの森に隠されたのですよね。
そして今、その秘密すら暴かれてしまった。既に暴かれてはいたんでしょうけど、アタシがここに居ると言う確証を与えてしまったんです。
……これでは勝ち目がない。アタシがこの森に居る限りアタシの家族への危害は勿論、アタシ達を揺さぶるために無関係の人達まで巻き込まれるのは間違いありません。
もう、アタシは森に居ちゃいけない。相手の手に落ちることは避けなければならないけど、ここに居続けることは出来ない。
再びアタシの所在を完全に解らなくするには、もう家族とは離れなければならないんです。
アタシはアタシのせいで家族に何かあれば、きっと自分が許せない。
だから例え大事な皆から愚かだと言われても、家族を守るためなら何でもする!
……この世界のどこか遠くで、一人で生きていきます)
クロエの言葉にディルクが更に噛みつく。
(幼子が一人で生きていけるほど、この世界は甘くないぞ!
馬鹿なことは考えるな、家族を頼れ!)
(お忘れですか?私には森の守護があります。
この森を出ても守護が解かれることは無いんです。
さっきの木の根も恐らく守護が働いたせいで、アタシの望んだ通りにあの男の体の自由を奪ったのですよ。
だからアタシなら、この森を出てもきっとなんとかなります。
……先生、ごめんなさい。最後まで馬鹿な教え子で。
申し訳ありませんが、これ以上グズグズはしていられません。
父さんの仲間が来るまでに、アタシは何処かに消えなければ。
……さようなら先生。どうか無理をなさらないで下さいね。今までありがとうございました)
クロエは言葉を切ると、ディルクの手を離そうとした。
ディルクは慌ててクロエの手を再び掴むと強く握る。
(……止まらんのじゃな、どうしても)
(はい、ごめんなさい先生)
クロエが詫びると、ディルクは彼女の手を更に強く握りしめた。
(……ならば儂もつれていけ。森とやらに頼めば後一人くらい、その旅路へ共に送って貰えるじゃろう?)
(?!な、何言うんですか!)
クロエは慌ててディルクから手を離そうとする。
だがディルクの力は強く、とても振りほどけない。
(……以前言うたであろう?もしお主が最悪の状況に陥ったら儂がお主を引き取ると。
些か想定していたものとは違うたが、お主がのっぴきならない状況にいるのは事実。
ならば今こそその約束を果たそう。
大体お主はこの外の世界がどうなっとるか、全くわからんじゃろう?
儂ならば地理にも明るく、又この世界の事にも通じておる。
供にするとこの先お得じゃぞ?
……儂は天涯孤独の身じゃ。既に妻も親も亡くした。兄弟もおらぬ故、儂が居なくとも誰も悲しませる事はない。
儂にとってお主は我が子同然じゃと言っておるだろうが。
クロエのお主と雅のお主。そのどちらも儂には大事なのじゃ。
だから儂を共に連れていけ。この命尽きるまで、お主を守ろうぞ)
クロエはディルクの申し出に焦り出す。
(ダ、ダメです!誰も悲しまないなんて嘘です!先生が居なくなったらみんな悲しみます!
ジェラルド様だって父さんだってお兄ちゃん達だって!
だから一緒に連れていくなんて酷いこと出来ません!)
(何を今さら……家族にとってお主が消える以上に酷いことがある訳無かろう。
むしろ儂が共に消える事で幼いお主の側には儂がついとると、少しは残される者達も気持ちを落ち着かせることが出来るではないか。
ほんの慰めにしかならぬが、それでもお主が一人行ってしまったと心を痛めるよりは遥かにマシであろうよ。
家族達のためにも儂を連れていけ、良いな?)
クロエはディルクの手を離そうとしていたが、その動きを止めた。
その後少し思案していたが、やがて改めて彼の手を握り返した。
(……ありがとう、先生。先生はいつもアタシを守って下さる。
森さんに聞いてみます。先生も共に飛べるかどうか……、え?)
話の途中でクロエはクスッと苦笑する。
(……ホント、有り得ないわ。先生はもしかして森さんと何か繋がりがあるんですか?
どうやら森さん、最初からアタシの考えを読んでて、それに先生を巻き込むつもりだったようです。
幾ら守護を掛けていても、小さくて外に不案内なアタシを一人で飛ばすのは酷だと考えていたみたい。
……先生ごめんなさい、巻き込んでしまって。アタシとどうか共に来てください)
ディルクが手を握り返して、微かに頷く。
(気にするな。儂の残り少ない人生は全てお主に捧げる。
大事なお主をこの命尽きるまで守り導こう。案ずるな、この先のお主の道を少しでも穏やかなものにすべく、儂は共に行くのだからな。
……さて、ではどうすれば良いかな?儂は何もせず只寝てれば良いのかの?)
(……凄いな、もう。切り替え速いんだから先生は。
森さんが、アタシ達が飛ぶのに最適な行き先を先生に決めてもらいたいと言っています。その場所を脳裏に強く思い浮かべてほしいと。
それに合わせて森さんがアタシ達をそこに転移させてくれるそうです。
ですがもう時間がありません。
直ぐに考えて、決まったら手を握って下さい。
それまでアタシはこの男に最後の啖呵を切ります!)
(ホホ、勇ましいのう。解った、直ぐに選定する。暫し待て)
クロエはディルクとの“会話”を終えると、自分達を睨み付けているハーシュに向き直った。
森さんチート力、発動です。恐らく次かその次辺りで本編の第一章を締め括ることになると思います。
さて、主人公が似合わない啖呵を切る次回。
本当に啖呵になるのでしょうか?
なるべく早く更新します。