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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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176. 黒髪の秘密、その3

お読みくださりありがとうございます。

その3でこの下りは一先ず締めます。

 クロエはリュシアンの提案に驚きを隠せない。


「え、え?魔法で変えるの?!髪の色をホントに?

 もしかして変身するの、アタシ?!

 す、凄い……本当にそんなこと出来るんだ……!」


「変身?あ、あぁ確かに髪の色を変えるから間違っちゃいないか……。

 でもクロエちゃんの想像が若干怖いな。今僕が言った事をどんな風に想像してるのか、聞いても良いかな?」


 リュシアンの言葉にクロエはキラキラ目を輝かせながら、大きく頷いて話し出す。


「だからアレでしょアレ!

 その法具で何らかの呪文を唱えると、アタシが法具から出たキラキラかスモークに包まれるの。

 で次の瞬間、髪の色も姿もすっかり変わってるってアレ!

 そ、そういうのじゃないんですか?!

 前の世界では子供から大人まで一度は想像した事がある、夢の魔法ですよ~!

 素敵……本当にそんなこと出来るのね……」


 そんな台詞を吐いた後、あらぬ方向に目線を上げてウットリとする。


 リュシアンはそんな幼女を面白そうに見ながら、すまなそうに否定する。


「そうなんだ。ん~……夢を叶えて上げられなくて申し訳ない。

 キラキラとかそのスモーク?って何かよく分からないけど、とにかくそういう現象は起きないんだ。

 実は髪自体はそのまんまなんだよ。髪の周りの光の屈折率や何やらを法具で変えるんだ。

 結果周りから見ると、黒髪に見えなくなると云う仕掛けにする。

 出来れば法具の仕掛けで何色か切り替えられるようにしたり、生理的な抜け毛なんかをその法具で吸収出来るようにしたいんだ。

 せっかく髪色を変えても、抜けた髪でバレてしまうなんて事、あってはならないからね」


 苦笑しながら計画している法具の説明をするリュシアンに、クロエは夢から覚めたとばかりに肩を落とす。


「あ……やっぱりアレは妄想でしか無かったか……残念。

 でもそんな便利な事、出来るんですね!髪を染めなくて良いなら髪も傷まないし、その方が良いもの。

 あ、じゃあオーウェンお兄ちゃんもその法具を使えば……!」


 クロエの言葉にオーウェンは苦笑しながら首を横に振る。


「僕は使えない。既に僕が黒髪なのは周知の事実だし、そんな僕がその法具を使ったりしたら、クロエの髪色擬装が悟られる危険性が高まる。

 リュシアンと先生の作り出す法具は、クロエだけが使うんだ。

 君のための法具なんだからね」


 オーウェンはそう言うとリュシアンに聞く。


「全く。クロエを落ち込ませるような事は言いたくないのに、法具の話を聞かせてもらってなかったから、一時的とは云え辛い思いをさせちゃったじゃないか。

 ごめんね、クロエ。リュシアンが意地悪なせいで。

 で?その法具はいつ出来そうなの?」


「そんな簡単な代物じゃないよ。

 まさにこれから術式の構築と組み合わせを考えていかなきゃならない。


 今までにやったこと無いくらいの複合魔法なんだからね。


 先生と僕をもってしても、難易度は相当高いよ?先ず装身具の形をとりたいし、クロエちゃんの魔力を使ってその法具を稼働させるつもりだから、省魔力で且つ一度流した魔力で長続可能な術式を組み入れたい。

 幾らクロエちゃんの魔力量が豊富でも、その法具を身に付けてる間は常時魔力を出し続けることになるんだ。極力使用魔力を少なくしないとね。


 それにその法具は大きさや重さも、出来るだけ小さくしなくてはならない。でないと小さなクロエちゃんが使えないだろう?

 他にも見た目を彼女に似合う可愛らしいものにしなきゃいけないし、間違っても使用中に壊れることがないよう、万全の作りにしないと!


 後、頭髪以外……眉毛や睫毛、そういった外から見える体毛も変化させなきゃならない。

 術式の効果範囲が広いからね。どう彼女の体に法具から魔法を纏わせるか……彼女の体の成長にも対応させなきゃな。

 頭部と体幹部と四肢……一つの法具で全てを包囲することが出来るのか……幾つかの法具で連動させると耐久性が心配だし……。

 あぁ!それに……」


 リュシアンがブツブツ考え込み始めたのを見て、オーウェンが慌てて彼を止める。


「しまった、物作り中毒のリュシアンには禁断の質問だった!

 不味い、思考し始めたら止まらないのに~!

 リュシアン、おいっ!考えるのは後にして話の続き!」


 オーウェンは立ち上がるとリュシアンの腕を握り、彼を揺り動かす。


 未だ思考し始めたばかりだったせいか、オーウェンの些か乱暴な揺さぶりでハッと自身の思考の海から意識を戻したリュシアン。


「あ。いけない、つい考え込んじゃった。ごめんごめん!

 まぁ今の僕の呟きを聞いて解ったと思うけど、開発はこれからなんだよ。

 でもクロエちゃんがミラベルちゃん位に成長する頃には、君が試用出来る代物を作っておきたい。

 何度か使って貰って、細部を調整していかなきゃいけないしね。


 だからクロエちゃん、僕と先生に時間をくれないかな?

 それまで待ってくれる?」


 リュシアンがクロエにニッコリ笑って尋ねた。


 クロエは頭をブンブン縦に振り、激しい同意のジェスチャーをする。


「待ちます待ちます、幾らでもーっ!

 凄い凄い~、アタシ専用の法具……マジカルアクセサリーなんだ!

 アタシ、魔法少女になるんだーっ!キャー!信じられない~!


 あぁ、これこそ物語の世界よ……魔法少女クロエの誕生だわーっ!

 綾姉ちゃんや聡に自慢したい~!クーッ、前のアタシが既に死んでるのが悔しいなぁ、もうっ!


 ウゥッ!写真とりたい……動画もとりたい、魔法少女のアタシの勇姿を留めたいーっ!

 ハッ!そ、そうよ……リュシアン様と先生にカメラを作って貰ったら良いんでない?

 確か一番簡単なのは日光カメラだっけ?よく子供雑誌に付録で付いてたくらいだし、アレならこっちでもすぐ作れんじゃない?

 ア、アタシ頑張れ、思い出せ!

 どうだったどうだった?!どんな作りだったーっ?!」


 クロエが頭を抱え叫びながら、あらぬ方向に暴走し始めた姿を見てオーウェンはオロオロし、リュシアンは面白そうに見つめ、ガルシアは微笑ましく見守り、ディルクは溜め息を吐き、ライリーは無言でクロエの後ろに立つと彼女の頭を軽くコツンと叩いた。


「コラッ、妄想で又暴走してるぞ。落ち着けクロエ」


「アウッ!痛いよライリーお兄ちゃん。だって子供の頃からの夢が叶うんだもん~。

 嬉し過ぎて、妄想が暴走する位は見逃してほしいよ~」


「ったく、話が進まないだろ?後から幾らでも妄想して良いから、今は妄想を抑えて落ち着け。わかったな?」


「はぁい、わかった~」


 ライリーに諭され、妄想から頭を切り替えたクロエ。


 リュシアンはクスクス笑いながら彼女に話し掛ける。


「うん、やっぱり楽しいなクロエちゃんは。

 この話が終わったら是非前の世界の話をしてよ。今のカメラ?だっけ、凄く気になるしさ。

 科学の発達した世界なんて、僕にはそっちの方が夢の世界だよ。

 クロエちゃんの頭の中を覗きたいくらいだ。羨ましいな、ホント」


「へ?ア、アタシの頭の中を?

 それは勘弁してください……もし見られたら、アタシ恥ずかしさで憤死出来る自信がある。

 25の女の頭の中なんて、見るもんじゃ無いです。もうエライ事になってますから、ハイ」


「ハハ!そんなの聞いたら、余計に見たくなっちゃうでしょ~。

 そうだ、オーウェンなら魔力が同じだから、クロエちゃんの思考も読み取れるんじゃない?

 やってみる?」


「ゲッ!ま、マジで?!マジに魔力でそんなこと出来んですか?!

 オ、オーウェンお兄ちゃ~ん……後生ですからそれだけは勘弁して~」


 警戒したクロエが思わずオーウェンと距離をとろうと動く。


 慌てたオーウェンが

「し、しないしない!女の子にそんな失礼な事するわけ無いだろ?!

 クロエ、信じてっ!

 もうっ!クロエからの信用ガタ落ちじゃないかっ!止めてよリュシアン、真剣に怒るよ!」

 とリュシアンに噛み付いた。


 リュシアンはケタケタ笑いながら

「ここに来てから楽しいなぁ!

 オーウェンの慌てる姿やら、先生の落ち込む姿やら、兄さんの悩む姿やら、今まで見たこと無い姿ばかり見られるよ。癖になりそう~!


 さてと、そうそう皆をからかってばかり居られないか。

 自分に報いが返ってきてもヤダし。


 とにかくクロエちゃんの黒髪については、今の計画を進めるよ。


 それとね、幾ら黒髪を隠せたとしても、君には他にも狙われる懸念材料があるよね。


 その異世界の知識だ。


 君がこの先異世界の知識を使って生み出すものについて、フェリークだけでなくインフィオラーレにも関与してもらう。

 製造元を分散させた方が足がつかないからね。


 でも君の知識によるものだと知る人間は、この地に来れる者だけに限定する。君の存在は極力匂わせない。


 発案者に関しては僕や先生、オーウェンやライリー、コリンを身代わりに仕立てていく。

 君の特定に繋がるかもしれないから、身代わりに女性は使えない。

 年齢層も広くとる。人物特定に結び付かないようにしないとね。

 出来れば森に関係の無い人物を使いたいけど、君を知られる危険が有るし、となるとどうしたって無理だから。


 クロエちゃん、君の知識を奪う形になって申し訳無いけど、君を守るためなんだ。理解してくれる?」


「全く問題ないです。先生とジェラルド様にもそうしていただいてましたから。

 それに知識と言っても、アタシの持つ知識なんて大したこと無いものばかりで。

 使えるものなんてもうあんまり無いと思いますよ?」


 クロエは了承した後、申し訳無さ気に笑う。


 リュシアンは眉を上げて否定する。


「……それは違うよ?恐らく君の知識はこの世界を変えるほどの恐ろしい影響力を持っている。


 別に物だけの話じゃない。思想も社会の構造も(まつりごと)に関しても、君の前の世界の仕組みはこの世界の者には画期的だ。


 君の考え方自体がもう貴重なんだよ?それを自覚してね。


 だけど先生が君の近くに居てくださって、本当に良かった。

 早くから手を打って下さっていたからね」


 これにはクロエも頷くしかなかった。


「未だ話したいことはあるんだけど、どうやら昼食の時間になったみたいだ。

 クロエちゃんも疲れたでしょ?又追々話していくよ。

 さて皆さんも良いですかね。

 先生、結界を解除してください。あちらに戻りましょう、コレットさんが呼びに来る前にね」


 リュシアンが話を取り敢えず締めると、ガルシアが苦笑しながら感想を漏らす。


「まさかリュシアン様がこんなに饒舌な方だとは知りませんでしたよ。

 賢い方なのは解ってましたが、寡黙な方だと思っていましたからね。

 驚きましたよ」


 リュシアンがイタズラっぽく笑う。


「必要ならば幾らでも喋れますよ?

 だけど普段は自分の考えたいことに没頭したいので。

 話の合わない人とは極力喋りません。

 だから陰気で寡黙だと思われていた方が、何かと楽だし都合が良いんです。

 クロエちゃんを目の前にして、寡黙でいるなんて出来ませんからね。

 あぁ、ホントに君がこの世界に来てくれて嬉しいよ。

 この先退屈しなくてすみそうだ!」


「あ、あはは……喜んでいただけて何よりです」


 若干引き気味に礼を言うクロエ。


(マッドサイエンティストって奴かな…。目が怖いよ。

 リュシアン様って怖いくらいに綺麗だしとても好い人だけど、やっぱり凄く変わった人だよ……。

 頼りがいはありそうだけどね)




 クロエは口元をひきつらせながら、リュシアンをそう評価して冷や汗をかくのだった。

なるべく早く更新します。

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