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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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170. オーウェンの焦燥

明けましておめでとうございます。ずいぶんゆっくりしてしまいました。

少しずつ筆を早めなければ。さっさと1章の区切りまで書いていきたいと思います。

出来れば来月辺りまでにはそこまで行きたいなぁと思います。頑張らないと。

 ディルクの小屋で4人が、今後のクロエの守りについて意見を交わしていた時。


 当のクロエはコレットと共に家に戻っていた。


「でもクロエには相当気を遣わせてしまったわ……。幾らなんでも25歳の女性に対して、赤ちゃん対応はキツかったわよね。

 考えれば考えるほど有り得ない。

 知らなかったとは言え、ホントにごめんなさいね……」


 コレットが申し訳なさそうに謝る。


 クロエはそんな彼女に

「やだ、母さんが謝る事じゃないよ!だって事実アタシは赤ちゃんだったんだもの。

 そんな風に母さんから謝られたら、却ってアタシは悲しいし。

 そりゃ確かに恥ずかしい時もあったよ。

 でも、家族皆がアタシを大事に思ってくれてるのが痛いほど分かっていたから……だから嬉しかった。

 そんな優しい皆の力に早くなりたくて、色んな無茶をしたし。

 そうそう!一人でベッドから降りようと柵にぶら下がってて、母さんに助けられたことがあったよね?

 アレは正直ヤバかったな、アハハ!」

 と笑って話題を逸らそうとした。


 コレットはその意図を汲み取ったのか

「あぁっ!アレは驚いたわホントに!

 うん、貴女の気持ちは嬉しいけど、無茶は止めてね?

 でないとアタシ、心配でシワが増えるわ。美容に大敵なんだから心労は。

 貴女なら解るでしょ?」

 とイタズラっぽく笑った。


 クロエはクスクス笑いながら応える。


「解るよ。ホントにお肌って防御が大切だよね。

 前の世界でも言われてたけど、25歳がお肌の曲り角だ……って。

 でも10代で手入れしていないと、結局25歳過ぎてから慌ててお肌に気を遣っても、シミの元がもういっぱい肌下に有って、次第に出てくるんだよね~。

 前の世界のアタシのお姉ちゃんがブツブツ文句言ってた。

 ……母さん?顔色が悪いよ、どうしたの?」


 コレットが表情を強張らせたのを見て、クロエが言葉を切る。


「10代の手入れ……もう、慌てても駄目……?そ、そんな……ア、アタシ……もう手遅れ……?」


 コレットがうわ言のように呟くのを聞いて、クロエが慌てる。


「だ、大丈夫!母さんは大丈夫!

 だって森の中で居ると、日差しも遮られているでしょ?だから日焼けしてないじゃない!

 そ、それに森の中はいつも適度な湿気があってお肌にとても良い環境だし、あと母さんのストレスを軽減させる効果がある“フィトンチッド”もタップリ浴びてるはずだよ!

 ね、だから大丈夫だって!」


 クロエが必死にコレットを宥めようと言葉を重ねる。


 コレットはヒシッとクロエを見つめると

「ホ、ホントに?何だか良くわからないけど、森の中はお肌に良いの?

 な、ならアタシ、森から出ない!

 ずっと居るわ!うん、防御よ、防御。これ以上肌を衰えさせるわけにはいかないものね。

 出産してからは更に衰えが厳しくなってきたもの~。気を付けなくちゃ!

 そうだわ!クロエ貴女、前の世界の肌のお手入れの仕方、覚えてるんでしょ?

 教えて!特にお姉さんから聞いてたことは全て教えて!

 重要な事なんだから、お願い!」

 とおでこを突き合わせて、末娘に頼み込む。


 その怖い位の必死な形相に、クロエはコクンと頷いて

「は、はい……が、頑張って思い出します!協力は惜しみません~」

 と約束した。


 コレットはその言葉を聞いて漸く表情を和らげた。


「ありがと~!あぁ、貴女が色んな知識をもってくれてる事に感謝しなきゃ!

 只でさえ貴女って、性格も優しくて育てやすくて良い子でしょ?

 その上、こんな知識まで有って……。有り難いわぁ、ホントに!

 クロエが居てくれて良かった~!」


 そう言うと、コレットはクロエに頬擦りする。


 クロエは笑いながら

「もう、母さんたら~。うん、化粧水とか保湿クリームとか一緒に作ろうね!

 自然素材の日焼け止めクリームとか作れないかな~?ちょっと頑張って思い出してみるよ、アタシ。

 ハーブとか、後は樹液とかも使えるはずだし……。

 やれるだけやってみるから、母さんも協力してね?」

 とコレットに話す。


「喜んで!何だってやるわよ~。

 後、あちらのお料理やお菓子も教えてね?

 アタシも貴女やミラベルには色んな事教えたいし、一緒にやりたいし!

 ウフフ、何だか楽しみだわ~。

 ……実はね、アタシ少し寂しく思ってたの。貴女の心が既に大人だって聞いてから。

 あぁアタシが考えていた幼い貴女はどこにも居ないんだって。

 勿論以前から貴女は大人の心を持っていた訳だけど、アタシはその事を知らなかったから……。

 でも、そうじゃないのよ。

 貴女が大人の心を持ってる事が解ったけど、でもだからって今までと変わらないのよね。

 生まれたときからそうなんだから、変わりようが無いんだものね、クロエからすれば。

 この世界の事に関して言えば、貴女は未だ何も知らない幼子と同じな訳だし。

 だから以前の可愛い貴女に、素敵な大人の貴女の部分が増えたとアタシは考えるべきなのよね?

 だから寂しく思うことなんて1つも有りはしないんだわ。

 あぁごめんなさいね、変なこと言って。興奮してるのかしら。

 気を悪くしちゃうわよね、アタシったら……」


 コレットが慌てて謝ると、クロエが首を小さく横に振りながら彼女に伝える。


「ううん、母さんはスゴい。

 突然こんな話をされたら誰だって戸惑うし、受け入れられない人のが多いと思うよ。

 アタシなら受け入れられたかどうか……。それ位変な話だもの。

 だけど母さんも父さんも……先生もライリーお兄ちゃんも、リュシアン様も……皆優しく受け入れてくれた。

 だからアタシは恵まれてる。

 幼いアタシを失ったって寂しく思ってくれたことも、アタシにとっては嫌な話どころか嬉しいよ?

 だってどんなアタシでも母さんは愛してくれてるって事だから。

 前のアタシは結構変な事ばっかりしてた自覚があるのに、母さんは可愛いって思ってくれてた。

 秘密を明かした今のアタシにも頬擦りしてくれる位、同じ様に思ってくれてる。

 ……母さんの子で良かった。

 アタシ、しみじみ有り難く思う」


「……クロエ。貴女はアタシが守るわ。いえ、家族皆で貴女を守る。

 貴女はアタシ達の大事な娘。

 どんな事があってもそれは変わりません。

 だから貴女もこれからはやりたい事は遠慮なく言ってね?

 前の世界のようには出来ないかもしれないけど、アタシ達も出来る限り協力するから。

 ガルシアが言ってた通り、貴女は幸せにならなければ。

 ……前の世界の家族もそれを願っているわ、きっと」


 コレットが力強くクロエに言い聞かせる。


 クロエは母の言葉に頷き

「ありがとう母さん。

 アタシ、皆と一緒に幸せになりたい。だからアタシも皆の力になれるよう頑張るよ。

 一人じゃ幸せになれないもん。

 皆で……家族や先生やジェラルド様やオーウェンお兄ちゃん、アタシのと周りの人達皆で幸せになろうね」

 と笑った。


 コレットはクロエの言葉に優しく頷き返した。


「そうね。皆で……。貴女が居てくれるんですもの。きっとそうなれるわ、きっとね」


 コレットはそう応えると、遠く離れた場所に居る彼女(クロエ)実母(アナスタシア)に思いを馳せるのだった。





「あれ、オーウェンお兄ちゃん?どうしたの、そんなところで」


 クロエ達が家の中に入ると、オーウェンが待ち構えていた。


「……ライリーが呼ばれていったから、何だか気になって。クロエも叔母さんも話は終わったの?」


 オーウェンが少しくぐもった声で2人に問い掛ける。


「ライリーは未だ小屋で話をしているわ。私とクロエは先に戻ってるようにガルシアに言われたのよ。

 ……多分森の話ね。クロエの付き添いをあの子はしているから。

 でも心配するような事は無いと思うわよ。だから貴方も部屋に……」


「……心配無い?そんな筈無いでしょう。僕は呼ばれず、ライリーは呼ばれた。それは僕が役立たずだからだ……。

 僕は空回りしてばかりだ。マティアスの事を笑えない。

 ……守りたいと思うのに、何の力も無くて。だから重要な事は何一つ教えて貰えない。

 もう森に来る機会はこの先あるかどうかも解らないのに……!」


 苦し気に言葉を吐き出すオーウェンを、2人は戸惑いながら見つめる。


「オーウェンお兄ちゃん……一体どうしたの?何故そんな話を……」


 クロエがおそるおそる話し掛ける。


 オーウェンはその問いに答えず、彼を見つめる彼女から顔を逸らす。


 コレットは少し悲し気な表情を浮かべると、クロエを腕から下ろした。


「……クロエ、部屋に戻っててくれる?母さん、オーウェン様とお話があるの。

 ……直ぐに済むわ。

 オーウェン様、少し良いかしら?そうね、客間でお話しましょう」


 そう言うとコレットはオーウェンの背を優しく叩き、直ぐ横の客間に彼と共に入っていった。


「……母さん。一体お兄ちゃんは何を苦しんでるの……?」


 まさか自分が全ての秘密の根幹だとは知らないクロエは、2人が入った客間の扉を見ながら呟いた。


「クロエ!戻ってたの?

 何だか今日は大人が皆話し合いばかりしてて、ずっと部屋で裁縫してたのよ。

 クロエももう用事は済んだんでしょ?なら一緒にやろう!

 今からお茶しようと思ってさ。

 根詰めすぎて、喉乾いちゃった!」


 底抜けに明るい声に振り向くと、廊下の奥の女の子部屋の扉が開き、ミラベルとエレオノーラが顔を出していた。


「うん、アタシも喉乾いたし~!

 お茶入れるの手伝うよ!」


 姉の声にホッとしたクロエは客間を気にしつつも、姉達の元に走り寄って行ったのだった。

なるべく早く更新します。

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