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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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164. 強い3歳児

お読みくださりありがとうございます。

夕食後の交流です。一部の人達はワタワタしています。

 その夜、コレット心尽くしの晩餐を皆で堪能した後。


「ね!“僕”が考えた遊びをしませんか?未だお2人ともお疲れではないでしょ?

 簡単だし、騎士の方ならきっと楽しんでいただけると思うんです!」


 コリンが鼻息荒く双子に提案した。


 マティアスが興味を持ったのか

「へぇ!君が考えたの?凄い子だなぁ!一度やって見せてよ。

 オーウェン達もその遊びを知ってるの?」

と乗ってきた。


「もっちろん!皆で良く遊んでるんですよ?

 そうですね、じゃあエレオ姉ちゃんとミラベル姉ちゃんでやって見せてあげて?

 僕は説明しなきゃ」


 コリンがエレオノーラとミラベルに指示を出す。


 エレオノーラは快く引き受けたが、ミラベルはコリンを睨んで噛み付いた。


「何でアタシなのよ!アタシが説明役に回るからアンタがやって見せなさいよ、弟でしょ!」


「だって僕は強いから初心者のエレオ姉ちゃんが可哀想だよ。

 ここは何度やっても強くなれない、経験値だけ高いド下手くそのミラベル姉ちゃんが相手した方が、見るお2人にとしたら凄く楽しめると思うの。

 ほら、対戦者の実力は同じくらいでないとさ~」


「こ、こ、このクソ弟がーーっ!」


 コリンとミラベルのやり取りを見ていたマティアスとリュシアンは目を丸くしていたが、やがて吹き出した。


「スッゲェ!口喧嘩も子供離れしてやがる。騎士団の奴等より頭回る3歳児かよ?!こりゃ先が益々楽しみな奴だな」


「ハハ、確かに。遊びを考えたってところもビックリしますけどね。

 ではその遊びとやらを見せてくれますか、お嬢さん達?」


 マティアスとリュシアンの言葉にミラベルはウッと唸り、溜め息を吐くと項垂れて了承した。


「コリン、後で覚えてなさいよ……。

 じゃあ先ずはお2人に、じゃんけんぴょんの説明をしてあげてよ、コリン」


 コリンは頷き、2人にじゃんけんぴょんの説明を簡潔に行う。


 客間にこのところ常備している黒板を使って、じゃんけんの役の三竦みの図を描いて2人に巧く説明する。


 因みにこれはクロエからの指導である。


 言葉よりも図解で見せる方が理解しやすいとのアドバイスだ。


 兄弟達もクロエの話に納得し、オーウェンやエレオノーラがここに来た際に試しにそれで遊びの説明をしたのだが、2人からはとても分かりやすかったと高評価を得た。


 双子も同じように感じたらしい。


「説明が上手い……。完全に理解できた。だが、つくづく怖い3歳児だよな。なんでこんなに説明にも気配りが出来るんだ?!」


「……本当に。僕も理解できました。兄さんの話し方より上手い。末恐ろしいな」


「……なんでそこで俺を引き合いに出す?」


 にこにこ笑って呟くリュシアンをマティアスがジットリ睨んだ。


「へへ、誉めてくださってありがとうございます!

 じゃあ実演といきましょうか。

 先ずはじゃんけんぴょんだけで。次にあっち向いてヒョイ、最後に叩いてかぶってじゃんけんぴょん。

 良く見ててくださいね~!

 じゃあエレオ姉ちゃん、ミラベル姉ちゃんよろしくね?」


 コリンの合図で姉2人が実演を始める。


 マティアスとリュシアンが腕組みをしながら見守っていたが、やがてじゃんけんぴょんのリズムや勝負の流れがつかむと直ぐ様“待て”を掛けた。


「ちょっと待った!良くわかった!

 だからここからは俺がやる!

 さ、誰が俺の相手をしてくれる?」


 マティアスが我慢しきれなくなって参戦した。


 リュシアンはニコニコしながら

「僕はもう少し見せてもらうよ。全部の遊びを一通り見たいからね」

 と未だ参戦しない。


 マティアスがニヤリと笑って

「何言ってンだよ。やりながら覚えりゃ良いじゃないか!お前もやれよ、リュシアン」

 と弟にけしかける。


 リュシアンは爽やかに笑いながら

「僕は慎重派だからね。兄さんが小さな子達に不様に負けるところを見ながら学ぶよ。だから存分にやられてね?」

 と兄をからかう。


「あのなぁ……遊びとは言え、流石にどんなに賢くても子供に俺が負ける訳無いだろ?

 兄を小馬鹿にする弟に目にもの見せてやる!」


 憤然と言い放ったマティアスは、先ずはミラベル相手に大人気(おとなげ)なく勝負を挑んだ。


 最初こそ負けたが、やはりシェルビー家“最弱”のミラベル相手に勝つのは容易かったらしく、あっち向いてヒョイに至っては最初からミラベルが負けた。


 ミラベルが涙目になったのを見て、コリンが溜め息を吐いた。


「ミラベル姉ちゃん……分かってはいたけどホント弱いなぁ。

 しょうがない、僕がやるよ。マティアス様も大分慣れてこられたみたいだし。

 はい、交替!」


 コリンの言葉にミラベルは

「ヌググ!クゥーーッ!」

 と悔しそうに呻き声を上げて勝負の座から下りた。


「さて、マティアス様。あっち向いてヒョイから始めましょうか。

 その後、叩いてかぶってじゃんけんぴょんという事で良いですね?」


 替わってコリンがマティアスと対峙する。


「ホントに強いのか~?確かに賢いし口は達者だけど、勝負事は甘くないぞ。手加減しないからな?」


「はい、僕ガンバります!だって僕はクロエのお兄ちゃんだもの。せめて遊び位は妹に強いとこ見せたいですから!」


 ニッコリ笑って健気な台詞を言うコリンに、マティアスがグッと顎を引く。


「コイツ……やるな。兄貴にとって、一番グッと来る台詞を吐きやがった!侮れん……」


 オーウェンが呆れたように溢す。


「馬鹿な台詞吐いてないで、さっさとコリンと勝負してみてよ。

 ……早くアンタの泣きっ面見たいんだから」


 マティアスはオーウェンを見てフッと笑う。


「フン、俺が負けるとでも?有り得ないね。

 ……単純な遊びだ。たかだか3歳の子供に遅れをとる筈無い。

 さぁ!やるぞコリン!」


「はい!やるぞーっ!」


 2人とも気合充分で始まった勝負だったが、雲行きが怪しくなるまでにさほど時間は掛からなかった。


 マティアスがじゃんけんぴょんで全くコリンに歯が立たなかったからだ。


「え、え、ええっ?!お、おい……お前なんでこんなにじゃんけんぴょんが強いんだ!

 も、もう1回だ、もう1回!1度も勝てないなんてそんな馬鹿なこと……!」


 あっち向いてヒョイをするにしても、じゃんけんぴょんで勝たなければ相手に仕掛けることも出来ない。


 基本的にじゃんけんぴょんで負け続けたら、どの遊びでも負けに繋がるのだ。


 コリンは何故かじゃんけんぴょんが物凄く強くなっていて、今では森の家の中で最強である。


 ニッコリ笑って楽しそうにぴょんぴょん!と言いながらじゃんけんぴょんをするコリンは、どう見ても強いとは思えない。


 しかし今ではライリーがコリンに負け越しているのだ。


「アイツ、心底楽しそうに笑いながら手を出すんだよ。で、油断してるといつの間にか自分が負け続けてるんだ。

 じゃんけんぴょんの時だけは、コリンの笑顔が恐ろしいな」


 ライリーが負け越した時、家族に肩を竦めながら吐いた台詞である。


「困ったなぁ。マティアス様、じゃんけんぴょん弱すぎです~。あっち向いてヒョイ、僕ばっかり仕掛けてますよ?

 もしかしてマティアス様には、じゃんけんぴょんって難しいんですか?」


「な、な……おま、お前っ!難しいわけ無いだろ!普通に出来るわっ!

 勝てないだけだっ!

 何でなんだ……何でコイツに勝てないんだ~?」


 コリンの台詞に顔を赤くしながら、頭を抱えて唸るマティアス。


 横でオーウェンやミラベル、エレオノーラがお腹を抱えて笑い転げる。


「アハハハハッ!あ、あんなに大口叩いといて!じゃんけんぴょんだけで、もうボロ負けしてる~」


「やだ、もう!カッコ悪すぎ~!アタシとおんなじ位弱い~!」


「マティアス兄様~!お腹痛くなりますわ~。も、もう手加減は無しで早く本気出して下さいませ~!」


 ライリーも口元を押さえて吹き出すのを堪えている。


 クロエはニコニコと兄姉達の横でその光景を見ていた。


 そんな楽しい客間にディルクがソッと入って来た。


 先ずリュシアンとライリーがその姿に気付いた。


 リュシアンがスッ……とディルクに近寄り、何やら小声で話し掛けた。


 そして直ぐに離れると、又遊んでる輪に戻っていった。


 ディルクは何故か苦笑していた。


 やがて彼はライリーに目をやると、無言で少年を手招きした。


 ライリーは首をかしげつつ、静かに輪から外れる。


「少しお主に話がある。悪いがガルシアの書斎に来てくれ。

 その後、すまんがコレット達に断りを入れて小屋に来てもらう。

 クロエも連れていく。……緊急の案件だ」


 小声で話すディルクの言葉に、ライリーは目を見開く。


 2人は遊びの輪を見ながら静かに客間を出た。


 書斎に入るとディルクは直ぐ様小声で、ライリーにリュシアンの事情を説明する。


「なっ……!そんな馬鹿なっ!」


「事実だ。至急クロエの意志を確認せねばならん。今から直ぐ小屋で話したい。良いな?」


「……わかり、ました。僕は戸口で待ってます。母さんに頼んでクロエを戸口まで連れてきて貰ってくれますか?」


「分かった。なるべく他の者に悟られたくは無いからな。

 ガルシアとコレットに客間へ行って貰おう。

 では、直ぐに動くぞ」


 2人は書斎を出ると直ぐに行動を開始し、ディルクに頼まれたコレットがクロエを抱き上げて戸口までやって来た。


「ライリー……。一体何があったの?先生が少し話がしたいからと仰っていらしたけど。

 クロエもなんて……。ねぇ、母さんには教えてもらえないの?」


 コレットがクロエをライリーに渡しながら不安気に聞く。


「ごめん母さん。僕も殆ど事情がわからないんだよ。

 クロエもそうだろ?先生が急ぎの話だって仰るだけで。

 ……多分あの2人の事だと思う。2人に知られたくないって言ってらしたよ。とにかく僕と当人のクロエに来てほしいって」


 ライリーは母に申し訳なさそうに事情を誤魔化しながら話す。


「そうなの?何なのかしら……。でもそういうことならしょうがないわね。他の子達は何とか巧く言いくるめておくわ。

 多分後から話してくださるとは思うけど、心配だわ」


 コレットの心配そうな表情を見たクロエが、母を励まそうと明るく話し掛ける。


「母さん、大丈夫だよ。あのお2人は悪い方じゃ無いし!

 アタシ、心配なんて要らないと思うよ。きっと大したこと無い話だって~!」


 コレットが困った子を見るような眼差しでクロエを見ながら苦笑する。


「そうだと良いんだけど。あ、先生が来られたわ。

 じゃあ私は客間に行くわ。クロエをよろしくね、ライリー」


「うん、任せて母さん」


 コレットがパタパタと客間に向かうと、代わってディルクが戸口に来た。


 ガルシアも戸口の息子と娘に

「後は任せておけ。先生、よろしくお願いします」

 と小声で話し掛けるとコレットと共に客間に入った。


「さて、では行こうか。話は全て小屋でする。それまでは静かにな?」


 ディルクの言葉に兄妹は頷きながら、不安気に顔を見合わせたのだった。

オーウェンは普段とても気配に敏感な子供なのですが、今この時だけは何故か、部屋を抜け出したライリーやクロエに気付きませんでした。

居なくても「トイレかな?」程度の認識しかありません。憎まれ口を叩いていますが、何の事はない、彼も双子のお兄さん達が居るので寛いでいるんです。実はツンデレなんですね(笑)

なるべく早く更新します。

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