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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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1-16 秘密の地

お読みくださりありがとうございます。


少しこの世界の説明が入ります。


分かりにくいかもしれません。


単に文章が拙いせいです。すみません。

 ガルシアは、ジェラルドとアナスタシアと共に会話を楽しんでいる。


 クロエはそんな大人3人の会話の中身に全神経を集中してヒアリングを行っている。


 単に盗み聞きである。


「ガルシア、しかし此度の訪問は些か我等の配慮が欠けておったの。すまんかった。

あのように小さなコリンやクロエを抱えておるのに、我等の応対までさせるのは浅慮に過ぎた。

特にコレットはここ暫く休めていないのではないか?アレは仕事をいい加減にするような性格ではないからの」


 ジェラルドが苦笑しながら訪問を詫びる。


 アナスタシアも同意する。


「そうですわね。しかし本来でしたら御父様と従者だけであった筈を、このように大人数で押し掛ける事になったのは全て(わたくし)の我が儘のせいですわ。

ガルシア、許してくださいまし。どうしても参りたかったのです」


 アナスタシアがその美しい顔を悲しげに歪ませ、俯いた。


(アナスタシア様。どうしたんだろう?すごく悲しそう。)


 彼女の悲しむ姿を目にしたクロエは心が傷んだ。


 思わず彼女に手を伸ばし、声を出す。


「アウア!アエア~アウ、ア~!」


(うん、自分でも何言ってんだかサッパリ分かんない!でも、アナスタシア様を放っておけない気がするから)


「クロエどうした?アナスタシア様に何か?」


 アナスタシアへ必死に手を伸ばす赤ん坊にガルシアは戸惑う。


 ジェラルドがその様子を目にし、ガルシアに助言する。


「もしやこの子はアナスタシアを慰めようとしているのではないか?様子を見ているとそう感じるんじゃが」


 アナスタシアがハッと顔をあげる。


 クロエが自分に向かって手を伸ばしているのが見えたのだろう。


 ソファからフラッと立ち上がり、ガルシアの元に近付く。


「そうなの?クロエ…貴女は(わたくし)を慰めようとしてくれているの?」


 ガルシアが無言で微笑みながらクロエをアナスタシアに渡す。


 アナスタシアがクロエをそっと抱き締めながら、クロエの顔に頬擦りする。


「優しい子、ありがとう。ガルシア、どうか暫くクロエをこのまま抱かせて下さいませ。(わたくし)……」


 ガルシアは大きく頷き

「勿論です。それにクロエもそう望んでいるようです。アナスタシア様がお疲れにならなければ、クロエを御願い致します」

 と、アナスタシアに笑いかける。


 アナスタシアは嬉しそうに微笑み、自身が座っていたソファにクロエを抱いたまま座り直す。


「フフ、クロエは(わたくし)の様子が分かるのかしら?こんなに幼いのに。心配かけてしまいましたわね」


 アナスタシアがクロエの頬を撫でながら自嘲する。


(理由は分からないけど、この方を悲しませてはいけない。とてもお辛そうになさってた。

アタシに何か出来ないかな?出来ないか。せめて精一杯笑おう。お喋りしよう。

歯がないから発音限られてるけどね。それでこの方が笑ってくださるなら、嬉しい)


 クロエはそう決心すると、ニパァ~と笑ってアナスタシアの腕を軽くトントンと叩きながら

(アナスタシア様。アタシで良ければ、ぬいぐるみ代わりにでもお抱き下さい!ぬいぐるみよりはマシです、多分!

だから、あまり悲しんだお顔をなさらないで)

 と、話しかけた。


 実際は

「アアウアヒアアア。アアイエオエエア、ウイウウイアアイイ(以下略)」

 となっていたが。


 アナスタシアはクスクス笑いながら、クロエのお喋りを聞いている。


 その表情は先程とはうって変わった、幸せそうな満たされた笑みが浮かんでいる。


 その表情を見ていると、クロエもとても嬉しくなり、訳の分からないお喋りが又始まる。


 二人の会話とも付かない、しかし心暖まる触れ合いをガルシアとジェラルドが優しく見守っていた。




 さて、コリンをお風呂に入れて寝かし付けてから、コレットは又台所へと向かい、ライリーとミラベルが客間に戻って来た。


 ライリーとミラベルは、アナスタシアに抱かれて一生懸命にお喋りをしているクロエを見て一瞬目を丸くしていたが、やがて顔を見合わせて嬉しそうに笑い合った。


 ガルシアに近寄り小さな声で何かを話すライリーとミラベル。


 ガルシアも優しく頷き、3人はアナスタシアとクロエを見つめる。


 アナスタシアはストレートの漆黒の髪に深紅の髪が少し混ざっている。


 瞳は深い深い緑色。ビリジアンだ。


 肌色は白く、磁器の様。


 クロエが想像した通り、彼女とジェラルドは貴族である。


 彼女の実父であるジェラルドの爵位は伯爵。


 長い間自領の領主として、又国に仕える忠臣として活躍していた人物である。


 アナスタシアは既に嫁いでいて、今は別の領の領主夫人である。


 アナスタシアが嫁いだ相手はジェラルドが懇意にしていた、自身より爵位が上の侯爵の令息。


 今はその令息が代替わりで爵位を継いでおり、領主でもある。


 アナスタシアは侯爵夫人でもあるのだ。


 本来であれば中々この様な遠出はしないが、今彼女は静養中で実家に身を寄せていた。


 彼女には息子と娘が居る。


 今は静養中の為、子供二人は自領に残してきている。


 その事もあり、近頃は笑うことが少なくなっていた。


 しかしジェラルドが恒例のシェルビー家訪問に行くと話すと自分も行きたいと頼み込んだ。


 無気力だった彼女にその日から少しずつ笑みが増えたのだ。


 そして今。


 静養に入ってから一番嬉しそうな表情をしているアナスタシアに、ジェラルドは心底安堵していた。


 いつも自身もこの家では寛いで、英気を養っている。


 この家がある深い森の静けさや空気の美味しさ美しさも去ることながら、やはりこの家族の暖かさが彼を癒してくれるのだ。


 今このシェルビー家には他に無理を聞いてもらっていることもあるのだが、彼らが居なければこの森も地も守れないのだ。


 なぜシェルビー家はこんな深い森に住んでいるのか。


 それはここが“守るべき地”であるから。


 この家の主ガルシア・シェルビーは、元騎士である。


 今は騎士を辞め、この“黒き森”と“守るべき地”の“管理人兼守人(かんりにんけんもりびと)”をしている。


 彼等の話をするにはまずこの国の話からしなくてはならない。




 国の名前はアーソルティ王国。


 王制の国である。


 国土は自然豊かで海と山に挟まれている。


 気候は春夏秋冬の四季があり、この世界の特殊事情によりきっかり3ヶ月で季節は変わる。


 因みに山側は夏は涼しく、冬は厳しい。


 反対に海側は夏は暑く、冬は温暖。


 日本とそこは似ている。


 それほど大きな国ではなく、王が治める中央直轄領を囲むように諸公が治める州が7つ。


 内、山側にあるフェリーク州がジェラルドの領地である。


 州都はアラベラ。


 普段ジェラルドはそこに居を置いている。


 今は領主を息子、つまりアナスタシアの兄に譲り自身は隠居の身だが、領地視察は今ジェラルド自身が回ることが多い。


 領主は州都と王都を往き来しなければならない事、又国の要職に就いてもいるので、早々領地を頻繁には視察できない。


 ましてやこのフェリーク州はアーソルティ王国の中では2番目に領土が大きく、又高低差がある。


 州を区分けし、そこに長を置いてある程度は治めさせているが、やはり視察は必要である。


 その中に長を置かず、領主直轄且つ立ち入り制限区域がある。


 それが“黒き森”と“守るべき地”だ。


 ここはフェリーク州の北端にある、シェイロ村という辺境な村の一角なのだが、シェイロ村自体実は長がいない。


 名目上、長はジェラルドになっている。


 住んでいるのは、復命を受けた者達ばかり。


 隣国とは高いノコギリ状の山々、シエル山脈で国境が敷かれている。


 実は隣国のクローテ王国とは昔、戦があった。


 それ以降ここは州公直轄地として、常に隣国に目を光らせる様になったのだ。


 因みに昔ジェラルド自身も騎士であった。


 ガルシアは愛弟子でもあり、騎士の後輩でもある。


 但しジェラルドは貴族で、ガルシアは平民であるから、騎士団長と平騎士の関係ではあったが。


 しかしジェラルドは槍の名手で、その技は愛弟子に叩き込んだ。


 つまりガルシアも槍の名手なのだ。


 ジェラルドは自身が領主から退く際、息子の補助として直轄地の管理人兼守人をガルシアに打診した。


 ガルシアは快く引き受けすぐさま騎士を辞し、この地にやって来たのだ。


 因みにコレットはジェラルドの州都にある邸宅で側仕え見習いであった。


 ジェラルドの邸宅へガルシアが管理人兼守人として、報告に訪れる内に恋仲になり、やがて結婚して共にこの地で暮らすことになったのだ。


 あまり住む人のいないシェイロ村から更に離れた“黒き森”と“守るべき地”に赴任し、その寡黙ながらバイタリティー溢れる人柄で文句1つ言わず、見回り等をしている。


 但しどんなに人が少ないとはいえ、同じ様にこの地を守る者達が居る。


 普段は姿を現さないが、意思の疎通は常日頃から“ある方法”で密にしている。


 又立ち入り制限の言葉通り、普通にはこの地に足を踏み入れられないように“細工”をしている。


 それが“結界”と呼ばれるものだ。


 “結界”は“ある方法”で作り出している。


  “ある方法”をガルシアもコレットも使える。


  それもあってガルシアはこの地の守人の長を務めている。


  ジェラルドは年一度はここに滞在し、ガルシアと共にこの地を視察している。


  ガルシアがこの地に家族と住むのはそう云う事情であった。


  実はこの仕事と土地がガルシアの性に合ったのか、騎士をしていたときより生き生きしているというのが彼を知る者の見地であるが、余談ではある。




  客間が和やかな雰囲気の中、コレットがノックをして入ってきた。


 晩餐の準備が出来たようだ。


 これからコリンの“プレゼン”により、皆が楽しみにしていた晩餐の始まりである。










次話は明日か明後日投稿します。

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