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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
154/292

158. マティアスの瞳

お読みいただきありがとうございます。

間が開いてしまい、本当にすみません。

未だ来客達が家に入れていません。遅い展開ですね、何とか何処かで早くしたいんですがね。

一章が括れない(汗)

 馬小屋にそれぞれ自身の馬達を休ませた彼等は、直ぐに出迎えの者達の前に戻ってきた。


 コレットが淑女の礼を取ると、ミラベルとエレオノーラも次いで同じ様に礼を取る。


 少年達も母や妹達に倣い、立礼を取った。


 2人に礼をとらなかったのは、する必要がないディルクと、そういった事に慣れないクロエである。


 皆が礼を取る中

(え?え?ど、どうしたら良いんだろ?!)

 とオロオロした挙げ句、手近の母のスカートの陰に隠れて少し頭を下げてみた。


(これでも、い、良いよね?アタシ未だチビだし。無礼討ちなんてされないよね?)


 しかしクロエの姿にチラリと目を向けた2人はフッと笑って、直ぐに彼女から目を外した。


「あぁコレットさん、どうか頭を上げてください。

 今回礼を失して押し掛けてしまい、此方こそ申し訳無い。

 ですからどうか堅苦しい挨拶は抜きでお願いします。

 改めてお久し振りです、コレットさん。

 ……そして、ご無沙汰しております、ディルク先生。後からお説教は覚悟しております。

 ですが僕達の無礼を甘受して受け入れてくださって、本当に感謝しております。

 なるべくお手数をお掛けせぬようにしますから、よろしくお願い致します」


 そう言い置いてから、青年達は改めて皆に自己紹介をする。


「初めまして、領主ライモンドが長子、マティアスです。で、こいつが双子の弟のリュシアンです。

 突然押し掛けて来て、君達にも迷惑をかけてしまって申し訳無い。

 どうかその事で僕達を嫌わないでくれることを願います。

 滞在中よろしく頼みます」


 マティアスの言葉に子供達は皆又深く一礼をして、顔をあげて微笑んだ。


 自身の言葉に対する子供達の丁寧な態度に、マティアスは微笑みながら大きく頷く。


「……あぁやっぱりコレットさん達の子供だけあるなぁ。皆賢いし、礼儀正しい。

 それに見目も良いし。王都の下手な貴族の馬鹿ガキより余程気品がある。

 益々君達と話せるのが楽しみになってきたよ。ディルク先生やお祖父様お祖母様、アナスタシア叔母様までが君達をべた褒めだったし。

 なんてったって気難しいオーウェンまでが気に入った子供達なんて聞いたら、もうこれは見逃せないからね!

 と言う訳で、久し振りだな!オーウェン。お前に会えて兄さんは嬉しいよ!

 ……何でそんなに嫌そうにしてんの。お前とエレオの事はいつも全力で可愛がってるのに、そんな疎ましそうな目で見ないでよ。僕はお前を弟だとまで思っているのに、つれないね、ホント。

 愛する弟に嫌われたら兄さんは悲しいよ。なぁエレオ?」


 マティアスが大袈裟に嘆くと、オーウェンはウェッと吐く真似をする。


 そんな2人を尻目に、今度は双子の弟がペコリと軽く頭を下げた。


「リュシアンです、よろしく。

 ……マティアス、オーウェンに(えず)かれてる。やっぱり今までの仕打ちのせい……」


 簡単な名乗りをしてから、リュシアンが最後にボソッと呟く。


 エレオノーラがニコニコしながら

「やっぱりお兄様はマティアス兄様と1番仲良しですわね~。そう思いません?リュシアン兄様」

 と2人のやり取りを見守る。


 それを見ていたディルクがハァと肩を落とす。


「マティアス、其方の図々しさは相変わらずじゃの。オーウェンの反応は(ごく)普通じゃ。

 あれだけ幼いオーウェンをからかっておったに、よくもそんな台詞が吐けるの。

 エレオ、其方はもう少しこの2人を冷静に見極めなさい。

 リュシアン、口数の少なさは変わらんな。まぁそれでも兄よりはマシか。相変わらず変なものを作っておるのか?」


 ディルクの言葉にマティアスは不服そうに口を尖らせ、オーウェンとリュシアンは頷き、エレオノーラは首を捻った。


「先生、僕はオーウェンをからかったりしてませんよ。

 いつも一緒に遊んで、可愛がっていたじゃないですか~。

 なのにそんな酷い誤解をされていたなんて、心外だな」


 しれっとした顔で話すマティアス。


「……あれが遊びなら、悪戯や意地悪なんてこの世には存在しないよ、性悪が」


 ボソッと小さな声で悪態を吐くオーウェンに、マティアスが小さく首を横に振りながら

「オーウェン、あれは君の行く末を心配して少し鍛えてあげていただけだよ。

 世に出ると酷い人間がわんさと君に襲いかかってくる。

 可愛い弟がもしそんな奴等の攻撃に屈するような事が有れば、兄の僕としては到底看過できない。

 やはり可愛い弟には強くあって貰いたいし。

 言わば愛のムチ……って奴だね、アハハ!

 ま、そんなことは置いといて。

 コレットさんの優秀な子供達を紹介してくれよ、オーウェン。

 未だこの子達の名前も聞けてないのに、僕と来たらお前としか話せてないじゃないか。

 もしかしてオーウェンは焼きもちを妬いてるのかな?

 僕を独り占めしたい気持ちは解らないでもないけど、やっぱり大事な友達は先に紹介すべきだと思うよ~?ね!」

 と更に彼の神経を逆撫でする。


 オーウェンは益々顔を歪めてマティアスを睨み付ける。


「誰が独り占めしたい、だ!気色悪い!

 大体アンタ一人で喋ってるだけで、僕は何も口を挟んでないし。

 寧ろ大事な友達に、アンタみたいな変人が身内だって知られたくないよ。

 でもそうも言ってられない。

 くそっ!……お祖父様、後で覚悟してもらうぞ。

 じゃ、簡単に紹介するよ。

 先ず僕の横に居るのが、シェルビー家の長子でライリーだ。

 エレオの横に居るのがその妹のミラベル。

 ライリーの隣に居る金髪の子が弟のコリン。

 ……コレット叔母さんの後ろに隠れてるのが一番下の妹の、クロエ……だよ」


 最後、少し声を低くして紹介し終わったオーウェンは1歩下がって、ライリーの背を押す。


 ライリーが深く一礼してから顔を上げる。


「初めまして、マティアス様リュシアン様。ようこそ黒き森へ。

 ガルシアとコレットが長子、ライリーです。

 どうかよろしくお願い致します」


 次にミラベルが淑女の礼を崩し、顔を上げて笑う。


「初めましてマティアス様リュシアン様!ガルシアとコレットの長女でミラベルと申します。

 短いご滞在と伺っておりますが、出来るだけお2人に快適にお過ごしいただけるよう、母共々おもてなしさせていただきます。

 どうぞよろしくお願い致します」


 にこやかな言葉に、少しの牽制を入れて挨拶をするミラベル。


 その棘に気付いたマティアスが目を丸くした後、ニヤリと笑う。


「フッ、驚いたな。見た目通りの少女とは思えない立派な挨拶だ。

 ……おもてなし、楽しみにしているよ、ミラベル」


 コリンがピョコンと頭を下げてから、笑顔で無邪気に挨拶をする。


「初めまして!僕が3番目の子でコリンと言います。

 よろしくお願いします!」


 無駄の無いハキハキした挨拶に、2人は又目を丸くする。


「……本当に賢いな、この兄弟。この歳でしっかりと挨拶が出来るとはな。

 あぁよろしく、コリン。世話を掛けるね。

 ……で、コレットさんの後ろに居るお嬢ちゃんは、恥ずかしがりやさんなのかな?」


 コリンに声を掛けた後、コレットの後ろに居るクロエに注目する2人。


(来たっ!……名前だけで良いよね、よ、よし!)


 クロエは母のスカートをギュッと握り、上目使いで2人を見ながらおずおずと話し出す。


「……こんにちは。アタシ、クロエ。よ、よろしく」


 マティアスは嬉しそうに頷いてクロエの前に屈み込んだ。


(ゲッ!近付いてきたよ、何で?!ちゃんと挨拶したのに~)


 クロエを見つめながら手を伸ばしてくるマティアス。


(い、いかん!払い除けるべきなの?逃げるか?いや、ここはやはり……)


 近付く手を見つめながら、次第に顔をしかめていくクロエ。


 ポスッ!


 クシャクシャ。


 クロエの頭に手を置いたマティアスは、そのまま頭を軽く撫でるように動かした。


「しっかり言えたね。良い子だ。

 クロエ、僕達は君に会いたかったんだよ、凄く。

 どうか怯えないで。僕達を嫌わないでくれると嬉しい。

 ……わかるかな?」


 真摯な目でクロエに語りかけるマティアス。


 泣こうと顔をしかめて準備万端だったクロエは、彼の目と言葉に思わず泣くことを忘れた。


(アタシに会いたかった?マティアスさん、凄く真剣な目だ。

 ……でも、何で?)


 クロエの戸惑いを目にしたマティアスは、もう一度クシャッと頭を撫でると、微笑んで彼女に頷く。


 そして手を離すと、彼女から目を離した。


「さ、お2人とも先ずは家の中へ。

 さぞお疲れでしょう?先ずは汗を流してくださいな。

 少し汗臭いですわよ?オホホ……」


 コレットがニッコリ笑いながら家の中へ2人を(いざな)う。


 母の言葉を聞いたクロエはコレットからスッと離れ、兄姉の元に走り寄る。


 ライリーとミラベルが彼女を受け止め、自分達の後ろにクロエを隠す。


 それを横目に見ながら、マティアス達は家の中に入っていった。


「ねぇお兄ちゃん、お姉ちゃん。

 マティアス様達はアタシの事知ってたの?

「会いたかった」って言ってたよ。

 ジェラルド様にでもアタシの事聞いてたのかな~。

 何か凄く真剣で……ビックリした」


 ミラベルは言葉を無くし、ライリーを見る。


 ライリーはクロエを見つめながら

「ジェラルド様はあの人達の祖父だからね。きっと視察の話をしたときに、お前の事も話したんだろう。

 ただ、変なことまで話してないと良いんだけどね。

 さて、母さんの手伝いもしなきゃな。皆、家に入るぞ」

 と話し、彼女を抱き上げる。


「さて、これからだ。

 気を付けろよクロエ。僕達もお前から離れないようにするからね」


 ライリーの言葉にクロエも頷く。


 彼は末妹の様子に微笑みながら、彼女を抱えたまま家に入り、後から他の子供達や老教師も続いていった。

マティアス達のモデルは複数です。

想像を働かせてくださると嬉しいです。

なるべく早く更新します。



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