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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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146. 森の大歓迎

お読みくださりありがとうございます。


漸く実兄姉達の滞在が始まります。

祖父が孫達可愛さの余り、醜態(?)を見せます。

「ガルシア、コレット。そして先生。長期間でご迷惑をお掛けするが、孫達をよろしく頼みますぞ。

 オーウェン、エレオノーラ。

 皆の言う事を聞いて、この森で良い思い出をたんと作れ。……特にオーウェン、お前はな。

 あぁエレオノーラ、寂しくなったらいつでも連絡しておいで。直ぐに私が迎えに来るからな。

 ライリー、ミラベル、コリン、クロエ。2人を頼む。どうか仲良くしてやってくれ。

 あぁそれとオーウェン、エレオノーラ、森は不思議の塊だ。守り人のガルシアからの指示は必ず守りなさい。

 それから……」


 オーウェンとエレオノーラを送ってきたジェラルドがたった一日だけ森に滞在した後、側仕えと騎士達と共に州都に帰る前に心配そうにあれこれと言葉を連ねていた。


 ガルシアとコレットは微笑ましそうに、ジェラルドの様子を見ている。


 ディルクは溜め息を吐きながら、元部下のオロオロする様に眉を潜める。


 当の孫であるオーウェンとエレオノーラは、恥ずかしそうに祖父の言葉を聞いている。


 共に帰る側仕えや騎士達は、話の終わらない主を心配そうに見守っている。


 シェルビー家の子供達は、いつこの話が終わるのかと諦め半分で老紳士を見ていた。


 話の終わらないジェラルドに、とうとう業を煮やして口を開いたのは、やはりディルクであった。


「ああ、もう良い!何度も何度も同じ話を繰り返すな!

 2人は大丈夫だと何度言えば解るんじゃ。

 見てみろ、お前の孫を。

 ジジイがあんまりしつこいんで、友の前で恥ずかしそうにしているではないか。

 余り2人に恥を掻かせるな。可哀想じゃろうが!

 後はガルシア達と儂に任せて、さっさとアラベラに帰れ!

 テオ!何をしとる。

 この、場の空気が読めぬ頼りない主をさっさと回収して、アラベラで待っとる保護者のグレースに返しとけ。

 ……シュナイダー、頼んだぞ。

 ほれジェラルド。早う行かんかいっ!」

 と嫌そうな表情を浮かべ、手をシッシと振りながらジェラルド達を促す。


「グッ……。わ、解りましたよ、先生。

 じゃあ儂達はこれで帰るからな。

 2人ともしっかり色々な事を学ばせて貰うんだぞ。

 ……しかしエレオ、本当に大丈夫か?

 オーウェンは何度か滞在を経験済みだから安心だが、其方は何せ初めてに近い。

 やはり儂と共に……」


 帰ると宣言しながら、尚に孫娘に食い下がるジェラルドにお付きの者達も頭を抱えそうになっていると

「お祖父様、いい加減にしてくださいませ!恥ずかしいですわ!

 わたくしは大丈夫だと何度も何度も申し上げているでは無いですか!

 お祖母様にもしつこいとご指摘されてたというのに。

 お兄様も居られますし、仮にわたくし一人であったとしても、シェルビー家ですのよ?

 寂しがったりする筈ありません。

 どれ程わたくしがこちらに参りたがっていたのか、知らぬお祖父様では無いでしょう?

 わたくしは大丈夫ですから、早くお祖母様の元にお戻りくださいませ!」

 と当のエレオノーラが頬を赤くして自分のスカートを握りしめながら、祖父に言い放った。


 その容赦の無い言葉にジェラルドは泣きそうな表情になって

「エ、エレオ~、そんな冷たい言い方をせんでも。儂はただお前が心配で~」

 と情けない声で訴える。


「ほれ、孫娘自身にも嫌がられておるではないか。情けない奴め。

 これ以上泣きつくな、孫馬鹿が。諦めて帰れ。

 ……未だ食い下がるようなら、究極の劇薬を使うぞ。

 それでも良いのか?」

 とディルクがニヤリと笑う。


 ジェラルドが眉を潜めて

「劇薬?何ですか、それ。儂には良く分からんのですが……」

 と訝しげに問うた。


 ディルクは意地悪い笑みを浮かべたまま

「ほれクロエ。この孫馬鹿のくそジジイに、チクリと一言言ってやれ!

 直ぐに尻尾巻いて帰る位のキツーい一言をな!

 何せ其方の言葉はキッツいからのう~。頼むぞ!」

 と何故かクロエにバトンタッチ。


 慌てたのはクロエ。


「はぁっ?意味解らないし!なんでアタシがそんなことを?

 アタシみたいな幼児が、立派な大人にそんなキツい言葉言える訳無いでしょ。

 大体ジェラルド様はそんな事しなくても皆にドン引きされてること位、ご本人も充分わかってらっしゃいますって!まさか分からない程、おめでたい頭でも無いでしょう。

 それが解ってらして、尚エレオお姉ちゃんに食い下がられるんだから、いやー見上げたもんですよ。

 いやはや見事な孫馬鹿、最早つける薬なんてありません。

 だからここは温かーい目で……」

 と自覚無しでディルクに言い返していると

「ウグッ……わかった、帰る。帰れば良いんでしょ!

 うぅ、クロエがキツい~!儂、悲しい。これ以上言われたら、儂立ち直れん。

 さぁテオ、シュナイダー、行くぞ。

 ではこれにて。ガルシア、案内を頼む」

 とジェラルドが慌てて言い、踵を返して馬車に向かう。


「「お祖父様、お気を付けて!」」


 孫2人がホッとしたように声を掛けた。


 その声で益々ジェラルドはガックリと肩を落とし

「……誰も止めてくれん。寂しいのう」

 とボソッと呟いた。


「流石。未だ言ってる。挫けない方だわ~ある意味凄い」

 と要らぬ一言を又クロエがボソッと吐く。


 ジェラルドが涙目で振り返り

「帰りますっ!もう言わないで~、薬がキツいっ!

 先生、この薬はキツすぎますぞ。

 儂、本気で辛いです~!」

 と叫んで馬車に乗り込んだ。


 お付きの者達や騎士達が各自馬車や馬に騎乗したか確認したガルシアが

「では参りましょう」

 と一行に声を掛けて、自身の馬を進ませ始めた。


「視察の時来られるの、楽しみに待ってますからねージェラルド様ー!お気を付けてっ!」

 とキツいクロエが大声で叫び、大きく手を振った。


 馬車から顔を覗かせたジェラルドが

「ホントにー?儂、信じるからねー!早めに来るからーー!」

 と叫び返してきた。


「あ、早くなくて良いでーすっ!

 お仕事第一~!州都でお仕事しっかり頑張ってから、ゆっくり視察でよろしくでーーすっ!

 お兄ちゃんお姉ちゃんは我が家にお任せあれーー!

 お仕事頑張るジェラルド様、素敵ですよーー!

 あと、お体には充分気を付けてくださいねーー!」

 とクロエはジェラルドの気持ちを下げたり上げたりさせる忙しい言葉を、又叫び返した。


 するとしつこいジェラルドが

「泣いて良いのか、喜んで良いのかわからーーーんっ!」

 と又々叫び返してきた。


 これに止めの一言。


「喜んで良いんでーーすっ!心の広いジェラルド様が大好きですよーー!だからお仕事がんばれーーー!」

 と返したクロエ。


「わかったーー!儂、仕事がんばるーーー!儂もお前達が大好きじゃーーーー!」

 と叫び返してきたのを最後に、彼等の姿が森の樹々の間に紛れ、やがて見えなくなっていった。





 クロエが笑顔でウンウンと頷いていると、周りから変な声や溜め息が聞こえてきた。


 彼女が不思議に思って周りを見てみると、先ずディルク、オーウェン、ミラベルが口を押さえ、肩を震わせて笑いを堪えていた。


 一方コレットとライリーはおでこを押さえ、大きな溜め息を吐いている。


 最後、エレオノーラとコリンは妹に尊敬の眼差しを送ってきていた。


「え、え?あれ、皆どうしたの?

 流石に今のはアタシ、無礼過ぎたかな?……調子に乗り過ぎたか。

 母さんとライリーお兄ちゃん怒ってる?おでこ押さえてるし。

 先生……笑い過ぎ。先生が無茶ぶりするからでしょ。後、2人も笑い過ぎです!

 あの、エレオノーラお姉ちゃんとコリンお兄ちゃんは何で目がキラキラしてるのかな。この反応は良くわかんない……」

 とクロエがアタフタする。


 ディルクが笑いを堪えきれず、ブフッと吹き出してワーッハッハと大声で笑い出した。


 次いでオーウェンとミラベルもアーッハッハと腹を抱えて笑い出す。


 溜め息を吐いていたコレットとライリーも、やがて互いに顔を見合わせるとプッと吹き出して、ディルク等と同じ様にアハハッと笑い出した。


 エレオノーラとコリンは目をキラキラさせたまま、クロエに近寄り

「凄いね、クロエは!

 あのジェラルド様に意見出来るって知ってたけど、まさか泣かしてしまう事も出来るなんて。

 強いねっ!流石、僕の妹!」

「クロエはどうしてそんなに賢いのかしら!わたくし、貴女を見習いますわ。

 ミラベルもしっかりしてますし、わたくしも2人を見習って強くならなくては。

 あぁ、本当に貴女達と居ると楽しい事ばかりですし、成長も出来ますわね。

 何て素晴らしい!クロエ、よろしくね!」

 と2人に手を握られて賛美の言葉を貰ってしまった。


「それは……余り見習わない方が良いと思いますが……。

 何だかとても恥ずかしい、うぅ~」

 と顔を真っ赤にして恥じ入るクロエ。


 そこに、トトトト……トトンッ!


 クロエの肩にここが登ってきた。


「「あっ!ここちゃんだっ!どこ行ってたの?」」

 とクロエの正面に居たエレオノーラとコリンが同時に歓声を上げる。


(ただいまですのーー!

 いま、みなさまがおかえりになられたのをみましたので、わたくしももどりました。

 うふふ、わたくしのなかまがオーウェンさまとエレオノーラさまのかんげいのために、もりのめぐみをたんとさがしてきておりますのよ!

 クロエさま、なにかいれものはありませぬか?みつもいーーっぱいですの!

 あと、たまごもありましてよ!

 おはなもありますわ、ほら、もうすぐそこまでなかまたちが……)

 とクロエに胸を張って話すここ。


 クロエは目を輝かせて喜び

「ホントに?!スゴいスゴーーいっ!ここちゃん、最高っ!

 母さんっ、今オーウェンお兄ちゃんとエレオノーラお姉ちゃんの歓迎で、森の皆がいっぱい恵みを持って来てくれるんだってっ!

 蜜もいっぱい有るから、なにか入れ物を用意して欲しいって!

 早くしないとそこまで来てくれてるらしいよ、用意しなきゃ!」

 と直ぐコレットに報告する。


 コレット始め皆から大きな歓声が沸き起こる。


「まあっ!何て素敵なの!

 クロエとオーウェン様、エレオノーラ様はここちゃんと一緒に、先にここで森の方達をお迎えして差し上げて。

 さぁ皆、入れ物を持ってきましょう!沢山有るのよね、楽しみだわ~。

 あぁ、先生もお手伝いお願いしますわっ!

 忙しくなるわよ~!」

 とコレットがテキパキ指示をし、

 出迎え組と準備組に皆を分けて、家に物凄い勢いで駆け戻る。


 準備組に指名された面々はその後を慌てて追う。


 オーウェンとエレオノーラはその姿を見送りつつ

「森の皆?まさかここちゃんの仲間達が、僕達を歓迎してくれてるの?!凄いじゃないかっ!」

「お仲間さん達がもうそこまでいらっしゃってるの?お会いできますのね?まぁ、夢みたいだわっ!」

 と興奮してクロエに話し、ここを見る。


 ここはキュッキューーッ!と鳴いて頷くと、クロエの肩で飛び上がりクルンッと1回転した。


(そうですのー!だいかんげいですのーー!よろこんでいただけてよかったですわーー!)

 とここが胸を張りつつ、2人の言葉を喜ぶ。


 クロエが優しく笑い

「2人に喜んで貰えて嬉しいって言ってる。

 森の仲間さん達にもうすぐ会えるよ。楽しみだね!

 皆とっても優しいの、それに可愛いし、頼りになるし。

 だから2人も森の仲間さん達には優しく礼儀正しくでお願いします。

 間違っても乱暴したり迷惑掛けたりしちゃ駄目だよ?

 まぁ2人なら解ってると思うけど。

 さぁ、先ずは挨拶からだよ~」

 と彼女は森に目を向ける。


 オーウェンとエレオノーラは頬を上気させて大きく頷き、同じ様に森の向こうに目を向ける。


 やがて木立の向こうから、ざざを先頭に色んな動物達が森の恵みを抱えてやって来るのが見え始める。


「「……わぁ!凄い!」」


 思わず2人から感動の声が漏れる。


 やがて家から色んな形状・大きさの入れ物を沢山持って、コレット達が戻ってきた。





 オーウェン、エレオノーラの森の家の滞在は、森の住人達との初顔合わせから始まったのだった。


ここちゃんは既にジェラルド達にも存在を知られていますが、彼等が居る間は余りうろちょろしません。喋りもしかりです。

森に長く滞在する子供だからこそ、オーウェンとエレオノーラには親しく接しています。

そして何よりクロエと同じ匂いが彼等からするので、大事にしているのです。

ジェラルドもなのですが、彼は大人なので(笑)

なるべく早く更新します。

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