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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
134/292

138. 家出娘の帰宅

お読みくださりありがとうございます。

予告詐欺です。今話で終わる筈が長過ぎて、後1話増えました。大変申し訳ありません。恐怖の雷編は次になります。今話は帰宅編です。

 彼女が家を出てから森の家の家族は、表面上普段通りに過ごしてはいた。


 だが末娘の行方が知れないのに、皆平静で居られる筈がない。


 ガルシアは毎日畑に出向いては、無駄だと知りつつもかの地で末娘を必死に探し、肩を落として帰宅する。


 コレットはつい末娘を心配するあまりに、普段絶対間違えないスープの味付けに、あろうことか普段淹れない蜜をドバーッと淹れてしまった上、塩も一抓ひとつまみのところを景気良く一握り淹れる体たらく。


 そして止めに煮込みすぎてしまい、出来上がりはえもいわれぬ面妖なドロドロスープとなってしまった。


 ……家族は皆一口食べて、直ぐに悶絶したのは言うまでもない。


 家の掃除でも、変なところに顔を突っ込んでは暫くそのまま動かず、時折体を震わせて嗚咽を漏らしていた。


 彼女は自分がコリンの世話を末娘に押し付けたから、この様な事態になったのだと酷く後悔していたのだった。


 老教師は老教師で、殆ど休めていない様子だ。


 いつも顔色が悪く、その癖コレットの面妖なドロドロスープを口にしても味が良く解らなかったのか、一人完食してしまったのだ。


 周りが目を剥いたが、老教師は全く気付いていなかった。


 言葉数も極端に減り、この2・3日は授業も鍛練も心此処こころここあらずで、まともな授業になっていないのが現状。


 子供達が老教師に声をかけなければ、彼は溜息ばかり吐いており会話が成り立たない有り様だ。


 子供達はと云うと、大人の様子に心痛めて必死にお手伝いをしたり、明るく振る舞ったりと大人よりも大人らしく行動している。


 先ず姉のミラベル。


 妹の家出が解った後、一番側に居た自分が家出に気付けなかった事に最初は落ち込んでいたが、妹の手紙に両親と弟のコリンを頼むと書かれていた事を思い出し、姉として妹の気持ちに答えなければと健気にも決意した。


 両親に積極的に声掛けをし、手伝いを率先してやり、常に明るく振る舞う。


 妹の魔力暴走の時とは全く違う。彼女は妹が、手紙だとしても姉の自分を頼りにしてくれた事を心の支えにしたのだ。


(アタシ頑張るからね!父さん母さんとコリンは任せて。だからクロエ、貴女も早く帰ってきてよ……!

 ……妹の貴女から悩み事を打ち明けてもらえるように、アタシはもっとしっかりしなきゃ。

 アタシはお姉ちゃんなんだから!)


 ……本当に健気な姉なのである。


 次に次兄のコリン。


 彼は彼で妹を心配していたが、反面妹に心酔しきっている重度のシスコンである。


 クロエから彼への手紙には、実はこう書かれていたのだ。


 “コリンおにいちゃん。アタシ、コリンおにいちゃんたちとこれからもいっしょにくらしたいから、今からもりに修行にいってくるね!

 コリンおにいちゃんにつかったアタシの力は、ほうったままだと危ないんだって。よくわかんない強い力だから。

 アタシの力のせいでかぞくにケガさせたくないんだよ。

 コリンおにいちゃんは何とかがんばってくれたけど、ほかの人だったらどんなことになってたか解らない。

 だから、アタシ森にいって力を何とかする。

 大丈夫だよ、考えがあるんだ!アタシを信じてね。

 できるだけ早くおうちにかえるから。ぜったいにかえるから!

 あと、たおれたコリンおにいちゃんのそばにいるっていったのに、やくそくまもれなくてごめんなさい。

 かえってからもう1回ちゃんとあやまるね。

 わがままないもうとでごめんなさい。

 じゃあいってきます!

 クロエより”


 コリンはクロエを信じている。賢い妹は絶対に嘘をつかない。


 自分と違って理由もなく、あの子は周りを困らせたりなんかしない。


 自分のそばに居られなかったのも、ちゃんとこの手紙に理由を書いてくれてたから納得できた。


 ならば兄として、コリンはクロエの書いていた通り、彼女の帰りを待とうと決めた。


 勿論心配だし、今でも捜しに行きたいのは山々だ。


 でも自分の焦燥より、妹に対する信頼の方が大きいのだ。


 クロエが信じてと言うのなら、誰がなんと言おうと自分だけは彼女を信じるんだと決めてるコリンは、やはり相当なシスコンである。


 だから今回はとても冷静に手伝いをしたり勉強を頑張っている、これ又とても健気な兄であった。


 最後に長兄ライリー。


 子供達の中で、彼だけは毛色が違った反応を見せていた。


 勿論騒ぎの当初、彼もとても心配し狼狽え、少し怒りも見せていた。


 だがその後は冷静に長兄らしく、健気な妹と弟の面倒を甲斐甲斐しく見つつ、又大人達の心情に配慮しながら旨く彼等の手助けもしていた。


 元々優秀な子供だが、本当に8才とは思えないそつなさを見せている。


 しかし表面上は普段通りで穏やかな彼だが、その内心は実は全く違っていた。


 生まれて初めてと言えるかも知れない位、彼は心底末妹に怒っていたのである。


 元々ライリーは、末妹のクロエが見かけ通りの1才なんて端から思っちゃいない。


 余りにも自分達と違いすぎるし、実は末妹は案外脇が甘いので、時々本当の彼女の部分と思われる大人な所を垣間見せたりする。


 末妹自身は気付いていないが、余りにも頻繁にそんな素振りを見せるので、今では追求する気も失せていた。


 大体、彼女の精神が大人だと云うことに関しては、老教師やジェラルドの姿勢からも証明されているようなものだ。


 あれで彼等が本来の彼女を隠しおおせているつもりなら笑止だ、とライリーは思っている。


 彼等を敬愛し師とも思うが、だが警戒心が無さ過ぎで、子供の自分を甘く見過ぎだとも思う。


 実は、彼はクロエが家に来た際に不思議な声を聞いている。


 “彼女を守ってくれ”と云う、天啓のような声。


 その後生まれてまもない彼女を見たときから、彼は兄と云う枠を超えてでも、末妹を絶対に守ると心に誓っているのである。


 だがその後、彼女を守りたいと云う彼の気持ちとは裏腹に、彼女は彼の庇護など不要とばかりに色んな才能を見せ始めた。


 又言動も行動もそれに付随して大人びていて、とても8才の自分の手助けなど必要がないと感じてしまうことばかりだ。


 加えて彼女の魔力暴走が起こった時は、自分が非力な子供であると云うことを痛いほど思い知らされた。


 何も出来ない自分が悔しく情けなかった。


 騎士になるとは決めていたが、その事があってからは余計に早く自分を鍛えたいと騎士団への入団を心から望んでいる。


 このままでは彼女を守るなんて絶対に無理だからだ。


 黒の乙女と目される彼女は、或る狂気の集団からねらわれている。……生まれる前から。


 だからこそ彼女を守るため、生まれて直ぐに人々の目に触れぬようにと本当の両親は泣く泣く彼女を自分達に託した。


 宝の如く森の中に隠された娘、クロエ。


 勿論本人はそれを知るよしもない。


 彼女が自らを守れるほどに成長するまでは、決して森からは出さぬ約束。


 ……ならば時間は未だある。


 彼女の体が成長し大人になる前に、なるべく早く色んな事を身に付けて彼女を守れる男になると彼は決意したのだ。


 だがそんな決意を持って彼女を見守ってきた彼にとって、今回の家出は裏切られたに等しいショックを与えるものだった。


 勿論クロエだって、軽い考えでこんな無茶な行動を取った訳ではないだろう。


 老教師が言っていた黒の乙女だけが持つ力、その力のせいで彼女が苦しんだことも聞いている。


 きっとクロエの事だから、その力の危険性を考え、自分より先ず周りの安全確保の為に自分達から離れる決意をしたのは簡単に想像出来る。


 自分だって同じ立場に立てば、彼女と同じ選択をしたかもしれない。


 と、頭では理解している。


 だが問題はそんなことじゃない。


 何が起こるか解らない夜の黒き森の中に、例え中身が大人だと云え体が1才過ぎにしかならない赤子の彼女が1人で消えたのだ。


最悪、死んでしまってもおかしくない愚行だ。いや寧ろその可能性の方が高かった筈。


 なのにあんな手紙だけ残して、誰にも見付からぬように出ていった末妹。


 ……そんな自分を大事にしない暴挙は決して許してはならない。許してなるものか。


 先ずそんな無茶をする前に相談してほしかった。


 それが自分なら良かったが、別に家族の誰でも良いから頼ってほしかった。


 彼女は老教師に相談した訳じゃなく、老教師にかの力を指摘され、事の重大性に気付いたとの事だった。


 本来彼女からの信頼も厚く、こういった相談をされてしかるべき老教師が、何故かこの時は酷く子供っぽい感情に囚われたらしく、彼女を突き放すような言動を取ってしまった。


考えられない話だが、やってしまった事を今更蒸し返しても仕方無い。


況してや彼も酷く後悔していたのだから。


 だが彼女はそれで打つ手が無くなったと思い込んだと思われる。


 ……中身が大人にしては余りにも短絡的ではないか。


 周りがどれ程彼女を大事に思い、慈しんでいるかわかっちゃいない奴の行動だ、と彼は憤る。


 解っていれば、こんなに周りが苦しむ方法を取ったり出来ない筈だ。


 考えれば考えるほど、大人の取る行動とは思えなかった。


 勿論見た目は1才過ぎの幼女だ。


 クロエはとても賢いが、やはり小さな子供だから突拍子もない行動を取る時もあるだろうと家族は片付けるに違いない。


 老教師も今回は負い目が有るから、きっと彼女を責めたり出来ない。


 ならば考え足らずの馬鹿娘を叱り飛ばせるのは、兄の自分しか居ないし、寧ろ絶対に自分がやる。


 今回だけは甘い顔を見せたりしない。


 クロエが二度と己自身を危険にさらしたりしないように、彼女を心胆寒からしめるまで絞り上げてやる、と彼は決意していた。


 ……当のクロエも長兄の雷を一番恐れていたが、事態は彼女が考えるより更に恐怖度を増していたのである。





 お騒がせ娘が家出して4日目の朝早くの事。



 未だ森の家は寝静まっていた。家族は各部屋で。老教師は客間で。


 末娘がいつ帰ってきても良いように、即応体制を整えていたのである。


 悶々としたこの4日。


 そのやるせない時間を破る報せが、先ず守り人であるガルシアに届いた。


 黒き森がクロエに約束したように、時を見計らってガルシアにかの地へクロエを迎えに行くよう報せたのだ。


 眠っていたガルシアは報せを受け、飛び起きた!


 横で共に休んでいたコレットも、夫の飛び起きた振動で直ぐに目を覚ます。


「貴方?!まさかクロエなの!」

 とコレットは起き抜けにも拘わらず、ガルシアに食い付く。


「ああ!今から直ぐに出る!待っていてくれ、俺一人で走る!」

 とガルシアが笑ってコレットに頷くと、彼はベッドから飛び降りて着替えもせず、寝間着のまま部屋を飛び出した。


 コレットも後を追い

「貴方!あの子を早く連れて帰って!待ってるからっ!」

 と玄関を飛び出した夫の背中に叫ぶ。


 ガルシアは軽く手を挙げ、直ぐにその姿は森の中に消えた。


 玄関に立つコレットに後ろから声を掛けて来たのがディルクだ。


「コレット、まさか見付かったのか!」


 コレットは振り向いて満面の笑みで大きく頷きながら

「ええ、ええっ!今森から報せが降りたようですわっ!

 ガルシアが全力で向かっています!

 程無くあの子を連れて帰ってきますわ、先生っ!」

 とディルクの両手を握りしめて伝える。


 ディルクの顔がみるみる歪み、腰が抜けたようにその場に踞り顔を覆う。


「無事か……無事じゃったか……!良かった、クロエ……!」


 後は言葉にならない。


 肩を震わせて嗚咽を漏らす老教師に、コレットは優しく背を擦り肩を抱く。


「勿論無事ですわ。安心なさってください。

 あの子の家出は、元々先生の責任ではありませんのよ?

 私達が悪かったのです。

 あの子が何を考えているか、私達はもっとあの子に注意を払うべきでしたのに。

 “親”なのに何をしていたんだか、私達は。

 先生があの子の相談に色々乗ってくださっていたから安心して、つい甘えてしまっていたのですわ。

 ……そのせいで恩有る方に、こんな辛い思いを味わせてしまいました。

 申し訳ございません。

 あの子に代わってお詫び申し上げます」

 とコレットが詫びる。


 そんな彼女に言葉を返すことも出来ずに首を横に一度だけ小さく振り、只ひたすら自らの失態で姿を隠した幼子が無事見つかった安堵の涙を止めることが出来ない老教師であった。




 一方、ガルシアはかの地へ猛スピードで向かう。


 守り人の彼は身体強化が図れるため、常人では考えられない速度で走ることが出来る。


 これについては森の加護もあり、魔力をほぼ使わずとも行使可能だ。


 緊急の際は彼一人で動いた方が、何かと便利で無駄がないのだ。


 程無く野原に着いたガルシア。


 顔を右左と忙しなく動かし辺りを窺う。


 すると野原の真ん中に、何だか毛玉の集団が居る。


 ガルシアは眉を潜める。


 何故森の住人達が今この地に居るのかと。


 ガルシアは別だが、彼等が動くのを人が目にする事は、この地と森では本来有り得ない。


 そういう住み分けが出来ているのだ。


 なのに何故守り人ではないクロエの前にあんなに現れて、しかも取り囲んでいるのか。


 ガルシアは不審に思いながらも、その集団に近付いていく。


 すると毛玉の集団がサァッとガルシアに道を開ける。


 開かれた道の奥には熊の様に大きな獣と、その腕に抱かれた幼子の姿。


 ガルシアは慌てて駆け寄る。


「クロエッ!無事かっ!」


 熊の様な獣“ざざ”が、ガルシアに向かってクロエを優しく差し出す。


 ガルシアは戸惑いつつも、ざざの差し出した腕から末娘を受け取る。


 先ずクロエが呼吸しているのを確認すると、ガルシアは安堵の余りハーッと大きく息を吐き肩から力を抜いた。


(もりびとどの、おこはたしかにおかえしもうしたぞ。

 これよりこのおこ……クロエさまをわれらがしゅごいたすゆえ、いごよしなにな)

 とざざがガルシアに語りかける。


 ガルシアは一瞬誰が話したのか解らず、周りを見回してから目の前のざざに

「今の声は……お前か?喋れるのか?!まさか!

 今まで森の住人が俺に語り掛けたこと等無かったぞ?!」

 と目を剥いて獣に問う。


 ざざは首を小さく横に振り

(いしのそつうができるよう、あるじがわれらにちからをあたえた。

 それもすべてはクロエさまをおまもりするため。

 こんごはクロエさまともりびとどのは、われらのいしがわかるようになった。

 ほかのにんげんにはつうじぬ。それをわすれぬように。

 ああ、クロエさまにおつかえするためにわれらのなかま、ここがもりびとどののねぐらでせわになるゆえ、たのんだぞ)

 とガルシアを見ながら語りかける。


 ガルシアはポカンと口を開けざざを見る。


「……へ、クロエ様?守るって……な、何故そんな事に?!

 仲間がクロエに仕える?!

 ……クロエは一体何をしたんだ?」

 と困惑した表情を浮かべるガルシアに、ざざが

(われらはあるじのいしにしたがうまでのこと。

 もりびとどのよ、そなたもそうであろう?

 クロエさまとあるじについては、われらはかたるすべをもたぬ。

 しりたくば、クロエさまごじしんかあるじにきかれるがよい……。

 さて、クロエさまはたいへんおつかれだ。

 なかまたちとたいそうはしゃいでおられたのでな。

 はやくやすませてさしあげてくれぬか。

 おちいさいゆえ、からだがきがかりなのだ。

 くれぐれもたのんだぞ、もりびとどの)

 とクロエを大層気に掛けて、ガルシアにそう頼む。


 ガルシアはざざの気遣いに目を丸くし

「あ、ああ……すまんな。はやく休ませるよ。

 しかし、何でこの子にそこまで肩入れするんだ?

 確かにうちの子はとにかくめちゃくちゃ可愛いし、有り得んくらい賢いが……」

 と周りからすれば、親馬鹿全開フルスロットルのデレデレ発言をする。


 クロエが聞いたら顔を真っ赤にして止める筈のデレに、ざざは大きく頷き

(……もりびとどののことばにおおいにさんどうする。

 だがそうでなくとも、われらにとってクロエさまはだいじなかただ。

 だからわれらのおさも、むすめのここをつかわせたのだから。

 このかたをすこやかにおそだてもうしあげるようにな、もりびとどの。

 これからはいままでとはちがい、われらはそなたらのまわりにあらわれるからな。

 がいなどけっしてくわえぬゆえ、あんしんなされよ。

 もりびとどののおつとめはいままでどおりだ。

 あるじからの“かり”も、いままでとおなじようにめいがある。

 われらはそれにかんして、もりびとどのになんらてきいをもたぬゆえ、きにするひつようはない。

 さあ、あしどめがすぎたな。きをつけていかれよ、もりびとどの。……またな)

 と話すとざざは呆然と立ち尽くすガルシアに背を向け、仲間と共にあっという間に森に消えてしまった。


 ガルシアはざざ達を見送ったあと、クロエに目をやり

 「何がなんだか……。クロエ、お前は不思議な子だよ、本当に。考え付かない事ばかり起きるよ、全く。

 だが無事に帰って来てくれて良かった。心配したんだぞ~、皆。

 さあ、じゃあ皆が待ってるから早く家に帰ろうな~。

 ん?クロエの胸のコレは……うおっ!

 この白い子チョスがクロエに仕えるとか云う“ここ”か?

 ……おい、寝てるぞコイツ。

 何か似た者同士だな、コイツ等、ププッ!」

 と楽し気に吹き出した後、クロエとここをしっかり抱き直し、足取り軽く守るべき地を後にした。


 クロエとここを起こさぬ様に森の中をゆっくり歩いて帰宅するガルシアに、森のあちらこちらから顔を覗かせて様子を窺ってくる動物達が目に入る。


 同時にそこかしこから、賑やかな声が聞こえてくる。


(あのこがそうなのね!ああざんねん、ねむってらっしゃるわ……ごあいさつしたかったのに)


(おお、ここさまもおられるぞ。ぶじおそばでおつかえされることになられたようだ。やれ、めでたい!)


(まだおちいさいのね……はやくおおきくなっていただくために、もりのめぐみをもっとおとりいただかなければ!

 じゃないと、わたしたちとあそんでいただけないわよっ!)


(そうだな、それはだいじだ!おいおまえら、あのかたのおくちにあうもりのめぐみをあつめるぞ!)

 等々、それはそれは煩い位だ。


 「……こんなに賑やかだったんだな、この森って。守り人やって長いが、初めて知ったよ。

 しかし、変われば変わるもんだな……。彼等の声が聞こえるだけで、何だか森が明るく見えるよ」

 とガルシアが苦笑しながら感想を漏らす。


(おお!もりびとどのがしゃべった!いつもはこわいかおでだまーってあるいておられるのに!)


(もりびとどのがわらっていたわよ!めずらしい~!あしたはあめかもね!)


 「……そんな風に思われてたのか。何か複雑だな。

 これからは表情に気を付けんとな……」

 とあちらこちらから思わぬ突っ込みを貰い、ガルシアはガックリ肩を落とす。


 そうこうしている内、森の家が見えてきた。


 玄関には家族と老教師が勢揃いして、ガルシア達を待ち構えている。


 ガルシアの足取りが自然と速くなり、そして

 「クロエを連れ帰ったぞーーっ!今は眠ってるが無事だっ!

 大丈夫、元気だぞっ!皆安心しろーーっ!」

 と大声で叫ぶ。


 その声に堪らず歓声を上げて、家族と老教師が玄関から彼等に走り寄る。





 ……こうして長い様で短かった、お騒がせ娘クロエの家出が、漸く終わりを告げたのだった。


ここちゃんはチョスと言う種類の動物さんです。

ざざさんはクープと言う種類です。

種類のネーミングの由来は大体皆様が想像されるもので合ってますよ、多分(笑)

因みにガルシアや家族達の前では、森の眷属達は“みこさま”呼びを封印しています。

クロエが呼ばない様に頼んだからです。理由はその内出てきます。

なるべく早く更新します!

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