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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
122/292

126. 魔術法具での面会

お読みくださりありがとうございます。

視察前の約束を果たします。元領主の爺、とてもとてもピンチです。

切れ目が悪くてすみません!

 視察終了日から3日目。

 既に普段の生活に戻っていたクロエ達だったのだが、ディルクが午後から小屋に来るようにと、シェルビー家の者全員を呼んだ。

 いつもならクロエのみ、子供達のみ、若しくは大人のみという構成で呼ばれるのだが、今日は何か事情が違うようだ。

 昼食後、ゾロゾロと小屋に向かうシェルビー家の一行。

 既に小屋に戻って何やら準備していたディルクは、勉強部屋に皆を招き入れる。

「ああ、すまんな皆。準備は出来ておる。後はあ奴側からの交信を………よし、来たな?」

 とディルクが一人言をぶつぶつ言ってから、皆の前に置かれた魔術法具が光り出したのを見て笑みを浮かべる。

 やがて陽炎の様に法具から上の空間がボヤけ出し、勉強部屋とは違う別の部屋がその陽炎の中に浮かび上がった。

 部屋の中にはこちらを向いて椅子に座った美しい老貴婦人とお馴染みのジェラルド、老貴婦人を挟んでオーウェンが立っていた。

『ああ、繋がりましたな。先生も皆もよく見えますよ。

 グレース、ディルク先生とガルシア、コレットじゃぞ』

 とジェラルドが挨拶抜きで話し掛けてきた。

 シェルビー家の者達からオオッと歓声が上がる。

「グレース、久しぶりじゃな。ウム、心なしか顔色が良くないのう。そこの手間の掛かる旦那に難儀しておるのではないか?

 いっそのこと、そんな旦那はポーイッ!と何処ぞへ捨ててしまえば良いぞ。

 何なら儂が処分してやるが?」

 と大概失礼な言葉を吐きつつ老貴婦人、ジェラルドの細君グレースに笑いながら話し掛ける。

 グレースはクスクス笑いながら

『お久しゅうございます、先生。お変り無い様で何よりです。

 いつもながら本当に主人と仲が良い事……何だか妻として妬けますわ、ホホホ。

 ガルシアちゃん、コレットちゃんも久しぶりね!

 もう仕方の無い事とは解っていますけど、我が子とも思う貴方達に会えないのは私、本当に寂しいのよ?

 オーウェンと先生のお蔭でこうして会えて……嬉しいわ。

 この法具は先生が開発したものだそうですね?主人から初めて聞きましたわ。流石は先生です。お蔭で体が思うように動いてくれない私も、貴方達に会うことが出来ました。

 感謝いたします、先生。

 だけど、既にこんな方法が有ったのなら、もっと前から貴方達に会えた筈よね?。そう考えると何故今までって、黙っていた主人を恨めしく思いますわね……。

 ……あなた、後からお話致しましょうね。

 そうそう!ガルシアちゃん、コレットちゃん、貴方達の可愛い子供達を紹介してくださらない?私スッゴく楽しみにしていたのよ!

 オーウェンからいっぱい楽しいお話を聞かせて貰ったの。私も体が耐えられるなら是非そちらに行きたかったわ~!

 ね、早く貴方達の素敵な子供達を私に紹介して頂戴!』

 と椅子に座った状態ではあるが、目をキラキラさせてガルシアとコレットに頼み込む。

「グレース様、ご無沙汰しております。……恩知らずにも程が有りますよね。大恩有る貴女様にそこまで辛い思いをさせてしまいました。……申し訳ございませんでした。

 これからはもっと頻繁に近況をお伝えさせていただきます。……そうだな、コレット?」

 とガルシアが深く深く頭を下げる。心なしか声が震えているようだ。

 コレットも頷き

「お久しゅうございます、グレース奥様。……私が至らなかったのです。奥様がガルシアにお会いなさりたいのは至極当たり前の事でしたのに。

 奥様とアナスタシア様にお仕えしていた私が一番解っていましたのに、不出来な私の気が利かぬばかりにこの様にお寂しい思いをさせる、無礼極まりない体たらく。

 誠に申し訳もございません!

 この先は肝に命じて、奥様にお寂しい思いをさせません。

 どうかお許しくださいませ」

 とガルシアより更に深く深く頭を下げる。

 子供達は両親の平身低頭、グレースに謝罪する姿に戸惑いをみせる。

 グレースはそんな2人を見てプゥーッと頬を膨らませ

『もう!そんなことはどうだって良いの!

 私だって領主の妻です。貴方達にお願いしている務めがどれ程のものか、重々解っております。私は可愛い貴方達が頑張っているのが解っているのですから、貴方達に不満がある筈がありません。

 不満が有るとすれば、主足(あるじた)る主人にですわ!

 法具の有効な使い方も思い付かず、先生に諭されるまで私の願いを叶える術を考え付きもせず、私の願いを初めて聞かされたオーウェンに解決策を示されるなど……。余りにも頭が悪すぎます!

 今後は妻足る私が責任をもって、主人の頭の鍛え直しに取り掛かりたいと思うのよ!

 ジェラルド、その事についても後から話し合いましょう……。良いですわね?

 さあ、頭の悪い主人の話はもう良いわ!時間が無駄ですもの。

 ね、コレット!早く子供達を紹介して頂戴!』

 と散々夫であるジェラルドの愚痴をぶちまけた後、子供達を紹介しろとコレットを急かす。

 ガルシアとコレットは苦笑いし、ディルクは腹を抱えて笑い転げる。

「ワハハ!流石はグレースじゃ!小気味良いことこの上無い!

 だから儂は其方が気に入っておるのじゃ!ああ、たまらんわい!

 オーウェンよ、祖母を大事にな。糞爺はほっとけ!

 ああ、気持ちがスカッとした!」

 とディルクは晴れやかな笑顔を見せる。

 そんなディルクを見てグレースもホホホと鈴の様な美しい笑い声を上げる。

 楽しそうな2人を尻目に、ジェラルドの顔からは血の気が引いている。見ると額にも汗が浮き出ているようだ。

 オーウェンが

『お祖父様……後から僕もお祖母様との話に同席して、何とか穏やかにお許しを頂けるように力添えしますから、ね?

 ……多分に望み薄ではありますけど』

 と、不穏極まりない一言を付け加え、ジェラルドを慰める。

 それを聞いたジェラルドが

『……儂はどうしたら良いのか……。せめて、この通信を出来る限り長く行おう。

 ……刑の執行は遅ければ遅い方が良い』

 と益々顔色を無くし、立ち尽くす。




 空気を変えようと焦ったコレットは

「こ、子供達を紹介いたしますわ、奥様!

 さあ、貴方達!ライリーから順にグレース奥様にご挨拶をしなさい」

 と子供達を自分達の前に出す。

 その言葉を受け、年長のライリーから自己紹介を始める。

「初めましてグレース様。ガルシアとコレットが長子、ライリーでございます。

 今年8歳になります、お見知りおきを」

「初めましてグレース様!ガルシアとコレットの長女、ミラベルでございます!今年6歳になります!」

「初めましてグレース様!僕はコリンです。えと、3番目の子です!3歳になるです!」

「初めましてグレース様!一番下の娘のクロエです。1歳なんですけど、お喋りが得意です!よろしくお願いします!」

 と次々グレースに挨拶をして行く子供達。

 グレースが感極まったようにフルフル震えだし

『まあまあまあまあ~!何て何て可愛らしくて賢い子達なの!

 ガルシアちゃん、コレットちゃん!貴方達は子育ての天才じゃなくて?!

 ああ、今の今までこの子達と触れ合えていたのがジェラルドだけだなんて……!あたくしがどれ程この子達に会いたがっていたか知っていらした筈よね、ジェラルド……!

 ……後からみっちりあたくしのこの収まらない気持ちを聞いていただくわ、しっかりお覚悟なさいませ、ジェラルド……。

 ライリー、貴方はとてもしっかりした考えをしているとオーウェンから聞いたわ。

 是非来年は我が家に来てちょうだい!オーウェンがお気に入りの貴方と色んなお話をしてみたいの。

 ね、是非そうして頂戴!良い返事を待っていますからね?

 ああ、何て将来が楽しみな子なのかしら!

 頭だけではなく礼儀も弁えていて、見目まで良い子なんて、完璧だわ!

 流石はガルシアちゃんとコレットちゃんの子供ね~。

 次がお嬢ちゃんね?ミラベルちゃん……何て可愛いのかしら~!見目の良さはエレオと良い勝負だわ~。おまけに頭はエレオより賢くて、なのに気立ては優しい子だって。そうオーウェンが凄く褒めていたのよ!

 確かに判るわ、目がとても素敵よ、ミラベルちゃん!貴女は好奇心旺盛で負けず嫌いなのね……あたくしとおんなじ!貴女とはコレットちゃんと同じであたくしと気が合いそうね。

 いずれ我が家にいらっしゃいね!お母様のコレットちゃんと同じ様に行儀見習いに来ると良いわ、あたくしと色んなお勉強しましょ?ね!

 どうか考えて於いて頂戴な!

 3番目の……キャアア!ガルシアちゃんが居るじゃない!ガルシアちゃんが我が家に来た時とおんなじ顔だわ、そっくりね!

 ごめんなさい、コリンちゃんよね。ついつい貴方のお父様のガルシアちゃんの子供の頃にそっくりだから懐かしくって……。

 ああ、思い出すわ……可愛かったガルシアちゃんを。

 コリンちゃん、貴方もとても賢くて優しいお兄ちゃんなんですってね!オーウェンが感心していたのよ?

 貴方を見ているとあたくしも心が安らぎます。

 ねぇ、コリンちゃんもきっと我が家に来てね?貴方が我が家に来るまであたくし、何としても倒れませんからね!

 そして、貴女が……クロエなのね?ああ……何て………。

 お願い、もっと近付いて頂戴……あたくしに貴女の顔をよく見せて頂戴……』

 とコリンまでの凄い勢いがクロエに目をやった途端消え、グレースは椅子から立ち上がらんばかりに両手を広げてクロエを呼ぶ。

 クロエは小さく頷いて、兄姉より一歩前に進み、陽炎の向こうのグレースに少しでも近付く。

『ああ、ああ……!会いたかったの、会いたかったのよ……貴女に。

 体はもう大丈夫なの?大事はない?

 その小さな体で大変な思いをしたのね……。辛かったでしょう……良く、良く耐えてくれたわね。

 貴女を抱き締めたいのに……この体が口惜しい……!

 ごめんなさい、勝手な事ばかり話して。

 でも、貴女に一目会いたかったのよ、クロエ……!』

 そこまで話すと感極まったグレースは、広げた両手を胸元で握り締め、溢れる涙を隠すため顔をその両手で覆った。

 ジェラルドとオーウェンがグレースを抱き締める。

 クロエは戸惑ったようにグレースを見つめると

 「グレース様……」

 と彼女に掛ける言葉を失ってしまった。



因みにジェラルド側は闇性結界が張られています。クロエの存在はジェラルドの邸内全ての人間が知っている訳ではないのです。

森の小屋内は必要ないので張られていません。

魔術法具、実はほぼディルク製です。作るの趣味なんですね。仲が良い(?)ジェラルドには最初に通信できるように渡してありました。だから前に出した時より更に前にジェラルドはこの法具を持っていたにも係わらず、グレース様に今の今までこの法具の存在を教えていませんでした。そしてグレース様、興奮すると一人称が(わたくし)からあたくしに変わり、最大級の興奮度合いになるとアタクシとカタカナ表記になります。

今はあたくし……つまりこれは夫婦間に大嵐が予想される事態です(笑)

後、ライリーがちゃん付けになってないのは、年下ながらオーウェンととても良い競争相手だということで、オーウェンの前で恥ずかしい思いをさせたく無いためです。グレース様なりの気配りですね。ガルシアちゃんはガルシアちゃんです(笑)

なるべく早く更新したいです。

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