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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
121/292

125. 視察終了

お読みくださりありがとうございます!

初レビューを書いていただけたのです~!キャー嬉しい!にやけっばなしの作者です。心なしか50肩も痛みが少なくなった気が……!

視察が終了します、別れの時です。

 朝食をほぼ皆が食べ終えようかという時。

 ジェラルドが食卓を囲む者達を見渡して話し始めた。

「視察を終え、この後出立する。期間中、世話になったな。いつもの事だがとても楽しく、又寛いで過ごすことが出来た。感謝する。

 ガルシア、コレットよ。大変だったであろう?本当に温かいもてなしをありがとう。

 とても疲れておる事じゃろう、儂達が帰ったらどうかゆっくり休んでくれ」

 と守り人夫婦に労いの言葉を掛ける。

 ガルシアとコレットは微笑んで

「ありがたき御言葉でございます。私共こそ至らない事ばかりで、ジェラルド様始め視察の皆様にはご迷惑の掛け通しでございました。

 この些末な私共のもてなしをお許しいただけますのならば、又視察以外でも我が家にお越しいただきたく思います。

 オーウェン様、此度の我が家の御逗留が少しでも楽しいものであられたなら、是非又お越しくださいませ。

 私共の子供達も貴方様との再会を強く望んでおります。

 今度は失礼でなければ、お妹君も御一緒に……」

 とガルシアがジェラルドとオーウェンに語る。

 オーウェンは嬉しそうに大きく頷くと

「はい!是非又来させてください、ガルシア殿コレット殿。

 僕は此方で沢山の素晴らしい経験をさせていただきました。……今日帰るのがとても残念です。

 今の御言葉に甘えさせていただけるなら、今度は妹のエレオノーラと共に此方に滞在したいです!

 でも、本当に又来ても宜しいですか?」

 と首をかしげてガルシアを見る。

 ガルシアは笑みを深めて大きく頷き

「勿論。大歓迎ですよ」

 とコレットと笑い合う。

 オーウェンはライリー達を見て

「絶対に森に来るよ!今度は妹も一緒にね。又僕達と過ごしてくれるかい?」

 と少し不安気に聞く。

 ライリーが返事する前に

「やったぁ!お姉ちゃん、オーウェン様がエレオノーラ様を連れてきてくださるって!女の子のお友達だよ!

 楽しみだねーっ!女子会出来るね!」

 とクロエがミラベルに興奮して話す。

 ミラベルが戸惑った様に

「え?エレオノーラ様とアタシが友達に……?で、でも、エレオノーラ様に失礼……」

 と頬を少し赤くしてクロエの言葉に焦った様に口ごもる。

 ライリーがクロエを呆気に取られたように見て、コリンは

「エレオノーラ様かぁ……アナスタシア様みたいにお綺麗なのかな~?お優しかったもんなぁ、アナスタシア様……」

 とウットリとアナスタシアを思い描き始め、頭にお花が咲き始めた。

 オーウェンはそんな4人を見てププッと吹き出し

「ライリー、どうやら君の弟妹は僕よりエレオと会う方が楽しみな様だよ?僕もエレオに付いてきて構わない?」

 とライリーに再度尋ねる。

 ライリーが苦笑しながら

「オーウェン様お一人でも、エレオノーラ様とお二人でも僕等は大歓迎ですよ。

 寧ろオーウェン様やエレオノーラ様のご事情が許されるのなら、もっと頻繁にお会いしたいのですから。

 どうか又森へ来てくださいね。僕だって、もっともっと貴方と色んな話がしたい。

 出来れば次はもっと長く滞在して頂きたいです」

 と、彼にしては饒舌にオーウェンの再訪を願った。

 オーウェンはライリーの言葉に照れ臭そうに笑い

「……ありがとう。きっと来るよ。僕だってもっと君達と遊びたいしね」

 と応えた。

 大人達は子供達の会話を微笑まし気に聞いている。

 ジェラルドが

「ウム、非常に良い関係を築けた様じゃな。素晴らしい!

 だが、そろそろ出立の準備をしなくてはな。

 名残惜しいが、余り遅くなっては行程に支障が出る。

 ……ではごちそうさま。

 さて、オーウェン。準備をな」

 と食後の挨拶をして、オーウェンを促す。

 オーウェンも頷き、同じ様に挨拶をした後席を立つ。

 それを契機にシェルビー家、騎士達、側仕え達も動き出した。

 ……別れの時間が迫っていた。




「では世話になったな。今暫しガルシアを借りるぞ、コレット。

 又オーウェンとエレオノーラの再訪については、後日詳細を詰めた上で連絡をする。

 後来年の視察の際だが、その際に其方等さえ良ければライリーをフェリークの本宅に共に連れて帰ろうかと考えている。

 此度の滞在中、全くこの話をしていなかった故突然の申し出となるが、時間を掛けて考えてくれ。

 返事は、そうだな……年明け迄に貰えれば良い。

 未だ森に居たいと言うことならば待つし、覚悟が決まればそう言って貰いたい。

 良いかな、ライリー?」

 とジェラルドがライリーを見つめる。

 ライリーは目を見開いたが、そこは思慮深い彼。一瞬間を置いてからジェラルドを見上げ

「そうですね、来年のジェラルド様の視察の頃には僕も9歳ですから。良い頃合いですね。

 暫く両親や妹弟と話し合ってみます。……最後は僕が決めますけど。

 どちらのお返事にせよ、僕からジェラルド様に必ずお伝えします。宜しいでしょうか?」

 と静かに答えた。

 クロエは兄の姿を見て

(……この世界はやはり厳しいんだな。子供で居られる時は短いんだ。アタシの子供時代と比べるのがそもそも間違いなんだろう。

 ライリーお兄ちゃんやミラベルお姉ちゃん、コリンお兄ちゃんがしっかりしているのは必然なんだ……。父さん母さんがその先を見つめて、ちゃんと育ててるんだよね。

 ……凄いなぁ)

 と心の中で感嘆する。

 ライリーの返答に満足したのか、ジェラルドは笑みを深めて大きく頷いた。

 オーウェンがそんなライリーを見て

「流石だね、ライリー。

 ……僕も君を見習わないとな。

 だが、森の訪問だけは諦めきれない。絶対に来るからね!

 ミラベル、コリン、………クロエもそれまで元気で。

 エレオノーラを連れてきっと会いに来る。

 じゃあ、本当に滞在中はありがとう!又……!」

 と子供達と再会の約束をして、馬車に向かう。

 ミラベルとコリンが

「「待ってますね!絶対に来てくださいね!オーウェン様!」」

 と声を張り上げる。

 クロエも両手を握りしめながら

「きっと、きっと来てね!オーウェンお兄ちゃん……待ってるからね!

 ミサンガ、又作るからね……!」

 とオーウェンに声を掛ける。

 オーウェンはクロエの声に立ち止まる。

 振り向いて何とか笑顔を作り

「ああ……!ちゃんとホラ!身に付けてるよ。家族にも渡すから。クロエも……元気で」

 と手にミサンガを持ち、高く上げてクロエに見せるオーウェン。

 クロエはそれを見て笑顔で頷く。

 クロエの笑顔を見たオーウェンも本当の笑顔に変わる。

 そして馬車に乗った。

 続いてジェラルド、側仕えのモニカが乗り、御者席にアレク、そして馬車の前後を馬に乗った騎士達が固める。

 一番前にガルシアが自分の馬に乗って位置取り、森を抜けるまで彼等を先導する。

「では行きますよ……!」

 とガルシアが声を掛け、一行が動き出す。

 コレットやディルク、子供達が大きく手を振って別れを惜しむ中、馬車は森の木立に紛れ、やがて見えなくなっていった。



 馬車が見えなくなってから、コレットやディルクが家に戻ろうとすると、何故かコリンが難しい顔をしてミラベルと何かを話している。

 ライリーも何だか浮かない顔だ。

 クロエは戻ろうとして、兄姉の様子がおかしい事に気付いた。

「どうしたの?皆、家に入んないの?

 ……オーウェンお兄ちゃんが居なくなって寂しいけど、又来てくれるよ!だから皆元気出して?」

 と兄姉がオーウェンが帰ったことで寂しがっていると考え、3人をそう言って慰めた。

 するとコリンが

「……違うよ。確かにオーウェン様が帰っちゃって寂しいけど、それじゃ無いの!

 ねぇ、クロエ。オーウェン様の持ってたアレ、何?

 クロエがオーウェン様のために作ってあげたの?

 僕達、アレ見たことないよ?

 まさかオーウェン様とクロエの2人だけの秘密なの?」

 と若干恨めしげにクロエを見つめて問い詰める。

 するとその声を聞いたディルクが足を止め、子供達に近寄ると

「それは違うぞ、コリン。

 オーウェンとクロエの2人だけの秘密の品などではない。

 何故ならば儂もクロエにソレを貰ったからじゃ、ホレ見てみ!」

 と言うと胸元からミサンガを取り出して子供達に見せる。

 コリンやミラベル、ライリーまでがソレを見て目を剥き

「「「先生までーっ?!何で何でーっ?!

 クロエッ!なんでーっ?!」」」

 と末妹に迫る。

「ちょ、ちょっと待って皆!

 先生っ!面白がって掻き回さないで下さいーっ!

 落ち着いてよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんも~!」

 と兄姉の追求に焦った末妹は、小さな両手を突き出して彼等を抑えようとする。

 そんなクロエの様子を見て、ディルクがクックッと笑う。

 子供達の目がクロエを凝視する。

 追い詰められた彼女は

「ううっ……ちゃんと皆の分もあるの!ジェラルド様やオーウェン様を見送ってから皆には渡すつもりだったの!

 もう、皆の目が怖いよ~!」

 と両手を上げてヤケクソ気味に叫んだ。

 すると子供達はパアァ~と顔を綻ばせて

「「「有るの?!早く頂戴!

 早く早く~!家の中に入ろーっ!」」」

 と口々に叫んで、ライリーがクロエを抱き上げ、ミラベルがクロエの頭を撫でつつ横に付き、先に走ったコリンが玄関の扉を開けた。

 クロエが目を白黒させたまま、子供達と家の中に消える。

 呆気に取られたコレットと茶化したディルクがその姿を只見送り、子供達が玄関に入った後、顔を見合わせてどちらからともなく笑い出す。

 そうして大人2人も子供達に次いで家の中に入った。



 子供達に急かされて、隠していた家族分(巾着風ラッピング済み)のミサンガを隠し場所である自分の衣装行李から取り出し、クロエは皆に配る。

 貰った子供達とコレットから歓声が上がり、クロエは皆から頭を撫でられまくり、髪がボサボサになってしまった。

 余談であるが、ミサンガを見たコレットとミラベルが作り方を知りたがり、2人に食いつかれたクロエはミサンガの作り方を2人に伝授する事になってしまった。

 ジェラルド達を送ったガルシアも後からミサンガをクロエから受け取り、感動の余り暫く立ち尽くしていた。

 寂しくなる筈だった出立後の時間は、思わぬ“ミサンガ”騒ぎで賑やかな時となったのだった。

因みに騎士達と側仕え達には、ジェラルドからミサンガが渡されました。時間が中々無かった事に加えて、クロエが直接渡すと遠慮するかもという危惧が働いた為です。

勿論皆大喜び。テオに至っては生まれて初めての“女性”(但し1才女児(笑))からのプレゼントで、男泣きしてジェラルドからドン引きされていました。

なるべく早く更新します!

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