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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
114/292

118. クロエの見立てで

お読みくださりありがとうございます。

装飾品、解っていた方も多かったんじゃないでしょうか?答えはコレでした(笑)

 “音楽”の問題が解決した3人は、クロエが作った3つの試作品を見て話し合いを始めた。

「うむ、女性には間違いなくこの2つ目が良い。この意匠は見事じゃ!

 まさかこんな少ない時間で、ここまで凝った物を作るとはのう。言ってみるものじゃな。

 基本の1つ目は模様が見事だが、この模様はこの品の為に考えられた物なのか?」

 と試作品を確認しつつ、ディルクがクロエに質問する。

 クロエは首を小さく振り

「いいえ、あちらではごく一般的な模様です。他にも結構色んな模様がありますよ。アタシが入れた模様は1番単純なものなんです。後は星や丸、文字なんかも入れたりしてましたね。

 あ、勿論模様は変えられます。そうだ、手間はそれほど変わらないし、なんなら今から見本作りますんで、見てみます?」

 と言うと直ぐに手元を忙しく動かし始めた。

「い、いやそこまでせんでも良いぞクロエ?

 ……こ奴、聞いとらんな」

 とディルクが又楽しそうに作り出したクロエを見て、苦笑した。

 ジェラルドは3つの試作品を手に取ったり、置いて又並べたりして熱心に見ていた。

「ジェラルド、貴様えらくじっくり見とるな……何か気になるのか?」

 とディルクはジェラルドに声を掛ける。

 ディルクの言葉を聞いても、ジェラルドは目線を試作品から離さず

「はい、儂はどれにしようかと思いましてな。流石に女性向けの物は選びませんが、この3つ目の物も中々。

 クロエの模様見本が出来たら見せて貰って、それから決めても良いか……」

 と吟味し続ける。

 ディルクは溜め息を吐いて

「自分の物選びか。何を呑気な……貴様の好みなどどうでも良いわ!

 とにかくこの品を見せてオーウェンに話すか。

 クロエがこの品を作ったと話したら又騒ぐだろうが、あの絵を見た後じゃし、なんとなくクロエに関するアレの感覚が若干麻痺してきとる気もする。ま、大丈夫じゃろ。

 ……流石にあの子以外のインフィオラーレで待つ者達への説明は些か考えねばならぬがな。

 して、クロエよ。このお主が作った“飾り紐”、名は無いのか?後、どういう風に持つ物なのか教えてくれぬか?」

 と模様作りに精を出すクロエに又質問した。

 クロエは、あ!と気付いた様で

「名前ありますよ。“ミサンガ”って言うんです。

 持ち方は腕に巻いたり、足首に着けたりですね。

 あ、アタシは“根付け”風に使ったりもしてました。こう、何て言うか小さな持ち運びする身の回りの品に飾りで着けたりするんですよ。

 使い方はそんな感じですね。

 元は宗教の信者の人々が祈りの為に着けていたものだって聞いてます。

 あまりアタシには関係無かったけど。ミサンガ可愛かったから着けてただけだし」

 と手元を動かしながら、ミサンガについて簡単に説明した。

 ディルクが話を聞いて少し顔をしかめ

「ほぉ、宗教か……。祈りの道具であったのだな。

 だがお主達は単なる装飾品にしておったのか。そのような使い方をしていて、咎められたりせんかったのか?信者達や、その宗教の関係者達からは?」

 と聞く。

 クロエはアハハと笑い

「大丈夫でしたよ。何て言うかアタシの国は、凄く宗教的な事には懐が深いと言うか、いい加減と言うか、自由でしたから。

 それにこのミサンガって発祥は別の国の宗教からなんです。

 だから日本じゃ端から謂れを知らないまま、可愛いくてお洒落だから作って着けてる人が大半だったと思います。

 何たって“可愛いは正義”ですからね、フフフン♪」

 と模様見本を編み終えて、手に取って頷きながらディルクに話した。

「はい、模様見本出来ましたよ~!幾つか模様を組み合わせても良いし、模様無しで色だけで編んでも良いし。

 一応見てみてください!」

 と今までの試作品に比べたら若干長めに作って色んな模様を編み込んだミサンガをディルクに手渡す。

 ディルクは模様見本を受け取り、じっくり見た。

「ああ、本当に種類が多いな。この5つの“トゲ”が組合わさった模様(星柄)等はとても面白い。

 ……フム、そうだな。クロエよ、お主が模様を決めて作ってくれぬか?お主がそれを贈ろうとする相手の印象で色や編み方、そして模様を決めるんだ。例えばオーウェンやジェラルドに対してどんな物が似合うかお主が考えて、身繕ってやって欲しい。

 受け取る者達もその方が嬉しかろう。

 出来るか?」

 とディルクがふと思い付いてクロエに要望する。

 クロエはウ~ンと腕を組み唸り出した。

 そしてディルクに顔を向けると

「出来ますが、オーウェンお兄ちゃんやジェラルド様、アナスタシア様についてはご本人をアタシが知ってますから問題無いんですけど、後の方々にはお会いしたこと無いからなぁ。

 どんな方か姿も声も印象も解らないのは少々厳しいですよ。

 こんなのどうかな~?位は考えられますけど……」

 と困った表情を浮かべる。

 ディルクはニヤリと笑って

「いや、それで構わぬ。見た目や年齢、客観的な性格はオーウェンに話させよう。

 それを聞いて考えてくれ。

 クロエよ、良いか?」

 と依頼する。

 クロエはハァと溜め息を吐くと

「分かりましたよ。じゃあオーウェンお兄ちゃんに聞き取りさせてくださいな。

 それから考えて作りますから。

 あ、ジェラルド様はどうします?希望聞きますよ?」

 とジェラルドに目を向けて聞く。

 ジェラルドはクロエを見つめて

「わ、儂も其方の見立ててくれた物が良い!儂の為に考えて作っておくれ!」

 と勢い込んで頼む。

「えっ、ジェラルド様迄まさかの丸投げですか!うわ、見本作った意味無しだよ!

 そりゃ時間の掛かるものじゃないし、構わないですがね。

 何だかなぁ……」

 と肩を落とす。

 ディルクが笑いながら

「お主の見立てを信用しとるからな、クロエ。

 大丈夫じゃ、流石は25歳だっただけの事はある。今の試作品を見てもどれも洒落た色使いじゃ。

 慣れぬ者が変に希望を述べるより、お主がその趣味の良さを生かして考えてくれた物の方がきっと良い物が出来るじゃろうて。

 楽しみにしとるぞ!」

 と彼女の肩を叩く。

「ホント口が上手いんだから。やっぱり亀の甲より年の功……」

 とクロエがボソッと呟くと

「ん?何か言ったか?」

 とディルクがクロエを鋭い目で見る。

 クロエは明後日の方向に素早く顔を逸らせると

「いいえ~何でも!じゃあ午後から作りたいから、早くオーウェンお兄ちゃんに聞かないと。

 今から聞きに行っても良いですか?」

 と2人の爺に聞く。

 ディルクが頷き

「ああ、判った。じゃあ木工小屋に行こう。あの子達は午後から守るべき地に行く予定だからな。急ぐとするか」

 と言うと早速クロエを連れて小屋に向かった。



 小屋に着いて中を覗くと、奥の大きな作業台でオーウェンがおっかなびっくり木材を触り、一生懸命何かに取り組んでいた。

 その横には同じ様な木材を並べて同じ様な姿勢を取りながら声を掛けつつ彼を見守るライリーと、作業台の端っこで楽しそうにしながらオーウェンを応援するコリン、そして少し離れた位置から子供達を優しく見守るガルシアが居た。

「おや、先生にジェラルド様。どうなさいました?クロエまで。何かご用が?」

 と言いながらガルシアが近付いてきた。

「すまんな、作業中に。オーウェンに少し話があるのじゃが、後にした方が良いかの?」

 と作業台で一心に取り組むオーウェンに目をやりながら、ディルクがガルシアに尋ねる。

 ガルシアも木工に取り組んでいる子供達に目を向けながら

「そう、ですね……今1番集中している様ですから、暫く待って貰えますか?

 とても楽しそうに取り組まれていますので、このまま作業に没頭させて差し上げたいのですよ」

 と優しい笑みを浮かべて言う。

 ディルクも頷いて

「そのようだな。判った、後にする。邪魔をしたな、ガルシア。済まなかった、ではの」

 と言って踵を返した。

 ジェラルドとクロエも笑って頷き、共に小屋を後にする。

 クロエが小屋を出て直ぐ、あっ!と声を上げると

「そうよ~、わざわざ一生懸命に頑張ってるオーウェンお兄ちゃんの木工作業の邪魔をしなくても、ずっと暇して何にもやることがないジェラルド様から聞けば良いんじゃない!

 ね、先生!そう思いませんか?」

 と手を叩いて2人を交互に見る。

「ああ!そうだな。確かにお主の言う通りだ。よし、小屋に戻ろう。

 楽しそうに色々な経験を積んでいる子供達の邪魔をする等、無粋じゃ。

 代りにここには、あぶれて暇している糞爺が居るんじゃし、これに聞きゃエエわ!

 ホホ、賢いのうクロエ。無駄がない」

 とニヤリと笑って同意するディルク。

「ひ、暇って、儂は今視察中……おまけに無駄って……。

 あの、儂、一応元領主ですよ……判ってくれてます?

 クロエまで酷い……儂、威厳が全く無い……。

 儂は、儂は物凄く哀しいぞ、クロエ~」

 とジェラルドが肩を落とし、クロエに泣きつく。

「あ、ごめんなさいジェラルド様!アタシったら凄く失礼な言い方しちゃった。

 エヘへ!ジェラルド様の事が大好きだから、ついつい気軽な口調になっちゃって、気のおけないお喋りをしちゃうんです。

 あ、お嫌ですよね……次からは勿論態度をキチンと……」

 と頭を掻きながらクロエは、ジェラルドを見上げて謝りつつ言い訳した。

「大好き……だから気軽……!

 い、嫌ではないぞ!クロエはその喋り方で良い、うん。

 儂も楽しいし、嬉しいぞ!

 そうかぁ、大好きだから気軽かぁ……クーッ!」

 クロエの言い訳を聞いた途端、拳を握り嬉しそうにするジェラルド。

 ディルクがそんな元部下であり元領主を見ながら

「……実に幸せな頭よのう。やはり馬鹿は御しやすい。

 クロエにとって赤子同然じゃな、この馬鹿程度は」

 と呆れた。

 クロエはディルクを一瞥し

「ジェラルド様はお優しいんですよ。もう、ホントに口が悪いなぁ先生は。

 まぁ今のはアタシが原因ですけど」

 と苦笑する。

 そんな話をしながら3人は再び小屋に戻ると、ジェラルドがクロエに聞かれるまま、インフィオラーレにいるクロエの“実の姉”のエレオノーラと“実の父”であるブライアン、そして“祖母”のグレースについて人と(なり)を説明していく。

 そうとは知る筈もないクロエは、ディルクに貰った紙に彼等についての説明をメモり、後幾つか質問をする。

 ジェラルドが各人を思い浮かべながら、質問には出来るだけ丁寧に答えた。

 「うん、これだけ情報があれば大丈夫!じゃあ午後から作ります。

 材料もう少し欲しいな……。どうせもうすぐお昼御飯だし、今から家に戻って母さんの裁縫部屋で探させてもらおう。

 構いませんか、先生もジェラルド様も?」

 と2人に聞く。

 2人は頷くと、直ぐに3人は小屋を出て森の家に連れ立って戻っていったのだった。






なるべく早く更新します。

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