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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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112. 夢見の力

更新が滞り、誠に申し訳ありません。久々に更新します。未だリアルが落ち着くのに時間が掛かるので、暫くは不定期更新になります。ですが出来るだけこまめにやっていきたいです。具体的には1週間に1、2話は更新をしたく思います。

なるべく早く隔日更新、そして毎日更新にしたいですが、そうなるのは10月後半以降になりそうです。出来ればこのアカンタレの作者を見棄てず、お読み続けてくださると有り難いです。

よろしくお願いします。

クロエが願った通り

「クロエ!お待ちかねの夕食だよ~!お、き、て!」

と姉のミラベルが起こしに来てくれた。

その言葉にパッチリと目を開け、飛び起きる。

「ありがとっ!バッチリ目、覚めた!何たって夕食が豪華なお肉だってわかってるのに食べ逃しなんて有り得ないもんねっ!肉汁、肉汁~っ!」

と、鼻歌を歌いながらベッドから這い出して来たクロエ。

“守るべき地”で今にも魔力暴走を起こしそうな状態に陥っていたとは思えない、普段通りの妹の姿をミラベルは苦笑しつつ見守る。

「見た目を見事な迄に裏切ってくれちゃう子ね…ホント。

まあそこが又、却って可愛いんだけど。

だけど肉汁って……もう、クロエってホント面白い~」

姉の半ば呆れが混じった笑い声に、クロエもニヤリと笑いながら

「あの肉、確かルーチャだっけ?滅茶苦茶美味しいじゃない!アタシあの肉食べるためなら、おやつ1食我慢しても良いよ!それ位旨い、うん!」

とのたまった。

ミラベルがプッと吹き出して

「やだ、何それ~!大体、おやつ我慢する位、何て事無いでしょ。

それじゃどれくらい楽しみにしてるかなんて、全然わかんないよ~!

でも安心したよ~。クロエすっかり元気になってるし。オーウェン様のお陰だね、感謝しなきゃ!」

と言った。

クロエも頷いて

「凄いんだよ~!あの時ね、体の中でグルグル~バチバチッ!て何か解んないのが大暴れしてたの。あれが魔力だと思うんだよ。でね、その暴れん坊を静かにしてっ!て必死で抑えるの頑張ってたんだけど、これがアタシの言うことをちっとも聞いてくれなくて~!

どうしよう~、何て厄介なんだって困ってたら、オーウェンお兄ちゃんの手から凄く優しい力が入ってきて……。あっという間にあの暴れてた魔力が大人しくなっちゃったの!まるでオーウェンお兄ちゃんがアタシの中の暴れる獣をヨシヨシッて手懐けて大人しくさせてくれた感じ!」

とミラベルに身振り手振りを交えながら、一生懸命説明をする。

ミラベルは目を丸くして

「魔力ってそんな感じなの?アタシ魔力熱は出したけど、自分の魔力って実はよくわかんないんだよね。二次成長が未だの子供は皆そうじゃないかな?感じられるクロエが珍しいんだよ。

でも気を付けなくちゃね。二次成長が今来たら、大変だもの。流石にそれは無いだろうと思うけどね……」

と手を組んでう~んと唸る。

クロエはばつの悪そうな表情を浮かべながら

「ホントに心配ばっかり掛けるな、アタシって。ゴメンねお姉ちゃん。

なるべく気持ちを乱さない様気を付けるよ。もし、体に変な感じがしたら直ぐに報告するし。

何となくなんだけど、気にし過ぎても良くない気がするし。普段通り過ごさなきゃって、そう感じるんだ」

と姉に気持ちを伝える。

ミラベルは片眉をあげ首を小さく横に振りつつ

「やだ、謝ることなんて無いわよ。でもクロエがそう感じるなら過ごし方はそれが一番良いと思うよ。

大体、前のアレも今回のコレもクロエが悪い訳じゃないし。まあ強いて言うなら、間が悪かったって事なのかな?

さ、みんなを待たせちゃうわ!早く行きましょ?」

とクロエを促す。

クロエはミラベルの言葉に

「あぁ、誰が見てもやっぱりそうなんだ……。先生の仰る通り、スッゴく祟ってるなぁ。

何かもうマジで矯正なんて不可能なのかもしんない……ハァ~」

とガックリ肩を落とし、溜め息を吐く。

ミラベルが

「何、どうしたの?」

と首をかしげる。

クロエは緩く首を振り

「アタシの持つ“間の悪さ”ってある意味最強かもって、しみじみ感じてるとこ、ハハ。

うん、早く食堂行こ!お腹減った~」

と姉の背中を押しながら、部屋を後にした。



クロエの期待通り、夕食は豪華なルーチャのステーキだった。しかしその場にオーウェンの姿は無かった。

焦るクロエにディルクとジェラルドが

「気にすることはない。一晩寝れば元気になる。アレは繊細な魔力操作が必要なだけに、体力より精神的な消耗が大きい。だから回復には睡眠が一番なのじゃ」

「オーウェンは元より優秀な子だ。治癒魔導術が自身に与える影響を予め全て計算した上で、術を其方に施しておる。

寧ろ良く出来たと儂は思うておる位じゃ。

だからクロエ、その様に狼狽えずとも明日、オーウェンに感謝の気持ちを伝えれば良いと思うぞ」

と代わる代わる声を掛けた。

クロエは一瞬迷うような素振りを見せたが

「……そうですよね。アタシが変に気にしすぎると却ってオーウェンお兄ちゃんに失礼かも。

ハイ。仰る通りに素直に感謝して、明日オーウェンお兄ちゃんにキチンとお礼の気持ちを伝えますね!」

と微笑んで2人のアドバイスを受け入れた。

その後皆で豪華なルーチャステーキディナーを心行くまで堪能した後、就寝時間が迫っていたがクロエは話をするために父やディルク、ジェラルドと客間に入った。

後の子供達は妹を気にしていたが、先に就寝するよう母に言い含められ、渋々各自の寝室に引き上げる。

客間の前にはシュナイダーが立ち、4人が入った客間は闇性結界が張られたのだった。



「さて、クロエよ。儂達に何を聞きたいのじゃ?儂達も其方に何があったのか知りたいが、先ずは其方が話しやすいように話すが良い。

儂等からの質問はその後にしよう」

とディルクが代表してクロエに話す。

クロエはちんまりと大きな一人掛けソファーに収まりながら、大人達の顔を見回す。

「はい、先ずはあの地でアタシが見た夢の話をさせてください。凄く奇妙で、だけど夢とは思えないくらい現実感があったんです。

で、その夢というのが……」

と彼等にかの地で昼寝の際に体験(?)したあの夢の話をする。

クロエが一通り夢での体験を話し終えると、先ず守り人であるガルシアが

「“始まりの地”……?少なくとも私は聞いたことがないな。私は黒き森の声やかの地の意志を感じる事は出来るが、その様な夢を見せられた事は無いよ。

しかし話を聞くと確かに何やらこの地と因縁めいたものも感じるが……。お二方は如何ですか?」

とディルクとジェラルドに向き直る。

ジェラルドは顎髭を撫でながら

「……儂も心当たりがない。“始まりの地”にも“巫女”にもな。

だがクロエの夢が単なる夢だとも思えぬ。何かの予兆か、又は……」

と目を瞑り思案する。

ディルクは腕を組んで黙したままだ。

クロエは首をかしげながら

「アタシはてっきり守り人の父さんや領主であられたジェラルド様、博識であられる先生なら、アタシの夢の内容を聞いたら何かお気付きになるかもって考えたんです。

アタシは未だ赤ん坊で、かの地も幼いアタシの心には干渉しやすかったから、そんな夢を見せられたのかもって漠然と思ったから……。

じゃあアレはやっぱり単なる悪夢だったのかな?

……ごめんなさい、大袈裟に騒いじゃって。ホントに人騒がせですみません……」

と次第に下を向き、ソファーの上で小さな体を益々小さくさせた。

ガルシアが慌ててクロエを抱き上げると

「いや、誰でもそんな夢をかの地で見たら、何かあるかもって感じるさ。私だって何か釈然としないものを感じた。

だが、解らない以上は悩んでも仕方がない。クロエもその夢の事で余り悩みすぎてはいけないよ?

お前は賢くてしっかりしているが、未だ赤ん坊なんだ。未だ未だ愚図ったり、訳も無く泣きわめいてもおかしくないんだからね」

と彼女の頭を撫でながら、優しく慰める。

ジェラルドも頷きながら

「確かにそうじゃな。気に留めておくが、其方はこれ以上その夢に振り回される必要はない。

後は儂達が調べる故、夢の事は気にするな。其方は他にやることがあるじゃろう?

……余り良い夢とも思えぬし、出来れば忘れてしまいなさい。調べるのは大人の儂達に任せておくのじゃ」

と優しく微笑んだ。

ディルクも目を瞑ったまま

「……多分気にする事は無いと思うが、調べてはみよう。

かの地には色々な力が働いている。儂達には影響が小さくとも、小さな其方なら何かしが精神に小さな干渉が働く事もあるやも知れぬ。

それが悪夢の形をとったのであろうの。

……ゆっくり休みなさい。明日になれば影響も消えていると思うぞ?」

と頷く。

クロエは皆の言葉に小さく頷き

「……はい、そうします。怖かったし、思い出すのも辛いから。

話を聞いてくださってありがとうございました。アタシ、そろそろ休みます。

父さん、アタシ部屋に行きたい……」

と眠そうに目を擦る。

ガルシアが頷き

「ああ、わかった。連れていこうな。

すみませんがクロエを休ませます。先生、結界の解除をお願いします」

とディルクに乞う。

ディルクが頷いて立ちあがり、結界を解く。

「先生、ジェラルド様……お休みなさい。ありがとうございました……」

と半分眠りに入ったクロエが2人に就寝の挨拶をし、ガルシアに連れられて客間を辞した。

ジェラルドとディルクがその姿を目で追い、客間の扉が閉まると

「……ジェラルド、古文書を当たれ。儂も自分の資料を調べ直す。帰り次第早急にじゃ、解ったな」

とディルクが低い声で呟く。

ジェラルドも苦い表情を浮かべながら

「はい。……しかし何て事だ、あの子には夢見の力まで有るのか?あれの母であるアナスタシアの夢見の力は“先見”だが、あの子のアレは“過去見”か……。

何にせよ小さいクロエにはキツい力だ。まさかあの年で、もう……」

と苦悩に満ちた声をだす。

ディルクが小さく首を横に振り

「あの子の肉体年齢は確かにそうだが、中身は25歳じゃ。もう忘れたか?

幼い体に成熟した心、加えて豊潤な魔力に高い知能……何が起こっても不思議はない。

この森にあの子を隠すは必需だったが、かの地と森のあの子への干渉力に関しては実は諸刃の刃であったな。

……これからのあの子は、余程注意して見ておかなければなるまいて。

しかし、クロエにとっては難儀な事でしかないのう……」

と溜め息を吐いたのだった。








なるべく早く更新します。

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