表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コイン・トス

作者: Faces

1章

無味乾燥とした帰りの会を終え、期待を裏切らず友達の雄樹が早く帰ろうと呼びにくる。

道中、2人の意中の女の子を探り合うが、互いにばれまいと牽制を入れ合う。

学校帰りとは言っても6時間まである金曜日の冬空はすでに暗くなり始めていた。

雄樹が突然足を止めた。雄樹の視線の先に愛媛産みかんと書かれた箱に入った小さな犬がいる。

「捨て犬かな。」僕が言った。

「ちっちぇーな。」と冷たい風に乗せて雄樹は呟く。

犬は僕の顔をジーと見つめたまま動かない。

「わー好かれてやんの。」雄樹は馬鹿にした。

「飼ってやれよー」

「えーうちは無理だよ。母さん犬苦手だし・・・」

それでも犬は僕を凝視してくる。

挙句には僕が折れ、母さんにお願いしてみた。

意外にも母さんは、僕がしっかり世話をすることを条件に聞き入れた。

我が家は父親が開業医ということもあり、不自由なく生活できている。

連れて帰った犬には取り敢えず沢山の鶏肉とキャベツをあげた。そして、木枯らしに揉まれた犬を暖めるべく、ふかふかの毛布を運び、僕と寄り添うように寝た。僕は一人っ子ということもあり、弟のようにこの犬を可愛がった。

月曜日、雄樹が我が家に遊びにきた。

「よお」と雄樹が素っ気なく挨拶をする。

「おはよ。あー、まだズボンの膝破けたままじゃん」

「母さんがめんどくさいって直してくれないんだよ」と雄樹は気にしていない様子だ。

「ところでどうだ、あの捨て犬の様子は」

「ちゃんとチー坊って名前を付けたんだ」

「チー坊か、チビのこいつにはぴったりだな」雄樹は意地悪そうにチー坊の頭をグリグリしながら言った。でも僕は知っている。雄樹はぶっきらぼうなやつだが、本当はチー坊の事が心配で気になってしょうがないから家に来たんだ。本当は気の良いやつなんだけど、へそ曲がりなだけだ。

「こんなこともできるようになったよ。チー坊、おすわり」と僕が言うと、チー坊はちょこんとお尻を地面につけて、尻尾を振った。僕は

「偉いぞー」とご褒美をあげると雄樹も

「おい、俺にもやらせろ!」と目を輝かせた。

「チー坊、おすわり!」と言うと同じようにチー坊はちょこんと座った。

「俺みたいに賢いなぁ」と言ったが、雄樹はクラスの中でも下から数えた方がずば抜けて速いなほど成績は良くない。チー坊は耳を垂らしている。

それから暫くチー坊と遊んだ後に雄樹は帰った。

夜にはいつものように沢山のご飯と温めたミルクをあげ、少し戯れた後一緒に眠った。連れて帰って以来2人でくっついて寝るのが日課となっている。チー坊は寝付くのが早く既にいびきをかいている。眠っているチー坊は、夜の風にカタカタと音を立てる窓の下でもぬくぬくと寝むれる。しかもチー坊は、朝起きるのが早いため、僕も早起きになった。上着を羽織り、マフラーを巻き、チー坊と庭の周りを一周。朝ごはんは僕たちのご飯の残りをあげる。

「あー楽だわ」


2章

早朝、老夫婦が仲良く犬の散歩をしている。まだ人通りはなく、すれ違うのは新聞配達の男の子ぐらいだ。いつもの散歩コースを歩く。ゴン助は、はしゃいで先を急ごうとするが、首輪にくくりつけられたリードがそれを阻む。「最近どおもゴン助に追いつけませんね」「もお年じゃのお。わしも最近歩きづらくて仕方ないんじゃ」

散歩を終えるとおばあさんが餌をやる。「スーパーで特売だったのよ〜これ」「・・・またか」ゴン助は勢いよく頬張る。「体が小さい割に、たくさん食べますね」嬉しそうなゴン助を老夫婦は微笑む。おばあさんとおじいさんは、それを見て、朝ごはんの支度を始める。「今年はニンジンがたくさん採れたから味噌汁にいれてくれ」「はいはい、わかってますよ」夫婦は昔から変わらず、そろって食事する。

今日はカラッとしたいい天気だ。布団を縁側に干していると、ゴン助がそこに寝転がる。「ゴン助ったら、特等席を独り占めね」と声を掛けつつ、おばあさんは、しわくちゃな手で、みかんを剥く。「ゴン助!おすわり!」おじいさんはゴン助に言う。ゴン助は転がったままだ。「昔は言うことを聞いたんだがな。こいつもワシも物忘れが激しなったのかの」

「そんなことないですよ」おばあさんがゴン助の毛並みを整え始めようとした。その時、ゴン助はおばあさんの骨ばった手に噛み付いた。「おい、ゴン助、おばあさんに何するんじゃ」おばあさんは悲しそうな表情でゴン助を見つめる。

それから、おばあさんはゴン助に触るのが怖くなり、毎朝の散歩もおじいさん1人でゴン助を散歩に連れて行く。「なぁ、ゴン助。どおしておばあさんに噛み付くんじゃ。わしも最近足が悪くて散歩もつらいんじゃ」話が通じるわけもなく、ゴン助は耳を立てている。そのまま帰路についた。あくる日老夫婦はゴン助を捨てる決断をした。



3章

「やっぱ味気ない生活より、金持ちの家だわ。老人のペースに合わせて歩くのもたるい。せっかく可愛いいんだし、それを利用しないわけにはいかないな。金持ちの家でぬくぬくと、うまい飯食って生きてく方が楽でいいわ。逃げて探されるのも面倒うだから棄てせたけど、まあ、この家は悪くはなかったかな。でもここの家に来て数ヶ月たったけど、この家の奴は毎回家族の飯の残りしかくれねーな。そろそろガキの相手も飽きて来たわ」




「痛ってぇーー!」



雄樹の腕から血が流れ、床に滴る。

初めて書きました。

よければ感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ