表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/165

【05-17】

「お待ち下さい、まろみ様」

「なんだ、函辺」

「草陰は友人です。説得の機会を」

「この期に及んで説得だと?」

「お願いします。自分の心中をお察し下さい」

 

 深々と頭を下げる函辺に大きく溜息をつくと、殊更面倒そうに頷いた。

 

「ふん。だが余は時間を無駄にするのを好まん。くれてやれるのは三分だ」

「ありがとうございます。では、少し離れて頂けませんか。彼を刺激したくありません」

「ん。まあ、いいだろう」

「遠導、那須、まろみ様を頼む。第一班は不測の事態に備え、現距離を保ったまま待機だ」

 

 軍服のまろみが距離を開け、彼女を護るために二斑、三斑が下がった。

 函辺の第一斑だけが春乃達を囲む。

 

 包囲は手薄になったが、意識のないまろみを抱えて逃げるのは難しい。

 

「草陰、一緒に来い。お前達の安全は自分が保障する」

「そうだよ。私達、春っちに暴力を振るったりしたくないんだよ」

 

 春乃の後ろから桜木が続く。

 その言葉に第一班の全員が頷いた。

 

「ありがとう。ハコベさん、桜木さん、それにみんなも。でも僕には、偽者にまろみたんを渡すなんてできない」

「落ち着け、草陰。お前の腕にいる方が偽者だ。確かに顔つきは似ているが」

「違う。こっちが本者のまろみたんだよ。ずっと一緒にいたじゃないか」

 

 春乃の主張に函辺が困惑を浮かべる。

 

「何故、お前が解らないんだ。お前は自分より、もっとまろみ様に近い存在なのに」

「このまろみたんが本物なんだ」

「何を根拠にそう言い張るんだ?」

「僕がまろみたんを間違うはずがないからだよ」

 

 強い意思を込めた目で函辺を見つめる。

 

 やれやれと函辺が首を振った。

 

「そんなのが根拠とはな。主観や記憶ってのは曖昧で当てにならないんだよ」


 腰のホルスターから警棒を抜いた。

 

「自分は武装風紀委員の委員長だ。役目は心得ている」

 

 視線を春乃から、軍服のまろみに移した。

 

「申し訳ありません、まろみ様。説得は失敗です」

「それ見たことか。愚直なお前に説得等と言う真似ができるか。身のほど知らずめ。さっさとひっ捕らえて連れてこい」

「了解しました」

 

 春乃に顔を戻す。

 

「最後にもう一度だけ聞くぞ。どちらが本物のまろみ様だ?」

「何回聞かれても、答えは変わらない。本物のまろみたんは、ただ一人だけだよ」

「そうか。なら仕方ないな」

 

 くるりと踵を返し、再び軍服のまろみに身体を向けた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ