【05-13】
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図書館を出たところで、函辺が足を止める。
進行方向から生徒達が近づいてくるのが見えた。
二列縦隊で約二十人。一糸乱れぬ移動を見れば練度の高さが解る。
「心配するな。あやつらは武装風紀委員第二斑と三班だ。凛華が後詰に向けたのであろ」
まろみの説明に春乃は安心できなかった。
近づいてくる彼らの顔に緊張の色があったからだ。
「気を抜くな。常に不測の事態を想定しろ」
函辺も不穏な空気を感じたのだろう。
警告を発した。
「止まれ! 何用だ!」
声を張る函辺に先頭の男子二人が敬礼する。
「武装風紀委員第二斑班長、遠導 幸一」
「第三斑班長、那須 誠二。後ろの二名の身柄を引き取りに参りました」
「身柄を引き取るだと?」
その言い草にまろみの眉が吊り上った。
「ここは自分にお任せ下さい。まろみ様」
前に出ようとするまろみを、後ろ手に函辺が制する。
「我々はお二人を執務室まで護衛するように言われている。これは第一種特令だ」
第一種特令。
特令は特別命令を指し、各委員長の権限により出す事ができる。
その役職によりランクがあり、図書委員や美化委員と言った一般委員の委員長なら第三種。
函辺や鈴奈のような側近クラスであれば第二種の特令を発する事が可能だ。
第一種となれば、副官である凛華の命令を意味し、他の命令より強い執行力を持つ。
幸一と誠二が顔を見合わせた。
互いに頷いて意思確認をすると、幸一が一歩進み出る。
「申し訳ありません、委員長。我々は勅令を受けています」
「勅令だと! ふざけるな!」
吠える函辺の後ろでまろみが不敵な表情を作った。
そんなまろみに春乃が顔を近づける。
「勅令って?」
「勅令とは生徒会長のみが発することのできる命令だ」
「え? どういうこと?」
「つまり奴等は余の命令で動いていることになるな」
言葉を失う春乃に「面白い趣向ではないか」と残し、函辺の背中を叩いた。
「勅令と言われれば、どうしようもあるまい。下がっておれ。余が直接話そう」
「申し訳ありません」
大見得を切った手前、情けない気分になる。
声からは覇気が薄れていた。
「恥じるな、函辺。お前は良くやってくれている」
「はっ、ありがとうございます。そう言って頂けると救われます」
小さく一礼をして半歩下がった。
「勅令と言ったな。その勅令を発したのは誰だ?」




