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【05-10】

「随分と凝った迎えだな、結衣」

 

 ライトの光に目を細めながらも、それでも胸を張って言い放つ。

 

「二人を発見。捕縛する」

 

 快活な話し方とは正反対の感情が消えた喋り方だった。

 明らかに様子がおかしい。

 

「捕縛だと? 面白い。余に、この菜綱 まろみに逆らうというのだな」

 

 にぃっと笑みを作る。

 歯向かう物には容赦しない。恐るべき絶対支配者としての表情だ。

 

 まろみの威圧に生徒達がじりっと下がる。

 

「怯むな。相手はたった二人。一気に数で押し込むんだ」

 

 結衣の指示に動揺が収まった。腰を落として臨戦態勢に入る。

 

「いいだろう。思い知るがいい。絶対支配者たる者の力をな!」

「まろみたん、酷いことは」

「解っておる。無力化するだけだ」

 

 不安気な春乃に小さく残すと、半身に構えて右手を突き出した。

 

「お前ら誰に武器を向けておる。無礼であろ。捨てよ」

 

 低く厚みのある声を発した。

 人間を支配する言葉。人智を超えたまろみの力である。

 

 だが。

 

「何をしている。さっさと捨てよ!」

 

 誰一人、警棒を離そうとはしなかった。逆にじりじりと包囲を狭めてくる。

 

「武器を捨てろと言っている! 余の言葉が解らぬのか!」

 

 怒鳴った。しかし、やはり効果がない。

 

「どういうことだ。余の命令に抗するとは。どうなっているのだ」

 

 明らかな動揺を見せるまろみ。

 そんなまろみを庇うべく春乃が前に立った。

 

 まろみはフィジカル面では決して恵まれていない。

 いや、少々体力に自信があってもこれだけの数に対処できる物ではない。

 であれば取るべき行動は一つ。

 

 意図を悟ったのか、まろみが目を見開いた。

 その瞳にみるみる涙が溜まっていく。

 

「ダメだ。ダメだぞ。春乃。余は、余は……」

「なんとか逃げ道を確保してみるよ。だから」

 

 少しでも安心させようと微笑む。

 それを見たまろみが唇を噛んで顔を伏せた。

 

「済まぬ。直ぐに助けに戻るからな」

 

 結衣が小さく右手を上げた。続いて無情な命令を告げる。

 

「捕縛する。抵抗するなら容赦するな」

 

 一斉に押し寄せてくる生徒達に、春乃が身構えた。

 

 

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