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【05-05】

「おっけい! じゃあ、これからタメで!」

「うん。よろしく」

「ところで、草陰君、一つだけ聞いておくよ」

 

 少し真剣な顔になる。

 

「見えた?」

 

 どう答えるべきか一瞬迷う。

 が、下手に嘘をつくべきではないと判断した。

 

「あの、見えました。ごめんなさい」

「うそ! ちょ! 待って!」

 

 急いで回れ右すると、スカートをまくって中を確認する。

 水色でチェック模様の愛らしいデザインの下着だ。

 

「良かった。可愛いやつだ。これなら大丈夫、全然問題なし!」

 

 振り返って、ブイサイン。

 

 そこに眼鏡に黒髪ロングの少女が駆け寄って来た。

 まろみに気付いて敬礼してから、結衣の方に顔を向ける。

 

「委員長、本の貸し出し依頼なんですけど」

「ごめん。今、ちょっと」

「構わん、結衣。先に職務を果たしてくれ」

「はい、了解です!」

 

 元気一杯に答えると、差し出されたメモを受け取る。

 

「んと、この本は右奥から三番目の本棚、上から二番目にあるから。こっちは、その二つ左ね。一番下の段。あ、これは今貸し出し中だよ。で、これは……」

 

 メモを見ながら、次々と指示を繰り出す。

 

「驚いたか、春乃。結衣は蔵書の位置と貸し出し状況を殆ど暗記しておる。わざわざデータを検索しなくてもいいのだ。生きた情報端末ということろだな」

「うん、凄い。どうしたら、そんなに覚えられるんだろ」

「それはね。本が大好きだから!」

 

 結衣が答える。

 

 一通り聞き終え、眼鏡の少女は敬礼を残して本棚の方に駆けていく。

 

「他のこと、例えば座学とかは全然覚えられないんだけどね」

 

 何故か自慢気に胸を張る結衣。

 

「春乃よ。人間には特技がある。それを見極め、適した部署に配し、能力に見合ったポストを与える。それが支配者の務めなのだ」

 

 転校以来始めて耳にする支配者らしい言葉に、春乃は感心せざるを得ない。

 

「ところで、まろみ様。お探しの本は?」

「いや、今日は地下のライブラリを閲覧しに来たのだ」

「あの、ライブラリの閲覧はルールで禁止されているんですけど」

「それは知っておる。余が許可した」

「でも」

「余が許可したのだ。問題ないであろ。それとも余の決定に文句があるのか?」

「いえいえ。とんでもない!」

「では、早く案内するのだ」

「あ、はい。案内致します。こちらです」

 

 結衣を先頭に巨大な本棚の間を奥まで進む。

 時折、立ち止まっては間違った場所にある本を正しい位置に戻すのは、図書委員長の性であろう。

 

 



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