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【05-03】

 この学区でライブラリと言えば、図書館の地下にあるデータライブラリを指す。

 図書館は学舎エリアの隣の敷地。南の通用門から出て西、女子寮との間にある。

 五階建てで古風レンガ調の外壁を持つ。

 近くには視聴覚室や美術室と言った部屋が集められた特別教室棟と、文化部の部室棟が置かれている。

 

 ちなみに学舎エリアの東側は体育館と運動部の部室棟だ。

 

「思ったより、ずっと広いんだね」

 

 高く造られた天井、それに届くほどの勢いで整然と並ぶ巨大な本棚。

 向かって右側が読書スペースとなっており、簡易なテーブルと椅子がある。

 放課後の今、席は七割ほど埋まり、本棚の付近で本を探す生徒もちらほら見えた。

 

「蔵書量は『イルダーナ』の一般的な公営図書館並だ。専門書も揃えておるが、娯楽小説や漫画の類も充実させている」

「へえ、そうなんだ」

「本は人の生活を豊かにする物だからな。かなり多くの予算を割いている。購入する本についても利用者のリクエストを汲み取るようにしているのだ」

「それを決めているのも生徒会なんだね」

「そうだ。本の管理は図書委員達に任せておるが……」

「まろみ様?」

 

 裏返った声に、話を中断して視線を向ける。

 

 丸い輪郭の少女だった。

 ショートカットの髪をブラウンに染めている。

 まろみの姿に驚いたのだろう。積み重ねた本を両手に抱えたまま固まっていた。

 

「彼女が図書委員長、葦原あしはら 結衣ゆいだ」

「あわわわわ、あわわわわ」

 

 本を抱えたまま、右にふらふら左にふらふらと奇妙なステップを披露する結衣。

 

 そのコミカルな仕草に表情を緩めながらも春乃が駆け寄った。

 

「持ちますよ、本」

「ごめん、お願い!」

 

 受け取ると予想以上の重さだった。見掛けによらない力に春乃は少し驚く。

 

 荷物のなくなった結衣が背筋を伸ばし、まろみに敬礼する。

 

「失礼しました! 図書委員委員長、葦原 結衣は今日も元気一杯です!」

「元気一杯か。それはなによりだ」

「それしか取り得がないもんで。で、まろみ様は視察ですか?」

「いや、そういうわけではない」

「では、本ですね。お任せください。ここの本なら、どこに何があるか把握してますから!」

「そうなんですか? 凄いですね」

「記憶力には自信があるからね!」

 

 思わず声を上げた春乃に元気一杯の笑顔で答える。

 と、くっきりした眉を微かに潜めた。

 

「えっと、山下君だったよね!」

 

 

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