表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/165

【04-18】

「このお粥はどうにもできないので、適当なオカズを作ります」

「あ、僕がやりますよ。凛華さんは体調が悪いんだし」

「春乃様、料理がお得意なのですか?」

「いや、そういうわけじゃないですけど」

「では、お任せください。これ以上、個性的な料理を食べさせられては精神が持ちません」

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 凛華の腕は大した物であった。

 三十分ほどの時間で、焼き魚にダシ巻き。鶏の照り焼きにキャベツの千切りまで揃えた。

 味はどれも美味しく、出来合いのオカズばかりだった春乃にとっては、天の恵みとも思えるほど。

 だが、その凛華の技量を持ってしても、圧倒的戦力差を覆すには至らなかった。

 

 ゆったり歓談しながら一時間。

 オカズを全て平らげて、なんとなく三人の箸が止まった。

 

「そろそろ辛くなってきたな」

「僕もちょっと限界かな」

「私もこれ以上は無理です」

 

 鍋のお粥はまだ七割以上残っている。

 

「まあ、ここまで減ったら十分だろ。残った分は、凛華が数日掛けて食べれば」

「解りました。明日からのお弁当はお粥にします」

「うそうそ、冗談だよ。しょうがない。明日も頑張るか、三人で」

「え? 僕も?」

「当たり前だろ。連帯責任なんだから」

「ご安心ください。私が味付けを直しておきます。少なくとも食べられるレベルに」

「その言い方だと、自分が食べられない物を作ったみたいに聞こえるじゃないか」

「明日のお弁当にしますよ」

「すいません。自分が悪うございました」

 

 両手を突き出して、机の上に突っ伏す。

 土下座をコミカルな仕草にした物だろう。

 

「それにしても少し食べ過ぎました。動くのが億劫です」

 

 お腹をさする凛華を見て、函辺が腰を上げた。

 

「しょうがないな。片付けくらいしてやるよ」

「あ、僕も手伝うよ」

「いいよ。困るほどの量でもないし。ゆっくり休んでな」

 

 続いて立とうとする春乃を制し、手際良く皿をまとめてキッチンに運ぶ。

 

 程なくして水道の音と機嫌良さそうな鼻歌が聞こえてきた。

 

「で、春乃様。私に何か用があるのでは?」

 

 凛華が左手でくいっと眼鏡を上げた。

 

「どうしてですか?」

「春乃様は用もなく女子の部屋に留まったりしない人間です。小鬼田さんに調理を任せて、私が目を覚ますのを待っていたのは、何か用件があったのだろうと推測できます」

 

 凛華の言葉に、春乃が表情を緩めた。

 

「流石は凛華さん、その通りです。実は聞きたいことがあるんです」

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ