【04-13】
ぼんやりとした視界の中で、誰かが覗き込んでいるのが解った。
「凄くうなされていましたよ。大丈夫ですか?」
どことなく安心感をくれる声だ。
「眼鏡、眼鏡」
横着に横になったまま周囲に手を這わす。
「はい。眼鏡です」
「あ、ありがとうございます」
差し出された眼鏡を掛けた。
視界がクリアになった事で、脳も動き出す。
きちんと整頓された室内。
自分の横たわっているベッドも、壁に張ったアイドルグループのポスターも、間違いなく自分の部屋、寝室だった。
「大丈夫ですか? かなりうなされてましたけど」
「まったく酷い悪夢を……。え? 春乃様?」
ベッドの脇に座っていた人物に気付いた。
厚手のガーゼケットをずらし、上体を起こす。
「あ!」
いきなり春乃が顔を逸らした。
「どうしました?」
不自然なリアクションの原因を探そうと、凛華が視線を落とす。
途端に耳まで真っ赤になった。シャツのボタンが真ん中まで外され、胸元からライトグリーンにパステルドットの下着が覗いていた。
「きゃっ」
反射的にガーゼケットをたくし上げて身体を隠す。
「うわ!」
凛華の悲鳴に顔を戻した春乃だが、急いで背中を向ける。
凛華は明らかな違和感を覚えた。妙に太腿の辺りが心許ない。
まさかと思いつつも、ガーゼケットの外に出ている部分を確認する。
白く細い見慣れた自分の足だ。
まさかまさかと思いつつも、足に沿って視線を上げる。
膝から腿。就寝時に着ているパジャマも、制服のスカートもない。
まさかまさかまさかと思いつつも、更に上へ。
ブラとお揃いの淡い布が目に入った。
「いや! うそ!」
ガーゼケットで隠し、溶けた鉄のようになった顔で考える。
すぐさまある結論に達した。
「私が寝ていているのを良いことに。私が抵抗できないのを良いことに」
ぶるぶると怒りと羞恥に肩を震わせながら、乾いた声を絞り出す。
「違います! 凛華さんは凄い誤解をしています!」
「そうですね。私は誤解をしていました」
その一言に安心しかけた春乃だったが。
「ハッキリと申し上げます。私は春乃様に好意を覚えていました。まろみ様だけを見る真っ直ぐな瞳に。まろみ様だけを想う真っ直ぐな心に」
「凛華さん?」




