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【01-05】

 五番目の太陽系『ダーナ太陽系』。

 その第六惑星『イルダーナ』の衛星『ダグダ』。

 

 移民当初は『イルダーナ』に鉱物を供給する為の星だったが、今はその掘り進めた広大な地下空間を教育施設として利用している。

 

 完全にパラテラフォーミングされ、学校を中心とした学区と呼ばれる街が二十個存在する。

 軍人を目指す『イルダーナ』の子供達は十五歳で学区を選択、二十歳までの五年間を親元から離れて暮らす事になる。

 そこで軍人としての基礎や特殊技能を学ぶのだ。

 

『ダグダ』の軍教育施設が他の太陽系と大きく異なるのは、利便性を大きく制限した点にある。

 

 今の時代、生活の大部分はオートメイション化されている。

 人間のする事は決定だけ。他はすべて機械がしてくれる。

 しかし、幼少の頃からその環境に慣れてきた少年少女達は判断力に欠け、諦めが早く粘りがない。

 つまり軍人としての資質が決定的に足りない。

 

 そこでダグダ政府は、軍教育施設の科学レベルを西暦という暦が使われていた時代まで低下させた。

 科学と精神のバランスが取れていたとされる二十世紀後半から二十一世紀初頭。

 その頃の世界を地下に再現したのだ。

 更に通信機器の使用を禁止し、旧時代の苛酷な環境で過ごさせる事にした。

 

 当初は効果が疑問視されていたが、十年前の『ラー太陽系』との星間戦争で全て変わった。

 この戦いで、『ダーナ太陽系』は圧倒的な数的不利を覆し勝利を得た。

 そして重要戦域で常に多大な戦果を上げたのは、『ダグダ』出身の軍人達であった。

 

 旧時代の苛酷な生活が人間性を向上させ、優秀な人材を生み出す。

 半ば妄信に近い価値観により、現在では全太陽系の学生施設は、程度の差はあれ、旧世紀を再現した世界となっている。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 ぶんっと風を切る音に、べちっと肉を打ち付ける鈍い音が続いた。

 

 身を硬くしていた春乃が恐る恐る目を開ける。

 

 少年は体を低くして、左腕を顔の位置まで上げ防御の姿勢をとっていた。

 その腕で受け止めているのは、五十センチほどの警棒。

 

 春乃が思わず息を飲んだ。

 

 警棒を握っている人間は大きめのパフスリーブに、プリーツ付きのジャンパースカート。

 つまり女子だったからだ。

 

「なかなかやるじゃないか。だが!」

 

 少女は嬉しそうに呟くと、もう一方の手、左手に握った警棒を横薙ぎに払った。

 

 少年が後ろに跳躍。それを避ける。

 

 数メートルの間合いを空けて、二人が睨み合う。

 

「ちっ、オニハコか。面倒な奴が出てきやがったな」

「可憐な乙女に対して、随分と失礼なあだ名だ」

 

 オニハコと呼ばれた少女が、油断なく警棒を構えて言い放つ。

 

 百八十を超える長身。

 立派に膨らんだ胸元と、細く締まった腰、そこから続く優美なラインは溜息がでるほどの見事さだ。

 すっと鼻筋の通った美人だが、意思の強そうな瞳は近寄り難い雰囲気がある。

 

 少年を肉食獣と表現するなら、彼女は猛禽になるだろう。

 

「どこに可憐な乙女がいるんだよ」

「目の前にいるだろうが! 可憐な乙女がな!」

 

 苛立たしげに地面を踏んだ。

 後頭部で括ったシングルポニーの髪が軽く揺れる。

 

 


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