【02-17】
「本家の一人。と言うても、継承序列は二十五番目。末席や。普通の女学生と変わらへん」
「普通の女学生は、怪しい組織のリーダーなんかにならないよ」
「ふふ、面白いこと言いはるわ」
口元に手を当て、白い歯を微かに覗かせた。
「どうやろ。立ち話もなんやし、どこぞでお茶でも」
「遠慮させてもらうよ。君達『ハルベルデ』は信用できない。昨日のこともあるしね」
「昨日のことは、ほんま済まんことやった」
「でも、彼、えっと……」
「そういや名乗ってなかったか。須々木 萩人だ。萩人でいいぜ」
「あ、ありがと」
反射的に礼を述べる春乃に、バツの悪そうな苦笑いになる。
「萩人くんに僕を捕縛するように命じたのは、君なんだよね」
「もちろん、ウチや。首尾よくやってくれると期待しとったのに。がっかりやったけど」
「邪魔が入ったからだ。オニハコが出てくるとは予想してなかった。そもそも……」
言い訳を続けようとする萩人に、軽く左手を挙げた。
それを見た萩人は不満十分な顔をしつつも、続きを飲み込む。
「今だって友好的に見せて、通学路から外れたところで拉致、なんて企んでいるのかも知れないし」
「おやまあ」
大袈裟なほどに目を丸くする撫子。
だが次に彼女が発した言葉は、その表情以上に春乃を驚かせた。
「春乃はんは鋭いなぁ。いい作戦や思うたのに」
唖然とする春乃に、柔らかい笑みを見せ「嫌やわ、本気にして。冗談や」と継ぎ足した。
間を十分にとった話し方と奇妙なイントネーション。
のらりくらりとした撫子のペースに引き込まれてしまう。
「悪いけど、もう帰らないと。今日は少し用事が」
「亀の餌なら、もう済んだんとちゃうやろか?」
不意打ちの一言に、春乃は言葉を失う。
「春乃はんは正直モンやな。ウチらも組織や、それなりの耳目を持ってるんやで」
つまり生徒会に『ハルベルデ』の構成員がいるのだ。
「まあ、余談はこのくらいにして、本題に入らせてもろてよろし?」
タイミングを逸した春乃としては頷くしかなかった。
彼女は常に会話のイニシアチブを取り続けている。
計算され尽した巧妙なやり取り。
桔梗家のネームバリューだけで、リーダーに就いているのではないのが解る。
「ウチら『ハルベルデ』は生徒会に抗する武装組織、と考えてはるのと違うやろか?」




