【02-01】
【2】
翌日早朝。時刻は午前六時。
場所は十一学区第六校舎最上階、まろみの執務室。
姿見の前でくるりと身体を回した。
ニーハイソックスの上五センチという、実に芸術的なポジションでスカートが揺れる。
十一学区の女子制服は、ゆったりと二の腕を覆うパフスリーブが特徴。
スカートはプリーツで、腰の後ろに付いた大きな飾りリボンが愛らしい。
襟元のリボンタイは男子と同じ菱形のパーツ付きで、シンプルなインナーブラウスに良いアクセントとなっていた。
「どうだ? 似合っておるか?」
「はい。とても良くお似合いです」
「素晴らしいです。流石、まろみ様です」
まろみの質問に、副官の凛華とメイド衣装の鈴奈が即答する。
「しかし、このソックスはどうもな。ストッキングかレギンスにすべきではないか?」
「ダメです! まろみ様のおみ足を最も美しく見せるのがニーソックスなのです! ソックスを脱ぐというのであれば、この近衛侍女隊隊長、涼城 鈴奈を解任してからにして下さい!」
「鈴奈よ、お前がそこまで言うのであれば間違いはあるまい。良い服を用意してくれたな」
「勿体無いお言葉、ありがとうございます」
「いや、礼を述べるのは余の方だ。感謝するぞ。これからも余を支えていってくれ」
「ま、まろみ様」
感激に瞳を潤ませる鈴奈。
「それにしても、この制服は、ラインが解る物なのだな」
まだ膨らみのない胸元を寂し気に撫で、小さく息をついた。
小柄なまろみの身体は同学年の生徒達と比べて恵まれているとは言えない。
まだまだ子供な身体付きだ。
「世の男共は、その、女性らしい体型に魅力を感じると聞く。春乃を落胆させたりは……」
消えそうな声で続ける。
「直ぐにわたくしが、まろみ様に見合うパッドを……」
駆け出そうとする鈴奈の肩を凛華が掴んだ。
そのまま耳元に口を寄せる。
「偽乳で繕ったとしても、より後ろ暗さに苛まれるだけです」
「では、どうすれば」
「ここは、この凛華に任せて頂きましょう」
そう告げると鈴奈を放し、まだ胸元を気にしているまろみに半歩近づいた。
「まろみ様、私が調査したところによりますと、思春期の男子の八十パーセントは成熟した女性より、未成熟な女性を好む傾向にあるようです」
「ん、どういう意味だ?」
「つまり、若い男性の殆どは幼女性愛の傾向が強く、彼らにとってまろみ様こそが理想的な女性像なのです」
「なるほど。だが、その理屈だと春乃が残り二十パーセントに含まれている可能性もあるのではないか」
「いえ、それは有り得ません」
眼鏡をくいっと上げて断言する。
「あの顔は間違いなく幼女性愛者です」