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【08-13】

 そんな鈴奈に凛華は意外にも微笑を見せた。

 

「つまらないことは忘れてしまいました。まろみ様の良き友人として戻ってきて下さる日を心待ちにしています」

「はい。ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げる。

 

「隊長!」

 

 叫びながら近づいてきたのは、メイド服の一団だった。

 

「近衛侍女隊。隊長代理、暮町 くるみ(くれまち くるみ)以下九名。お見送りに参りました」

 

 セミロングで少し勝気な雰囲気を持つ少女が敬礼する。

 

「ありがとうございます。これからもまろみ様に誠心誠意仕えて下さい」

 

 一人ずつに言葉を交し合っている内に、『イルダーナ』行きの定期トレーンへの搭乗アナウンスが流れてきた。

 

「そろそろ、時間のようですね」

 

 いつの間にか溢れてきた涙を拭って、鈴奈が名残惜しそうに告げた。

 

 最後に春乃の前で止まり、その手を強く握る。

 

「草陰様、まろみ様のこと、よろしくお願いします」

「はい。安心して下さい。まろみたんは何があっても、僕が護りますから」

「ありがとうございます。その一言でわたくしは安心して、ここを去ることができます」

「涼城さんもお元気で」

「はい。では」

 

 鈴奈が向こうに渡ると、金属のゲートが余韻を断ち切るように閉まる。

 

「行ってしまったか」

 

 春乃の隣でまろみが呟いた。

 その声に気付いた春乃に、まろみが弱々しく続ける。

 

「鈴奈はな、この学区でできた最初の友人だった。大切な親友だったのだ」

「まろみたん」

「解っておる。余は絶対支配者、菜綱 まろみだ。感傷に浸っている暇はない」

 

 涙をぐっと堪えて、強気な顔で薄い胸を逸らす。

 

「鈴奈が戻るまでに、我が学区をもっと素晴らしい物にせねばな」

「そうだね。頑張らないとね」

「よし、戻るぞ」

 

 力強く声を上げると、先頭に立って歩き出す。

 

 その小さく弱々しい背中を見つめながら、春乃は改めて誓う。

 

「何があっても、僕が護るよ」  

  

 

                                  <Fin>

 

 

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