【07-06】
「ありがとう。撫子さんは、やっぱりいい人だね」
「あ、阿呆言いな。アンタに絆されたんとちゃうからな」
ふんっと鼻を鳴らす。
「で、ウチらに何をして欲しいんや。『ハルベルデ』は桔梗の名前とウチの美貌でくっついてる集団や。結束は脆い。実際、荒事に耐えられるのは桔梗忍者隊しかおれへん」
「その忍者隊の力を貸して欲しいんだ」
「忍者隊は俺を含めて二十人。武装風紀委員を擁する生徒会とぶつかるには分が悪いな」
「大丈夫。正面切って戦う気なんてないから。プランは……」
昨日、凛華達と立てた計画を説明する。
「なるほど、手はそれしかないかも知れへんな。せやけど、この子にできるんか?」
撫子がちらりとまろみの方を見る。
「大丈夫。僕がまろみたんを支えるから」
「しゃあないな。その根拠のない自信に賭けたる」
春乃の穏やかな笑顔に、ついつられて撫子の口元が綻んだ。
「決行は明日の放課後やな。ウチらはウチらの担当をこなしたるさかい」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「あの、よろしくお願いします」
最後に深々と頭を下げると、二人が部屋を後にする。
騒がしく過ぎ去った朝の時間。
撫子はふうっと息をついて湯飲みを口に運んだ。
「なんでやろな?」
不意に問う。
「どう考えても勝ち目の薄い戦いや。せやのに、あの二人には悲壮感の欠片もあらへん。希望だけが見えてるみたいや。なんでやろ?」
「さあ、俺には解らないな」
「阿呆やからかな?」
「そうかもしれないな」
「せやな。阿呆やからやな。それが一番しっくりくるわ」
自身を納得させるように頷いた。
「ウチらも、ちょっとくらい阿呆に生きてもいいんやろか」
「姫が望むなら、それもいいんじゃないか」
萩人らしい返事に、ふふっと笑う。
「ところでな、学区でその呼び方はあかん言うてるやろ」
ぎろりと睨みつけた。
※ ※ ※
まろみと春乃が撫子の部屋を訪れてから、半日が過ぎた放課後。
執務室のまろみに凛華が奇妙なニュースを報告した。
「余の偽者だと?」