【07-02】
※ ※ ※
時間を少し遡る。
救出されたまろみと春乃は、凛華の部屋に向かった。
サトリは戻ってこなかった。
目的さえ果たしてしまえば、用はないのだろう。
四人で反撃プランを練った。
春乃達が脱出した事。
凛華と函辺が偽まろみのコントロールから脱している事。
この二点が偽まろみに悟られたら終わり。
時間に余裕はない。
結果、作戦決行日は二日後となった。
準備に割ける時間は一日のみ。
切迫した状況だが、失敗は許されない。
翌朝五時。
まろみと春乃は、女子寮のある部屋を尋ねた。
「春乃はんやんか」
ドアを開けた撫子が驚きを見せる。
怪我も治り、和風美人な顔に戻っていた。
淡い色の寝巻き浴衣に身を包み、長い黒髪を纏め上げている。
まだ眠気が残っているせいか、潤んだ瞳は気だるそうだ。
「こんな早ように乙女の部屋を訪ねるんは、感心でけへんで」
返答に迷う春乃に、撫子が大きな溜息をこぼす。
「こういう時は、どうしても顔が見たかったとか言うたらどや。そんなん言われたらウチも悪い気はせえへんし」
「あの、ごめん」
「謝りな。しょうもない冗談なんやから」
実直に頭を下げる春乃に、呆れを多分に含んだ言葉を返す。
と、そこで春乃の背中に隠れていた少女が目に入った。
ぶかぶかのパーカーを着込み、フードとマスクで顔を隠している。
裾からはみ出ているスカートを見る限り、この学区の生徒には違いないが。
「厄介ごとを背負い込んでるみたいやな。変なことに巻き込むのは勘弁して欲しいわ」
言葉とは裏腹にドアを大きく開けた。
「早よ入り。ええから」
春乃の手首を掴んで強引に引き入れた。
後ろの少女も無言で続く。
「迷惑を掛けたくはないんだけど、その」
「誤解したらあかんで。ウチは善人やないからな」
「それは解ってるよ。前に酷い目に遭ったから」
「酷い目に遭ったんはウチの方や。折角の美人が台無しになるとこやった」
その言い草に春乃は笑うしかない。