【07-01】
【7】
耳を劈く爆発音、続いて赤い煙がグラウンドの隅で派手に吹き上がる。
事態に追いつけず、居並ぶ約五千人の生徒達は呆然とその様子を眺めるだけだ。
放課後、急遽執り行われた臨時集会の最中の出来事だった。
「なんだ?」
指揮台でマイクを握ったまま、軍服姿のまろみが焦点の外れた一言を漏らす。
その力ない声を飲み込むように、次々と破裂音が起こり、続々と赤い煙が立ち昇る。
「敵襲だ! 敵襲!」
「火だ! 火が点いた!」
「うわぁ! 燃える!」
いきなり叫びが上がる。切羽詰った声。
それに追い討ちをかけるかの如く、今度は生徒達の中から爆音と赤煙が。
更なる悲鳴と怒声が混乱に一層の拍車を掛ける。
「なんだ! 何が起こっているのだ!」
「まろみ様、敵襲です!」
軍靴で床を打つまろみに、駆け寄って来た凛華が血の気の引いた顔で報告する。
「て、敵襲だと!」
まろみが目を見開いた。
「武装風紀委員は! 何をしている! こんな時に余を護るのが奴らの役目だろうが!」
「武装風紀委員は寮に向かっておりますので」
「くっ! なら早く戻せばいいであろうが!」
「しかし、この混乱では命令伝達も難しく」
「もういい! 役立たずが!」
怒鳴りつつ手にしたままのマイクに気付いた。
急いで口元に運ぶ。
「お前ら静まらぬか!」
しかし、その声は自身の叫び以上にはならなかった。
マイクが切れているのだ。
「どういうことだ! どういうことなのだ!」
まろみの言葉は人を従わせる事ができる。
だが、それは声を聞いた者にしか効果がない。
この混乱状態、いくら叫んだところで、付近の数人にすら届かないだろう。
「何が起こっているというのだ。一体、何が」