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2話

「ユキ、学校に行くにしてはまだ早いから入れてもらっていい?」


「いいよ。朝ごはんも作ってあるから一緒に食べようよ。」


 中を見ると、湯気をたててこんがりと焼けたトーストと、鍋が火にかけておいてあった。


「おー!朝ごはんまで作ってあるのか。新学期始まって早々こんな珍しいことがあるとは驚いたよ!」


 普段はユキが用意している間に、樹人が朝食を用意し、それを二人で食べてから学校へ行っている。鍋の中にはごろごろと大ぶりの野菜が大量に入ったシチューだった。これはうまそうだ。


「それを作ってたら身支度のほうが遅くなっちゃって・・・。裏の庭で採れた野菜をタップリ入れたシチューだよ。ミキトくんにはいつもお世話になってるし、毎朝起こしに来て更に朝ごはんまで作ってくれる人なんてなかなかいないからね。感謝してます!だから今日は気合入れてみたんだー。」


 起きるのがギリギリだったわけでは無く、朝ごはんを豪勢にしてたら少し間に合わなかっただけなのか、さっき起きるのがギリギリとか考えたのは申し訳ないな。と、心のなかで謝りながらユキに話しかける。


「ありがとう。感謝されると毎朝早起きしたかいがあるってものだよ。それに、料理は好きだからやってるだけだしね。」


「そうそう。その謙遜するところもミキトくんのいいところだよ!今までにお世話になった分のお礼のプレゼントもあるんだよ!朝食の後にあげるから楽しみにしててね。」


 今朝のユキはテンションが高いな。それにしてもプレゼントとはなんだろう。とても楽しみだ。


「それは楽しみだ!なら早く朝ご飯食べちゃおうぜ。」


 ユキと一緒に朝食を食べ、ユキが後片付けもすると言ってくれたのだが、そこまでしてもらうのは悪いので、食器などを洗い、お茶を入れプレゼントとやらを見せてもらうことにした。


「今回のプレゼントはですね。なんと!お父さんの最新作の試作品でございます!」

 

 ユキのお父さんは魔工と呼ばれ宝石などの魔力をためておくことができる石を加工して魔術を使うときの手助けなどをする道具を作る仕事をしている。剣士における鍛冶屋である。ユキの父親はこの地方随一の魔工だ。しかもその最新作、そんなものを僕にプレゼントしようと言っているのだ。


「ユキ、僕はそんなすごいもの受け取れないよ。僕はお金も持ってないし、別にすごい魔術師でもない。むしろ剣のほうが得意な魔法は一年前に始めたただの初心者だ。」


「それも考えて作ってあるの。これは去年私を世話してくれたお礼だから、お父さんと一緒に考えて作ったんだよ。」


 この前地元に帰省する前にやたらお父さんと話し合いをしていると思ったら、こういうことか、まいったな。ユキがそこまで頑張ってくれたものを遠慮して受け取らないというのはあまりに悪いだろう。


「分かった。ありがたく受け取らせてもらうよ。このお礼はいつかしなきゃね。」


「お礼のお礼なんておかしいからきにしなくていいの!で、肝心のその道具なんだけど、はい。」


 テーブルにユキと僕が向かい合っている真ん中にユキは膝の上からぽんと正方形の箱をおいた。


「あけていい?」


 ユキは頷く。少し緊張している表情をしている。僕が気に入るか気にしているのだろう。

 装飾の特についてない箱を開けると中には赤色の指輪が二つ入っていた。二つは同じものだろう。金属のような質感だ。赤色の指輪のはめた時に手の甲に来る場所には赤色の宝石のようなものが付いている。手に取り手のひら側に来る方を見ると、七色の石が等間隔に埋め込んであった。とても美しい指輪だ。あまりの美しさに、魔法に関係する道具ということを忘れていた。普通に装飾品として使う物して買うとしても高値がつくだろう。だがしかし、よく金属の部分を見ると、術式のような文字や、模様が所狭しと描かれていた。それも見れば見るほど美しい。ユキのお父さんは道具の見た目にもこだわりがある人だ。


「その指輪はね、ちょっと魔力を通すと剣に変形するようになってるの。少しやってみて。」


 言われたとおりに、少しだけ魔力を練り、指輪に流してみた。そうすると指輪の色そのままの剣に変形した。質量保存の法則など魔術師には関係がないのかもしれない。柄には7色の石が等間隔に付いている。


「もう一回魔力を通すと指輪に戻るよ。その指輪のすごいところはこれからなんだけどね。この宝石があるでしょ?そこに術式を覚えさせることができるの。術式を覚えさせて魔力を入れておけば、魔力を使わず術式を発動させられるわけ。」


 なるほど。剣で闘いながら術式を構築するのは初心者には難しい。それを補うためのものだろう。だが、戦いに合わせたものが前もって作れるはずがない。なので、これは時間を稼いだり相手の隙を作るために使えるものだな。魔力を練る必要もないので、不意打ちにも向いている。


「こんな素晴らしい物をプレゼントでもらえるなんて、本当に嬉しいよ。ありがとうユキ。」


「ううん。お礼ならお父さんに言ってよ。将来の婿の樹人君のためなら本気出すぜー。なんて言っちゃって。恥ずかしいよね。」


 相変わらずあのひとはよくわからないな、と苦笑する。


「一つでいいって言ったのに、お父さんったらユキもペアリングのほうが嬉しいだろって言って私の分も作ってくれたんだけど、ペアリングは少し恥ずかしいよね。」


 全くそのとおりだ。少しどころではないかもしれない。二つあった理由はユキの指輪ということか。こちらは七色の石でなく、僕の剣より質のいい剣に変形するらしい。僕の指輪で十分丈夫だったのだが・・・

 朝食を食べたりユキと談笑をしている間に、学校へ行かなければいけない時間になったので、学校へ向かうことにする。

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