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1話

春の風は暖かいような涼しいような、この先が楽しみになるような寂しいようなものだ。まだ朝6時、太陽は昇ったばかりで、少し肌寒い。静かだが、快晴で、春らしいいい朝だ。外にある井戸から水を汲み上げ、顔を洗う。冷たい水に僕はようやく完全に目を覚ます。寝起きはそんなに良くない方だ。

 今日から新たな学年の始まりだと、この澄んだ空気のように背筋をのばす。朝の静かで、涼しくて、凛とした空気が僕は好きだ。気持ちがリセットできる。家の裏の桜の蕾も、一番の慌てん坊が美しい体を思う存分に伸ばしていることだろう。

 僕は、セードルフ地方戦士育成校に通っている。今日から新学期なので始業式に参加しなくてはならない。後輩もでき、先輩になるため、今まで以上に勉強も戦闘演習も頑張らなければならない。今日もなかなか起きてこない相棒のユキを起こしに行くのが最初の仕事だろう。彼女も今日から晴れて後輩を持つわけだが、毎日寝坊で大丈夫だろうかと少し不安になる。

 家に戻り、服を着替える。普段は自由な服装で学校へ行くのだが、今日は始業式なので制服を身につける。普段着慣れない制服に少し緊張するが、ちょうどいい緊張感だ。制服を着たら外に出てユキの家まで歩く。この澄んだ空気と制服のお陰でいつもより大人になって歩いているみたいだ。

僕の家は少し町のハズレにあるため、ユキの家まで少し歩かなければならない。だが、朝の散歩は楽しい。昼より少し冷たく、落ち着いた雰囲気の町並み。見慣れているが、飽きることはない。小鳥たちが楽しそうに合唱しているのが聞こえてくる。花が見頃を迎えるのは、少し早いか、まだ蕾を固く閉じている。家の裏に植えた桜の見頃もまだ訪れないだろう。町の中心には、少し小さめの川が流れている。サラサラと静かに山からの雪解け水が流れてくる。少し遠回りをすれば橋があるが、飛び越えたほうが近道だ。

 川幅は2メートルほどあるが少し助走をつけ飛ぶ。まだすこし冷たい風の抵抗が優しく僕の顔を撫でる。ばさばさとはためく制服、ボタンをしめておくべきだった。体を鍛えているので、2メートルとちょっと飛ぶくらいはできるが、一応魔法で体を軽くし距離を少し稼ぐ。剣は育成校に通うまでにユキとよく練習をしていたが、学校から適正があると言われたのは、魔法だ。剣のほうが性に合っていて好きだ。剣の重みと打ち合うときの緊張感など魔法では味わえないだろう。魔法は育成校に入ってから勉強を始めたので、1年の時は基礎を学んだ。2年になり、更に色んな魔法を使えるようになると思うと、魔法があんま好きでなくても心が踊る。少し大きめの岩に着地するが、思ったより安定しておらず、ごりっという音共に足場が揺れる。すこし冷やっとしたが、バランスを崩しただけですんだ。それにびっくりしたのか、川の魚がぴしゃっという音を立てて跳ねる。「ごめんよ」と心のなかで謝り、ユキの家へ向かう。

 川を渡ればすぐそこだ。そうしてあのお寝坊さんを起こしてやらなければならない。普通は逆なんじゃないかなと思うが現実がこうなのだから文句は言っていられない。ユキの家のドアをノックし、いつも通り返事がないので、大声でユキを起こそうとした時。


「おはよう、ミキト。今日は起きたよ」


 出てきたのはもちろんユキだ。それでも少し寝坊したのか、髪は少しまだ乱れたままだ。急いで用意をしたのだろう。髪は白く、肌も白い。整った顔立ちをしていて、どこか安心できるような顔立ちをしている。僕だけかもしれないが。目は黒く、頬をピンク色に染めている。よっぽど急いだのだろう。普段私服はズボンが多いが、今は制服なのでスカートを履いている。滅多に身につけない制服を身につけているからか、ドコか居心地が悪そうにしているが、いつものユキだ。


「おはよう。今日は起きれたんだね。後輩ができるから今日は気合を入れてみたのかい?」


「うん。そうだよ!今日はミキトくんに起こされなくても一人で起きたよ。」


「三日坊主にならなければいいけどな。」


「それは絶対ないよう。今日から私は変わるの!」


 たぶん無理だとは思うが、もし変わってくれたら起こしに行く手間が省けるので是非そうしてもらいたい。起こしに来てくれてもいいくらいだ。それはわがままだが。一応僕が来る前に身支度は終えることができたようだし、起きるのがギリギリだったことについては大目に見ることにした。

 だが、今日もユキは寝ていると思ったので、学校にいく時間にしては早い時間に来てしまったので、今から30分ほど時間を潰さなければならない。


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