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婚約者ですストーカーじゃないです:前編

彼視点です

変態的なストーカー行為を書き綴っているだけなのでご注意下さい。

俺の恋人は可愛い。

どのくらい可愛いかと言うと、噛みついてじっくりじっくり咀嚼して食べてしまいたいくらい可愛い。

勿論そんな勿体ないことはしないけどね。

彼女が減るじゃないか。



俺の恋人は美しい。

どのくらい美しいかと言うと、部屋に飾って一生鑑賞していたいくらい美しい。

頭のてっぺんから爪の先まで輝きに満ちている。

部屋中に埋もれるほどある彼女の写真を眺めていると、あまりの美しさにたまに現実には存在しないのではないかと不安になることさえある。




彼女と出逢ったのは中学生の時である。

送迎の車内の窓越しに毎日見かける可愛らしい彼女が目についた。

俺が通っている私立中学の近くにある公立中学の娘らしい。


毎朝似たような時間に通学するので周囲が同じ顔ぶれなのは当たり前であるのに、何故か彼女だけが妙に印象深かった。


季節に伴い変わる制服の変化を目にする度になんだか気分が上昇し、髪型の変化や新しい髪留めやマフラー等の小物を発見する度に嬉しくなる。



ある帰り道、彼女のポケットからハンカチが落ちるのを目にした。

すぐさま車を止めさせ走ってハンカチの元へ向かう。

取り残されたそれを拾い、落としたことに気付いていない彼女の後ろ姿へ呼びかけようとして………情けないことに緊張で声が出なかった。


手元のハンカチ。

仕方ないので持ち帰ったのだが、どうにもその存在が気になって仕方ない。

気付くとハンカチに鼻を当て思うさま匂いを嗅いでいた。

少し香る甘い匂いに酷く興奮を憶えた。

彼女に返す気は消え失せ、それどころか何か他の物も落とさないか期待した。

それが俺の宝物第一号との出会いだ。




冬の寒い季節、俺は風邪を引いてしまう。

自宅に主治医を呼びつけても良かったが、塾へ行くついでに母の経営する病院へと向かった。


マスクをして受付のロビーに俯いて座っていた俺の隣に誰かが腰かける。

ソワッとした何かを感じ隣を横目でこっそり覗くとなんと例の彼女が居るではないか。


え? なんでだ。どうしよう。彼女も具合が悪いのか。話しかけようか。


色んなことが頭を駆け巡り熱も相まりグルグルしていると、彼女が小さく声を上げる。


「お母さんこっち」


俺達の方へと向かって来たのは、彼女と似た顔立ちの看護師の女性。


「はい鍵」

「忙しいところにごめんね。確かに出掛けに持って出たと思ったんだけど」

「もう、気を付けなさいよ。じゃあお母さん仕事に戻るから。今日は遅くなるから先に夕飯食べててね」

「うん、分かった。頑張ってね」


手短な会話だけ済ませた彼女達はそれぞれに去ってしまった。


あああ……彼女と偶然出会すとは、なんてラッキーな日だ。

しかも隣に座り彼女の声まで聴けた。

彼女の母親は俺の母親の経営する病院で働いている。

これって本当に偶然だろうか。

『運命』、そんな言葉が浮かぶ。


興奮した俺の熱がより高くなったのは言うまでもなかった。





気になる彼女の存在は俺の中で日に日に膨れ上がり、もうなんだか止まりそうにない。


先日は学校近くのファーストフード店で友人を連れた彼女と出会した。

少し離れた席だったが、彼女の存在はすぐに察知出来る。

俺には彼女を見つけるセンサーが備わっているらしい。


楽しく会話に花を咲かせていたが三十分ほど経つとどうやら店を出るようで、席を立ち始めた。

そこでトレーを片付けようとした彼女に、男性店員が鼻の下を伸ばして片付けを申し出たではないか。

ゲスな下心に気付かない彼女は店員に礼を言い去ってしまった。


慌ててその男性店員の前へと躍り出る。

突然近付いてきた俺を不審そうな目で見る店員を睨み付ける。

お前の魂胆は分かっているんだ。そうは行くか。


俺は店員が持っている彼女のトレーの上のジュースの紙コップを掴み走った。

先程から俺の顔をチラチラ見ている店内の女性達と店員が、俺の行動に呆気に取られている間にどうにか店から逃げ切った。


危ないところだった。

あのまま見過ごしていれば彼女の使用済みストローがあの店員によりどんな汚され方をするか……考えただけでも恐ろしい。


迎えの車を回させ帰宅する車内で手に持った紙コップをジッと見つめる。

あの不埒な店員から奪い返したはいいが、これはどうすればよいだろうか?

彼女のモノを捨てるなんて勿体ないこと出来るはずないし、ここは俺が大切に保管するしかないな。


となればこの中に少しだけ残っているジュースの残りは飲んでしまった方がいいだろう。

そう考えると彼女が口づけたであろうストローに異様な興奮を覚える。


はぁ……はぁ……いや、まだ駄目だ。

誰もいない部屋でじっくりと彼女を感じたい。

その夜、ほぼ水に近いジュースだが、俺にとってはどんな甘露よりも甘く淫靡な味を存分に堪能した。


舐めつくされてピカピカな紙コップとストローは宝物第二号となった。

これは彼女を守った俺への褒美に違いない。

なんて幸せだろうか。



だが俺の幸運はそれだけではない。

ついこの間は学校近くのコンビニで出会したし、更にその次の日には本屋で出会した。

その際、不要レシート入れにあった彼女のレシートを拾う。

宝物は着実に増えていった。


彼女が店に入店する姿を見て、俺もたまたまコンビニや本屋に用があったと思い出したのだから、これは偶然ではなく運命だ。




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